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「ねぇ、新しい主はもう見つかったの?」

濃い赤のスーツ姿にウェーブヘアーの美女は、赤みがかったストレートヘアーに紺のスーツを着ている美女にそう尋ねた。

「見つかったとも言えるし、そうで無いとでも言えるわ。」

「と、言うと?」

ここは煌びやかな大きな部屋であり、先に尋ねたウェーブヘアーの美女はその部屋のガラス張りの壁の近くにある大きな机に佇み、答えたストレートヘアーの美女は書類の束を持ってそこに近づいた。

「範囲は絞られてきていると言う事、漠然とだけど主の気配を感じるようになったわ。はい、追加の書類よ。」

「ありがとう。ん、またあの部署が遅れてるわね…もう少し強くせっつかないとダメかしら?そう、それでどれ位かかりそう?」

彼女らの会話内容の一部と部屋から察するにどこかの社長と秘書のようだ。

「半年は掛からないと思うけど、コレばかりは私たち自ら動かないと無理なのよね。出来た書類こちらに渡して頂戴。」

「出来たのはコレね。そうよね…普通でも普通じゃない興信所でも無理な話よね。」

ウェーブヘアーの美女はできた書類を納めているトレーを渡そうとした時、不意に後ろを向いた。

「どうしたの?」

「視線を感じたわ…」

ストレートヘアーの美女が尋ねると彼女はそう答えた。
すると、ストレートヘアーの美女は険しい顔でガラスに近づく。

「…悪魔の気配はしない。盗撮か何かだとしても周りのビルには人影が見えないしココのガラスは鏡張りだわ。」

ストレートヘアーの美女はすぐさま己の感覚で探ってみるがなにも感じ取れなかった。

「気のせいかしら…ね。」

その結果を聞き、ウェーブヘアーの美女がそう言うと二人は自らの仕事に戻って行った。

オフィス街、その中でもとりわけ高いビルの最上階が彼女ら居場所である。
しかし、

「やっぱり露骨に見たのがいけなかったか?まぁ、夜だし離れているから大丈夫だけど。」

そう言ったのは黒い帽子、黒いコート、黒いズボン、黒の革靴と黒づくめの男だ。
彼は二人の美女が居たビルから3km近くも離れたビルの屋上にある貯水槽に座っていた。
男はズボンのポケットを探りながらこう言った。

「今宵はミレミアム、主と守護者たちは舞台袖に待機し、悪役は我が物顔でその舞台に立っている。それも予定調和…しかし、要らないエキストラたちは見事に整った舞台を壊そうとしている。」

彼は立ち上がり、ポケットから煙草を出しながら言い続ける。

「ならば、舞台に立つ俳優の邪魔をする輩を排除するのが立役者としての使命だな。」

彼は変わったジッポをだし煙草に火をつけ吸う。

「スゥ……グハヘェ!ゴホ!ゴホゴホッ!う、ううん…カッコつけとジッポの有効活用の為に煙草を吸ってみたけどやっぱり合わんな。趣味で集めた変わったジッポやライター使いたいのに。」

彼は一しきりむせた後、愚痴を言い煙草を上にほうり投げる。
そして、落ちてくる筈の煙草は赤い光を発したと思ったら消えて無くなった。

「日本はあの娘達に任せて、他は眠っている娘達に任すか。」

彼は貯水槽から飛び降り、そこから街の明かりを眺める。

「寝ている娘達を起こすのは気が引けるが…そうも言ってられねぇ。」

彼は不意に空を見上げ、

「『本当の力を出す事は出来ない』それが世界との盟約だからな…」

月が雲に隠れ、闇が訪れた次の瞬間…男の姿は消えていた。

「ああ、メンドクセェ…」

その言葉を風に混じらせながら…


どこかの山奥、そこに寺がひっそりと建っていた。
古いがよく手入れされていてひなびた感じのしないどこか温かみのある寺であった。
その寺で庭掃除をしている住職に話しかけた人がいる。

「こんにちは、住職さん。」

その人は喪服を着た女性であった。
声と雰囲気からすると年はまだ若そうだ。
その女性を言葉で表すなら母性だろう。乳房は服を押し上げるほど大きく、体は包容力を感じさせる丸みがあるがけっして太っていると感じさせない。髪型は肩下まであろう美しい黒髪を結いあげている。顔は美しいよりも優しい、そして、泣き黒子が愛嬌も醸し出していた。

