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 それから数日、唯は常にぼんやりしていて、時たま憂鬱そうな様子だった。ガーディアン達も恋人の様子がおかしいことに気が気では無かったが、かと言って相談に乗ることも出来なかった。それほどまでに唯の孤独そうな姿が際立っていたのだ。そんな唯の不調も、親戚から一本の電話を受けたことで、ピークに達した。両親の命日である日の法事に対しての最終的な出欠が決まり、唯は親戚が待つ田舎へと行くことに決まったのだ。

「もし予定が空いていたら、一緒に来て欲しい」

 それまではなるべく感情を押し殺したように過ごしていた唯だが、電話を受け取って数時間後にリビングでガーディアン達に告げた。てっきり唯が一人で田舎に行くと言い出すと思っていた女性陣は、はっきりと共に来て欲しいと言われて驚いた。

「あの……いいのですか?」
「いいのかとかじゃなくて、出来るなら是非僕と来て欲しい」

 静香のおずおずとした質問に、唯はきっぱりと告げる。

「大勢で押しかけて、迷惑にならない?」
「親戚には僕といとこの正兄さんが説得するから。僕の我がままだけど、宿の手配とかも出来れば芽衣さんとかにやって貰って欲しい」

 百合の懸念にも、唯は珍しく自分を押し通す様子を見せる。唯が頭を下げると、彼の配下であるガーディアンにとっては是非も無い。元から旅慣れているガーディアン達なので、荷物の整理は得意だ。すぐさま準備は整った。宿の手配なども芽衣にとっては手馴れたものだ。
 法事というあまり明るいイベントではないが、二日後にガーディアンは全員で唯との初めての旅行へと旅立った。唯の父が育った田舎は北に車で四時間程の距離にある。そこに唯の両親は埋葬されている。二台のワンボックスカーに分乗し、ガーディアン達と唯は乗り込んだのだが、

「何だか気まずくない?」

 都内で首都高速道路に乗った辺りで、運転席の円がミシェルに話しかける。

「そりゃ、恋人とかご主人様のご両親のお墓参りだから、明るくってわけにはいかないでしょ。それに私達以上に前の車は気まずいと思うわよ」

 暇なのか、GPSをちょこちょこ弄っていたミシェルは、顔を上げて前の車を見やる。唯が分乗している方の車は、確かに重苦しい雰囲気に包まれていた。普段は明るいはずの唯が、小雨が降る窓の外をじっと眺めて一言も発さないのだ。明らかに憂鬱そうな唯に対して、車内の人間は声を出すことも出来ない。ただ救いだったのは、混み合った首都高速で車がスピードダウンしたことで、眠くなったのか唯の目が閉じたことだった。唯が窓に寄りかかって寝始めたことで、ガーディアン達もほっと一息つくことが出来た。





 一年前の夏。唯は両親と一緒に帰郷する予定だった。父の両親は既に亡くなっていたが、唯の叔父にあたる人物は健在だったため、毎年帰郷するのが恒例となっていたのだ。だが小学生のときならともかく、成長した唯にとっては貴重な夏休みを何も無い田舎で過ごすのは若干嫌になっていた。友人達とPCでオンラインのゲームをプレイしたり、実際に一緒に街へ遊びに行くのが楽しくて仕方なかったのだ。
 そういうことで、両親が田舎に行くことが決まった後、唯は一人で留守番したいと申し出た。夏休みを両親の監視から逃れて、一人で過ごすという楽しい初体験をする絶好の機会だったのだ。
 最後に何と言葉を交わしたかは、漠然としており、唯は思い出せないでいる。ただ小雨が降る天気の中、マンションの前で両親を唯は送り出した。それが今生の別れとなってしまった。
 未だに唯は後悔する。両親と一緒に行っていれば、両親が死ぬこともなかったかもしれないと。だが聞いた話だと両親が車の事故に遭ったのは、彼らに過失があったわけでなく、対向車線ではみ出したトラックが原因だった。そうなると唯が居ても居なくても、事故に遭った可能性は高い。
 それでも唯は両親と行けば良かったと強く思っていた。そうすれば、両親と一緒に……。

「ん……」

 唯は車内で目を覚ます。彼が半覚醒の状態で、周囲を見回すとガーディアン達は車内で静かに座っており、時たま小声で話している。外を見れば車は相変わらず高速道路の上にあった。しとしとと小さな雨が降り続いており、唯はぼんやりと外を眺めた。





