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「Syaaaaaa…」


「これが悪魔という者ですか…」


ここはとあるマンションの一室、事務机が何個か並んでおり書類の入った簡素なスチール棚も見える、どうやらココはとある事務所のようだ。
しかし、下品なポスターがあったり『喧嘩上等』とか書いている掛け軸があったりするなど一般的な所ではないようだ。
先ほど声を出したのは前回、番外のガーディアン…Lost Gardian Numberとして覚醒した愛美である。
そして、聞こえる獣声は二足歩行で立っている人よりもデカイ蜥蜴である。それはガーディアンとの死闘をはるか昔から繰り返してきた相手…悪魔である。


「こうして見ると様々な種類がいるみたいですね。今、威嚇してきているのは蜥蜴で他はカマキリ・バッタ・タコまでいますね。」


現在の立ち位置は愛美とその主である雄喜は出入口の側に居り、悪魔たちは事務机を挟んだ向こう側に威嚇している蜥蜴の悪魔を筆頭に計四体いる。


「しかし、人に化けて暴力団に成ってるなんて思いもしませんでした。悪魔と言えばもっと…こう…」


「分かるけどね。人を堕落させるには麻薬とか違法風俗とかの方が楽なんだよ。そして、それらに関係する暴力団とかになるのが近代の通例なのさ。」


愛美は初めて会った悪魔に対してイメージとのギャップを感じているようであった。雄喜はそんな彼女に最近の悪魔の手段の通例を語る。


「シャァァァ…貴様らいったい何者だ?玄関で対応した俺の部下を油断していたとはいえ一瞬で倒すとは?」


威嚇していた蜥蜴の悪魔が二人に話しかけた。どうやらココの事務所の責任者であるようだ。相手がガーディアンであるならば特有の感官がする筈なのだが…どうも、同じようで違う不思議な感覚を感じ戸惑っているようである。


「どうした?来ないのか?特撮の出来損ない。」


「言われ無いでも!」


両者の牽制で先に拮抗を破ったのは雄喜の挑発であった。蜥蜴の悪魔はその挑発に乗り攻撃をして来ると思ったが、


「ヒョゥゥゥゥゥ!」


「ジャアアアアア!」


蜥蜴の悪魔の声で同時にその脇に居たカマキリとバッタの悪魔が同時に襲いかかって来た!
だが…
ベチャン!グチャ!
カマキリの悪魔は愛美の払った平手打ちで壁にめり込むほどの衝撃受け、バッタの悪魔は愛美の拳が当たった瞬間、気味の悪い音をたて胴体が陥没してしまった。


「くっ!殺れ!!」


蜥蜴の悪魔は目の前の惨状に怯まずタコの悪魔に追撃させる。
そいつは八本もある足の幾つかを触手の様にし愛美と雄喜を襲ったが、愛美に到達する前に何かに阻まれ攻撃が逸れてしまった。
それを感じたタコの悪魔は一目散に窓を目指し逃亡しようとしたが、


「おっ…!?」


それを咎めようとした蜥蜴の悪魔の前でタコの悪魔が何かに引っ張られるように愛美の手に収まり…八本の足だけ残し胴体が消えてしまった。
そして、あっという間に塵に帰した。


「ちっ!冗談じゃねぇ!?」


そう言うと蜥蜴の悪魔も逃亡を図ろうとしたが急に体が重くなり床に倒れこんでしまった。
彼は近づいてくる足音に対してデジャブを感じていた。いつか同じ様な事になった事がると。


「き…貴様…!重…力・・の…ガ…ィ…アン…なのか!?」


そう、彼は何時だったか忘れたがガーディアンと戦った事が有るのだ。


「他のガーディアンを知ってるのですか?」


愛美は以外そうに聞く。
この時、蜥蜴の悪魔は訳が分からなくなった。ガーディアンは一人一種の能力。同じ攻撃方法を受けたのであればそれは転生し姿形が変わっていても本人であるが、こいつはまるで始めてかのように聞いてきたのだ。


「愛美、ここら辺はあまり人が居ないとはいえいつ来るか分からないんだ。早く楽にしてやれ。」


「はい、雄喜さん。」


雄喜がそう指示すると愛美は手を上から下に振り下げると、蜥蜴の悪魔の下半身は消滅した。


「どうだ、感覚は掴めたか?」


「ええ、何となくは。でも、まだ加減がし辛いですね。」


「まぁ、そこら辺は慣れしかないな。」


そう雄喜と愛美が談話していると、蜥蜴の悪魔は最後の力を振り絞って含み針を愛美に飛ばすが、赤い光の板に阻まれ消滅した。
その赤い光の主は雄喜である。
蜥蜴の悪魔はその光を見て消えていった。


「最後まで気を抜くな。残心は必要だぞ。」


「…すみません、雄喜さん。」


「ふっ、次から気を付ければいい。なにせ初陣だからな。」


雄喜は愛美に忠告すると同時に落ち込んだ彼女をフォローする。


「で、どうだ。『引力』と『斥力』は?」


「…使ったのは弾くのと加重、そして引っ張っただけですがコレだけでも凄まじい力ですね。」


愛美は自らの力に多少なりとも畏怖を感じているようだ。
彼女の力は雄喜の言った通り『引力』と『斥力』。ガーディアンとしては『引力』が本来の力であるが何かしらの問題があって開発が頓挫したロストガーディアンは今世紀に蘇らす際に雄喜=創造主は手を加えて蘇らしたのである。
故に彼女は、『引力』と『斥力』…『力のベクトル』を操るガーディアンなのである。


「力を使うのは多少臆病な方がいいさ。…訳も分からずただ振り回すだけは性質が悪い。」


「……」


雄喜はそう言って苦笑しながらも愛美を励ます。彼女はそんな彼をただ黙って見ていた。
その言葉には重みがあった。長く生き過ぎている雄喜には何か思う事があるのだろう。


「…誰か来るな。この感じは?」


「どうしますか?」


雄喜は人の気配を感じ、こちらに向かってくるのが分かった。ただ、それだけではないようだが…
そしてとった行動は…


「愛美、こっちに来い。瞬間移動でズラかるぞ。」


「はい。」


愛美は必要以上に抱きつき、彼女が確りと自分に抱きついた事が分かると雄喜は瞬間移動を発動し、この場から消えた。
その直後…
バギャアン!!
凄まじい威力で蹴られたのか、扉がくの字に曲がり事務所内に吹き飛んだ。
ちなみにその扉は内開きではなく、外開きであった。


「…どういうことから?」


入って来たのは女性であった。容姿は引き締まった体をパンツルックのスーツにゆったりと包んでいるが、ただ胸だけが上着とシャツを大きく盛り上げている。そして、長い緑がかった黒髪を持つその顔はかなりの美女と言えるが細いその目は剣呑な光を帯びている。
そして、美女は此処の惨状を目のあたりにした。


