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 繁華街の外れ。薄暗い路地に男が一人と、女が三人居た。男は四十にさしかかろうという中年で、スーツを着ていることからサラリーマンと思える。女達は全員ブレザーの制服で、高校生のようであった。深夜なので通行人は全く見えない。

「なあなあ、いいだろう。お金払うからさー」
「えー、どうしようかな?」

 男が甘えるような声を出し、女達は互いに顔を見合う。男は先程からしつこく売春の交渉しているのだが、女達は嫌がる様子でもない。むしろ女達は楽しんでいるようでもあった。

「ほら、一人二万円出すからさ」
「うーん、それならいいかも」
「でも、いいのおじさん? 私達未成年だから、エッチしたらおじさんも捕まっちゃうよ」
「いいのいいの、バレなきゃ捕まらないからさ」

 男の言葉に、三人の女はにっと笑う。

「いいよ。それじゃ、ホテル行こうよ」
「よしよし。そうこなくちゃな」

 男の両腕に二人が抱きつき、繁華街へ歩き出す。その後ろから、最後の一人もついてくる。

「待てぃ!」

 突如として朗々とした声が裏路地に響き、四人が足を止める。全員が見上げると、街灯の上に立って自分達を見下ろしている者が居た。

「金銭を見せびらかせ、幼き者に春を売らせる行為は法に反する……」

 美術家に彫られたような美しい顔立ちの美人が、鋭い眼差しで四人を見下ろす。光りを反射している銀髪が何よりも美しい。

「だが、少女の姿で誘惑し、人を堕落させるのも罪! その悪魔の所業、見逃せぬ!」
「あ、あんた誰だ!?」

 怪しい美女に援助交際の場面を見られた男が、狼狽しつつも街灯の上に向かって叫ぶ。

「貴様らに名乗る名は無い!」

 腕組みをしているエリザヴェータの黒いマスクが引き上がり、口元を覆った。それと同時に女達の背が大きく盛り上がり、衣服を突き破って巨大な蝙蝠の翼が伸びる。そして爪が鋭く大きく伸び、髪の色が赤や緑へと変化していく。

「ひいいいぃっ!」

 自分が抱こうとしていた女達の変貌に恐れおののき、男は地面に尻餅をつく。そんな中年相手に見向きもせず、女達はエリザヴェータを睨みつける。

「おのれ、ガーディアン。どうやって我らのことを嗅ぎ付けた……」
「貴様らサキュバスの悪行、天は全てお見通しだ」

 掠れた声で叫ぶサキュバス達に対し、片指で天を指し、エリザヴェータは大きく見得を切る。

「あのね、エリザヴェータ。何でもかんでも自分が見つけましたみたいに言うの、止めてくれないかな」

 路地の曲がり角から、早苗が苦言を呈しながら現れる。その顔はかなり不満そうだ。

「エンコーを広めている高校生が居るっていうから、調査したのはボクなんだけど」
「確か、そうだったな」
「おい、二人とも。お喋りが過ぎるぞ」

 早苗が来た方角から今度は雛菊が現れ、どこか緊張感の無い二人を戒める。日本刀を鞘ごと左手に持った彼女の表情は、真剣そのものだ。

「相手は中級悪魔だ。一体も逃がすんじゃないぞ」
「何を!? 返り討ちにしてくれるわ!」

 逃走してかかると見た雛菊の言葉に逆上し、三体のサキュバスが跳躍する。三体がバラバラに雛菊、早苗、エリザヴェータへと一気に間合いを詰めた。
 最初に動いたのは雛菊だった。低空飛行で向かってくる一体に向かって一気に駆ける。

「死ねっ!」
「月並みな台詞を」

 振り下ろされた左右の手から伸びた爪を、雛菊は鞘で弾き返す。ガリッという音と共に鞘に大きく傷がつくが、雛菊は意に介さずに、そのまま悪魔の横を素早く駆け抜けた。そしてサキュバスとすれ違った瞬間に、雛菊の身体が右回りへ独楽のように回転する。

「鋭っ!」

 雛菊の手が常人には見えない素早さで動き、鯉口から刃が抜かれる。居合いで抜き討った刀身が走り、相手の細身な体を捉えて腰を両断した。横一文字に真っ二つとなったサキュバスの身が、バランスを崩して地面へと投げ出される。

「小娘が!」

 早苗へと向かった一体は、右手を前にかざし、爪を槍のように伸ばして突撃する。左手は水平に横へと構え、早苗が避けた瞬間に横薙ぎに払うつもりだ。

「小娘かあ。君以上には長く生きていると思うけどね」

 クスクス笑う早苗は、サキュバスの攻撃をよけようとする素振りも見せない。随分と余裕を見せる早苗だが、彼女の目は笑っていなかった。

「なにぃ!?」

 サキュバスの爪が早苗の心臓に突き立ったと思った刹那、爪が音を立てて砕け散った。早苗の全身が透明な鉱石、ダイヤモンドに覆われている。いや、覆われているというより皮膚がダイヤモンドへと変化したと言うべきか。
 腰に構えた早苗の右拳から、ダイヤモンドのスパイクが何本か突き出る。勢いがついているために、突進が止まらないサキュバスの顔へと、繰り出された早苗の拳がカウンターでのめり込んだ。美しかった顔が見るも無残な様相を呈しながら、サキュバスは頭から塵に変わっていく。
 最後に残ったサキュバスは跳躍して、街灯の上に立つエリザヴェータへと飛ぶ。大きく腕を横に広げ、ギラリと鋭い爪をサキュバスは構えた。

「アクセラレーション」

 横薙ぎに払った、サキュバスによる左右から放たれた爪の二連撃が空を切る。驚愕に歪んだサキュバスの顔を、地面に降り立ち、相手の攻撃を避けたエリザヴェータが見上げる。超高速移動で違う時間軸に身を置いた彼女は、アスファルトを蹴って飛び上がった。

「破っ!」

 高速でサキュバスに片足で飛び蹴りを食らわせると、そのままの勢いでエリザヴェータはビルの壁面に飛んでいく。一回転して両足を壁面につくと、そのままビルの壁を蹴って再びサキュバスに右の飛翔蹴りを見舞う。そして、地面に着地するとエリザヴェータは再びサキュバスへと飛び立ち、この上下からの連続攻撃を繰り返す。
 高速の蹴りを食らい続けるサキュバスは地に落ちることも出来ない。体に打撃を食らい続けるサキュバスを傍から見る者が居たら、空中で奇妙な踊りを踊っているように見えただろう。

「ディアクティベイト」

 常人には不可視に近い速さだったエリザヴェータの身体が、アスファルトの上で軽く滑って止まる。アクセラレーションが終わると同時に、サキュバスの体は灰になって地面へと降り注いだ。相手を倒したエリザヴェータは指を二本立てて、頭上から胸にゆっくりと下ろす。特撮から影響を受けた、決めのポーズだろう。
 三体の体躯が灰に変わり、奈落へと追い返したのを確認して、早苗が手をパンパンと払う。