 二台の車は午前中に目的地である山間にある村へと辿り着いた。まずは宿泊地である旅館へと向かう。部屋に案内された一行は、そこで全員が旅装を解いて、法事の服へと着替えることとなった。芽衣や由佳、円などはいつも通りのスーツ姿だが、珍しいことに楓やミシェル、雛菊なども黒いスーツなどに着替えた。百合は黒い着物、静香や麗は黒いドレスなど、きちんとTPOにあった服装となる。早苗や唯はブレザーと学ランを登校時と同じように着るだけだった。

「あなた達に出かける前に言っておくわよ」

 手早く準備を終えた一同に、旅館のロビーで芽衣が珍しく宣告を行う。

「今回は唯様の伯父にあたる麻生さんや稲田さんがいらっしゃるわ。唯様の親戚だから、何か問題を起こせば一緒に暮らし続けるのが難しくなるかもしれない。くれぐれも気をつけるように」
「はーい」
「わかったわよ」

 芽衣の言葉に、京や麗、ミシェル、楓などのガーディアンの中でもトラブルメーカーに近い者達が渋々同意する。さすがに唯の親戚相手では、大人しくするようであった。

「あと、法事の間だけで構わないから、唯様とイチャイチャするのも無しね。短くて済むと思うから」
「イチャイチャとかは無理でしょう」

 京が軽く顎で唯を指し示す。先にロビーの外に出た唯は、ぼんやりと外の霧雨に打たれている。彼の様子はますます憂鬱そうだ。ガーディアン達は唯の酷く落ち込んだ様子につられたように、彼女達も静かになってしまった。由佳とエリザヴェータが慌てて旅館の玄関から、外へと出る。

「唯君、風邪引いちゃうわよ」
「幾ら夏だといっても、雨に濡れるのは良くない」

 由佳がハンカチで唯の髪を軽く拭き、エリザヴェータが傘を差し出す。

「うん、ごめん」

 二人の好意に唯は素直に頷くが、心ここにあらずという様子だ。大分参っている様子に、後から来たガーディアン達も、何と声をかければ良いかわからない。

「それでは、車を出しますね」

 ミシェルがかろうじてそれだけ告げると、唯は駐車場へと連れていかれる。ガーディアンは一周忌が行われる寺へと車で向かった。
 車で走ること二十分弱で、二台の車は目的地へと辿り着いた。法事の会場である寺は、田舎らしくなかなか敷地が広く、墓地も間隔を置いて整備されているらしかった。車から降りた唯をまず出迎えたのは、三人の親子だった。

「唯、久しぶり」
「どうも、正兄さん」

 唯の従兄弟である稲田正が声をかけてくると、少年も若干ほっと息をついて若干リラックスする。

「やあ、唯君。元気そうで何よりだ」
「唯君、少し大きくなったわね」
「ご無沙汰しています」

 正の両親が唯ににっこりと微笑む。正の両親であり、唯の伯父である稲田裕樹は痩せていて若干ひょろりとした印象で、対照的に伯母の稲田正子は肉付きが良くふっくらとしていた。だが両方とも温和そうであった。

「金城さん、いつも甥がお世話になっています」
「いえいえ、とんでもありませんわ。この度はこんなに大勢で押しかけてすみません」

 裕樹が手を差し出すと、芽衣は社長らしいそつがない態度で手を握り返す。

「唯君の同居人ということで、家族のようだと聞いております。こんなに大勢で来て頂いて、妹夫婦も喜んでいると思います」
「それなら良かったですわ」

 稲田夫婦の言葉には嘘は無いようだったが、ミシェルとエリザヴェータという二人の外国人がグループに居るのを見ると、多少は驚いているようであった。確かに一見他人同士にしか見えないガーディアン達が、同居しているという事実は驚くべきものだろう。

「先に来てたのか、唯」
「お久しぶりです、伯父さん」

 寺の敷地内に入ってきた壮年の男が、唯へと声をかける。もう一人の伯父にあたる、麻生健太だった。唯の家系を説明すると稲田裕樹は母の兄で、麻生健太は父の兄にあたる。彼は長年農作業に従事しているためか、がっしりとした身体をしており、人懐っこそうな笑みを浮かべている。