「お久しぶりですね。稗田愛美さん、今日は何か御用ですか。」

住職はまるで昔話にでてくるお坊様のような長い白ひげを触りながら女性、愛美に尋ねた。

「ええ、もうすぐ花が萎れる頃だと思って新しいのを持って来たんです。」

彼女はそう言って持っている仏花を見せる。

「そうですか。きっと、旦那さんもお子さんも喜ぶでしょう。」

住職は柔和な顔でそう答えた。
それに愛美は一礼を返し、

「桶と柄杓を借りていきますね。」

そう言って、寺の奥にある墓所へと歩いて行った。
住職はそれを笑顔で見送ったが愛美が見えなくなった途端ふかい悲しみの表情が浮かんだ。

「彼女の目は深い悲しみと絶望に満ちておる…仕方ない事ではあるがこのままでは己にのみこまれてしまう。」

住職は手を合わせ祈った。

(菩薩様…どうか彼女に救いの手を差し伸べてくださいませ。)

このままでは愛美は自分の悲しみに潰されてしまうのがいままでの経験で分かっていて、自分が彼女にできる事は祈る事だけという事も知っている。
住職は己の無力さに嘆きながら彼女に救いが来る事を祈るしかなかった。

愛美はある墓石に簡単な掃除をした後、持ってきた花を活け、手を合わせる。

「もう、一ヵ月以上経つんですよ…あなたと幸が交通事故に遭ってから。」

そう、語り始めたが途中で声が震えてくる。

「幸は淋しがっていませんか?あの子も私と同じで…淋しいんぼうなんですよ、あなたと幸が居なくなって私は、わたしは……」

声が震えを通り越し嗚咽が混じってきた。
頬には涙が伝わり石畳に滴の跡ができる。

「もう、私は堪えられない…お父様もお母様もあなたも幸もいない事が!」

そう言うと彼女は涙を手で拭い立った。
しかし、その顔は何かに憑かれたように鬼気迫るものである。

「だから、今から会いに行きます。」

そういって幽鬼のような足取りで墓所の奥のほうに歩いて行った。
墓所の奥の林を抜け、しばらく歩くと開けた場所に出た。
そこは、ここいらの山を見渡せる切り立った崖であった。
彼女は転落防止の柵を越え、崖の端に近づいて行く。

「あなた、幸、もうすぐ行きますからね…」

愛美はあと1,2歩で崖の端に立つところだったが、

「そんな所で何してるんですか?」

不意に声を掛けられ足が止まった。
愛美は声のした方を振り向くと男がそこに立っていた。
男の容姿は真っ黒と言った方がいいだろう。
帽子もコートもズボンも靴さえも黒であった。
黒尽くめ、そう言う言葉が頭に浮かんでくる。

「もう一度聞きますけど、何しているんですか?」

突然の来訪者に驚く愛美。だが、邪魔されたことで少し感情的になってしまった。

「何だっていいでしょう!ほっといって下さい!!」

彼女は吠えるように返すが、

「…自殺希望者か。」

男は急に冷えた声で言い、愛美はまるで肝をつかまれたかのように感じた。

「え、えぇ…私は死にたいのよ。ほっといて。」

男のせいで苦しくなった喉から愛美は何とか声を絞り出し答えた。

「なら、その要らない命…俺にくれないか?」

「…え!?」

男の斜めを突き抜けたような台詞で愛美の思考はとんだ。
彼女は男が何を言っているのかが分からない。

「貴女の中に眠っているモノが俺には必要なんですよ。」

そう言って男は愛美に近づいて行く。
愛美は動く事が出来ずにいた。

「わ、私の中に眠っているモノ!?」

「そうです。貴方の中に眠っている『Lost Gardian』の力が…」

男は手を伸ばせば愛美に届く位まで近づいてきた。

「ロ、『ロストガーディアン』?そ、それって…キャア!」

あまりにも近くに来た男から離れようと愛美は後ずさりしたが、足もとが崩れてしまった!

