姉鼬の一コマ とぅー  作・匿名影

  今朝のナオさんのアイテム。
  ・・・・・empty
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  合計\0・・・・・・



  ―自室―


  「ケロッケロッケロッ♪いざっ、すすっめ〜〜♪地球侵りゃっくっせ〜〜よ〜〜〜」


  畳の上のジャグジーバス、閉められた障子にかけられた『立ち入り即死』の札。

  和室の雰囲気を一切考慮せずにアワ風呂を楽しむ鎌鼬は、紹介するまでもなく西の守銭奴、ナオである。


  甘ったるい鼻声で歌を歌う彼女は片足を浴槽の外に出し、レモンスカッシュを飲みながら廊下で捕獲した『すねこすり』に体を洗わせている。

  時間は午前7時過ぎ、誰かを巻き込んでの朝風呂はナオの寝覚め一番の儀式であった。


  「・・・お、お姉様、その歌は一体・・・・・・」


  石鹸水に溺れかけながらも熱心に女体お触りの役得にあずかるすねこすりが、とうとう耐えられずに問い掛ける。

  白い乳房にちまい両手で抱きつく漬物猫(漬物石のような猫)・・・助平根性丸出しのクセに傍目にいやらしさを感じさせないのは、

  見事な造形詐術である。


  「ん?マイブームソング『ケロッ!とマーチ』。
   傘持って〜〜♪出かけたっ日ーにはっ♪いっつもっ晴れ♪」

  「・・・・・・マーチ・・・・・・?西洋歌はワケが分からないっす・・・」


  湯と胸の間に猫口を突っ込んでぶくぶくと気泡を立てる相手に、ナオはレモンスカッシュのグラスを持ったまま眉根を寄せる。


  「あんたらすねこすりに分かる歌なんてあるワケ?」

  「あっ!酷い!自分たちだって歌ぐらい歌えるっすよぅ。
   『ちっちよ〜〜〜♪あーなたーは強〜か〜った〜〜〜♪かーぶとーも焦〜がす〜〜〜〜〜〜炎熱の〜〜〜〜♪敵を〜〜〜〜〜』」

  「却下。面白くない」


  足裏!と胸や尻ばかり揉んでいるすねこすりに冷たく命令するナオ。

  自分の持ち歌を完全否定された彼は、どこか淋しい思いでナオの腹を下っていった・・・・・・



  今日のナオさんのアイテム(改)。

  ・・・・・・D&Gデニムコート、\52,290

  ・・・・・・D&Gハット、\11,500

  ・・・・・・スネークリング、\13,650

  ・・・・・・スカルブレス、\20,790

  ・・・・・・フォルツィエリのダイヤモンド入りピアス\72,900

  ・・・・・・ブーツ CRUSADER、\51,450

  合計\222,580・・・・・・



  ―昼前 求嵐の部屋―

  「・・・・なんでっか・・・?これ」

  「鬼神丸国重。名前だけで選んだけどまぁまぁ斬れるわよ?
   税込み29000円で・・・」

  「そうやのうて・・・・・・」


  敷きっぱなしの布団に寝転んで二度寝しようとするナオに、求嵐は刀身全体にファンキーなペイントの施された日本刀を糸目で見つめる。

  タコだの水着美女だのサングラスをかけたカモメだの、細い刃にところせましと描き込まれたキャラクターたち。

  背景は鮮やかな赤と黄色で塗りつぶされ、同様のペイントが鞘にまで施されているという凝り具合。


  ・・・・・・こんな刀を差して歩けというのか?


  「・・あぁ、それからペイントに1万円ちょっとかかったから、下3ケタ斬り捨てで39000円。耳そろえて払いなさいよ」

  「はぁッ?!なんでや!おごりちゃうんかいな!!『勝ったら買うてきたる』言うてましたがな!」


  求嵐が言う勝ったらとは、昨夜ナオが持ちかけた賭けの事である。

  夕飯後の酒の席で行われたそれの対象は、何の事はない、長である神野の寝巻きの色が白か桃色かというだけの事。

  『勝者の希望する物をなんでも敗者が買ってくる』という条件さえなければ、求嵐とてナオと賭けなどしなかったのに・・・


  しかしナオはくちばしを限界まで開いて訊く彼の布団に頬をこすりつけながら、気持ち良い夢の中へ溶け込む寸前の声で平然と答えた。


  「だから、『買ってきた』じゃない。朝もはよからわざわざ『下』まで行って。
   人を働かせたら金払うのが当然っしょ?それを人件費ナシで請求してやるんだから、ありがたく思いなさいな・・・・・・」

