『姉鼬の一コマ とぅーとぅー』 作・匿名影

今のナオさんのアイテム。

・・・・・マヅチ特製フリフリつきメイド服、\?
・・・・・神野直筆『冥土』名札、\?
合計\?・・・・・・


  ―廊下―

  「こらぁ馬鹿メイド!こんなトコで寝んな!!」

  「・・・寝てないわよー・・・・・・?ちゃんと掃除。してるしー」

  廊下の上にごろっと横になり、枕を抱きながらにほざくナオ。

  神野直々に三日メイドを仰せ付けられてから一時間弱。

  青のフリルと腰リボンのついた無意味に可愛いデザインのメイド服を着たナオは、

  太股から引き出した鎌でぐっさりと水を含んだ雑巾を突き刺し、べっちゃべっちゃといかにも投げやりな態度で廊下を濡らしていた。

  マニキュアが取れるからとろくに雑巾をしぼりもせず、鎌の届く範囲のみを直線的に拭くだらけメイド。

  シブモリは幸せそうに目を閉じて日なたに転がっているナオに唇をゆがめながら、その腰を思いっきり、むぎ、と踏みつけてやった。

  「いてッ!!ち、ちょっと・・・何踏んでんのよ゛ぉ」

  「むぁったく、すがすがしい程の怠けぶりですコト・・・・・・どうせまともな仕事なんて期待してなかったけどさ」

  「あんたにゃ関係ないでしょうが!いーのよどうせすぐ汚れるんだし、神野様にさえバレなきゃ」

  労働者にあるまじき台詞をべらべらと並べるナオに、シブモリはへっ、と口端を持ち上げて悪い笑みをもらし、

  ここぞとばかりに彼女の腰をぐりぐりと踏みにじる。

  「ほほほ・・・・・・ところがどっこいそうはいきません?今のあんたは史上最低の不利な立場にいるんだから、
   積年の恨みをぶちまけるには絶好の機会なのさね。
   怠け者のメイドに教育的指導・・・・どっからどう見てもあたしが善」

  「はっ・・・」

  「あらやだ唇がやけにとんがり風味。
   神野様に密告しちまいたい気分だわ、どうしましょうあらどうしましょ」

  相手の腰を踏んだまま両手で頬を押さえるシブモリに、ナオは即座に鎌の先の雑巾を振り飛ばす。

  びたっ、と音を立ててHITする雑巾。シブモリのぐぁ!!という、野太い悲鳴。

  ずるずると重力に引かれていく雑巾をあきれたように眺めながら、ナオは自分を踏んでいる足を払って再び横向きに寝転んだ。

  「あたしを敵に回す事がどれほど愚かな事か・・・・・・ガキの頃からつるんでるあんたなら、重々承知してると思ってたけどね」

  「・・・・・・アンタ、その性格のおかげでいじめられ放題だったじゃん。ガキの頃。」

  毎朝毎晩泣きついてきたのはどこの誰ぞ。

  そう無表情に言うシブモリに「忘れたぁ」とやる気なくこめかみを床につけるナオ。

  シブモリは足元に落ちた雑巾を拾い上げ、ナオの後頭部にぐしゃぐしゃと撫でつける。


  「下級変化に悪態ついて泣かされた事があった。長の布団におたまじゃくしの群を放って丸一日絶食させられた事があった。
   ドジ踏んでどこぞの法力僧に封じられそうになった事があった。東の一鬼を騙して殴られた事があった。
   一週間連続寝小便して弟どもの前で濡れた布団・・・・・・・・・」

  「  ウ ル サ イ  #」

  「・・・・・変化をどつきに行ったのも夕飯の握り飯横流ししてやったのも法力僧から逃がしてやったのも一鬼に逆恨みの報復に行ったのも
   布団洗濯してやったのもみ〜んなアタシさね。
   あのときゃまだ手のかかる妹みたいで可愛げもあったけど、大人になったら可愛らしさも微塵もないわ。
   忘恩の輩たぁ正にアンタの事を言うのさ。クソ餓鬼無職子怠惰女・・」


   暗い声でぐちぐちと呟くような声を連ねながら後髪をかき回すシブモリに、ナオはあ゛ーあ゛ーと恩義のかけらも感じていない顔で

   起き上がり、よっ、とあぐらをかきながら雑巾を再び床に叩き落とす。

   鋭い蛇の眼を面倒くさそうに受け止め、ナオの口が欠伸ついでに言葉を紡いだ。

  「・・・ガキの話はいいのよ。要はこのあたしを怒らせたら問答無用で噛み付きますよってコトを言ってんの。
   たとえ長から直々に命ぜられた『奉仕活動中』でもね」

  「あぁぁら!そぉんな脅迫が今更通じると思って?(・・・・・・思ってるからどうどうと怠けてるんだろうけどサ・・・)
   日ごろの行いを忘れてんじゃねぇ?怨みつらみ嫉妬欲望なんやかや・・・・・・この好機に空屋敷中の妖どもがよってたかってアンタをお」