「くっ!!」

男が咄嗟に腕を伸ばし愛美を掴むと、身を捻りハンマー投げみたいに遠心力と自らの力で愛美を引き上げたが、

「のわ!?ああああーーーーーーーー!!!」

愛美と入れ替わるかのように男の方が落ちていった。
愛美は男が崖下に落ちゆく様子を見ることしかできなかったが、正常な判断が戻ってくると血相を変えて崖下に行く階段を駆け降りた。
そして、男が落ちたと思われる場所を目指した。
その場所にたどり着くと、男が血溜まりの中に倒れていた。それを見つけると両手で口を押さえ、自分の心が崩れていくような錯覚を覚える。
『また』自分が殺したと…

「くっ、つぅ…」

しかし、呻き声が聞こえるとすぐさま男を仰向けにし呼びかける。

「しっかり!しっかりしてください!!」

「ん、くぅ…こ、ココは…」

男の目が開くと愛美は抱きつき泣き出した。

「『また』、また私が殺したのかと思った…」

男はまるで幼子のように泣き続ける愛美をそのまま抱きよせ優しく頭を撫でる。
そして、

「どうして、死のうと思ったんですか。」

男のその言葉を切っ掛けに愛美はポツリ、ポツリと話し始めた。
自分が好きになった人たちは皆、不幸になってしまうのだと。
両親は幼い頃火事で死に好きだった友達は何かしらの理由で離れていった。
そして、愛した主人も幼い娘も自分を残して逝ってしまったと…

「私が愛した人たちは皆、不幸になってしまうんです。事故に遭ったり、何かしらの理由で心に傷を負ったり、最悪は死んでしまうんです…」

男はそんな愛美を強く、しかし優しく抱きしめた。

「死者の望みは生者には分らないし、生者の望みは死者には分らない。」

男が急に話し出し、愛美は顔をあげ男の方を見た。

「しかし、死者は生者に対して何もする事が出来ないが生者は死者に対して出来ることが一つだけある。」

愛美は真っ赤になった目を男に向け尋ねる。

「それは何ですか?」

「それは『生きること』。生は死に向かい、死は生に向かう。この世の森羅万象は死によって生かされている。だから、死の為に生きることが残された者の義務だから。」

男は優しく諭すように言葉を連ねていく。

「でも、私は…」

そう言って愛美は視線を落とすが、

「なら、俺と一緒に調べるか?本当に不幸になるか。」

男の口調が急に変り、男くさい笑顔を向ける。

「出来るんですか?」

愛美は声を震わして尋ねる。

「貴方の中に眠っている『ガーディアン』の力を引き出せば…でも、」

「『でも』なんですか?」

今度は男が視線を落とす。

「貴女の人生が全く変わることになる。普通では無くなる…」

そんな男の配慮に愛美は力強く答える。

「貴方は言いました。『死者に対して出来る事は生きること』だって、そして…落ちそうになった時『死にたくない』と思ってしまったんです。あれだけ死にたいと思っていたのに。だから、私に生きる希望をくれるのであれば普通の人生じゃなくなっても構いません。」