「争ったにしては傷が大きすぎるわね。まるで私たちが戦った後みたい…」


美女は壁にできた傷を触る。


「まだ新しい…ついさっき出来たみたい。それにコレだけやってるのに怪我人、いえ…遺体が無いなんて。」


悪魔は倒された時に塵になってしまう。だから、悪魔の遺体というのは普通存在しないのである。
美女は此処に居たのが悪魔でありそれらは消滅したであろうと言う事、そして、何者かが戦ったというのをしばらく考えていたが…


「…まぁ、別にいいわよね。暴れられなかったのは癪だけど楽に仕事が行くのは良い事だわ。」


どうやら、考えても仕方が無いと判断したようである。
彼女の正体はこの『暴力団』の事務所に張り紙がしてあった。
そこには『絶対関わり合いを持つな!見かけたら即逃げろ!超危険人物‘K’』とあった。



その頃、雄喜たちは自宅に戻っていた。
雄喜はある書類を見ていて、愛美はお茶とお菓子を持って彼に近づいた。


「何の書類ですか?」


「ん…」


愛美は後ろから覗き込み、雄喜は彼女が持って来たクッキーを口に銜えたまま答える。
そこには‘履歴書’とあった。



「…ここの喫茶店かしら?」


それはとある女性が言ったものだった。
いや、女性というにはまだ若い感じがするパッと見は二十歳前後といったところであろう。


「駅前のチェーン系の喫茶店…」


抑制の無い声を出しながら周りを確認し、その店に入った。
店員の挨拶に目もくれず彼女は自分の目的の為にとある席に向かった。


「すみません。留目 亜理紗(Arisa Todome)と申します。貴方様がお約束の方ですか?」


彼女の目的場所である席にはスーツ姿の男が座っていた。どうやら彼女は待ち合わせをしていたらしい。


「ああ、そうだよ。席に座って留目さん。」


「はい、失礼します。」


男が席に座るように促すと亜里沙は一礼してからその向かい側の席に座る。
亜里沙の容姿はというと、服は学校の制服であるシンプルなセーラー服である。髪はセミロング位で彼女からすると左の房を三つ編みにし藍のリボンで留めていた。しかし、色素が薄いのか髪の色が灰色に見える。光加減によっては銀に見えるだろう。そして、体格は他の女性が羨むくらい細いスレンダーな感じである。


「じゃあ、始めようかな?私の名前は、陸良 雄喜だ。」


「はい、私は七星高校から来ました留目 亜理紗です。よろしくお願いします。」


「ああ、宜しく。本当はちゃんとした所で面接をするべきなんだろうけど、うちはある意味個人営業なんでね。こんなところでしか対面できなくて申し訳なく思っているよ。」


「いえ、気にしないでください。」


雄喜は何となく話を切り始めている。この様子からしてどうやら、亜里沙は面接に来たようだ。
その後、とりとめない一般的な面接のやり取りが続いた。


「さて、全部聞き終わったけど何か質問はあるかな?」


「はい、一点だけ宜しいでしょうか?住み込みで働けるというのは本当でしょうか?」


十分近いやり取りをやって最後の質疑応答に入った。そこで亜里沙は質問をしてきたが、その時…雄喜の目が光った事に気づかなかった。


「まぁ、私が留目さんが申し込んだ企業に対して何か有るっていうのは分かってるよね。」


「はい、先週その企業から連絡があった時から何となくは…」


雄喜の言葉に対して亜里沙はどことなく答える。


「うん、私はその企業の専属のSE(システムエンジニア)をしている。特殊な立場でね、殆ど外部協力の扱いになっているんだ。でも、かなり深い所まで関係している。まぁ、私の立場はこれ位にするか。」


亜里沙はそれに頷きながら聞く。


「ほとんどを家かその近くに借りた作業場でやっているんだが、流石に一人だけだと辛くなってきてね。いっその事、住み込みで手伝ってくれる人が一人くらい欲しいんだよ。それを企業に相談したら「社員は無理だが、新規採用のを一人連れてっていい」と言われたからね。その後、書類を見ていった時に目に留まったのが留目さんだったって訳だよ。」


雄喜が説明し終わるとじっと聞いていた亜里沙がある事を言った。


「…陸良さんは、大事な部分を話してませんね?」


亜里沙の言葉に雄喜の眉が少し動く。
そして、内心は驚きながらも平然を装い彼は聞いた。


「どうしてそう思うんだい。」


亜里沙は視線を逸らさずに言う。


「私の勘ですけど…今までの話は『建前』で『本当』の事を言っていないと感じたからです。確かに私を雇いたい理由は言ったとおりですけど、それ以外に何か有ると感じています。」


雄喜は亜里沙の言葉にため息をつき話す。


「ふぅ、凄いな。こっちの事がばれるなんて。」


「よろしければ話してもらいませんか。」


彼の行動が本当だと感じた亜里沙はその追究を始めた。


「…初めに言っておく。もしこの話を受ければ『表向き』はさっき言った通りになるだろう。しかし、知らなくてもいい事を知り人生が狂ってしまう事になるが。」


雄喜は目を細め剣呑な気配を出し通告するが、


「私は私がどうなろうと構いません。人生なら生まれた時から狂っています。」


亜里沙はそう答えた。
雄喜は彼女の目を見据え、そこに何もないと分かると


「…いいのかい?」


「別に構いません。」


雄喜は再度の確認をするが彼女の答えは変わらなかった。彼はため込んだ息を吐くと、先ほどまでの気配は身を潜め最初に会った時の雰囲気に戻った。


「この話は信じられない事ばかりであまり聞かれたくない話だ。この後、予定が無いのであれば場所を変えて話そうと思うけど。どう?」


雄喜は机の上に出ている書類を片付けながら言う。
それに対して亜里沙は


「この後に予定はありません。だから聞きたいと思います。」


雄喜を見据えたままそう答えた。


「分かった。移動するから付いてきて。」


彼がそう言うと亜里沙はその後を追った。
そして、そこの駅から二つ三つ目の駅で降りバスでその地区の住宅街へと向かった。
そこは、古い家と新しいマンションが建て並ぶ再開発地区みたいな所であった。


「このマンションの上のほうに俺が借りてる部屋があるんだ。」


雄喜はそう言って目の前のマンションを見上げ、亜里沙もつれられて見上げた。そのマンションはいろんな意味で高いマンションであった。
まず、物理的に高さが高い、一番下にホールがあり高級の意味で高い、セキュリティも高そうだ…つまり、はたから見ても分かる通り高級マンションであった。


「どうしたんだ?中に入るぞ。」


見上げたままの亜里沙を呼ぶ雄喜、彼女は呼びかけられてようやく気付き早足で彼の後について行った。
中に入り、エレベーターに乗り結構な高さになった時、そこから降りた。
どうやら、この階が雄喜の部屋があるらしい。
そして、雄喜がカギを開け入ると