「金城さん、わざわざ遠くから済まないね」
「いえ、お気遣い無く。この席に参加させて頂けて、私も嬉しく思っております」
「さあさあ皆さん、こんなところでは何ですから、まずは建物の中へ」

 健太の案内で、一同は玄関から寺の本堂へと案内される。健太と顔見知りの住職が待っており、法事はすぐに始まった。久々に親戚と顔を合わせた唯は、最初こそリラックスした様子だったが、読経が始まると途端に再び暗い顔つきになってしまう。お経が嫌でも死を連想させるものだから、かもしれない。そんな唯の様子を、ガーディアン達はハラハラしながらも、静かに見守るしかなかった。
 読経が終わり、卒塔婆を持って墓前に一同は向かう。僧侶の墓前での読経が再び始まり、全員が黙ってそれを見守る。

「唯、お前からお参りしろ」
「最後にゆっくりでいいかな」

 健太に促された唯が、首を横に振った。親戚達はそんな唯の様子に驚いたが、特に反対することは無かったので、自分達が先に墓参りを済ませる。唯の親族が去った後に、続いてガーディアン達も続く。人間とは感覚が違うガーディアンの女性達だが、死後の世界というものがあるのを明確に知っているので、極めて礼儀正しく墓前に向かった。二千年の生涯で初めて恋人となった男性の両親が眠る墓前ならば、尚更重要なことだからだ。ミシェルやエリザヴェータも何度か日本人に転生しているので、礼儀作法については全く問題無かった。十二人全員が時間をかけてお参りを済ませると、唯一人を残してあげようと、全員で去ろうとする。

「みんな、待って」
「えっ?」
「唯様?」

 唯が呼び止めると、由佳やミシェルなどと共に、全員の足が止まる。

「ここに残って、僕が父さんと母さんに報告するのを待って欲しい」
「いいですが……」

 エリザヴェータをはじめ、一同は唯のお願いに困惑する。そんな全員の前で唯は墓前でしゃがむと軽く手を合わせた後に、ゆっくりと語り始めた。

「父さん、母さん、一年ぶりだね。今までずっと怖くて、あまり来れなくて、ごめん」

 唯が話すのを、ガーディアン達はじっと見つめる。少年は言葉を一旦区切ると、なかなか次の言葉が続かないようだった。だが何とか声を振り絞るように続ける。

「あの日、僕の我侭で二人だけ行かせてごめんなさい。あんな勝手なことで、二人だけが事故にあって……死んじゃうってときに、僕が傍に居なくてごめん。僕は最後にどんなことを話したのかさえ思い出せない。あのとき、僕が傍に居たら……」

 唯の顔が苦しそうに歪み、目から涙が零れ落ちる。

「僕もあの時、一緒に死んでいたら、どんなに良かったかもしれない」

 苦しそうに心情を吐露した唯に、女性達は息を呑む。まさか唯が死にたいと思っていたとは、夢にも思わなかったからだ。

「でも、ごめん。やることが出来ちゃったから……大事なことが出来ちゃったから、僕は死ねなくなっちゃった。凄いんだよ、正義の味方を助ける役っていう……ガーディアンっていう悪魔と戦う人たちを助ける役なんていうのが、僕に回ってきたんだ」

 涙を流しながらも、唯は必死に笑みを浮かべて、両親に語りかける。唯は手招きすると、ガーディアン全員を墓前へと再び連れ戻す。

「父さんと母さんに許して貰えるかわからないけど、皆と付き合わせて貰ってる。常識的には許されないと思うけど、新しい家族になって貰ったんだ。だから、許して欲しい。芽衣さん、由佳さん、雛菊さん、京さん、ミシェルさん、楓さん、円さん、早苗さん、静香さん、麗、百合さん、エリザヴェータさん。みんな大好きで、愛してるんだ」

 唯は搾り出すように必死に墓前へと告げると、がっくりと片膝をついた。唯は自分の胸につかえてたものを吐き出して、両目から溢れる涙を止められなかった。ガーディアンの全員も唯同様に涙が出てしまっていた。京や麗、早苗、雛菊、円などは盛大に泣いており、エリザヴェータや楓、百合なども頬を流れる水滴をそっと拭っている。唯は泣きながらも、必死に笑顔を取り繕おうとした。

