花見−紅煉と白面の場合−
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古来より、桜の花には魔力が宿り、見る者を狂わせるという・・・ 遠くに聞こえる喧騒を肴に、漆黒の字伏と女は小高い丘の上にひっそりと立つ大きな桜の木の元で酒を飲んでいた。 大きな真紅の杯を片手に、だらしなく木の幹に背を預けて胡坐をかいて酒を煽る紅蓮。 その様子を微笑ましく、また幸せそうに見ながら空になった大杯に酒を注ぐ白面。 二人の間にこれと言った会話はない。 言葉など、今の二人には無粋な物でしかなかった。 ひらり、 二人の目の前を掠めて一枚の桜の花びらが空を舞い落ちる。 それはそのまま重力に引かれて、酒を浪波と湛える大杯の中にその身を沈めた。 花びらが風にそよぐ度に、水面は僅かな波紋を広げて二人の微笑を写す。 あっと思った次の瞬間には、淡桃の花びらは女の手に浚われてそのまま口へと放り込まれた。 「・・なんでぇ 花なんて食ってんじゃねえよ。美味くもねえだろうに」 「あら、貴方の笑った顔を、桜の花にだって見せたくなかったんだもの」 何時もの淀んだ中に浮かぶ妖笑とは違い、悪戯っぽく笑う白面の笑顔はとても可愛らしい。 柄にもなく一瞬だけ見惚れた紅蓮はぐいと杯を煽ると、白面の腰を抱いて引き寄せた。 女が言葉を発する暇もあらばその細い顎を捉えて上向かせ、深く深くに口付ける。 閉ざされた女の唇を異形の者の舌がなぞり、僅かに開いた隙間から口に含んだままの酒を流し込んだ。 「・・・・もう。分けてくれるのは嬉しいけど、こんな事しなくても言ってくれれば私も飲んであげたのに」 「・・・・・・・・あんたの杯は、こんな器じゃあ務まらねぇよ」 そういってぶっきらぼうに、まだ酒の残る漆塗りの杯を投げ捨てて、紅蓮はもう一度白面を抱くままに口付けた。 古来より、桜の花には魔力が宿り、見る者を狂わせるという・・・ 今この時だけは桜の魔力でも何でも良い。狂っていても良いと、紅蓮は思う。 終幕 |
あとがき(雪見飛鳥)
久方ぶりの更新がこんなSSでゴメンナサイ。匿名影様の作品じゃなくてゴメンナサイ。
3月に入ってお花見の季節ももう直ぐですねと言う事と、匿名影様の紅白小説に触発されて随分前に書いた物です。
本当は各キャラクター達の花見の様子を書いておりましたが、この2人のが一番上手く出来たなと言う事で…。
描写は昼の設定ですが、白面と紅煉が揃ってるなら満月の下の夜桜だろうと声を大にして言い張りたいです。
素材拝借元・さくらや