「あ、お帰りなさい。早かったですね。…その後ろの方は誰ですか?」


ちょうど洗濯物籠を持って廊下に居た愛美に出迎えられた。


「ああ、『ナンバーズ』だ。まだ覚醒してないが。」


「あら、そうなんですか?でも何故ココに?」


「諸事情説明だな。それを聞いた後は彼女に任せるが。」


「なら、お茶とお菓子を用意しないと…」


そんなやり取りの後、愛美は慌てて部屋に入って行った。
そのやり取りに入れずボゥッと立っていた亜里沙だが、


「遠慮せずにあがってくれ。」


雄喜の誘いによってようやく動けた。
亜里沙はリビングに通されそこのソファーに座らされた。向かい側に同じようなソファーがあり、目の前にはテーブルがあるのでどうやらココが応接場所になっているようだ。
愛美がお茶とお菓子を二人前持ってきてから話が始まった。


「さて、それじゃ話そうか。なぜ君を呼んだのかを…」


亜里沙にとって彼の言う事は三流ファンタジー小説もいいところだった。
悪魔にそれを倒すガーディアン、転生し人間を守る存在、自分の中にガーディアンが眠っている事、それを目覚めさせれば自分もガーディアンとして覚醒できることなどであった。
本当に馬鹿馬鹿しいにも程があるという内容だが…目の前で空き缶を手を使わずに潰したり、瞬間移動で自分の後ろに一瞬で回られたりしたら信じる他しかなかった。


「…それで私が必要になったという訳ですね。就職口というのは本当に都合のいい事だったんですね。」


亜里沙は苦々しく言うが、


「まぁ、ぶっちゃけるとそうなるが俺の手伝い以外は普通の生活を送らせたいというのが本心だ。本来なら関わり合いの無い事だからな。」


亜里沙は黙り、それを見た雄喜は


「そうか…やっぱり……」


「はい、お受けいたします。」


「ああ、引き受け…て…?え!?」


沈黙を否定と感じたが彼女の答えは公定であり、そのせいで戸惑った。


「…いいのかい?」


「別に問題ありません。狂ってきた人生いまさらお伽噺の様な事が加わっても別に構いません。」


雄喜がその真意を確認すると、亜里沙は自傷じみた笑みを浮かべてそう答えたのであった。


「分かったよろしく頼む。」


「よろしくお願いしますね。」


「よろしくお願いします。」


雄喜が手を伸ばし握手を求め、後ろいた愛美は先ほどの亜里沙の笑みをみて内心複雑に思い、亜里沙は簡単に承諾し握手をした。
ここに第二のLost Gardian Numberが誕生したのである。


「で、覚醒をしたいんだけど…」


雄喜は歯切れの悪い言い方をする。
それを不思議に思ったのか亜里沙は尋ねたが、


「何か問題でも?」


「いや、問題と言えば問題なんだが・・・」


相変わらず歯切れが悪い彼に亜里沙は首をかしげた。


「方法三つあって、後者に成るほど時間が掛かるんだが一つ目は性交で、二つ目がキス、三つ目が普通に術式を展開しての覚醒なんだが、まぁ…お勧めするのは三つ目かな?」


「なぜ?」


歯切れの悪い理由は分かったが彼女はなぜ時間の掛かる三つ目を進めるかを問う。
それに雄喜も短すぎる問いを理解し答えを返す。


「一つ目、二つ目はどちらにしてもそう軽々しくやるもんじゃないからね。」


「分かりました。では、三つ目で。あと、それだとどれ位かかりますか?」


「了解。一時間くらいかな?」


「分かりました。ではして下さい。」


雄喜は亜里沙の返答に答えるとリビングの開けた場所に彼女を誘導しそこで呪術を唱え始める。


「呪式展開」


その掛け声で亜里沙を中心に幾つもの輪っかな様な物が浮かび上がる。その表面には様々な記号が刻まれていた。


「ユウキ・マクスウェル・ヘルメス・トリスメギストスが変革を示す。」


彼の言葉が紡がれる度に彼女の周りの輪は彼女を中心にあらゆる方向に回り始める。


「其のバー(魂)に刻まれしトトの知恵とヘルメスの契約よ、封を破り再び現したらん。其の知恵は止まりなり、其の知恵は刻みなり、其の契約は永遠の守人なり、其は此処に生まれん。」


亜里沙は少し宙に浮き周りの輪が完全に彼女の周りを縦横無尽に回る。
その後、聞くにも話すのも難解な意味が分からない単語を唱え続ける雄喜。
そして、輪の回転が凄まじくなり中央に浮かんでいるはず亜里沙が見えなくなった頃、術は終盤を迎えた。


「我は願わん。我は望まん。我は作らん。…解き放たれよ!Gardian Number Κ!!」


雄喜が強くそう叫ぶと亜里沙の周りの輪は弾け跳び目が眩むほどの光が放たれた。
その光が収まったら亜里沙が膝まづいてそこに居た。


「終わったよ。」


「分かりました。マスター。」


覚醒の呪術が終わり、その事を告げた雄喜であったが…亜里沙の言葉で時が止まった。


「ま、マスター?」


「はい、私の雇い主でもありガーディアンの主なのですからこう呼んだ方が良いと思いまして。それともご主人さまの方が良かったですか?流石にそれは引くと思いまして止めたのですが。」


「い、いや…マスターでも構わないけど、自分としては使役する側なのかもしれないけど、仲間として付き合っていきたいからそう畏まらなくていいよ。」


「はぁ、そうですか。では何故驚いたのですか?」


「いきなりそう言われるとは思っていなかったからね。」


雄喜はこの時、亜里沙の認識がちょっと変わったのかも知れない。意外と天然かも知れないと…



それから数日経った。
覚醒した次の日にはもうすでに雄喜の居るマンションに引っ越してきたのである。彼女の荷物は軽トラックに積めるくらいしかなく、ガーディアンの臍力であれば楽に運べる位の重さばかりであった為そう労力を要せずに済んだのである。掛ったモノと言えば、軽トラックのレンタル代と段ボール箱数個分の費用だけであった。
亜里沙には空いている部屋に通した。ちなみに雄喜の借りている部屋は4LDKでそれぞれの部屋は一般よりも多少広いくらいである。
引っ越した当日は何もなかったが、その後、雄喜の仕事の手伝いや悪魔との実践を重ねていった。仕事もガーディアンの使命もそつなくこなす彼女を見ては、雄喜と愛美を驚かせたものである。


「おやすみなさい。マスター、愛美さん。」


「ああ、おやすみ。」


「ええ、亜里沙さん、おやすみなさい。」


この日は特に何もなく無事に終わった。そして、規則正しく遅くとも夜11時には就寝してしまう亜里沙に挨拶をし、雄喜と愛美はリビングに残った。
いつも彼女が行ってしまったら雄喜と愛美は同じソファーに座りまったりとした時間を過ごすのだが、