「ほい、一丁あがり。一人ならともかく、中級悪魔相手に三人がかりなら、ざっとこんなもんでしょう」

 ダイヤモンドの皮膚を元に戻した早苗に、エリザヴェータも同意する。

「ああ、そうだな。チームワークの勝利というところだろう」

 サキュバス達三人を倒すのに、三分もかかっていない。その間に女子高生と売春をしようとしていた男は逃げ去っている。仕事は終わったとばかりに、右手から刀を体内に納めた雛菊だが、ふと何かに気付いたようにビルの一角に目をやった。雛菊達を撮影していると思しき、黒いジャンパーの男が非常階段に見える。雛菊は短い助走をつけて五メートル近く飛び上がると、路地裏を挟むビルの壁面を交互に蹴って男へと急接近した。

「ひっ!」

 非常階段の手すりへと着地した雛菊に、男はよろよろと後退する。

「内閣特殊事案対策室の手の者だな……よせ、無駄な抵抗はやめろ」

 慌ててジャンパーの中に手を突っ込む男に、雛菊は静かに警告した。だが男の動きは止まらず、脅しが無駄だったと見た雛菊は両の手の平にナイフを出現させた。短銃を男が取り出した途端、雛菊の身体が疾風の如く相手に飛んだ。

「破ッ!」

 男の脇を雛菊が駆け抜け、階段を超えて下の踊り場へと着地する。男の手にある短銃が両断され、ジャンパーがエックス字に切り裂かれ、ズボンのベルトが切り割られ、頭頂の髪がばっさりと地面に落ちる。相手とすれ違う僅かな間に、雛菊は五連切りを放ってのけた。剣技で達人の域に達している雛菊にとって、小回りが効くナイフなら容易な技だ。

「うわああああっ!」

 丸く禿げ上がり、裸にされた男は驚愕の叫びを上げて座り込む。雛菊はナイフを自分の身に吸収して階段をゆっくりと上がると、地面に落ちたズボンをまさぐる。ポケットに入っている財布を取り出し、雛菊は中身を確認した。

「もう一度聞く、内閣特殊事案対策室の者だな?」

 雛菊は声を荒げず、あくまでも冷静に聞く。それが却って不安感を煽るのか、男は無言でコクコクと頷く。財布の中から免許書や身分証明になりそうなものを漁り、雛菊は相手の氏名や住所を確認する。

「言え、おまえ達の目的は何だ?」
「そ、それは勘弁してくれ。俺は命令されただけなんだ」

 男は情けない声をあげると、手を前に必死に突き出す。よほど雛菊の早業に恐れをなしたのか、踊り場に座り込んだ男が小便を漏らした。踊り場を小水で汚す相手を見て、雛菊も呆れて追求する気を無くした。

「カメラと携帯電話は回収させて貰う。上司に伝えろ、いずれ挨拶に行くとな」

 雛菊は男を見ながら、後ろも見ずに背面へと飛んで、手すりの上へと飛び乗る。そしてそのまま背後へと飛んで、十数メートル下へと一回転して着地した。雛菊は歩いて様子を見守っていた二人の仲間へと戻っていく。

「やっぱりあいつら?」
「ああ……我々は監視されてるかもしれないな」

 自分の質問を肯定する雛菊に、早苗は露骨に嫌な顔をする。

「ボク達、悪魔の気配には敏感だけど、人間に対してはそれほどじゃないからなー。雛菊や京なんかは、ある程度わかるんだろうけど」

 剣の修行を続けている雛菊と、格闘をもっぱら好む京はガーディアンの中でも気配を読むのに長けている。戦いの修行を積んだ者ならではの能力だ。

「監視されていたとはな……そうなると、気をつけねば」

 エリザヴェータも表情を曇らせて、ため息をつく早苗に同意する。やっかいな出来事に、三人は少し憂鬱な気分に陥った。






 とあるビルの一室。窓辺に立った男が、外の景色を眺めている。巨大な窓が設置された広い部屋は日当たりが良く、巨大なテーブルと向かい合うように設置されたソファが置かれている。

「それで、ガーディアンへの対応はどうなっている?」

 内閣特殊事案対策室室長、赤井祐太郎が外を見ながら背後の部下へと問い掛ける。その声は冷静そのものだ。

「はい……先日のことですが、ガーディアンに監視が見つかり、監視員の一人の氏名と携帯電話、収集したデータが奪われたそうです」

 部下である神崎の報告を聞き、赤井は軽く舌打ちを漏らす。そんな上司の様子に、神崎は困ったという表情を作る。

「監視員が見つかったのは今回で三件目だ。うち二件は例の悪魔だろう。何か対策は無いのか?」
「残念ながら……目撃報告はあるのですが、神出鬼没でして」

 二人が話しているのはもちろんザウラスのことだ。ザウラスは秘密裏に動く組織に対し、度々妨害工作を仕掛けている。そのため、対策室も必死にザウラスのことを追跡していた。普段はゴシックロリータの服装に金髪の美少女という容姿なので、ザウラスはかなり目立つ。そのため渋谷や原宿、池袋、秋葉原界隈で度々目撃されているのが判明しているが、悪魔の足取りは容易に掴めるものではない。

「それに、仮に相手を見つけたとしても、処理班で対処できるかどうか……」
「まったく、厄介なことだ」

 対策室自慢の戦闘部隊をいとも容易く壊滅させられたことを思い出し、赤井の目に怒りの色が浮かぶ。ザウラスに出会うまでは、処理班は何体かの悪魔を上手く屠れたのだ。人間の特殊部隊による悪魔の退治という目論みが、一体の悪魔によって粉々に打ち砕かれたのだから、赤井は内心穏やかではない。

「それで今回は監視員の様子はどうだ」
「ダメですね。もう使い物になりません。一応、内勤にしておりますが……」
「まったく、使えんやつらだ。適当に警察へ戻しておけ」

 また警視庁や県警に応援を送って貰わねばいけないな、と赤井と神崎の両方は同じことを考える。

「それでガーディアンとの接触は?」
「は……それも上手くいっておりません。金城芽衣に接触しようと思いまして、MIRAGEに連絡しているのですが、アポを取り付けたいのなら正式な書類を送れという一点張りでして……その他の人間はマスコミ関係者や、あの有名なプロ野球選手もいるので、接触が非常に難しいです」
「全く、何が不満だというのだ」

 当初目論んでいたガーディアンを指揮下に入れるということが上手く行かず、赤井はかなり苛立っていた。窓の下にある道路を一見眺めているように見えるが、彼の頭は今後の方針を考えるので一杯だ。

「非常に言いにくいことなのですが、前回接触したガーディアンの年少者、麻生唯がガーディアンの中で重要人物だったらしく、高圧的な態度を取ったことで反感を持たれたようです」
「子供が?」
「は……仲間内では、唯様と呼ばれているようです」
「勧誘を焦り過ぎたということか」

 赤井はため息をつくと、テーブルの前にあるキャスターつきの大きな椅子を引いて、どっかりと座った。

「引き続き、接触を試みろ。その子供が重要人物というのなら、そいつを落とせばことは簡単だ」
「わかりました。それでは……」
「……待て。その後、研究所は何と言っている?」

 ドアに向かった神崎を、赤井が制止する。話は終わったものだと思っていた神崎は、再びテーブルの前に戻ってくる。

「対上級悪魔用の武装は順調に開発が進んでいます。近々、試作品が提供される予定です」

 対悪魔用の弾丸や防具などの開発計画について、赤井はデータでの報告は受けていたが、正直に言うとあまり期待していなかった。悪魔という未知の生物と人間が近代武器で戦うには、まだ戦力に大きな差があると、ザウラスとの一件で痛感させられたのだ。