  「廊下の先から口惜しげに眺めてる。」

  にやりと笑いながらナオが指さす方には、求嵐を筆頭とする、言葉どおり山のように溜まった妖ども。

  │\д・)←こんなカンジ


  「・・・・・・・・・・・・・・・」

  「ま、根性はないけどあんたよりゃ利口だわね。
   この程度の逆境で弱るあたしじゃないってコト分かってんのよ・・・・・・そりゃ、神野様は怖いけれど?
   密告の後には確実な報復が待ってるのさ」

  「なぁにすましてんだ畜生!!!!そんなら確実な報復とやらを見してもらおうじゃねぇか、オォ!?」

  「へっ・・・?ちと待った!」

  廊下をもと来た方へ歩き出すシブモリに、ナオは初めて少し慌てたような態度で立ち上がった。

  どろりと悪意を宿して淀んだ目に見下ろされながら、ナオはうわべだけの媚びた仕草でシブモリにしなだれかかり、

  へらへら笑いながら上目づかいの視線を送る。

  「な〜にキレてんのよぅ、こんなやりとり日常茶飯事でしょ?
   カルシウム足りてない?あ、おいし〜ぃミルクココアのお店、知ってるのよね。ね?」

  「フン、和食趣向のアタシにココアなんて・・・・・・」

  ぐい、とナオの顎を掴んで引き上げるシブモリ。

  とたんにナオのにこにこ顔が硬直し、相手のおぞましく邪悪な気配に一筋汗がつつ、と頬を伝う。

  「アンタなんかいつもカッコばかり口ばっかり、本当は密告されるのが怖いくせに虚勢張ってんだ。
   他の連中はそれで騙せるだろうけどアタシだきゃぁ勝手が違うよ。
   アンタと下着すら共用してた仲だからねぇ」

  ・・・・・・コイツ、こんなキャラだったっけ?

  いきなり悪い笑みを浮かべて顔を覗きこんでくるシブモリに、ナオは視線をそらしながら胸に零した。



  ―数時間後、空屋敷厨房―

  「・・で・・・・なんでキッチン?」

  「なんでってアンタ。『ご奉仕』に飯当番ほど妥当な仕事はねぇだろう。
   ここで料理してれば本来の飯当番はラクできて喜ぶ、他の連中は飯が食えて喜ぶ。
   ひいては空屋敷中の妖に奉仕した事になる。神野様も納得、いい事尽くめ!」

  「え〜・・・・・・かったるいなあ・・・・・・
   ね、カップヌードルでいいっしょ?」

  返事を待たずにやかんに水を入れ始めるナオ。

  シブモリはすかさず彼女の頭をすぺん!とまな板で叩き、白い頬をぐにぐにつねりながら口端を引く。

  「この雌鼬・・・すぐ手を抜こうとするんじゃないよ。はい気合入れて何か作る!簡単なモンでいいから手作り!!」

  PRRRRR・・・・・・・・・

  「やっほー一鬼。悪いんだけどさ、今から空屋敷に『減らないおにぎり』300個ほど・・・・・・
   うん、あんたおにぎり作るの好きっしょ?代金着払いで・・・・・」

  「お前が手作りすんだよ馬鹿女ーッ!!!!」

  携帯電話を手にぬけぬけと出前をとるナオに、シブモリはもう一度、今度はぼこん!と酷い音を立ててまな板を頭に叩きつける。

  ぴぎゃっ!

  小動物のような悲鳴を上げてうずくまるナオが、桃色の口紅を塗った唇を噛みながら涙目でシブモリを睨んだ。

  「うぅ・・・・・・なんであたしがこんな仕打ちを・・・・・・幸せになる前のシンデレラになった気分だわよ」

  「アンタなぁ〜!そういう甘ったれた態度を今のうちに直しといてやろうって親切心からの仕打ちなんだよ!
   一年に一度くらい汗水流して働いてみろい!!」

  「オタガイにね、ぐうたら年増の見合い破談99連覇。」

  「・・・・・・・・・アタシは空域守備頭で命張ってるから、普段ぐーたらしててもいーのよ」

  ぐだぐだ言わねぇでさっさと作れよ。

  そう言ってまな板を掴んだまま腕を組むシブモリに、ナオはしぶしぶ立ち上がり、流しに向かった。

  白石の敷き詰められた庭のど真ん中に設置された青空台所。

  磨き上げられた青竹で出来た台の上には、その脇にある池から引き上げられた魚がどどーんと並べられている。

  ナオはとりあえずメイド服の袖をまくり、台の中から巨大な大鍋を取り出して白石の上に置いた。

  「じゃあま、煮魚でも作りますか・・・・・・」

  「へぇ、結構渋く行きますな。作れんのか?」

  「バカにしないでよ、家事一式全滅のアンタよりゃ出来るつもり。
   まず魚を洗ってエラとわたを抜き、おろして切り身にする。
   で、鍋に煮汁を合わせる。煮汁は酒1、砂糖1、醤油2、みりん1、水てきとー・・・・・・
   煮汁をちびっと煮立たせたら魚を入れて落としぶたをして、更に蓋を少しずらしておく、10分ちょっと放置して出来上がり」