「…どう思う?愛美。」


「どう、って何がですか?」


亜里沙がリビングを離れたとたん雄喜は愛美に問いただした。
彼女はその意図が分からないが、


「この数日、亜里沙と過ごしてみて。」


「ああ、そう言う事ですか。…そうですね。礼儀正しいし規則正しく良い子なんですけど、どこか一線を引いてる感じがしなくもないですね。」


「はぁ…そう簡単には心を開いてくれる事は無いか。」


愛美の答えに雄喜はため息をつき呟く。その呟きを聞き今度は彼女の方から尋ねる。


「それってどういう事ですか?」


彼女のそれに雄喜はどこか遠くを見て答えた。


「礼儀正しいのも規則正しいのも全部、自分を守るためのモノなんだよ。彼女にとっては…」


「!?」


「驚いているみたいだけど無理もないか。理由は彼女の実家?に有るんだよ。」


雄喜は驚く愛美を余所に淡々とその理由を述べていった。


「実家ですか?」


「ああ、彼女が面接に来る前に調べ上げたんだけどな。あの子の実家は孤児院なんだよ。」


「孤児院…」


「そこはあまり良い所じゃ無いみたいでな。衣食住をただ単に提供する場でしかない様だ。」


「…それで?」


「子供同士で何かあっても監督者は無関心、そしてその環境でイジメに遭っていたらしい。イジメと言っても子供…小学生レベルでただ単に彼女の髪の色が変わっているからが理由だったようだ。」


「…酷いですね。分かっているのに何もしないなんて。」


「そうだな。実際に人だった頃に多少あったからどれだけ傷つくのかは分かるつもりだ。本当に捻くれなかったのが不思議だな。…話がずれたな。まぁ、そういう経緯で彼女は回りに気を許さなくなったが…彼女は幼いながらも賢かったんだな。」


愛美は淡々と喋り遠くを見ている彼が亜里沙に何かを重ねているような気がしつつも、その語りを聞き続けた。


「人間は一人だけでは生活が出来ない。なら如何すればいいか…その答えが真面目にして色んな事が出来ればいいと思った。真面目にしていれば上の面子が気に掛けて悪いようにはしないし、出来る奴だと思わせれば尚いいって具合でね。そうすれば必要以上に人は接してこない事が分かっていたんだな。」


「…」


「亜里沙の規則正しさは自分に踏み込ませない様にする処世術だと言ってもいいだろう。それも、かなりの努力をしてな。…実際にあの年で取れそうな公的な資格をたくさん取っているんだ。」


「…なんか、悲しいですね。他の人を信じられないというのは。」


愛美はもう寝ているであろう亜里沙の生き方に悲壮を感じた。そして、何かのシンパシーを感じてもいた。他人を極限にまで頼らず、広い世界でたった一人で生き抜こうとする亜里沙と世界を悲観し自ら閉ざそうとした自分を。
でも、自分は閉ざそうとした世界を開いてくれた人がいる。愛美は隣に居る雄喜を横目で見た。


「ああ、でも…同情なんかじゃ無い。それぞれ自分の内側を少しでも重ねる事が出来る仲間になってほしいと思ってるだけだ。独りなのは楽だけど何も無いからな。」


雄喜の遠い目が亜里沙と彼自身の遠い何時かを見ているのが愛美には分った。
そして、彼の手に己の手を重ねてこう言った。


「なら、私たちにできる事をしましょう。私達が彼女の信頼に値し、裏切らない人物である事を示しましょう?」


愛美の言葉には母性が溢れ聞いた者を安心させ決心させる何かがあった。雄喜はそれを聞き、微笑してそれに答える。


「そうだな。ならいい仲間になれる事を信じよう。そして、自分達にその資格がある事を示し続けるか。」


「ええ。」


雄喜の言葉に愛美も微笑んで返す。彼はそんな彼女に寄り掛かり、


「ありがとう。」


と呟いた。
彼女はそんな彼を撫でながらこう思う。


(私がそう思えるのも貴方が私を抱き締めてくれたお蔭なんですよ。)


二人の心は寄り添って温め合っていた。そういう事が自然なように。




それから、また数日経った。


(はぁ、はぁ…くっ、私もまだまだということね。)


今、亜里沙は自分自身を取り囲むように幾多の鏡から成るドームに閉じ込められていた。
その鏡に映るのは出来の悪いピエロの姿をした悪魔である。
彼女の体には何本もの血筋が付き、左腕にはナイフが刺さりそこから血が滲み出している。
こうなった理由はこの日の朝からの出来事である。
その日も皆が揃い朝食を食べようとした時、ベランダから何かが当たるような音がした。その正体は鳩である。雄喜は席から立ち、ベランダを開けその鳩を自らの腕にとまらせた。


「さて、今回は何を拾ってきてくれたかな?」


雄喜はそう言うと鳩の目をじっと見る。しばらくすると鳩は彼の腕から飛び立ってしまった。


「マスター、悪魔が出ましたか?」


「ああ、今回は悪魔特製の麻薬工場ってとこかな。」


先ほどの鳩は雄喜が作った特製の使い魔である。それが悪魔に関連しそうな情報を持ってくるのである。何故、そうしなければならないかと言うと…本音で言うと悪魔が居る場所が分からないためである。悪魔がガーディアンだと判るようにガーディアンも悪魔が判るのだが、実際に会わないと双方分からないというのが現状である。
しかも、近代に入ってからは悪魔たちは巧妙に人間社会に溶け込み行方を晦ましているので見つけ辛くなった。
今までのガーディアンが悪魔を追いかける手法は、今までの経験からヤクザやマフィアそう言う危ない団体に加入している事が多いと分かっているので、その関係者を洗い出す。または、よく分からない噂を辿る等しかない。
しかし、雄喜は自分が術者である事を利用し使い魔を作り自動的に悪魔に通じるであろう情報を集めたのである。その使い魔はどこにでもいるような小動物の姿をし、世界中に放たれている。もし、悪魔に関して確認が取れたり怪しい情報があったのであれば先ほどの様に飛んでくるのである。
まさに彼しかできないとんでもない方法なのである。

閑話休題


「麻薬工場ですか?悪魔ってそんな物まで作れるんですか。」


愛美は雄喜の使い魔が持ってきた情報を聞き、悪魔と言うイメージにとって意外な『工場』というところに驚いた。
しかし、次に彼の言った言葉で逆に悪魔らしいと納得することになる。


「工場と言っても愛美の思っているメカメカしい工場じゃ無いよ。悪魔の中には何も無い所から麻薬を生み出す能力を持っている奴がいるからね。だから、廃ビルや倉庫なんかでそれを量産しているんだよ。」


その話を聞きながら愛美と亜里沙は改めて悪魔が人を堕落させようとしている事を思い知った。人の欲望とは果てしないものであり、それを助長する物をそう易々と作る悪魔は倒すべき物だと再確認された。


「それでいつ倒しに行くんですか?マスター。」


「そうだな。こう沢山悪魔が集まるのは今の戦力で戦るのは避けたいが、でもそこまで大きくもない。だから、持ってきた情報によると明日その工場のメンバーが出揃うらしいから、そこを襲撃するぞ。」


亜里沙の答えに雄喜は問題ない事と実行日を告げた。
そして、先ほどの場面に至るのである。


「くっ!」


亜里沙は四方八方を囲んでいる鏡の向こうからナイフが飛んでくるが、その軌道に合わせ手のひらを向ける。すると、手に刺さる直前にナイフが止まった。
これが亜里沙のGardian Number Κの能力『停止』である。その力は文字通り『止める』事が出来る。さらに『止まる』の意味でも、留まるの意の『留まる』、停止の意の『停まる』を使い分ける事が出来る。そして、最大の武器は生命活動の停止である。
しかし、強力であるからこそ制約が存在する。能力の発動条件が存在するのだ。それは触れる事。最大でも触れる面から15cm以内ではないと効果を及ぼす事が出来ないのである。


(掴む事さえできれば!でも…鏡から鏡へと移動する敵をどうやって掴めというの!?)