「例の計画はどうなっている?」
「はっ、つい先程入った報告では、素体の方がそろそろ完成するそうです。その他のプロジェクトも並行して進んでおります」
「そうか……場合によってはすぐに実戦に入って貰うことになりそうだ」

 神崎の話に、赤井はようやく愁眉を開いた。






「あれ、おかしいな?」

 授業二十分前の教室。鞄の中から教科書を出していた唯は、筆記用具が見当たらないことに気付いた。さほど大きくない鞄を漁るが、いつも使っているカンペンが見つからない。

「麻生君、どうしたの?」
「いや、カンペンが見つからなくて」

 唯の困った声に、このえとお喋りしていた可奈がやって来る。ちなみに竜太と慎吾は授業開始ギリギリまで登校してこないので、この場には居なかった。

「鉛筆貸そうか?」
「ありがとう、助かるよ」

 可奈が少し離れた自分の席へと向かう。その間に唯は取り出した数冊の教科書を机の上で立てて、綺麗に纏めようとする。

「唯様、シャーペンで良ければ貸しますよ」
「えっ、ありがとう……」

 机の中から細い手が伸びて、唯にシャーペンを渡す。それを何となく受け取って、僅かに間を置いてから唯は異常に気付いた。机の中から手が伸びて、唯にシャーペンを渡したというのは、どう考えてもおかしい。
 唯はシャーペンを机に放り捨てると、慌てて教室の出口へと駆け出した。

「ちょっと……麻生君、何処に行くの!?」

 背後から可奈の声が聞こえるが、唯はそれどころではない。脱兎の如く駆け去った唯に、可奈とこのえは顔を見合わせる。
 唯は教室のすぐ近くにあるトイレではなく、渡り廊下を駆けて特別教室が並ぶ校舎のトイレへと飛び込んだ。普段は生徒がおらず、何処か薄暗いトイレの個室を開けると、慌ててドアを閉める。

「円さん!?」
「はいはい、何でしょうか?」

 ズボンを脱がずに便器に座り込んだ唯の前に、影の中から滲み出るように円が現れる。彼女は今朝別れたときと同じスーツを着ていた。

「どうしたの? 学校まで来て……」
「実は、芽衣に頼まれまして。ほら、内閣特殊事案対策室とかが唯様を誘拐しようとしたじゃないですか」

 困惑する唯に対し、円は明るく答える。誰か便所に入ってきたら困るので、あくまで囁くような声なのだが、音使いの唯には苦も無く聞き取れる。

「ですので、唯様の安全のために、文字通り影から護衛しようってことなんです」
「でも、円さん。仕事はどうするの?」
「やってますよ。原稿、書いてたりします」

 円が影に手を突っ込んで、ノートパソコンを取り出す。開いたパソコンの液晶は真っ黒だが、鈍い音がしているので電源はついているようだ。

「あ、画面は明かりがついてると影の中にある空間が維持しにくいんで、かなり光度を落としてあるんですよ。なので、ご心配なく」
「でも、何か悪いよ……それに、円さんは護衛につくって何で黙っていたの?」

 申し訳無さそうな、それでいて不満そうな唯に、円は苦笑してしまう。

「まあ、仕事は書かなくちゃいけない原稿が溜まっていたんで、丁度良かったんですよ。内緒にしていたのは、芽衣になるべく唯様にご心配をかけないようにって言われていたんで……早速バラしちゃいましたけど」
「そうなんだ……別に言ってくれればいいのに」
「言えば、唯様は遠慮するじゃないですか」
「……まあね」

 一緒に住んで、お互いに肌を重ねて、愛を語り合う仲なのだ。会ってから期間は短いが、円も唯も互いのことは分かり合っている。

「怒るのはわかりますが、とりあえず当分は護衛につかせて貰いますね」
「わかったよ。何を言っても無駄だろうし」
「それに、護衛だけが目的じゃないんですよ」

 円が何かを企んでいるかのように、にんまりと笑う。だが唯には彼女の目が、表情とは逆に笑ってはいないように見えた。

「唯様、チョウチンアンコウはご存知ですか?」
「あの、深海に居るやつでしょ」
「そうです。チョウチンアンコウの頭についてる灯りっていうのは、小動物を誘き寄せるためにあるんですよ」
「……僕は釣り餌ってことなんだ」

 円の言わんとしていることを理解して、唯はため息をつく。だが悪い気はしない。自分の身で相手が釣れるのなら、囮としての役も唯は大歓迎だった。

「それじゃ、悪いけど護衛頼むね」
「はい、何かあったら近くの影に囁いて下さい。ほんの小さな影でも構いませんので」

 唯の目前で円がズブズブと影の中へと沈んでいく。まるで底なし沼に引き込まれていくようだ。唯は軽く影を触るが、既に硬い壁の感触しかしない。影を自在に操るというのは不思議な能力だな、と唯は改めて思った。






 当初は円の出現に驚いた唯だが、彼女が影の中に潜んでいるために、何の支障も無く授業を受けることが出来た。普段は比較的お喋りな円も、仕事が忙しいのか、それとも唯の邪魔をしないためか声をかけて来ない。シャーペンを渡そうとしていなければ、唯も彼女の存在を察知することは出来なかっただろう。それほどに円の影に潜む技は見事だった。
 だが困ったこともあった。