  「〜〜〜・・・・・・!こ、この下手な絵はわい、頼んでへんで!!」

  「『刀なら何でも良い』っつったっしょ?だからアタシのセンスで一番いいモンにしてあげたの」


  くっくっく、といかにも悪意のある笑みを枕の間から返すナオに、求嵐がとうとう音を立てて堪忍袋を引き裂いた。


  「えーーーーかげんにせよやぁ性悪女ーーーッ!!!」

  「?!!!」


  てっきり涙目で泣き寝入りするものと油断しきっていたナオに、一瞬の早業で鎧を脱ぎ捨てた求嵐ががばちょ!と覆い被さる。

  キャーキャー!と黒い羽毛の下でもがくナオを布団に押し込めて、求嵐は珍しく西の剛の者たる妖気を放ち手骨を鳴らした。


  「三秒やるわ、懺悔すましぃや!!」

  「ぎゃああ!犯される!!誰かぁーッ!!!」


  助けを求めておきながらちゃんと3秒、服を脱がさずにいるつもりだった求嵐の額にぷすっと鎌を突きたてるナオ。

  求嵐は不覚にも怒りで忘れていたのだ。ナオの鎌はほぼ全身に仕込まれており、いついかなる体勢でも自由に出し入れができるという事を。


  「・・・!おわあああァ!!血!血!血ィ!!血が出とるーー!!?
   やめてとめて怒らんといてナオやん!実は酷いのキミやってわかっとるやろ?わいもちょっとは怒りたいやんか」


  剛の者オーラはどこへやら、思いっきり弱腰でナオに抱きついたまま謝りまくる求嵐。

  完全に密着した体勢で鎌鼬の攻撃を受ければ、どんな妖でも大怪我ではすまないからだ。

  流石にナオも仲間を『軋り挟』で両断する事はないだろうが・・・・・・・・・多分・・・・



  「・・・・すげぇ、SMだ・・・・・・流血プレイか?」

  「・・・は・・・破廉恥・・・・・・」


  ・・・・・・そして情けなさの駄目押しに、ナオの声に駆けつけたシブモリとカノコが障子のすきまから、

  しっかりと中を覗いていたわけで・・・・・・・・・





  ・・・・・見たこともないようなカラフルな刃を鞘から引き抜きながら、神野は思わず噴出したくなるのをこらえてうつむいた。


  広大な畳の敷き詰められた神野の自室には、正座したナオと、とりあえず額に『反省』と墨汁で記され、仰向けに転がっている求嵐。

  どさくさに求嵐を玩具にして満足したシブモリと、鬼神丸を何となく欲しそうに見ているマヅチがいた。


  桃色の着物を着た小さな神野はカチ、と刃をカラフルな鞘に戻し、大きく息を吸いながら顔を上げ、ナオを見ながら震える声で言った。


  「・・・・・・あぃ、話は分かった。儂の寝巻きで賭けをした事はまぁよしとしても・・・・・・・・・ナオや」

  「・・・は、はい?」


  明らかに笑いをこらえていた神野の声から抑揚が消え、ナオはほんの少しどぎまぎしながら返事をする。

  神野はそんなナオに一瞬にこっと微笑んだかと想うと、急に目を吊り上げてだん!と片足で畳を踏み鳴らし、ナオを思いっきり指さした。

  ぎくりと片手で身をかばうナオに、神野は容赦なく額に青筋を浮かべて叫ぶ。


  「おぬし!!何故にそう性格が悪いのじゃッ!!!」

  「えっ・・・・・・え?え?」

  「愚かな求嵐を差し引いても今回はおぬしが悪い!この神野、たとえ求嵐といえども無条件に斬り捨てる事はせぬ!
   善き事は善い、悪き事は悪いとはっきり言うぞえ!!」


  酷ぇ。と神野の求嵐への言い草に思わず苦笑するシブモリ。

  ナオは神野が矛先を自分に向けた事に慌てながら、乱れかけていた服をさりげなく、更に強調しながら言い訳をする。


  「神野様・・・・・女を形作る要素において、性格などよほど歪んでおらぬ限りさほど重要なものでは・・・」

  「おぬしが『よほど歪んでおる』から言うとるのじゃ!本当に性格悪いぞナオ!!」

  「そっ・・・!」


  真剣な顔でずびずびと情け容赦なく言う神野の言葉に、とうとうシブモリが声を上げて笑い出してしまった。

  頬を引きつらせて固まっているナオに向かって、神野はカラフルな刀を握ったまま(結構気に入ったらしい)更に続ける。


  「我らは妖じゃ、なるほど多少邪なところもあって当然。
   しかしそれを全て野放しにしてしまえば西妖怪の結束は無に帰する。
   ナオ!神野はおぬしに三日間の『ご奉仕特訓』を命ずる!!」

  「ご、ご奉仕・・・・・・?何です、それは・・・」

  「今日から三日間、おぬしは西洋の『めいど』なる任に就き空屋敷の全ての妖の世話をするのじゃ!
   他人を思いやる楽しみ、喜びを知って少しでも性格を改善するように!」

  「メイド?!・・・神野様またそんな独身男の初夢みたいな事を・・・・・・・・・私は普段から屋敷の男どもを満足させておりますわ」

  「金を取ってはいかんぞ。全て無料奉仕じゃ」


  私に死ねと仰るのですか!!

  涙すら浮かべて上座にざざざ、と迫るナオの顔面を手の平で押し返し、神野は『近うよるな!やめぃ!』とのけぞる。


  かくして、神野によるナオの『メイド変身性格矯正特訓(仮』が、密かに始まったのであった・・・・・・・・・





 続く(^^;)>