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■ガブラス×ドレイス


背後のドアからノックの音もなく誰かが部屋に入ってきた。
気配を押し殺して中に入る様はさすが武人らしいところをうかがわせる。
確かめるまでもなく、すぐに誰かはわかった。
「早かったじゃないか」
「呼び出したのはそちらだ」
 軽い嫌味を含めて声を掛けると、すぐにぶっきらぼうな挨拶が男の口からとび出した。
「何を焦っている?」
「早く用件を言え」
 振り返る。
ベッドの傍らに置いてあるランプのわずかな明かりだけだったが、
ガブラスの顔は険しく影を落としているよう見えた。
蜜色の光がブルーグレイの瞳をちらりと照らす。
 そこから何かを見出そうとする。が、無駄と思いドレイスは諦めて口を開いた。
「陛下に元老院の件に関して報告をした。
ついては、何か策をお考えなさるそうだ。
 ―それと…卿の兄の話を伺った」
 刹那に瞳が炎の色を湛えた。彼の全身から殺気が膨れ上がり、部屋の空気を一瞬にして変えた。
心臓を貫かんばかりの視線の鋭さに、彼女は立っているのがやっとだった。
「手を出すな。奴は俺が殺す」
「…誰も兄弟喧嘩に手を出す物好きはいないだろう…
 しかし…卿は一体何をしたい?」
「どういう意味だ?」
 怒りに捕らわれた男には周りが見えていない。彼女は一歩彼に近づく。
「何故陛下が私などに卿の私情をおっしゃったと思う?
 盾が己が役割を忘れ、復讐に駆られてしまえば主を一体誰が守るというのだ」  

「陛下が卿にラーサー様の盾役を命じられた意味をわかっているのか?
 私だけでは力不足なのだ。私は剣の役割を果たさなければならない。」
 口を開いている間だけでも、息の根を止められそうな威圧だった。
 脇から嫌な汗が染み出る。ここで引き下がるわけにはいかなかった。
「今の卿は全く周りが見えていない。
 そのようなことでは、ラーサー様をお守りできるわけがない。

   それほどランディスの復讐をしたいか。

 それほど兄が憎いの―・・・」

 言い終わるか、終わらないうちに首に男の手が絡んだ。
叫ぶ間もなく、ベッドに押し倒される。



「黙れ! お前に何がわかる!?」
 ドレイスの上にのしかかり、噛み付くように彼女の唇を塞いだ。
舌を無理やりねじ入れ、逃げ回る彼女の舌に吸い付く。
喉の奥から聞こえるおののきを全て飲み込み、歯の裏側の甘い唾液を絡めとる。
 体の下で暴れている手をひねり上げ、あいた手で乳房を強く掴んでやる。
一際、彼女の身体が大きく震えた。
 押さえつけていない腕が何かを探して、シーツに皺を寄せた。
彼女の手が枕の下にそっと潜り込む。
 ナイフがガブラスの頬に向かった。
 ドレイスが本気でないことが致命的であったか、容易に手首を掴まれた。
 握られた手首が白く変色していく。
痛みに顔を歪める様をしげしげと見つつ、ナイフを取り上げた。
「護身用か…」
 まさか、彼女が刃を向けてくるとは思わなかった。
 唇を離してやったが、少し安堵した顔が気に入らない。
 平手で右頬を強く打つ。
 乾いた音が部屋に響く。
「ぅっ」
 唇の端を噛んだのか、血が滲んでいた。
こちらを睨みつけてくる。
 取り上げたナイフでガブラスは彼女の服を引き裂き、
引き千切るようにパンツを太腿から下ろした。
 ドレイスが喉の奥で悲鳴をあげた。白い肌が露になる。
 鍛えられた身体には少々きつめに見える邪魔な下着を肌を傷つけぬようナイフで切った。
「ぉぃ!ガブラス!!」
 また暴れ出す。いい加減五月蝿かった。
 彼女の唇に噛み付く。じわりと鉄の味が広がった。
 厚みのある舌にしゃぶりつき、口を塞ぐ。
「んーっ!んー」
 腕をまとめて彼女の頭の上で押さえつけてやる。
 取り上げたナイフを振りかざす。
 そして彼女の瞳のすぐ横―枕にナイフを突き刺す。
 銀色の髪が数本が犠牲となって彼女の頬から落ちた。
枕の傷口から羽毛が舞う。
 一瞬、放心状態となりドレイスの瞳が涙で潤みだす。



―殺される。
 彼からこれほどまでの殺気を一度も彼女は感じたことがなかった。
 その形相はまさに鬼人そのものであった。
 誰に向けられたものであろうと、自分は確実に殺されると彼女は思った。
 が、彼女は彼の瞳の陰りを見逃さなかった。
 喉奥に響く彼の心臓の振るえが聞こえた。

 ガブラスが唇を離したときには彼女は抵抗を止め、
ぐったりと目の前の男を見つめていた。
「…卿が…それを望むのならば、私は…受け入れよう…」
 彼女の腕が優しく首にまわり、ガブラスの頭を引き寄せる。
 震える声では何のフォローにもなっていない気がした。