「うーん……」

 休み時間に便意を催して個室に入ったのだが、どうもズボンを脱ぐ気になれないのだ。僅かに躊躇した後に、唯は影に向かって囁いた。

「円さん」
「どうしました、唯様?」

 狭い個室内に出来ている濃い影の中から、円がひょこっと顔を出す。

「あの……悪いけどトイレの中からは出ておいてくれる?」
「大丈夫ですよ。こっそりビデオで撮影……なんてことはありませんから」

 デジタルカメラを構えて見せる円に、唯は呆れたような視線を送る。

「冗談ですよ、冗談。それじゃ、出て行きますね」

 影の中に顔を引っ込めて、円は姿を隠す。唯は念の為に壁をコツコツと叩くが、指に硬い物を触った感触が残るだけだ。円の能力を完全に把握していない唯にとっては、彼女が実際に離れた場所に居るのか、それとも自分を見ているのかはわからなかった。唯も円を信頼はしているのだが、トイレというプライベートなことには、ナーバスになるしかない。
 その後、しばらくしてから唯はトイレを出た。
 授業は滞りなく進み、昼休みになった。チャイムが鳴ると同時に、唯は弁当箱を掴むとそそくさと教室を出て行く。幸いなことに、親友の四人は唯が黙って出て行ったことに気付かなかった。
 唯の持つ弁当はいつもなら由佳か静香が用意してくれており、普段は手軽に調理できるおかずなどが並んでいる。腕がいい二人なので、唯は食事には満足している。問題なのは、二人以外が調理した弁当が入っている場合だ。どういうローテーションなのかはわからないが、ときたま他のガーディアンが調理した料理が入っているのだ。
 うさぎ型に切ったりんごと、タコの形にしたウィンナーを入れた、早苗の弁当はまだ微笑ましい。色々な具のおにぎりとおしんこオンリーの雛菊、サンドイッチだけの円、ハンバーガーとポテトというミシェルもいいだろう。問題なのは他のメンバーだ。
 芽衣はやたらと高級な食材を使う。伊勢海老と蟹が入っている弁当など、唯は初めて食べた。楓の弁当は、ごはんの上にかかったそぼろがハート形になったり、LOVEと海苔で書いてあったりする。一度だけ唯はいつも仲良くしているメンバーの前で、うっかり楓が造った弁当を開けてしまい、慌てて箸でご飯を掻き混ぜたことがあった。京の作った弁当にステーキがまるまる入っていたのには、唯も驚愕した。困ったことにナイフがついておらず、唯は一枚のステーキを齧る羽目になった。チーズとフランスパンのみというエリザヴェータの弁当は、ある意味潔いと言えるだろう。悪くはない組み合わせだが、あまりにも簡素すぎる。特殊な容器に入れているとはいえ、百合がカレーを弁当に入れてきたのには唯も参った。本格的なスパイスを使っているので非常に美味いのだが、教室全体がカレー臭くなって、唯はクラスメートに揶揄されたのだ。リンゴしか入っていない麗の弁当は、最初は何かの間違いかと唯は思った。後に説明を求めたときに「あ、あんたなんかリンゴだけで充分よ」と言っていた麗だが、静香によると料理をうっかり焦がしてしまったらしい。
 ある意味ロシアンルーレットのように危険な弁当だが、唯は楽しんでもいた。外れたときはガックリもするが、これも恋人達の愛情と思えば嬉しいものだ。
 唯は階段を駆け上がると、扉を開けて屋上へと出る。初夏の空は雲一つ無く、青空が広がっていた。まだ酷暑とは言えないが、それでも日差しが強くてかなり気温が高い。唯は屋上への入口が作る日陰に入ると、よっと座り込んだ。

「円さん」
「はいはい、何でしょう?」

 唯の呼ぶ声に応じて、影の中から円が姿を現す。

「良かったら、お弁当食べない?」
「ああ、いいんですか?」

 唯の誘いに、円は顔を綻ばせた。だが、すぐに困ったような表情へと変わる。

「でも、他の生徒が来たら……。咄嗟に隠れるよう努力はしますが」
「この暑さだから、来ないと思うけど……やっぱり、不安?」
「うーん……あ、ちょっと待って下さい」

 円が再び影の中へと沈む。彼女はすぐに戻って来たのだが……。

「え、ええーっ!?」
「どうです、似合ってますか?」

 再び姿を現した円はセーラー服を着ていた。もちろん、唯の中学校のものだ。円はかなり若作りなので、傍目から見ればちょっと大人びた中学生と言っても通用するだろう。しかし幾ら違和感が少ないとはいえ、あまりにも突拍子も無い格好に、唯は度肝を抜かれた。

「に、似合ってはいるけど……何処でそんなセーラー服、手に入れたの?」
「普通に近所で買いましたよ。そのうち使おうと思いまして」
「使うって……」
「嫌ですわ、唯様。使うのはもちろん……ベッドの上ですよ」

 頬に軽いキスをする円に、不覚にも唯はドキッとしてしまう。唯より背が高いとはいえ、今の円は同級生と言っても差し支えないくらいなのだ。近い年の女子との恋愛経験の無い唯が軽い興奮を覚えても無理はない。

「まあ、いいや。それじゃ、とりあえずご飯にしようか」
「はい、そうしましょうか」

 まだ心臓の動悸が治まらない唯を余所に、円は彼に並んで座ると、影の中からビニール袋を取り出す。昼食はコンビニで買ったサンドイッチらしい。唯も弁当の蓋を開け、二人は一緒に食事を始めた。

「円さんはいつもお昼はコンビニ?」
「そんなこと無いですよ。ファミレスとか、ラーメン屋とか、ちゃんとお店で食べてますよ」

 平日の昼食を円と一緒に食べるのは、唯にとっては変な気分だった。たまにサボるとはいえ、円は意外に忙しい身なのだ。深夜に帰宅することもあるし、家に帰って来ない日も極稀にだがある。それがこうして昼食を一緒に並んで食べているというのは、普段とは随分違うシチュエーションだ。

「そういえば、あのときも屋上でしたね」
「えっ?」
「唯様に助けて貰ったのは」

 円が遠くを見ながら、回想する。彼女が言っているのは、ザウラスに襲われたときの話だ。

「あの時は私のミスであんなことになっちゃいましたけど、こう言っては何ですが嬉しかったです。足を引っ張る私を必死に助けてくれて」
「でも、いま考えるともっと上手く逃げれたと思う。結局、ザウラスにも負けちゃったし」
「……唯様をザウラスと戦わせたのは、今でも大きく悔いてますよ」

 僅かに円が顔を俯かせる。ガーディアンの常人より優れた身体能力で、治癒が早い自分の怪我はともかく、一般人に近い唯に重傷に近い傷を負わせてしまったのは、今でも円の負い目だ。

「それでも、助けて貰ったことが嬉しいんですよね。従者として、失格ですよね」
「そんなことは無いよ。それを言うなら、僕の体を庇ってくれたから、円さんは怪我したんだし。助けて貰ったのはお互い様だよ」

 顔を上げて自分を見つめる円の頬を、唯は優しくそっと撫でる。

「困ったときに助けたり、助けられたりする関係は大事だと僕は思う。これからも僕は迷惑をかけると思うし、僕は円さんが困ってたら助けたい。ダメかな?」
「唯様……」

 ぼーっと唯を見ていた円は、目の端に溜まった涙を腕で擦って拭う。

「私もそんな関係を続けたいです。これからもずっと……」
「うん」

 優しく微笑む唯に、今度は円の心臓が早い鼓動を打ち始める。円にはまだ少年の唯が、こんなにも優しいことを言えるのが不思議でならない。

「私は唯様が好きで良かったと思います」

 円が生きた二千年は決して不幸では無かったが、今のように幸福でも無かった。最初は影から影に忍び、悪魔の存在を探しては闇へと屠り、後には社会に潜む悪を暴き出し、悪魔が人間に付け入る隙を減らす。そのような戦いの日々を円はずっと生きてきた。人類の守護者と言えば聞こえはいいが、円としてはそれが使命なので誇る気は無い。任務を忠実にこなすのは確かにある程度の興奮はあるが、好きな相手と一緒に暮らす幸福な日々に比べればちっぽけなものだ。円は自分の気が遠くなるような長い人生の中で、ここまでの満足感を得たことは無かった。
 二人はしばらく微笑んで見詰め合っていたが、やはり少し照れ臭くなって再び食事を始める

「それ、昨日の残り物ですよね?」
「うん、そうだね」

 弁当箱の中に入っていたハンバーグを指して、円が指摘する。確かに昨日のおかずにはハンバーグが混ざっていた。

「欲しい?」
「いいんですか?」
「うん、いいよ」

 ハンバーグを渡そうとした唯がふと気付く。円はサンドイッチを食べているわけなので、箸を持っていない。箸を渡して食べさせようかと考えたが、唯は面倒臭いのでそのまま食べさせることにした。

「あ、あーんして」
「はい、あーん」

 ハンバーグをそっと円の口元へと唯は運ぶ。円はパクリと食べると、さも美味しそうに租借する。実は唯が食べさせてくれるのを円は見越していた。自分が箸を持って無いので、唯の性格なら食べさせてくれるに違いないと。顔を赤らめる唯を見て、円は内心大満足だ。