男は愛美の眼を見据えた。それは死のうとする者でなく生きようとする者の目であった。

「分かった。じゃあ、一緒に行こう。」

「はい!お願いします!!」

二人はそう答え、立ち上がった。

「そう言えば、お名前を聞いていません。」

「…あ、そういやそうだ。」

愛美がふと言ったことに賛同する男。

「私の名前は稗田 愛美(Megumi Hkida)です。」

「俺の名前は陸良 雄喜(Yuuki Rokurou)。雄喜と呼んでくれ。」

そう言って初めて愛美と雄喜は自己紹介をした。

「わかりました。私も愛美で結構です。でも、私的に呼びづらいので雄喜さんと呼ばせて貰いますね。」

彼女は笑顔でそう答えた。
そんな彼女に雄喜は頬を掻きながら了承した。

「…桶と柄杓を戻したのは良いのですけど。」

「俺の血まみれの服で人前に出るわけにはいかないよなぁ。」

そうあの後、墓の後片付けをし、いざ帰ろうとした時…自分たちの恰好に気づいたのだ。
二人とも雄喜の血と泥で汚れていることに。

「愛美はここに来るのにどんな方法で来たんだ。」

「期待を裏切ってしまうんですけど、徒歩とバス等の公共機関です。」

愛美が車で来ていればこの恰好を見られなくて済むのだが、それは叶わなかった。ちなみに言いだしっぺである雄喜はもちろん車で来たわけではない。

「…仕方ない。ガーディアンの事を説明するためにも、跳ぶか。」

「跳ぶって何でs…きゃっ!」

雄喜は意味不明な発言をするといきなり愛美を抱き寄せる。

「な、何ですか!?」

もちろん、愛美は突然の事にうろたえる。

「すぐ終わる。…転移」

そう雄喜が言った瞬間、彼と彼女はこの場から消えた。

いきなりの事に愛美は少しパニックになったが少し落ち着くと別の場所にいる事に気がついた。
どこかの家の玄関みたいだ。
そこから見える間取りや玄関の狭さでアパートないしマンションだと推測できる。

「ここは俺が借りてるマンションの部屋だ。とりあえずあがろうか。」

そう雄喜が言うと抱き寄せた腕を外し奥に行った。
それまで愛美は突然の事態に呆けていたが奥に行く彼を見たら正気に戻った。

「あ、あのどうやってここに来たんですか!?」

愛美は彼の後を追いそう尋ねるが、

「全部説明する前に風呂だな。この恰好のままだと気持ち悪いし家具も汚れちまう。」

愛美は彼のその言葉で血の悪臭と肌に張り付く不快さにようやく気付いた。

「風呂はそこの角だ。着替えは適当に用意しとくからそれを着てくれ。」

雄喜は風呂のある方向を指さして言う。

「あ、あの私が先でいいんですか?」

彼女は流れについて行けず、つっかえながらそう聞くと

「レディーファースト。それに俺のせいで汚れたからな。あと、着るものがある場所知らないでしょ。」

雄喜はそう言うと奥にある部屋に行ってしまった。
彼女は置いて行かれっぱなしで訳が分からなくなっていたが、どうしようもないので風呂に行くことにしたようだ。
すると、また別の言葉が聞こえてきた。

「脱衣所に洗濯カゴがあるからそれに脱いだもんとか入れといて〜。」

愛美はその言葉に一返事をし、風呂に入った。
風呂に入ったといってもシャワーを浴びるだけだが、彼女にとって怒涛の連続であったため温かいお湯が体に当たるとようやく一息が付いた気がした。
シャワーを浴び、体についた臭いを落としていると扉越しに雄喜が話しかけてきた。

「とりあえず、着替えに成りそうなもんは洗濯機の上に置いとくから。あと、バスタオルはすぐ近くにあるから分かるっしょ。」

彼女は見えてないといえこの状況で異性に話しかけられたせいで上擦りながらそれに返事を返した。
そして、洗い終わり風呂場から出て体を拭いたが…

「き、着替えって…このワイシャツ…」

着替えのワイシャツをみたら彼女は固まった。
たしかにいちおう羽織るし、サイズも大きいので大事な部分を隠せるが…薄布一枚というのは抵抗があった。
しかし、別のがあったとしてもあまり変わらなそうなので仕方なく着る事にしたが、

(胸がスースーするのはまだ我慢できるけど…下に何も無いってのは落ち着かないです。)

彼女はしばし考え、新しく出したバスタオルを腰に巻くことで妥協した。
そして、脱衣所を出ると今度は入れ替わるように雄喜が風呂場へと向かった。
愛美は雄喜が風呂に入っている間、彼が教えてくれたリビングで待つことにする。

(えっと、雄喜さんはキッチンにある物を勝手に使っていいって仰っていましたから、何か飲みながら待ちましょうか。)

愛美はキッチンに向かい、そのカウンターにインスタントコーヒーがある事に気づきそれを入れてリビングのソファーに座った。

(…なんだか現実味が湧きませんね。まぁ、色々ありましたからねぇ。…雄喜さんが言う『ガーディアン』とは一体何でしょう。)