「今、私にはそうすることしかできないのなら…」

 彼女自身それは、呟きであったのか心の中で言ったものかあまりに小さく判断できなかった。
ただ、彼には届いてないことは確かであった。 


「んっ」
 乾燥した大きな手が、ドレイスの裸体を荒々しくまさぐる。
 喉にそって唇を滑らせ、押し上げるように形の綺麗な胸を揉みほぐし、
指先でツンと上を向いた乳首を転がす。
「ぁ」
 見事に鍛え上げられた筋肉が小刻みに震え、甘い香りが身体から染み出る。
 腹筋のラインをなぞり臍下の肌を撫でると、軽く達したのか胴震いをおこした。
「ぁっ…あぁ」
 熱い吐息をガブラスのうなじに浴びせ、彼の首にしがみつく。
 抑えることができないのか、無意識か自ら腰を浮かせ、
せがむように彼の腹筋に押し付けようとする。
筋肉の塊のような、普通の女より太い腿を抱えてやると喘ぎが一層激しくなった。
「そ、そこは・・・ぁ!」
「名前を呼べ」
 舌でドレイスの耳をなぶり、息を吹きかけるように囁くと、
彼女は顔を真っ赤にさせて唸った。
「ガ、ガブラス…」
 彼女が彼の名前を言うのと同時に骨張った指が彼女の中心に侵入していく。
 既に赤く充血した花弁は、ガブラスの指を飲み込みながら蜜で入り口をぬめらす。
「ひっ…ぅ」
 始めはゆっくりと小刻みに指を動かしていく。水音が夜の部屋に響いた。
「ぃ・・・ぁっあ」

 普段の男勝りな強気の声とは想像もつかないようなか細い声が、彼女の喉から響く。
 彼には、ドレイスが自分だけに女を見せることが、とてもいとおしく思えた。
「…ドレイス」
「っぁ…」
 ドレイスが喘ぎを漏らすと、彼女の中心がひきしまり、彼の指を奥へ奥へと導こうとする。
 指を増やし、さらに彼女の中を攻め立てる。
 引き絞られた太腿の内側を溢れた雫が濡した。
ランプの明かりを浴びて妖しく光る。
 途切れ途切れにもれていた嗚咽が、快楽の深さを指し示すように、深みのある声に変わる。
 同時に、膣壁が奏でる音も一際大きくなり、絶頂が近いことを指した。

「あ、あ、ぁ、もぅ…」
「…イけ」

 ドレイスは身をよじり、高い悲鳴をあげた。
足の指を折り曲げ、身を縮めこませる。
 ガブラスの指を彼が痛みを感じるほど締め付け、力尽きた。
ベッドにシミが広がる。
 回された手が力なくベッドの上に落ち、
視線をどこかへ漂わせながら肩で息をする。
 ガブラスは挿入していた指を引き抜き、絡みついた白濁を舐めとった。
 鼻をつくツンとした匂いが広がった。

―はぁ…は・・・はぁ

 彼の下で、浅い息を繰り返しているドレイスがあまりに小さく見え、
一瞬、胸に突き刺さるものを感じた。
 髪の生え際に浮かんだ汗の粒を親指で拭ってやり、銀色の髪を撫でる。
 思ったよりも、指の隙間からすり抜ける髪の良い感触に複雑な気持ちを覚えた。



「入れるぞ…」
「う・・・ん」
 
反りあがったガブラスのものに一瞬しり込みをしながら、手をのばし自分の中に導く。

「んんっ!」
 先端が入った瞬間思わず、ドレイスは自分の口を手の甲で覆った。
 あまりの熱さに下半身が溶けてしまいそうだった。
 ゆっくりとガブラスが浸入してくる。その大きさにびくびくと身体が震える。
 ドレイスの顎にガブラスがキスを落とし、静かに動き出す。

「ぁ・・・あ」
 ドレイスは喘ぎながらも、その手は何かを探すようにガブラスの身体を撫で回し、
 彼の厚い胸板に舌を這わす。
 動きがさらに激しくなり、先端が膣壁をこすりあげた。
「ひっ・・・ぁ、ぁ」
 ガブラスが彼女の腰のくびれを撫でると、彼女の指は彼の尻に触れた。
「ドレイ、ス…」
「んっぁ・・・ぁ、ぁ」
 彼女のしなやかな指が彼のアナルを刺激し、もう片方は後ろから袋を弄ぶ。

「あ、ぁ、あ・・・!」
「くっ・・・」

 互いが絶頂に近いということがわかった。
 ドレイスは腕を彼の背に回し、ガブラスは彼女の腰を引き寄せた。

   ガブラスが低い唸り声を上げ、腰を震わせると
同時に彼女は甲高い悲鳴をあげて、彼の背に爪を立てた。



 太い腕で腰を引き寄せ、腹に鼻をこすりつけて、穏やかな寝息を立てている男を見おろす。
 こうして見ると、まるで甘えている子供のように見えた。
 そっと、短く刈られた金髪を撫でる。
「すまない…私にはお前の気持ち全てを受け止めることはできないようだ・・・」

「全てではなくても・・・助かる」
 ぼそりと呟きが聞こえたので一瞬寝言かと彼女は思い目を丸くした。
「なんだ、起きていたのか…」
 ひゅっと息を吸い込む音が聞こえた。
 今彼がどんな顔をしているのか分からないが、どうかこのまま上を向いてほしくなかった。
 ぎゅっと力が込められ、もう一方の腕も腰に回され、抱きかかえられる。
「ぉい、苦しい…」
 それでも力を緩めないガブラスを見てくすくすと笑いながら、頭を抱えてやる。

「二人でラーサー様をお守りしよう」
「・・・あぁ」




続く→

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