「美味しい」
「うん、やっぱり由佳さんと静香さんは料理上手いよね」
「ふふふ、そういうことじゃなくて……」
「あ、うん……」

 恋人の手で食べさせて貰う行為は、料理の味をぐっと引き立てる。円はそのことを言っているのだ。もう何度も肌を重ねて互いの裸身も知っているという仲なのに、料理を口に運ぶという行為が唯は酷く恥ずかしい。唯は食べさせて貰った経験はあるが、他人に食べさせるというのはまた違うものらしい。照れている唯を見ながら、円は楽しそうにサンドイッチを口にする。
 やがて、二人は食事を終えた。

「ご馳走様でした」

 ペコリと挨拶をした二人だが、食後も特にその場を動こうとはしない。壁に背をつけて、少し熱い屋上で唯と円は寄り添うような形で座り続ける。円は甘えるように唯の細い肩へと、頭を凭れかける。

「ああ、こういう風にのんびりするのっていいですね。平日のお昼にこうやって過ごすのも久しぶり」
「円さんは学生時代はこんな感じだった?」
「んー……退屈だったんで、一人でしょっちゅう学校を抜け出していましたよ」
「そうなんだ」

 学生時代が退屈という円の言葉に、唯は違和感があった。自分には敬語で喋ってはいるが、実際には円はかなり気さくな性格だ。彼女が中学生の頃なら友人も多く居たと唯は思うのだが、もしかしたら円はそれほど人間関係の構築に興味が無いのかもしれない。悠久の時を生きてきたガーディアンは、あまり常人との係わり合いを率先して作らないようなのだ。例外的に早苗は友人が多いようだが、その他の者はそうでもない。芽衣や由佳は人間関係をビジネスと割り切っているし、京や楓は付き合いが極めて希薄だ。明るい円の性格はマスコミの仕事では役に立っては居るが、必ずしも友人を作るということには結びついていないということらしい。唯としては、もっと友人などを増やした方がいいとは思うのだが。

「どうかしました?」
「いや、何でもないよ」

 考えが僅かに唯の表情に出ていたようだ。唯の微妙な顔つきの変化を、観察眼の鋭い円が察知した。だが唯が手を振って否定すると、円は怪訝そうな顔をするが、特に何も言わない。

「唯様、熱くないですか?」
「これくらいなら、大丈夫だよ」

 初夏の中、二人は静かに時を共に過ごす。何かを話してもいいのだが、ただ一緒に居るだけで唯も円も満足してしまう。二人っきりというときは少なく、貴重な時間だからかもしれない。十二人も恋人が居る相手、もしくは多忙な敏腕週刊誌記者を互いが独占するのは、それだけでも贅沢とも言える。

「ん……」

 首筋に顔を埋める円の髪を、唯は優しく梳いてやる。しばらくして、二人はどちらかともなく自然に口付けを交わす。情熱的にキスをしながら、唯と円は互いの体を軽く撫でてスキンシップをする。服越しに唯は円の巨大な胸を弄り、唯は優しく愛撫を始めた。

「ん……あん……」

 唯の手の平に、円の程よい弾力と柔らかさを兼ね備えた胸の感触が、服越しに伝わってくる。人差し指で柔らかな脂肪をなぞり、ゆっくりと乳首に向かって近づけると、円は切なそうなため息をつく。

「唯さま……」

 おねだりするような円の呼びかけに、唯は唇を奪って応える。少年は円の胸に手をピッタリと合わせると、寄せ上げるように揉みしだく。既に相手の弱点は熟知している。

「ん、んん、んう……んっ、んん、ん、んっ!」

 円の体は快感でビクビクと震えてしまう。唯は口付けしながら、震える円の肢体をぐっと押さえつけて逃がさない。好きな相手の執拗な愛撫に、円の頭がカッと熱くなってきて、閉じた目の端にうっすらと涙が溜まってしまう。五分という長い責めをしてから、ようやく少年は若々しい美女を解放した。

「ゆ、唯さま……だ、誰か来たら困りますよ」

 太ももを擦り合わせながら、円は恥ずかしそうに言う。唯の手で胸を長いこと弄られたために、彼女のショーツは大分濡れていた。屋外でペッティングをしただけで、ここまで感じてしまう自分に、円は羞恥心でいっぱいになってしまう。

「大丈夫、誰か来たらすぐに教えてあげるから」
「で、ですが……」

 円のか弱い抗議を無視して、唯は彼女の頬にキスする。それを受けて諦めたのか、円は覚悟を決めて自分で制服の上着に手をかけた。ぐっと引き上げた制服の下から白いブラジャーが現れ、円は背後のホックをさっと外す。唯が手を差し込むとブラがずれて、円の巨大でいて形のいい胸が露になった。

「あん……唯さま……」
「今日は白い下着なんだね」
「だって、こんなことになるとは思わなかったから……」

 僅かに拗ねてみせる円が愛しくて、唯は再び頬にキスしてやる。少し恥ずかしいが、円も悪い気持ちではない。女性にとって、好きな相手から貰うキスは、多ければ多いほど嬉しいものだ。

「白い下着、似合ってるよ」

 言霊の力が僅かに乗った唯の囁きに、円の全身に痺れが走る。主がガーディアンを翻弄し、意のままに欲情させる力。それを受けた円の心臓は一気に早まり、血流が速いスピードで全身を駆け巡る。

「ゆ、唯さま……力使われると、わ、私……」

 自分のことを縋るように見る円に、唯も興奮を隠せない。ブレザー姿の早苗を抱いたことはあるが、自分が通う学校の制服を着る円は、更にそそられるものだった。欲望に流されるまま唯は円の胸を揉みしだき、硬くなった陰茎を彼女の股間に押し当てる。

「唯さま……あ、ああっ……そんな強く押し当てないで……な、中に入れさせてあげますから」

 ショーツが湿って重くなったのを感じ、円は軽く唯を押し返す。円自身も限界で、一刻も早く唯に自分を貫いて欲しかった。スカートをたくし上げ、端を口で摘むと円はショーツを脱ぎ始めた。

「ま、円さん!」
「きゃあ!」

 自分でスカートをたくし上げるという円の行為に、唯はもう理性が持たなかった。彼女の細い足首を掴んでショーツを片足から外すと、唯は大きく円の足を開かせる。ズボンのジッパーを開けるのももどかしく、唯は円の中へと正常位でペニスを潜りこませた。膣口を開いて、ペニスの先端が熱い円の体内へとズブズブと沈んでいく。

「う、ああん……」

 侵入してきた唯の亀頭が子宮口を突付くと、円の身体が大きく震えた。いつもそうだが、唯に最奥を貫かれるのは円にとっては堪らないのだ。女として、愛する男を迎え入れ、受け止める喜びを感じるからだろうか。

「ふあ、ああっ、お、オチンチンが……あ、ああっ、唯さまぁ!」

 すぐに速いピッチで動き始める唯に、円の意識はメロメロに溶かされていく。充分な愛撫に、いつもとは違う学校の屋上というシチュエーション……円の体は彼女の意思とは別に一気にかけ昇っていく。