  「ほぅ。結構出来るんじゃない・・・」

  顎に手を当てて感心するシブモリに、ナオは魚の尻尾を掴み池にかがみ込みながらえっへん、と胸を張る。

  「ま、アンタも一応女のつもりならこの程度は知っておくコトねぇ。
   結婚できる女とできない女の決定的な差はこのへんにある・・・」

  「バカタレッッ!!!!」

  唐突にヅドッ!!と横顔にたたき付けられたまな板。びぎゃ!!とますます濁った声を上げるナオ。

  いきなりの攻撃にワケが分からぬと尻餅をつきながら見上げる彼女に、シブモリはまな板を振り下ろした体勢のまま目を剥いて怒鳴った。

  「イぃぃぃ・・・ッ!今さりげなく『洗剤』で洗おうとしただろてめぇ!!」

  「・・・・・・だって・・・・・バイキンがついてちゃまずいでしょうが・・・・・・」


  ナオはいつのまにかメイド服のポケットから「チャ―ミーグリーン」を取り出し、魚に振りかけようとしていたのだ。

  シブモリは大急ぎでナオの手から洗剤をひったくり、一瞬でも感心していた自分が情けないとばかりに眉間をそれで押さえつけた。

  きょとんとしているナオに数秒後、シブモリは再びとがった蛇の目を向けて言う。

  「っていうかなんでポケットに洗剤忍ばせてんのアンタは・・・・・・?空屋敷にゃ石鹸しかねぇはずだぞ!
   わざわざ買ってきたのか!?わざわざイヤミかッ!!」

  「何よぅ、さっきから文句ばっかり言って・・・・・・返してよ、さっさと作らなきゃ間に合わないんでしょ」

  「水で洗えよフツーに!!
   信じらんない、ここまで阿呆だったとは・・・・・・・・他にヘンなモンもってねぇだろうな?使う前に全部出せ!!今ここで出せ!!!」



  ―数分後―

  「・・・・・・・・・出せ・・・・・・つったけどさ・・・なんとまぁお約束な・・・・・・・・・」

  「なによ。全部料理に必要なモノよ」


  不満げに口を尖らすナオの前に並べられた数々の不思議アイテム。

  シブモリはとりあえずそれらを一つずつ手に取り、疑惑一色の瞳で用途を問いただし始めた。


  「この新品の木工用ボンドは何?」

  「グラタンの調味料に使おうと思って。チーズなんて洒落たモノなさそうだから・・・・・・
   少々のボンドぐらい妖にとっちゃ苦薬みたいなもんよ」

  「・・・じゃ・・このめいっぱいの砂糖の袋は?いかにも塩と間違える気まんまんでしたってカンジの」

  「全体的に甘味の方がウケがいいかと思って・・・・・・それに塩でも砂糖でも大差ねーわよ」

  「・・・・・・メチルアルコール(工業用アルコール)・・・・・・・・・アタシゃ二杯でべろべろになるから遠慮したい・・・・・・」

  「失明するわよ、そんなもん飲んで」


  ビニール袋にびちびちに詰まったふぐの群を手にとろうとしたシブモリが、何の弁明もない返事にムきっ!と目を剥いた。

  クククッ、と悪魔的な笑みを零しているナオの頭にふぐを乗せながら、シブモリは深くため息をついて処置なし、とばかりに腕を組む。


  「アンタってさ、本当・・・・根性のこの字もないのね・・・・・・
   自分に与えられた役目を全うしようって気合が歯カスほども感じられないわ。もう・・・・・・いやんなった」

  「巨大なお世話よ。だいたいなんであたしがあんたに監督してもらわなきゃいけないワケ?」

  頭の上にぼてっと横たわったふぐをそのままに、ナオは頬を指で掻きながら欠伸混じりにほざいた。


  ・・・・・監督したいんだもの。心配だから

  「・・・・・・・・・は?」

  不意にぽろっと零された台詞に、ナオが頬に指を当てたまま、絶句した。

  頭一つ分高い位置からいつになくしおらしい視線を送ってくるシブモリ。

  なんだ、この状況は。。


  「・・・・・・何、いけない?アタシがアンタの心配しちゃいけませんか。
   ガキの頃から危なっかしくて見てらんなかった出来の悪いダチを心配する事がそんなにヘンですか、おかしいですか」