敵の悪魔は亜里沙の周りに存在する鏡を使いその間を高速で移動できるのである。その速度はガーディアンといえども触れることは不可能であった。
しかも、鏡の中からナイフを飛ばすなど彼女にとっては相性が悪すぎたのである。


「ちっ、雑魚悪魔の集団だと思ったら…特殊能力もちの中級悪魔が二体も居るとは!」


「早く亜里沙さんを助けなければならないのに!」


雄喜と愛美はそう言うが互いに背を向けた状態で動く事が出来なかった。何故かと言うと、彼らの周りを黒く小さい何かの集団が囲っているからである。
その正体は、蠅だ。


「「「くくく…俺は一人で全員、全員で一人だ。さぁ?どうする。」」」


周り全てから、げした声が聞こえる。そう、周りの蠅全部が一体の悪魔なのである。
しかも、全部が本体であるため一匹でも逃がせば増え続けるのである。

その日、雄喜の使い魔が持ってきた情報通り雄喜らは工場を襲撃した。
案の定集まっていた悪魔は彼らにより殲滅されたが、遅れて出てきた悪魔二体によって分断されてしまったのだ。しかも、その二体は特殊能力を備えた中級悪魔だったのである。


「…行ってください。」


「いいのか?」


愛美は背を合わせたままの雄喜に言う。


「ええ、彼女を放ってはいられません。それに貴方だけならここを抜けられるでしょう?」


「…すまん。なるべく早く戻る。」


「御心配には及びません。その前に片づけちゃいますから。」


愛美の言葉から決心を受け取った雄喜は感謝と謝罪の礼を言い真黒な蝿の大群の壁へ向かった。


「「「行かせん!」」」


「やらせません!」


その雄喜が向かった方へ蝿の大群が襲いかかると愛美は亜里沙が戦っている方面へ過重を掛け蠅全部を地面へ叩きつけた。
その出来た隙間を縫って雄喜は亜里沙の所へ向かった。


「「「よくもやりやがったな!その綺麗な顔を腐らせてぐちゃぐちゃにした後、しゃぶり尽くしてくれるわ!!」」」


「御遠慮いたします。」


無数対一人という無謀に見える戦いの始まりであった。


「痛ぅ!!」


「随分と手間取らせて貰いましたけど…ここまですね。もう、その足では避けられないでしょう?」


亜里沙の戦いは雄喜が蠅の悪魔を出し抜いてる時、佳境に来ていた。
悪魔の攻撃に耐えきれなくなり利き足に攻撃を受けてしまったのである。深々とナイフが刺さったその足ではもう攻撃は避けきれないであろう。


「そして、この攻撃は受けきれまい!!」


そう鏡の中の悪魔が言うと、亜里沙の四方八方にある鏡全てから無数のナイフが飛んできたのである。


「!!??!」


亜里沙は咄嗟に目を閉じたのと同時に己の死を悟ったが…


「ぐ!うううぅううううううううう!!」


何かに押し倒された。彼女は恐る恐る目を開けるとそこには雄喜の顔があった。


「マ、スター?」


雄喜は蠅の悪魔を出し抜き、亜里沙が全方位攻撃を受ける瞬間に間に合ったのだ。


「マスター!」


「痛ぅ…ぐぅ…大丈夫か?亜里沙…」


「…邪魔が入りましたね。それならご一緒に始末してあげましょう。」


亜里沙は目を見開いて驚き、雄喜は亜里沙の代わりに受けた攻撃の激痛に耐えながら彼女の安否を気遣う。悪魔はそんな彼らに冷酷な死刑宣告を下す。
悪魔は鏡間の高速跳躍を使い亜里沙を押し倒し庇っている雄喜をすれ違いざまに切りつけていった。
それにより雄喜は傷が増え、噴き出た血は彼の体を伝わって亜里沙を濡らした。


(死んじゃう!このままじゃマスターが死んじゃう!!)


押し倒された亜里沙は何もできず彼が傷ついて様を見ている事しかできなかった。


(お願い!止まって!留まって!停まって!!)


そう、心の中で叫んだ瞬間…全てのモノが『停まった』…


(え!?)


だが、戸惑っている間にまた動きだしてしまった。


(い、今のは?…そんな事なんてどうでもいい!もう一度、『停まって』!!)


彼女は戸惑いも疑問も後回しにもう一度、心の底から『停まる』事を願った。
すると、また全てのモノが『止まった』。


(そこ!)


亜里沙はこの止まった時を利用し、雄喜に刺さったナイフを引き抜き跳んでくる悪魔の進行方向に向かって投げた。ナイフはある程度進むと空中で止まったが…


「ぎゃあああああああ!!!」


再び動き出した時…そのナイフは悪魔へと深々と刺さった。


「ぐ、がぁ…い、何時の間に…」


悪魔は深々と刺さったナイフを憎らしげに見た。悪魔にとっては鏡から跳び出したら目の前にナイフがあったのだ、急には避けられずなんとか顔は避けたが肩に刺さってしまった。しかも、攻撃を受けてしまったので失速し地面に叩きついてしまったのである。


「く、いったん鏡の中へ戻らないと…」


「あら、どこに行くのかしら?」


悪魔は声をした方向へと顔を向けると、そこには男に押し倒されていたはずの女の姿があった。何故ココに居る?全くこちらに来る気配が無かった!?いや、あの足の傷でこんな直ぐに近くに来れる筈も無い!!