「ゆ、唯さま、もっとゆっくり……わ、私、すぐにイっちゃいそう」
「イっちゃっていいよ。何度でもイこうよ」
「う、ああっ、あああぁん!」

 唯の甘い言霊に縛られ、円は抵抗を放棄させられてしまう。そうなると快感の流れに身を任せ、円はその中に意識を溶かすしか無かった。ペニスが膣壁を擦り、最奥にある子宮への入口をノックする刺激が、円を快楽の園へと連れていく。

「うあ、ああっ、イク、イキます、イキます、ひ、ひああああああっ!」

 挿入されて間が無いというのに、円の心はエクスタシーへと追いやられた。体を痙攣させ、円はビクビクと上下に震える。

「う、ああ、あっ、あっ……」

 円が絶頂に達しているのに、唯はペニスのピストン運動を止めようとしない。エクスタシーによって、ギュウギュウと断続的に締め付ける括約筋の動きを楽しみ、膣壁に自分のシャフトを絞らせて快感を得ようとする。

「だ、ダメ、あ、ああっ! あ、うあっ! ひぃ!」

 だが絶頂感を得ている円には、唯の続く動きには堪ったものではない。イった直後で敏感な粘膜を擦られる度に、目の前に火花が散るような刺激を円は脳内に感じてしまう。ギュッと唯の制服を握る手に、布地を引きちぎるくらいの力が込められる。

「円さん、凄い気持ちいいよ」
「ゆ、唯さま、お、落ち着いて……や、ああああぁん、う、動いちゃイヤです」
「だって、そろそろイキそうだから、止められないよ」

 エクスタシーに耐える円の表情を眺めながら、食らいつくように締め付ける膣を陰茎で貪ったために、唯の興奮も頂点に達していた。一気に唯の中で射精感が高まり、それを解放するために柔らかな円の肢体を抱きながら、彼は一段と動きを速める。

「イクよ。円さんもイって……好きだよ、愛してる」
「う、あ、ああっ、ひっ、いやああああああああああぁ! ひゃぁぁぁん!」

 唯の言霊によって、準備が整っていないのに円は再びエクスタシーで意識を飛ばされる。

ぶびゅ、びゅる、びゅっ、びゅっ、びゅっ

 円が体を硬直させると共に、唯も射精した。グッと抱きつき、円の胸を押し潰しながら、唯は彼女の最奥に一滴漏らさず精液を注ぎ込もうとする。ギュッと収束した膣はそれを助け、子宮内に白濁液を飲み込んで自らを満たしていく。

「ひっ、あくっ、くっ、うぐっ……あ、あっ!」

 全身の神経を侵すような、あまりの強い刺激に円の身体が瘧に襲われたかのように、ビクビクと跳ねる。全身でエクスタシーを表す恋人の姿に、唯は嗜虐心を満たされるような興奮を感じ、彼女の体を愛しそうにグッと抱き締めた。それは自分が円を満たした証なのだ。

「……うあ、はぁはぁ、あ」

 あまりに強い絶頂感に、円は僅かの間だが気絶する。すぐに意識が戻るが、頭の中は白濁したかのようにはっきりしない。唯は円の膣内の温かみを感じながら、恋人の上で繋がったままでいる。二人とも、二十分近く無言で接合しながら、ずっとその身を重ねたままで居た。

「ゆ、唯さま……久しぶりに激しかったですね……」
「うん……凄かった。ちょっと乱暴にしちゃったけど」

 汗でびっしょりになった額に張り付いた前髪をかき上げてから、唯は円の唇に自分の唇を重ねる。その優しい愛情表現に、ようやく円の意識がはっきりとしていき、体に溜まった快感が抜けていくような錯覚を覚える。後に残ったのは唯への温かい愛情と、熱く燃える恋心だった。
 二人はしばらく抱き合い愛情を確かめあうが、無粋なチャイムの音が遠くから聞こえてきた。

「ごめん……予鈴だ。本当はサボりたいんだけど」
「別にいいんですよ。いってらっしゃい」

 唯の鼻先にキスして、円は送り出そうとする。唯が膣内から自分の分身を引き抜くと、ドロリと精液が中から漏れ出てきた。興奮し過ぎて、一分以上も射精したせいか、いつも以上に精液の量が多い。円の尻へと精液が垂れてしまうが、彼女は笑顔のまま目で「気にしないで」と唯に伝える。

「それじゃ、円さん。また後で」
「あ、待って」

 身支度を整えようとする唯を制し、円は体を起こすと、彼のペニスをそっとソフトに掴む。

「綺麗にしないと気持ち悪いでしょ。少しだけ待って下さい」

 円は唯のシャフトを口に含むと、唾液をたっぷり垂らして、精液と愛液を溶かして掃除する。充分に汚れを落とすと、口を離して舌で陰茎はもとい、陰嚢までペロペロと舐めて残滓を拭き取った。最後にまたペニスを口に含むと、円は唇をすぼめてシャフトを一撫でする。唯が呆気に取られるほどの早業に、彼は声も出ない。

「それじゃ、勉強頑張って下さい」
「うん、またね」

 ズボンを履きなおすと、唯は円のオデコに軽くお礼のキスをして、慌しく去っていく。そんな少年の後姿を見ながら、円はうっとりと呟く。

「全く……唯さまったら、可愛いんだから」

 メロメロに蕩けきった目をしたまま、円の姿は影の中へとズブズブと沈んでいった。






「麻生、一緒に帰ろうぜ」

 放課後のチャイムが鳴ると、待っていましたとばかりに竜太が唯へと声をかけてくる。

「ごめん。今日は真っ直ぐ帰らなくちゃいけないんだ」
「なんだ、そうなのか。まあ、仕方ないよな」

 申し訳無さそうに片手で拝んでみせる唯に、竜太があっさり引き下がる。竜太も残念そうな顔をしているが、唯にも家庭の事情があるのだろうと理解していた。唯が他人の家に身を寄せている身分なので、無理は言えないと竜太は思っている。
 下校の支度を終え、仲が良い四人組に別れを告げると、唯は廊下へと出て行く。

「唯様、良かったんですか? 寄り道をしても私は一向に構わないですが」

 薄暗い玄関で下駄箱から靴を取り出していると、唯の耳に円の声が届いてくる。

「いや、今日は真っ直ぐに帰るよ。ずっと護衛してるのしんどいでしょ」
「ですから、平気ですって」
「一日中影の中に居たら、気が滅入っちゃうって」

 影の中へと返事をして、唯は校舎の外へと出て行く。午後の日差しは強く、思わず足元を確認した唯は影がかなり濃いことに気付く。

「影の中ってどんな感じなの?」
「熱くもなく、寒くもなく。まあ、真っ暗なんで、普通の人はつまらないかもしれません」
「そうなんだ」
「私は自分で快適な空間にしていますけどね」

 自分の影に声を投げかけながら、唯は帰路を歩みだす。能力を使って会話しているので、唯は喋っているようには見えず、円の声も常人には聞こえないだろう。だが全く不自由なく、二人は言葉をかわしている。

「今日は帰ったら、どうするんですか?」
「期末試験が近いから勉強かな。円さんは?」
「んー、編集部に行きますかね。ちょっと後輩の様子が気になりますし」
「えっ、後輩とか居るの?」
「そりゃ、居ますよ……ま、まあ、唯様になら新入社員に見られるのも悪くないですけど」