  「・・・・・・・なに言ってんのよ・・・シブモリのくせに・・・・・・・・・」

  「悪さして自業自得の泣きっ面さらしてたって気にはならないのよ。
   でも後でちゃんと見当違いの尻拭いできるようにアタシの前で泣けっての!分かる?大人になって無敵の魔王にでもなったつもり?
   神野様本気で怒ってたの分かってねぇの!?またふざけた仕事したら今度こそキレるわよあの子!
   まともに流走抜刀されたら五体満足じゃいられねぇんだよ求嵐でもあるまいに!!!」


  「そや!!ワイでもあるまいに無茶したらアカン!ナオやん駄目!絶対アカンでッ!!!」

  あまりにもとうとつな関西弁の会話への割り込みに、ナオは再び別の意味で硬直する。

  後方でどかどかばたばたと騒がしい足音と羽音がしたかと思うと、未だに反撃の機会を探っていたと思われる黒い鴉の顔がぬぬっ、と

  ナオの視界に遠慮なく入って来た。

  勝手に熱のこもった目を向ける鴉天狗は、ナオの頭をふぐごと撫でながら説教じみた口調で発言する。

  「シブモリのネェちゃんがこん〜なに親身になってくれとるんやでぇ。いい加減悪ふざけやめたらなアカン!
   トモダチは一生の宝もんなんや!これは幸せなコトなんや!!」

  「そうだよバカ!!アタシが、西の空域守備頭のシブモリがだよ?
   こんなに保護者面して親切にしてやってんのにアンタって阿呆はホントに・・・・・・!!」

  「ヲイ;」

  いつのまにか意気投合してしまった二人に囲まれ、さながら高校受験前の三者面談のような状況に追い込まれたナオ。

  じり、と一歩後ずさりした彼女をうって変わったぎょろ目で睨みながら、空屋敷きっての剛の者達はずずいっ、と更に包囲網を縮める。

  前門の蛇&鴉、後門の池。挟まれたのは鼬一匹。

  空の英傑として組み慣れた二人は拳骨をぼきぼきと物騒に鳴らしながら、魚とまな板を手にメイドに迫る。

  「さぁ、観念しぃや〜、召使いとしての義務はしっかり果たすんや。ワイらも手伝ったるさかいに」

  「全部終わるまで逃がさねぇぜ・・・・・『大顎』と『軋り挟』じゃ勝負は見えてるしねぇ・・・」

  「・・・・・・ヤリマス・・・・ヤラセテイタダキマスカラ乱暴シナイデ・・・・・・・・・」



  その日、空屋敷の面々は自分達の戦闘頭達が作ったと知ることもなく夕食を取り、口々に文句をこぼしたという。

  味付けが濃すぎるとか、おかずの盛りが多い少ないなどと言ったことではない。

  それは茶碗の代わりに犬のエサ椀が出てきたとか、煮魚の中に鴉の羽が混入されていたとか、煮魚に混じっていた草ふぐの毒に
  当たった
とかと言ったコト・・・・・・
  そしてふぐ毒に当たったのが長のお気に入りのまづちであった事から炊事当番が弾劾され、ナオのメイド期間が更に一ヶ月伸ばされ。

  かつ監督不行き届きにより冥土3鬼衆が誕生したという。


  不祥事に関して彼らは『不慮の事故』と主張したが、それを信じた者は一人としていなかった。



 最後までのったりと おわり(゚∀゚)ノ


あとがき(匿名影)
はい、というわけでバタバタ始まってバタバタ終わってしまった姉鼬シリーズです。
今回は妖情事内のナオさんのイメージを知ってもらおうと書き始めた作品なのです が、へたれな求嵐、にょっきり幼馴染なシブモリさん、
にょっきりと『西の幹部珍プレー好プレー集』的なものになってしまいました(´∀`;
そうです、そうなのです。こちらのナオさんは小悪魔的な守銭奴なのですよ! そもそも人間の通貨など道端の小石以下の値打ちしかなかった
妖界の金銭価値を引き上げたのもこやつ一人の悪行だったのです!!(何力説 そもそも妖怪世界ってそれとわかる女子が少ないですよねー。
雪見氏が描き下ろされた美女たちも全体から見ればほんと小数・・・・・・必然的にナオビデオ(Hビデオ)の需要性も上がるってもんです!
(どこからか石が飛んできました
さてさて、こんな節操ナシでぐうたらなナオさんですが、皆様にちょっとでも愛される娘となれることを切望してなりません。
また必ずどこぞで現われる雌鼬。コンゴトモヨロシク。・・・オネガイシマス(゜∀゜)>