彼女は雄喜が来るまで今までの事などを思い出し思考がループしていった。
そうした時間がどれ位経っただろうか。それがよく分からなくなってきた時に、

「愛美?愛美さ〜ん?」

「ひゃっ!ひゃい!?」

突然話しかけられ飛び上るほど驚いたのであった。

「大丈夫か?ずいぶんボーっとしていたようだけど。」

「べ、別にもんひゃいありまふぇん!」

雄喜は心配になり話しかけたが、愛美は驚いたせいで呂律が変に成ってしまっていた。

「?まぁ、平気そうだな。」

雄喜はとりあえず意識が戻ったことを確認すると愛美の向かい側のソファーに腰をおろした。
その時に成ってようやく愛美は彼の容姿に気づく事が出来た。
雄喜の容姿は、背丈だと平均より少し大きいくらいであろう。細かく言うと170cmよりちょっと高いくらいか。体型は中肉中背より少し鍛えられている感じである。顔つきはと言うと、全体の雰囲気からすると老けているように見えるが、目ら辺を見ると幼くも見えるといったよく分からない感じであった。つまり、年齢不詳と言えるかも知れない。そして、一般的なデザインの細い金のフレームの眼鏡を掛けていた。あと、風呂から出たのでシャツと長ズボンという楽な恰好である。

「さて、これを聞き『ガーディアン』を受け入れるともう元に戻れないが…いいのか?」

雄喜は話を始める前に最後通達を出す。
しかし愛美は…

「かまいません。私の心はもうすでに決まっています。どんな事だって受け入れます。」

彼女のその言葉を聞き、彼は彼女の眼を見据える。
その目は揺るぎが無かった。

「…分かった、話そう。ただの空想話しに聞こえるかも知れないが全て事実であり、この世界の真実だ。」

雄喜の話は正に御伽噺という内容であった。
世界には『悪魔』と呼ばれる存在が本当に存在し、奴らは人に紛れて人を堕落させようとしている。
それに対抗して、古代ギリシャで人類の守護者『ガーディアン』が作られた。
『ガーディアン』は今まで転生し続け、世界の裏側で『悪魔』と終わらない戦いをしている。
しかし、そんな『ガーディアン』を作る時に頓挫し封印された『番外のガーディアン』があるという。
その『番外のガーディアン』は消滅した訳ではなく、封じられた状態で愛美の魂となっているという。

「そして、本来『ガーディアンと悪魔の対立』にイレギュラーが入り、それの排除に『番外のガーディアン』つまり『Lost Gardian Number』を覚醒させ当てる事になった訳だ。」

雄喜の話はそこで終った。
だが、愛美は全て受け入れる気でいたが話の展開が飛びすぎて信じられなかった。

「すみません、にわかに信じられないんです。全て受け入れるつもりだったのに…」

雄喜は彼女のその言葉に苦笑して返す。

「まぁ、普通はそうだろうね。でも、死ぬほどの怪我をした筈の俺がこうして生きているのもこの部屋に瞬間移動したのも事実だ。つまり、そういう超常的なことは確かに存在する。」

愛美は気づかぬ内にその超常的な事を体験した事を悟る。
すると信じられない気持が薄くなってくると同時に疑問が生まれてくる。
目の前の男の正体である。
まだ少ししか見てないが異能な力を持つ雄喜はいったい何者なのだろうか。

「あの、雄喜さんは『ガーディアン』なんですか?」

愛美は自然に疑問を口に出してしまった。

「『ガーディアン』では無い。『ガーディアン』はすべて女性だから。でも、その関係者ではある。」

「じゃあ、いったい…」

その答えに彼は困ったような顔で答えた。

「俺はユウキという名を持つ者でしかない。他の呼び名は一杯あり過ぎて分からない。でも、『ガーディアン』の関係者としてなら『クリエーター』と呼ばれていた事もある。」

雄喜の独白にも似た答えが返ってくると愛美はその答えを呟く。

「『クリエーター』?」

「そう、『クリエーター』だ。」

彼はその呟きを肯定する。
それで、愛美は呟きながら考える。

「クリエーター…英語なら日本語に直すと創作者。『ガーディアン』の『クリエーター』…て、まさか!?」

愛美はまさかの答えを想像し、驚愕した。
そして、帰ってきた答えは・・・

「そう、俺は『ガーディアン』の『創造主』だ。」

彼女の想像通りであった。
『ガーディアン』『悪魔』『番外のガーディアン』これだけでも凄まじい事であるのに目の前の彼はその創造主であるという。
愛美は眩暈を感じた。どうやっても自分の思考が追い付かないのだ。