 円と世間話をする唯の横に、すっと黒い車が走ってきた。かなり緩いスピードで走る車の窓を、ちらりと見た唯の表情が若干険しくなる。車の助手席には、見覚えのある男が座っていたからだ。

「やあ、麻生唯君。また会ったね」
「……またお会いしましたね」

 ウィンドウを下げて挨拶するサングラス姿の神崎に向かって、唯は露骨に嫌悪感を顔に浮かべた。車内では神崎同様に、サングラスに黒服という出で立ちの男が運転している。だが服装は同じでも、運転席に居るのは以前と別の男のようだ。

「前回は酷い目にあったよ。まあ、すぐに留置も解けたけどね」
「そうですか。それで、今度は正式な令状とかは持ってきてるんですか?」
「つれないね。何とか話だけでも聞いてくれないかな? コーヒーとか奢るよ」

 神崎の申し出に、唯はしばらく無言を押し通す。だが、やがて口を開くと、

「回転寿司ならいいですよ」
「おお、そうこなくっちゃ。それなら後ろに乗ってくれ」
「いいえ、歩きで行きます」
「そんなに警戒しなくてもいいのに。まあ、好きな店に入ってくれ」

 愛想良く答える神崎を無視し、唯はひたすら無言で歩き続ける。普段の帰宅路を外れて大通りに出ると、唯は知っていた回転寿司の店へと入店した。神崎も車を降りて後に続く。彼が降車すると神崎が乗っていた車は、何処へともなく走り去っていく。
 平日の三時という中途半端な時間だというのに、店内には客が数人居た。店員に案内されてカウンター席に二人は座る。

「しかし、回転寿司とは贅沢だな。最近の中学生は贅沢に慣れてるのかな?」
「嫌味ですか?」

 神崎のさり気ない言葉を、唯は冷たい声で問い質す。普段は温厚で心優しい唯も、場合によってはかなり冷徹な態度を取ることも出来るのだ。マズイと思ったのか、神崎は慌ててフォローに回る。

「いや、そんなことは無いよ。好きなだけ食べていいから」
「では、遠慮なく」

 言葉通り、唯は流れてきた皿を三つ掴むと、自分の前へと置いた。

「それで、お話って何でしょうか?」

 イクラの軍艦を一個食べ終えてから唯が神崎に聞く。声のトーンは恐ろしく素っ気無いが、唯の言葉に待っていましたとばかりに神崎が食いつく。

「そうそう、それなんだけど。うちの組織にガーディアンの力を貸して欲しいんだけど」
「それ、前も言っていましたよね。力を貸すって具体的にどういうことなんですか?」

 ぺロリと三皿を平らげると、唯は流れてくる皿を目で追う。

「それはもちろん、悪魔殲滅のためだ。君達の力は素晴らしい」
「それはザウラスにそちらの……部隊が殲滅されたからですか?」
「ザウラス?」
「白い悪魔ですよ。それとも金髪の美少女にやられたとか?」

 唯の言葉に神崎の顔がぐっと歪む。それをチラリと見た唯は、鎌をかけたつもりが痛いところだったのだと再確認する。飯田から流れてきた情報は本当だったらしい。ザウラスが対策室の特殊部隊を打ち破ったとの報告が飯田からあったと、芽衣によって唯は聞いていた。

「こちらの部隊は再編成しているが、それとは別に君達の力が必要なのだよ」
「何でです? 悪魔退治は今でもしていますが」
「やはり一般の力では情報収集にも限界はあるだろう。国家機関のバックアップなら、充分に情報を集められる」
「我々の力が、単に悪魔を退治するだけだと思っているんですか?」

 僅かにバカにしたような唯のトーンに、神崎が鼻白む。実際のところ情報収集は飯田の力によるところが多いが、唯はハッタリを効かせた。神崎に情報提供程度では動かないと、示したかったのだ。

「しかしだな、国家機関のバックアップがあればかなり違うと思うんだが」
「そうでしょうか? ……すみません、アナゴ十貫握って下さい」

 唯の注文に、カウンターに居た従業員はもちろん、神崎もギョッとする。

「じゅ、十貫ですか?」
「そう。じゃんじゃん握っちゃって下さい」
「わかりました」

 アナゴだけで十貫とは途方も無い量だが、客の注文とあれば店員としても黙って握るしかない。呆気に取られる神崎を尻目に、唯は回ってくる寿司を取る。よく見れば金色の皿などと値段の高い寿司が多い。

「悪魔退治だけなら、今でも充分に働いていますから、特にそちらの手を借りなくてもいいかと」
「しかしだな、それにも限界があるだろう」
「ボランティアでやっていることですから、パーフェクトを望むのは間違っていると思いますが」
「だが悪魔によって我々人間社会は常に危険に晒されているんだぞ。一体残らず討ち取らないと」
「そこまでは正直なところ、面倒は見切れないということです」

 食い下がる神崎を、唯はとても中学生とは思えないような辛らつな言葉で、突っぱねる。

「我々は悪魔退治を宿命と考えています。ですが、正義の味方という気はサラサラ無いですね。仲間の命が危なくなるようなことは御免です」
「くっ……」
「それにそちらが欲しがっているガーディアンの力というのは、悪魔退治としての力だけなんですか?」

 ちらりと顔を覗きこむ唯に対し、神崎は押し黙る。そんな相手の様子に、唯は露骨に嫌そうな顔をした。能力によって聞き取った神崎の心音が、唯の言葉によって大きく跳ね上がったからだ。何か裏があるのは明白だった。

「大トロとウニ、三貫づつ握って下さい」

 何とか言葉をかけようとする神崎を無視し、唯は淡々と食事を続ける。恐ろしいことに先程頼んだアナゴ十貫のうち、七貫が皿の上から消えていた。ため息をつきながら、神崎が小声を出す。

「……どうしても協力をしてくれないのかな?」
「お断りします。メリットがありません」
「こちらから資金と情報を提供するが……」
「メリットになると思います?」

 唯の切り返しに神崎が再び押し黙る。確かに資金という面なら、唯にとって利点は無いだろう。同居している後見人の金城芽衣がかなりの資産家だというのは、よく知られた事実だ。情報提供という点も、唯は自分達の集めた範囲内の情報で充分だという認識を示している。

「他に何か要求は無いのかな? 出来る限りの要望を聞いてあげたいが……」
「我々から一切手を引いて貰うことですね」

 何とか買収をしようとする神崎を、唯は突っぱね続ける。予想していたより遥かに強情な相手に、神崎もどうやって説得するか思いあぐねた。

「そこまで意地を張られると、こちらとしても強い手段を……」
「脅すつもりですか? 我々を舐めています?」

 唯の目が剣呑な光を帯びる。その迫力に神崎が僅かに気圧された。たかが中学生が相手だというのに、何か別の者を相手にしているような錯覚を、政府のエージェントが受けているのだ。
 主になって一人二人と愛する者が増えていったことで、唯は数ヶ月で全くの別人に変わっていた。それは主として、それに恋人としての責任感によって成長したからだろう。それに半田、悪魔の大軍、それにザウラスとの戦いと修羅場も僅かだが潜り抜けた。並の大人でも唯のような威圧感を持つことは敵わないだろう。