「くっ!ぎゃああ!!」


悪魔は咄嗟に後ろに飛び去ったが…なぜか背中にナイフが突き刺さった。


「ようやく分かってきたわ。私の力が…今まで相手の生命活動を停止させるとかしかしてなかったけど、こんな使い方が出来るのね。」


声の主は亜里沙であった。その手には何本もナイフを指の間に挟み持っている。ナイフは大方、この戦闘で散らばった悪魔の物であろう。


「ぐぅぅ…貴様何をした!?」


悪魔はそんな彼女を憎らしげに見るが、


「あぁ、きっとあなたが後ろに避けると思ってあらかじめその方向にナイフを空中に停止させて置いただけよ。」


亜里沙は飄々と言うだけであった。
悪魔はそんな彼女に寒気を覚え、自分のホームグラウンドである鏡の中へ逃げ込もうとしたが…


「そんな事はさせないわよ…」


いつの間にか腕を握られ無造作に引っ張られ投げられ、その先に…空中で止まったナイフがあり、その切っ先へ突き刺さる。


「ぐが、ががぁが…」


今度は腹へと刺さり、苦痛を上げる悪魔…その首根っこを掴み上げられた。


「ぐ、がぁ、あああ…お、女…何しやがった・・・・」


悪魔は抵抗しようとしたが体が動かず、持ち上げる亜里沙のなすがままであった。


「別に気づいただけよ。私は『物』も『命』もさらに『時』さえも【停止】できるって。ちなみにあなたの体の動きも止めさせてもらったわ。」


そう、これこそが亜里沙の真の能力であり、雄喜が与えたロストガーディアンだけに与えた能力である。彼女に与えられたのは能力の拡大である。彼女の『停止』という能力は物だけに反応するだけではなく、概念すらもその対象としたのだ。
すなわち、彼女は…『時』という『概念』を『止める』事が出来るのだ。


「ぐ!?が、が、がぁ・・・・」


「どう?苦しい?あなたって一応、生物系の悪魔みたいだから呼吸器官を止めさせてもらったわ…苦しみながら逝きなさい。」


亜里沙は抑圧の無い冷たい声で悪魔に言い、悪魔は…白目を剥いて口端から泡を出しとてつもない形相となって、逝った。そして、体の端から塵と成り…残ったのは首根っこを掴んだ姿勢のままの亜里沙だけであった。

亜里沙は悪魔の消えた後、周りを見渡した。鏡もそこら辺に散らばったナイフも消えていた。どうやら鏡もナイフもあの悪魔が作り出した物であり、本人が消滅したので一緒に消えたようである。
彼女は血だらけになった雄喜を何とか背負うと愛美のもとへ向かった。


亜里沙が自らの能力を理解している頃、愛美は硬直状態へと陥っていた。
蠅の悪魔は多数、彼女へ突貫していったがその前に壁にぶつかったように潰れてしまう。


「…雄喜さんが見せてくれたアニメであった重力で作るバリアを作ってみたんですけど、上手くいっているようですね。」


そのバリアの正体は愛美が引力を障壁の様にし、周りを囲っているのである。
能力に関して雄喜の方針は本人が気づき、どう使うか自分自身で考える様にしているのである。他人に言われたとおりにしか能力を使えなければ状況によっては自分自身で対処できなくなるからである。しかし、雄喜は何もしない訳ではない。能力に関する相談は何時でも引き受けているし、ヒントとなるようなモノも出している。
今回、愛美の言ったアニメとはSF系のモノで重力を使ったバリアや主砲が主兵器になっているもであった。


「「「ちぃ…面倒なモン張りやがって、だがテメーに俺全部を倒せるかな?」」」


悪魔が悪態を付き愛美を挑発するが、彼女はキョトンとしため息をついた。


「…はぁ、なんでこんな簡単な事に気づかなかったんでしょう。」


「「「はぁ?何を言ってやが…る!?」」」


愛美の言葉に悪魔は疑問の声を上げるが、言い切る前に地面へと押しつぶされた…全部。


「過重する範囲を周り一帯全部にすれば良かったんですよね。はぁ…本当になんで気付かなかったのかしら。」


愛美は全部の蠅の悪魔を潰したことを確認すると再度ため息をついた。
そうしている間に血まみれの雄喜を背負った亜里沙が向こうから歩いてきた。



その後、少しだけ意識があった雄喜は合流した時に瞬間移動し家に帰還した。
その後は気絶してしまい。愛美によって手当てを受けた。


「…マスターの容体は?」


「大丈夫よ。息も脈も安定してるわ。きっと意識が在るうちに自分で傷はともかく出血は止めたのでしょう。」


「そう。」


ソファーに座っている亜里沙はそう答えると抱え込んでいるクッションに顔を埋めた。
愛美はそんな彼女を見ていると心が痛んだ。いつも抑圧の無い口調だが、今回はいつもに増して抑圧の無くしかも弱弱しかったのだ。


「隣いい?」


「えぇ…」


愛美はそんな亜里沙の横に座るが沈黙しかなかった。


「こんなところで看護士の資格が役に立つなんて思ってもみなかったわ。」


「そぅ…」


会話が続かず沈黙が下りる。


「傷…大丈夫?」


愛美がそう尋ねると亜里沙は首を振りながら答える。


「…痛く無い。きっとマスターが背負われている時に何かしてくれたんだと思う。」


そう言ってまた沈黙が下りたと思ったら


「…愛美さん、私…マスターに何て言ったらいいかな。」


愛美は不意の質問にキョトンとする。


「どうしてそうおもったの?」


彼女は自然な疑問を聞いた。


「私のせいでマスターが傷ついた。私が失敗したせい。」


亜里沙は淡々と喋る。


「そうね。この場合は「ごめんなさい」かな?」


「?」


「でも、あの人なら言っても言わなくても許しちゃう気がするけど。」


訳が分からない亜里沙を余所に愛美は微笑する。


「なんで?」


「貴女が大事だからよ。そして、自分が動けなくなったあと何とかしてくれる事を信じていたから。」


「私もマスターを信頼している。自分が死んだ後どうにかしてくれる。」


亜里沙がそう言った後、愛美は亜里沙の鼻を弾いた。


「あう!ううう…」


鼻を押さえる亜里沙を余所に愛美が喋り出す。


「貴女の信じているのはあの人の能力でしょ?損得の信頼ではないの。」


「ううう…じゃあ、何を信じているの?」


まだ鼻を押さえて聞いてくる彼女に微笑みながら愛美は話す。


「それは「あなた」自身よ。そして、「あなた」が大事だから庇ったの。」


「…」


亜里沙は何も言えなかった。いや、言葉が見つからなかったのだ。そう言う風に言われて返す言葉が。
そんな亜里沙をいつか雄喜が自分にしてくれたように優しく、しかし強く愛美は抱きしめた。


「亜里沙ちゃんの事は少しあの人から聞いているわ。ずっと一人で誰にも頼らず生きて来たんだよね。でも、ここでは頼ってもいいの。甘えてもいいんですよ。」


「…それは、だめだと思う。」


「いいえ、甘えてもいいんです。いえ、私が甘えさせてあげたいんです。あの人だってそう思っていますよ?そう何でもかんでも背負って生きるのは辛すぎます。そんな貴女だから仲間に成りたいんです。仕事とか使命じゃなくて亜里沙ちゃんと一緒に居たいから。」


亜里沙はその言葉にクッションを落とし、抱きしめてくれる彼女にしがみ付いた。そのまま、彼女の豊満な胸に顔を埋める。
愛美は埋める亜里沙の頭を撫でてやる。暫くそうしていると、その彼女の声が聞こえた。