「創造主って、そんな紀元前にいた人物が何でここに…」

もう愛美はただ疑問に思った事を垂れ流しにする事しかできなくなってきていた。

「俺はいわゆる不老不死だ。そして、時空転移もできる。まぁ、二つともそこまでに行き着く過程は長いし関係ないから話す事はしないが。」

雄喜はとんでもない事を連発で言い、一拍置いてから言葉を続けた。

「俺にとっちゃ時間も空間も世界も関係ない。重なる世界、並行する世界を永遠とさまよい続ける事が定めだからな。」

愛美はただ沈黙するしかなかった。
次々と明らかに成る事実、それに追いつけないからである。
そんな彼女を見て雄喜は、

「いきなりの事でかなりショックを受けているようだな。…もう休もうか。」

愛美に休息を与える事にしたのである。

「い、いえ、大丈夫です。」

愛美は何とかそう返すが、

「俺には大丈夫に見えないな。もう、時間が遅くなったし泊まっていくといい。そして、答えが出てから返事をすればいいから。」

そう言って雄喜は腰をあげ部屋を出ていった。
あとで聞いたら空いてる部屋に呼びの布団を敷きに行ったそうだ。
そして、二人は軽い夕食を食べ、寝に入りにいった。

愛美は用意された布団に寝転がり、先ほどの事を考えていた。

(私に力があると雄喜さんは言っていた。でも、私には大きすぎる…)

彼女はどこか遠くを見つめていた。

(それでも、私は…)

愛美は何を思ったのか上体を起こし、部屋から出ていき暗い廊下を歩き、ある部屋の前に立った。
そして、ゆっくりと音をたてないように扉を開いたのだ。
その部屋の窓の近くで寝ている人影があった。
愛美以外にはこの家に居るのは一人しかいない。そう、ここは雄喜の部屋であった。
彼女は添い寝するかのようにゆっくりと雄喜の横に倒れていく。が、

「何か用か?」

いきなり声を掛けられ倒れこんでしまった。
愛美は慌てて上体を起こすと慌てて尋ねる。

「い、何時から気づいていたんですか!?」

「愛美がこの部屋の前に立っていたところから。」

それに対し雄喜は素っ気なく返す。

「で、どうしたんだ。」

彼は腕を頭の後ろに回し、そのまま寝た態勢で今度は逆に尋ねた。

「女がこんな事をするなんて一つしかないでしょ?これ以上は私の口から言わせないでください。」

愛美は艶やかな表情と声で答えたが、雄喜は怪訝な表情で聞く。

「それがアンタの答えなのか?」

それに対し愛美は表情を引き締め答えた。

「『ガーディアン』に成るという事は貴方のモノになるのと同じであると感じました。そして、貴方に抱かれるのはケジメと決意の為です。」

雄喜はそれに対し真摯に答える。

「アンタの覚悟は分かったけど、自分を蔑ろにしてないか?俺が欲しいのはただの駒じゃない。愛美の全てなんだよ。」

「それは…」

愛美は言われた事に対して沈黙するしかなかった。
確かに自分の事はどうなっても構わないと心の隅で思っているかもしれない。今までの自分が消えてしまった方がいいと思ったかもしれない。しかし…
またもや出口の無い思考のループにはまりかけた瞬間、愛美は何かに包まれている感触を感じた。

「だから…夫や娘を愛した今までと、そしてこれから一緒になるお前を全部ひっくるめて抱く。それでいいだろ?」

雄喜は愛美を優しく抱きしめそう囁いた。
愛美はそれに対して泣いた。
夫と娘を愛したのは紛れもない事だ。それは自分は人間ではなく『ガーディアン』になっても変わらないことである。雄喜に抱かれるのは今までを捨てる覚悟でありケジメであった。
でも、変わる事への嫌悪もあった。しかし彼は、捨てなくともいい事とこれからゆっくりと変わっていけばいい事を同時に許してくれた。