「交渉は決裂ですね。あなた方に協力は出来ません」

 何皿か寿司を平らげると、唯はきっぱりと言い放った。

「……考えては貰えないのかい?」
「交渉相手を脅すような組織への協力ですか?」
「いずれ協力して貰うのは避けられないような状況になるだろうね」
「まあ、それは無いでしょう」
「その気になったら連絡してくれ」

 改めて名刺を取り出した神崎から、唯は黙ってそれを受け取った。ゴネるかと思いきや、唯は素直だった。神崎は以前にも唯に名刺を渡したが、念のためだ。
 それから十分後、回転寿司に伸びる唯の手がようやく止まった。タワーのように連立している皿の塔に、神崎は声も出ない。小柄の少年が持つ胃袋に、何処にそんなスペースがあるのか神崎は検討もつかなかった。

「ご馳走さまでした」
「いや、別に構わない……」

 さして感謝してないように唯は礼を述べるが、神崎にとってはそんなことは些少の問題でしかない。問題はどうやってこの代金を支払うかだ。

「あ、すみません。お土産に特上寿司の持ち帰り、六つお願いします」

 さも当たり前のように、更なる注文をしてのけた唯に、神崎は度肝を抜かれる。

「うちって、同居人が十二人居るんですよね。ご馳走さまでした」

 図々しいを通り越した唯の対応に、神崎はかける声も見当たらなかった。
 食事後、レジで会計を済ませる神崎の姿を、待合の椅子に座る唯は眺める。特上寿司の持ち帰りが出来るのを、唯はまだ待たなければいけない。その間に唯は足元の影に音の力を使って言葉を伝達する。

「それじゃ、後の尾行はよろしく」
「はい、お任せ下さい。唯様、ご馳走さまでした」

 円が述べる感謝の言葉に、唯はうっすらと笑みを浮かべる。取り上げた皿のほとんどは唯が食べたが、一部は自分の手で作った影を中継して、円が口にしていた。神崎と会話をしている間も、唯は密かに円と会話を続けていたのだ。

「それにしても……唯様って、お寿司は無茶苦茶食べますね」

 少し遠慮がちに言った円の台詞に、唯は軽く苦笑いしてしまう。ガーディアンの全員と唯の親戚は知っていることだが、彼は寿司になると恐ろしい量を口にするのだ。特にアナゴは好物で、アナゴ専用の胃を唯は持っていると、いとこの正が評したことがある。以前、芽衣が高級すし屋に唯を誘ったことがあるが、それを強引に断って彼は回転寿司に決めた。圧倒的な量を食べる唯に、芽衣も流石に「回転寿司で良かった」と由佳達に漏らしたらしい。

「好物だからね。さっきお昼食べたばっかりなのに、何故かお寿司は入っちゃうんだよね」
「苦しくありません?」
「少しね。大丈夫だよ」

 心配そうな口調の円に、唯は安心させるように言った。
 手持ちのクレジットカードで何とか会計を済ませた神崎が、唯の元へと戻ってくる。

「それじゃ、麻生君またな。何かあったら、連絡してくれ」
「会計は国のお金ですか。便利な部署ですね」

 軽く笑いかける神崎に、唯は皮肉しか返さない。領収書を貰っているのを唯は見ていたのだ。神崎は苦笑を返すだけで、黙って店外へと出て行った。顔は笑っていたが、神崎の心音が跳ね上がったのを能力で聞き取った唯は、腹の内は煮えくり返っていたに違いないと思っていた。
 こんな接待に国から金が容易に出る組織の一端を見て、ザウラスからの忠告が唯の脳裏に蘇る。確かに胡散臭い組織だと、唯は思わざるを得なかった。





「ただいま」
「お帰りなさい」

 深夜一時頃に帰宅した円を、まだ起きていた芽衣達が迎えた。四十分近く前に連絡があり、京がバイクで彼女を迎えに行き、連れ帰って来たのだ。静香が勧めるまま、リビングの席にどっかりと座った円に、百合が飲みたいものを聞く。最初に円はコーヒーと言ったが、時間を考えて水と頼むものを変えた。

「唯様は?」
「寝ている。起きていると言ったが、期末試験が近いから、無理を言って休んで貰った。麗は早めに部屋へと引き上げて、早苗も部屋で勉強している」

 円の質問に雛菊が答える。普通の中学生である唯も、ガーディアンとは言えまだ小学生の体である麗にとっても、夜遅くまで起きているのは辛いだろう。

「それで、どうだった?」
「とりあえず対策室の本部の場所と、唯様と接触した神崎とかいう奴のねぐらは突き止めたわ。明日から尾行と監視に入るわ」

 成果を聞く芽衣に、僅かに疲れたような声を円は出す。慣れているとはいえ、影からの尾行に円はかなり気を使った。

「いけそう?」
「正直なところ、わからないわね。相手の警備がどれ程なのか、見当もつかないし。ただ、出来ることはするわ」

 円はきっぱりとそう言ってのける。調査に必ず成功するという保証は無い。だが円の目はプロとしての自信が滲み出ていた。






「麻生、手伝おうか?」
「いや、いいって。これくらい一人で片付けるよ」

 体育館で行われていた体育の授業が終わり、バスケットが入った籠を片付けようとする唯に、竜太が声をかける。申し出を断わられると、手助けしようと待機していた慎吾共々、竜太は去って行った。鉄製の籠はキャスターつきで、特に手伝ってもらわなくても、倉庫に運ぶのは難しくない。籠を押して、唯は体育館内にある倉庫へと向かった。倉庫内で籠を元にあった場所へと置くと、唯は踵を返して外へと出ようとしたのだが。

「唯様」
「わわっ!」

 目の前に現れた円に、唯は思わず大声をあげてしまう。彼は突然現れた円に声をかけられたこともさることながら、体操服にブルマーという彼女の姿に、驚愕してしまった。円は恐ろしく若作りだが、これでもガーディアン内では上から三番目に年を食っている。外見的には全くと言っていいほどに違和感は無いが、胸にぜっけんで皆口円と書いてあるのには、唯も心の中で苦笑するしかない。

「急にどうしたの? 何か用事?」
「いや、近くに来たので、遊びにきちゃいました」

 唯の質問に、円は女子高生のように明るく答える。実を言うと唯の学校近くへと神崎が来たのを追ってきたのだが、円は特にそのことを彼に言わなくていいだろうと判断していた。唯を監視しに来たらしい神崎が動かないので、その隙を利用して昼休みに唯に会いに来ている。

「唯様、折角だから、またエッチしましょう。学校でするのって、刺激的で……」
「あ、いや、その……」

 ストレートな円の台詞に、唯は言葉を濁す。エッチは嫌いじゃない……いや、むしろ好きな唯だが、学校でもこんなにエッチしてもいいのか、唯は迷ってしまう。だが、そんな唯の心とは別に、円の背後で音も立てずに倉庫の扉が閉まる。小さな窓から僅かに光が差し込むだけで、倉庫が一気に暗くなった。

「唯様、今日はブルマーの下……何も履いていないんですよ」

 耳元で円に囁かれ、唯はゾクリとしてしまう。こんな誘いの言葉を受けると、唯も断われない。唯は円の体を優しく抱きしめると、彼女が自分の上になるような体勢で、置いてあるマットの上へと倒れ込んだ。














   































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