「……れる」


「なんですか?」


「一緒に居てくれる?」


「はい、あの人…雄喜さんも居てくれますよ。」


「ずっと?」


「ええ、ずっと…」


そうやり取りすると亜里沙は喋らなくなってしまった。しかし、母の抱擁を求める幼子の様にずっと愛美に抱きしめられていた。


その日の夜、亜里沙は布団から抜け出しある部屋に向かいかけたが…一緒の布団で寝ている愛美に掛け布団を掛け直すと、改めて部屋を出て行った。
何故、愛美と亜里沙が一緒の布団で寝ているかと言うと、あの後、亜里沙はなかなか愛美から離れずそのまま一緒に寝る羽目になってしまったのだ。
きっと、彼女は今までの反動で急に人肌が恋しくなったのかも知れない。
それはさておき、亜里沙はある部屋を目指したがその部屋には明かりが点いていた。こんな深夜に明かりがついている事を不思議に思ったが彼女は部屋に入った。


「ん、おお…亜里沙か。」


その部屋の住人である雄喜は不意の来訪者に声を掛ける。


「どうしたんだ?」


こんな深夜の来訪を不思議に思ったのか雄喜は亜里沙に尋ねる。


「マスターに今日のお礼がしたくて来ました。…お金も何も無いからこんなお礼しかできませんが。」


そう言うと彼女はパジャマのボタンをどんどん外していった。ちなみに亜里沙のパジャマはベーシックな上がポロシャツ系ので下は普通のズボンである。そして、ズボンも脱ぎ…パンツ一枚だけの姿になって布団の上に座っている雄喜にしな垂れかかってきた。
そして、シャツとトランクスだけの彼の下のほうにずり下がり、そのイチモツを取り出そうとした時…


「やめろ…」


そう雄喜が言うと亜里沙はしたいのに体が彼から離れていった。
先ほどの言葉は、ガーディアンにとって絶対命令である言霊だったのだ。


「どうしてさせてくれないんですか?」


亜里沙はいつもの口調で言っているがそれには少しの怒気が混じっている。


「前に言ったろ、そう言うのは軽々しくするもんじゃ無い。お礼とか報酬とかで抱く気にはなれねーよ。」


雄喜の完全な拒否の態度に彼女は怒った。


「そんなんじゃ無い!愛美が言ってくた!一緒に居るって!ずっと、ずっと一緒に居てくれるって!!それはマスターも一緒だって!でも…こんな私だから…どうすればいいか…何て…」


雄喜は初めての亜里沙の感情の発露に驚く。それと同時にマズッたと感じた。
どうやら、愛美が亜里沙の隠れている部分をだしてくれたらしい。なのに自分はそれを察することが出来ずに傷つけてしまった。
彼女は正座をし、顔を俯け、伸ばした手が布団を握りしめている。そして、何か水のようなモノが布団に染みを作っていた。


「亜里沙!」


雄喜の怒鳴るような呼び声に亜里沙は顔を上げるが…その瞬間、唇が奪われた。
彼は彼女の唇を奪った後は怒涛の勢いである。
舌は彼女の口内を舐め尽くしムシャぶり、頭は完全に両手で固定しているので彼女は動かす事も全くできなかった。
まさに犯し尽くす様なディープキスだった。
そのまま、口を犯され続け亜里沙の頭のネジが吹っ飛びそうになった時に雄喜はようやく止めた。


「すまないな。亜里沙の気持ち気付かなくて、今からでもいいからお礼が欲しいんだが…いいか?」


そう雄喜は亜里沙に聞くが、


「ふぁい、ますたー…」


頭のネジが吹っ飛びそうになっていたので口調が変であった。
ハッキリしない頭のまま彼女は雄喜のトランクスの社会の窓からイチモツを取り出すと、まだ柔らかいソレを口に含む。
下で転がしたり吸いついたりしてそれを大きくしていった。
口の中で膨らみ、大きく口を開けていないとしゃぶれ無いくらいに成るといったん口から外す。


「御立派です。マスター。」


「ありがとう。」


見事に大きく太く硬くなったイチモツを見て亜里沙は称賛を言った。それに雄喜は礼と頭を撫でるので返す。


「ふむぅ…」


亜里沙はいきなり喉の奥までそれを咥えた。そのまま、自らの口をオナホールの如きの様に上下に動かしイチモツに刺激を加える。激しく動かしていたと思ったらいきなり外し、次は袋からてっぺんまで裏筋を舌でなぞり始めた。その次は亀頭をだけしゃぶり、舐めまわすと同時に竿と玉を絶妙な力加減で何度も握った。
それらをランダムで行い様々な刺激を雄喜のイチモツに加える。
これに流石の彼も堪らなくなってしまった。


「ぐ、亜里沙…射精る…!」


その言葉を聞くと亜里沙はイチモツを咥え一気にストロークをし…喉の奥で彼の精を受け止めた。
彼の精は濃く熱く苦くそしてたくさん出た。何度も出てる間、飲み干さなければ口の中にすぐに溜まり噴き出していただろう。
ようやく精の流出が収まったら彼女は尿道内に残っている精子も吸い取りながらイチモツを口から外した。
そして、口の中に残っている精子を見せ、それが終わったら全て飲み干した。


「気持ち良かったですか?マスター。」


彼女は紅潮してフェラの感想を聞く。


「ああ、良かったよ。でも…いったいどこでこんな技術を?」


雄喜は素直に感想に答えるが様々なテクニックを合成したフェラに疑問を抱いた。
すると、亜里沙は目を細め遠くを見ながら話した。


「最近の少女漫画って過激なんですよ?しかもBLはR表記付けずに買えるんですから…」


「他人の趣味には口出ししないけどさ…」


「いえ、知り合いがそれに完全に染まっていたせいの巻き添えで…」


亜里沙の話に雄喜は一緒に乾いた笑いを出すしかなかった。


「まぁ、それは置いといて続きしようか?」


雄喜が話を戻すと亜里沙は再び紅潮し答える。


「はい、では寝そべってください。」


「別にこのままでもいいんだが?」


彼の言葉に亜里沙は、


「私が『お礼』するんです。楽にして下さい。」


そう言って彼を優しく押し倒した。
そして、彼の腹辺りで膝立ちに成りゆっくりとパンツを下ろしていった。そして、そのまま後ろに下がり腰を下ろせば互いの性器が結びつく位置に成った。


「…てっぺん向いてビンビンですね。とっても元気です。」


そこにあるイチモツは一回とはいえ出したのに最初以上に自己の存在をアピールしている。


「ん、脱いでるの見たら興奮した。」


彼のストレートな表現に亜里沙は耳まで真っ赤になってこう言った。


「ありがとうございます。」


そして、亜里沙は仰け反り自らの性器が彼に見えやすいように突き出し、両手でそれをクパァっと開いた。


「み、見えますか?私のおまんこ…」


亜里沙は羞恥で声が震えるがしっかりと自分のおまんこを自らのマスターに見せつける。


「うん、よく見えるよ。亜里沙の透き通るような白い肌も、髪と同じ色した薄い茂みも、見事に開かれてるピンクとその奥の純潔まで…ん、電灯でキラキラ光ってるなぁ。」


雄喜の言う通り、亜里沙の肌、恥毛、おまんこと処女膜がしっかり見え、愛液で濡れているのまでまる分かりであった。


「マスター…いきますよ?」


「ああ…」


そして、亜里沙はそそり立つイチモツに向かって腰をおろし始めた。片手でおまんこを広げ、もう片方の手でイチモツを支えて自らのおまんこに突き刺していった。
さすがに処女である彼女のまんこはきつかった。イチモツで膣内を無理やり押し広げて進ませると、抵抗を感じた。それは処女膜である。亜里沙は呼吸を整え一気に体重を掛けた!
一瞬の抵抗感の後、イチモツは彼女の奥の奥まで突き刺さる!そして、赤い純潔を捧げた証が結合部分から滲み出たのである。