「反則ですよ…私の覚悟はどうなるんですか。」

愛美は抱かれながら拗ねたような声を出す。

「覚悟は必要だけど、今までの事を蔑ろにするのは必要じゃない。思い出は良いのも悪いのも全部人に必要だから。」

雄喜はあやす様に愛美が泣きやむまで抱きしめた。
彼女は落ち着くと改めて言った。

「雄喜、私を抱いて下さい…」

「喜んで。」

そう言葉を交わすと愛美は唯一着ていたワイシャツを脱ぎ、唇を近付ける。
愛美はたしかに先ほどまでは雄喜にすがり付きたいだけだったかもしれない。でも、全てを受け入れた今は愛したいという気持ちが溢れてきている。夫が亡くなりこうして別の男に抱かれるのは不徳かもしれない。しかし、雄喜は今まで夫に捧げた愛もこれから捧げる愛も受け止めてくれるのだ。
これほど真っ直ぐに愛せる事を嬉しいとは思わなかった。

近づけた唇は一瞬触れるだけのフレンチキスだった。
でも、愛美は…

「たった、これだけなのに凄くドキドキします。もうそんなんじゃないし、もっと凄い事した事あるのに…」

薄暗くて雄喜にはあまり分からないが顔も耳も真っ赤であった。
そんな愛美に雄喜は、

「可愛いよ。愛美…」

「そ、そんな…ひゃう!」

そう囁かれた瞬間、彼女の背に何か衝撃が走った。

「こ、これって!?う、むぅ…」

愛美は自分に起こったことを理解する前に雄喜に口を塞がれた。

「ん!んん、むぅ!?」

今度はまるで口の中を貪るようなディープキスであった。
愛美の目が蕩け抵抗が無くなった時に雄喜はキスを止め、彼女と位置を入れ替え組み伏せた。

「はぁはぁ…い、一体何なの・・・?」

愛美は夢心地であったが自分に起こった事を尋ねる。

「真の言霊だ。」

雄喜はゆっくりと彼女の頬を撫でながら答える。

「…真の言霊?」

彼女は蕩けている頭でそれを聞く。

「言霊というのは本来ならばガーディアンが人に牙を剥かない様にする為の抑止力だ。だが、その抑止力を与えた人物がガーディアンを心から愛した時にその愛は直接心に響く『音』に変わる。だから、とっても気持ちいだろ?」

「はい…」

愛美は今度は熱っぽい視線で言葉を返す。
それを聞いた彼は手を彼女の頬から顎、首を通りたわわに実った大きな果実へとたどり着いた。それをゆっくりと撫でると、

「んっ!んん!!」

彼女は身悶え、男を奮い立たせる音色を響かせる。

「んん!?ああっ!」

最初は触れるか触れないかの微妙な手加減で、次は両手で二つの果実をそれぞれ触る。その感触は実に手に馴染み、重みはあるがそれすらも感触へのスパイスでしかなかった。いつまでも触り続けたい、そんな乳房である。
それを回る様に触る。外側から内側へと、内側に辿り着いたら外側へと、無論、頂に辿り着いたらそこにあるピンクの実も忘れてはいない…そのうち愛美が切なそうな顔をしたら片手は外し、その外したほうむしゃぶりついた。
吸ったり舐めたり、赤ん坊が吸うのと違い男が女を感じさせるいやらしいしゃぶり方である。
そうしているうちに、

「あぁ!あああん!!」

愛美は仰け反り、声を上げた。
どうやらイってしまったらしい。
雄喜はそれに満足したのか、胸への集中的な愛撫でを止め、下へと上へと愛美の体中を撫で回した。
下に行くと臍、腰、太もも、と上へと上がると尻部、背、胸と触るが肝心な部分は触れられることは無かった。