「僕は幸せに毎日過ごしてるよ。危ないこともあるけど大丈夫、きっと皆が助けてくれる。だから天国で僕を見守っていて欲しい。どうか許して欲しいんだ」

 唯はギュッと目を瞑ると、その場でしばらく動かずに居た。恋人達はその姿をじっと見守る。

「また近いうちに来るよ」

 やがて目を開けた唯は、涙を拭うと立ち上がり、そのまま歩み去った。唯に声をかけることもできず、ガーディアン達も彼の後ろに続く。だが何かに気づいたようにガーディアン達は後ろを振り返った。墓石の傍に佇む、二つの白く薄い影。感覚が鋭い超能力者であるガーディアン達には、にこやかに微笑む二人の中年男女が見えた。影が見えたのはものの数秒だったが、その姿は彼女達の印象にはっきりと焼きついた。





 その晩は唯達が泊まる旅館で、宴会となった。唯の親戚などを接待する予定だったので、元から軽く宴席を設けていたのだ。だが墓前から退出した後の唯が、つい先ほどまでの様子が嘘だったかのように、晴々とした表情に変わったのでガーディアン達も浮かれてしまった。今まで沈んでいた恋人が元気になれば、誰だって機嫌が良くなるものだ。陽気になった美女達のおかげで、宴席は大いに華やかになった。

「唯はいい女性に拾って貰ったもんだな」
「そうですね」

 ビールを飲んでいる伯父の健太に、唯は微笑みかける。明るく和気藹々と食事しているガーディアン達の姿に、健太もほっとしたようだった。特に甲斐甲斐しい世話を焼いている芽衣の姿に、健太は感銘を受けたようだ。

「あんなに女の人ばかりで、生活は大変かと思ったが、随分と優しくして貰っているようだな」
「みんな、良くしてくれます。父さんと母さんは亡くなりましたけど、新しい家族が出来て嬉しいです」
「そうかそうか、それは何よりだな」

 遠くに住む親戚のため、唯にあまり構ってやれていない健太だったが、唯が上手くやっているようなので安心した。電話で様子を聞くのと、やはり実際見るのではやはり違うものだ。思った以上に唯は新しい家族と良い生活を営んでいるようだ。

「ウィンストン先生、竜宮先生、うちの子の成績はどうでしょうか?」
「母さん、止めてくれ!」

 ミシェルと雛菊の二人が遊学館高校の教師と知ると、正子が正のことを積極的に聞き出そうとする。慌てた正が、母親のことを止めようとするが、遅かった。

「体育の成績は普通ですね。もう少し課外で運動してくれれば、向上も見込めますが」
「英語はもうちょっと頑張ってくれないと、難しいですね。次の学期は内容も難しくなるので」
「正、あなたももう少し頑張らないと」
「うう、何で夏休みなのに、成績のことで色々と言われなくちゃいけないんだよ」

 母親の小言に、正は頭を抱えて苦悩する。そんなちょっと情けないいとこの姿に、思わず唯も笑みがこぼれてしまう。

「しかし有名なプロ野球選手に、優良企業の社長と社長秘書、それにマスコミ関係者とは凄いですね」
「いえいえ、そんな大したことはありませんわ」

 裕樹の褒め言葉にも、由佳はそつなく対応をしてみせる。楓が愛想が無い分、由佳や芽衣、円などが笑顔で唯の親族と言葉を交わす。主人の大事な親類なので、ガーディアン達も笑顔で話すことに対して特にストレスになどならないようだ。芽衣も会社社長とは思えないくらい腰が低い。

「ささ、一献どうぞ」
「これはすみません」

 百合が健太にビールの酌をする。妖艶な美女に酌をしてもらい、思わず壮年の健太も相好を崩す。

「ボウヤはビールは無理だから、ジュースね」
「百合さん、ありがとう」

 笑顔で礼を言う唯に、ジュースを注いでいる百合も笑みを返す。そんな光景を見て、他のガーディアン達が黙っているわけがない。

「唯、ジュース注いであげるわ」
「私がお酌するんだから、ありがたく思いなさいよ」
「何で二人ともそんなに偉そうなんだ? あ、唯君、ボクからも一杯」

 京、麗、早苗を筆頭に、食事をしていた面々がゾロゾロと唯の下へとやって来る。この光景には唯の親戚達も驚くばかりだ。

「嬉しいけど、お腹がたぷたぷになっちゃうよ」

 唯は一人一人から飲み物を何度も注いで貰いながら、苦笑するしかなかった。



















   































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