「マスター、マスター…一緒に成れました。」


亜里沙は眼尻に涙を浮かばせながら何度も彼を呼んだ。


「ああ、一緒になれたな。これからずっと一緒だ…愛しい亜里沙。」


雄喜は痛みで前かがみになっている亜里沙の頬を撫でながら囁きかける。


「嬉しいです。マスター…!?」


亜里沙が囁きに反応した瞬間、突然体の芯から熱くなりのどが渇き、おまんこの感覚が急に鮮明になってイチモツの大きさから形まではっきり分かるようになり、痛みが快感で押し流された。


「マ、マスター!これは!い、ったい!??」


亜里沙は突然の快感に戸惑いを隠せないが、雄喜は優しく語りかける。


「主がガーディアンを心から愛する時にだけ使える『愛の言霊』だ。心に体に直接響くんだよ。とっても気持ちいでしょ?動いてみて?」


「はぃ…気持ちいです・・欲しいです…マスター…マスター…」


亜里沙は言霊を受け、何度も彼を呼びながら最初は緩々とだが、だんだん激しく腰を振りまわした。それはまるでロデオの様である。


「はぅん!あ!ふん!ふぁん!ましゅた〜!ましゅたー!!きもちいの!とまりゃないのー!!」


亜里沙は呂律が回らないほど快感に流され、ずっと雄喜の事を呼び続ける。


「いいよ!もっと!もっと!気持ち良くなって…イッちゃえ!!」


「だめぇー!わ、わたふぃがおれいするにょに!さきにイッふぁうーーー!!」


騎上位で激しく動いていた亜里沙だが弓のように仰け反り、膣内が激しくうねってイッてしまった。


「ひゃふ、イッっちゃった…ましゅたーがイッてないのにイッちゃった…」


気が吹っ飛び呂律が回らなくても亜里沙は雄喜が達していないのを気にしているようだ。
そんな彼女を見て雄喜は、彼女の胸を触りながら腰を下から突き上げる。


「ひゃふ!だ、だめ!イッたばかりで敏感なのに!それに…胸はもっとダメーーーー!!」


亜里沙は倒れない様にするので精いっぱいだが反論する。


「なんで胸を触るのがダメなのかな?」


雄喜は意地悪そうな顔でそのまま胸を触り続けながら聞く。


「だっふぇ!むね…ちっちゃいから!!」


亜里沙の体型は超スレンダーである。しかし、ただやせ細っているのではなく付いてるところは付いているという、完璧なプロモーションである。…一部以外。
それが胸である。少し手の大きい男性ならすっぽりと完全に覆える程度しかないのである。すなわち…ザ・貧乳!


「でも、よく手に馴染んで肌触りもいいからとっても気持ちいよ。それに亜里沙の胸だから触ってるんだし。」


雄喜の答えに亜里沙ははっきりと訊いた!


「いいの?ちっちゃくてもいいの!?」


「『亜里沙』のだから良いんだって。」


彼女はその答えを聞くと突き上げてくる腰に合わせて動き始める。


「嬉しい!マスター!嬉しい!!」


突き上げと亜里沙の腰の動きが絶妙にかみ合わさって雄喜に余裕がなくなる。


「くぁっ!い、イきそうだ!今度は一緒にイくぞ!!」


「ふぁい!マスターと一緒にイきます!!」


互いに腰をぶつけ合い…同時にイッた。


「「イッ…くぅぅうううう!!」」


「う、くぅぅううぅううう!!!」
「ふぁ、ああああああんん!!!」


亜里沙は雄喜から出る精液を限界まで貪欲に子宮が飲み込んでいった。
雄喜は亜里沙の膣内がこれでもかという風に複雑に締め付けていった。
互いに気が遠くに吹っ飛び、性交後の特有の倦怠感に見舞われる。
亜里沙は繋がったまま雄喜の上に倒れこみ、彼と同じように肩で息をしていた。


「す、凄かったです。マスターは?」


「ああ、凄く気持ちよかったぞ。ありがとう。」


互いにセックスの感想を言い、雄喜の方は最後に額にキスをした。
すると、亜里沙はそのまま緩々と腰を動かし…


「マスター…もう一回いいですか。」


上目づかいでセックスのせい以外で顔が赤くなっている亜里沙が雄喜に尋ねる。
それに雄喜は…


「ふふ、いいよ。もう、イヤ!って成る程してあげるよ。」


「ますたー…」


どうやら、二人の夜はまだこれかのようだ。



次の日
ヤリ過ぎ&処女貫通の痛みで変にしか立てなく無くなった亜里沙は昼過ぎにようやく部屋から出てきた。
そして、リビングで愛美に会うのだが…顔を合わせ辛い・・・・


「ふふ、亜里沙ちゃん。昨日はどうだった?」


「はい!とても宜しかったです…あ……」


愛美が笑顔で自然に聞いてきたのでつい返事と感想を返してしまった。


「そう、それなら良かったわ。」


しかし、穏やかに言う愛美の反応は亜里沙にとっては予想外であった。


「あの愛美…いいの?」


亜里沙は愛美がこれほどまで穏やかなのが気になり正直に聞いてみた。


「あぁ、もう既に雄喜さんと話して承諾済みなの。亜里沙ちゃんが来る前から「今後、新しいナンバーズが来たら愛美の様に成るかもしれない。…すまない」って。」


「じゃあ…本当にいいの?」


「嫉妬とか独占欲が無いと言うのは嘘になるわね。でも、私たち、『ロストガーディアン』にはあの人しかいないの。それにあの人は一度抱きしめたら手放すような人じゃ無いって短い付き合いだけど分かっているから。」


愛美の答えに亜里沙は敵わないなと思った。そして、張り合うとか馬鹿な事だったと感じた。


「ねぇ、今度マスターに二人で襲いかかるってのはどう?」


「あら、いいわね。亜里沙ちゃん。」


そう答えると彼女らは互いに笑い合った。そこには不和は存在しない、完全な仲間…いや、されに一歩先の何かで結ばれていた。


「ふぇっ…クション!!」


その頃、雄喜はトイレで盛大なクシャミをしていた。


「ズズ…風邪か?やはりスッパで寝るのはいかんな。いくら体が丈夫とはいえども。」


そのクシャミが虫の知らせだと気づかずにそのままトイレから出てしまった,雄喜であった…









     











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