「イ、イジワルしないでください…」

愛美はイったばかりの後の愛撫でに身悶えるしかなかったが感じな部分への刺激が無い為に昇り詰められなかった。

「イジワルってなにが?」

雄喜はしれっとして答える。
愛美は理解した。この人は私から懇願することを望んでいると。
愛美は快楽で回らない頭を奮い立たせ叫ぶ。

「私のお●んこをグチャグチャに触ってください!」

彼女は快楽に酔っている為に普段なら言わない卑猥な言葉を躊躇なく吐き出した。
雄喜はそれに満足し、彼女の秘所に指を二本入れ込んだ。
そして、

グチュウ!グチャ!ヌチュウ!グチャクチャ!!
「はあん!ああ!い、いや!そこ!もっとぉ!!」

愛美の秘所からは雄喜の指が出し入れされる度に卑猥な音を鳴り響かせ、彼女は大事な所をかき回され艶声を上げ続けた。
暫くすると、

「んん!あ、ああ!また…イクぅうううう!!」

二度目の絶頂を感じた。
愛美は二度の絶頂にぐったりする。

「愛美…」

雄喜はそんな彼女の手を取り、己の男の象徴へと触れさせる。

「あ、熱い…それに、硬くて大きい…」

愛美はそれの感触に少し頭がはっきりする。

「挿入れてもいいかな?」

「はい・・・奥まで、しっかり挿入れてください。」

雄喜は一応聞き、愛美はそれに答える。
雄喜はそれに従い、腰をあてがい…一気に挿入れた!

「はぅん!」

それだけで愛美は軽くイってしまった様だ。
雄喜は彼女を優しく抱きしめ、ゆっくりと動き始めたが…

「あの…激しくしても大丈夫です。」

その言葉に雄喜はいったん腰を止める位に驚く。

「いいの?」

「はい…」

その短い返答で、彼は…愛美の腰に手を廻し激しく打ち付け始めた。
愛美の膣内は雄喜のモノをしっかりと咥えこみ、中の襞がモノを蹂躙するかのように蠢く!

「はう!あぅん!もっと!もっと!もっとおおおおお!」

「愛美!メグミ!めぐみぃいいいいいい!!」

雄喜は激しく腰を打ちつけ彼女の唇を奪う。
愛美は彼の腰に足を廻し、逆に彼の口を貪った。
二人は互いに獣のように貪りあっていた。
だが、そんな時も長くは続かない。

「くぅ!でる!中に!愛美の膣内に射精る!!」

「出して!私の膣内に射精して!!」

そして、彼の男が彼女の女の奥の行き止まりに当たった時、

「ぬ、ぐわああああああああああ!」

「あ、ああんんんんんんんんんん!」

男の獣声と女の叫びが同時に発せられた時、二人は同時に果てた…。
両者声をあげ、倒れるまで…彼は出し続け、彼女は受け止めていた。
その後、両者ともグッタリとし、雄喜は再度、両者の位置を入れ替えると彼女に話しかける。

「はぁ、はぁ…良かったか?」

雄喜がそう話しかけると、

「うぅ…あ、あんなに乱れて恥ずかしいです…」

愛美は下になった彼の胸に顔を伏せ、盛大に恥ずかしがっていた。

「あ、あんなに乱れたこと今まで無かったのに〜」

彼女はそのまま恨みまがそうに声を上げる。

「まぁ、言霊で感度が上がっていたから気にする事ないんじゃないかな?」

雄喜はフォローするが…

「それでも、それでも〜〜〜…」

顔を合わせようとせず、恥ずかしがるばかりであった。そんな彼女が可愛くて頭を撫でている雄喜だったが、

「…雄喜さん。まだ、硬くて…元気です。」

愛美がそう言うと固まった。
実際に入ったままの彼のブツは大量に出したにも関わらず、入れる前以上に己を主張していた。

「ご、ゴメン…」

雄喜は何故か謝るしかなかった。

「ゆ、ゆっくりでいいならヤっていいです…」

相変わらず顔を伏せた愛美はそう言うと雄喜は体を揺する様に動かす。

「んん…あ、んぅ…」

愛美は感じ、ゆっくりと求められるのに幸福を感じていた。
その一度の後、また獣声と艶声が上がるのであった。
ちなみにその饗宴は朝日が完全に昇りきるまで続いたという。


愛美はガーディアンとなった後にまた墓に行ったという。
その時の様子を住職はこう語る。
「すっかり憑き物が落ちたように晴々としていました。心からの笑顔を見せてくれて本当にホッとしています。一緒に来ていた男性が彼女を立ち直させてくれたのでしょう。彼女を助けてくれて本当にありがとうございます。」
その後、住職は管理をある女性に任せ隠居することになる。
しかし、彼は幼き日の心の師を思い出し少しでも人の心を救おうと励み、聖人と呼ばれるようになった。







     









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