―…………仮にだ、私があんたのために働いて………それで、敵が全部片付いたとして。
   あんたが私を始末しないって保証がどこにある?―


  ―小心者に用はないのよ……紅蓮…?
   私のために働く意志と自信があるか。貴女が答えるのは……答えられるのは、それだけ―




  ―……じゃあ、私が手を貸して、私が得るモノは?―



  ―肉を裂くどす黒い悦び……激痛によがる人間の悲鳴…
   …………それと、とても魅力的な“オトモダチ”よ………―








  「…………なんて、まるで私が得するみてぇに言ってくれたが………」

  「動かないでくれる?“先”を噛むわ」




  木天井や畳に蜘蛛の巣のように繋がった蒼白い霊絹の束の上で、艶っぽい女の姿に化けた白面が紅蓮にのしかかっていた。


  時は夕刻、山林のとある荒れ寺。


  楽器の音のように日暮の声が夕陽と共に障子に浸透し、朽ちかけた室内を赤く染める。


  白面の、手入れなどという言葉とは無縁のかさついた髪を鋭い爪で梳きながら、紅蓮は必死に自分の胸を唇でまさぐる相手に片眉を上げた。


  「単にあんたが寂しかっただけじゃねぇの?人肌が恋しいなんてどうかしてるぜ………もっとも、もう人じゃねぇが」

  「…寂しくもなるわ、妖でもね……私の本体は未だに耳鳴りのしそうな深海に閉じ込められているもの」



  紅蓮の大きな餅のような乳房を薄い唇で撫でまわす白面の顔は紅潮し、うっすらと額に汗すら浮かべている。

  低い紅蓮の声と響くような白面の声との会話は、女同士のそれにしてはどこか闇的な色を宿していた。

  重なる豊満な、それでいてきつく引き締まった肉体……

  紅蓮は障子の穴から入って来た黒蜻蛉(とんぼ)を静かに眺めながら、白面の衣の襟元に無造作に手を差し入れる。

  肌に触れる毛皮の感触に小さく声を上げ、白面が紅蓮を上目遣いに見た。


  「…脱がないといけない?」

  「自分だけ素っ裸でいじられてるのには飽きたね。たまにはナマで触らせろよ」

  「妖と違い、人の裸体は醜いわ………」


  見せたくない、と暗に含ませる白面を無視して、紅蓮は衣の襟を左右に開いて白い肌を外気に晒した。

  紅蓮よりもやや小ぶりな、それでも人としては大きな乳房が零れ落ちる。

  先端から乳輪にかけての色が全く同じ濃さの桃色で、それこそ大き目の桃のような胸。


  持ち前の暗く沈んだ目元から、ほんの少し恨めしそうに視線を下ろす白面。
  紅蓮は甘い香りに黒蜻蛉から視線を外し、相手の乳房の形に少し驚いたような顔をしてみせる。


  「ほぉ、可愛いじゃない。……もっと露骨にやらしい色かと思ってた。
   …これは中国の香?贅沢だね」

  紅蓮が爪の先で乳房の先端をつつくと、ただでさえ興奮して赤くなっていた白面が強い酒を飲んだように顔中を火照らせる。

  紅蓮は白面の白桃を鷲づかみにして感触を楽しみながら、相手の衣のすそを逆の手で引き上げる。

  同じく泣きそうなほど白く丸い尻が外気に触れると、白面が少々困ったような目をして紅蓮に言葉を降らせた。


  「何をする気?」

  「別に犯すつもりはねぇよ、第一“モノ”がねぇだろ。
   ……ただ、もうちょっと深く触りたい」


  乳房を離し、相手の腰を両腕で抱き寄せる紅蓮。
  白面が短く息を吐き、体の前面に感じる紅蓮の柔らかさに目を細めた。

  自分の体の要素に、力強さが加わったような紅蓮の体。

  しなやかな毛皮の奥に、大きく張りのある女肉が詰まっている。


  白面の背中や尻を撫でながらに抱く紅蓮の腕に、部屋を舞っていた黒蜻蛉がどこか遠慮がちにつぃ、ととまった。



  「……温かい………おい、一つ聞いてもいい?」

  「…ん……何…?」

  「何故私を選んだのか」


  またか、と白面は内心ため息をつきながら、自分の乳房で紅蓮の乳房を押しつぶす。
  返答を待って切れ長の目を向ける紅蓮に、視線を合わせながら呟くように言う。


  「貴女が私と……」

  「同じ臭いがするから?……そんなつまんねぇ答えを聞き続けたいワケじゃねぇ」


  手を丸い尻肉の上で滑らせ、不意に紅蓮が股間に指を当ててきた。

  今まで何度も抱き合ってきたが、性器に意図的に触れられたのは初めてだ。

  目を丸くして自分を見る白面に、紅蓮は尻の間から秘裂を静かに愛で続ける。
  ……桃色の性器が湿り気を帯びるのに、数秒もかからなかった。

  「白面さんよ……私はあんたの何?大妖白面の者がこれまで何をしてきたか、田舎のゴミ
  妖怪ですら知ってるんだ。
   ……使い捨ての道具なのか、それともそれ以外の“何か”なのか……いい加減はっきり
   させてほしいね」

  「……どうしたの……紅蓮…………
   …………今日は、なんだか……」

  積極的……そう言おうとした白面が、後髪を不意に掴まれて小さくあっ、と叫ぶ。
  引き上げられる髪に連動してのけぞる喉、そして紅蓮が己の冷美な顔を持ち上げ、薄い、白紅の塗られた唇をこじあけるように舌を伸ばす。

  白面がくぐもった声を上げると同時、太い舌がずるりと口中に無遠慮に侵入する。

  唇だけとは言わず、真正面から鼻先を押し付けて相手の口内を味わう紅蓮。

  顔をねじ込むように深く口付ける紅蓮に、白面は流石に息苦しくなり紅蓮の顔を両手で覆い、引き離そうとした。


  「……………」


  ずち、ずち、と粘着質の音を立てて、長い舌が少しずつ口から零れてゆく。
  数秒後ぬるりと白面の唇の紅を全て攫いながら引き抜かれるそれ。

  2,3度軽く咳き込んでから自分を見上げる目に、紅蓮が口元を拭いながら小さく鼻を鳴らす。


  「…よもや、とは思うが……前者の方じゃぁ、ねえよな………?」

  「使い捨ての道具?………見くびらないで、私は道具なんかと寝ないわ」

  「…じゃあ、私は何なんだ?道具でなくて…?」


  紅蓮が相手の腋に手を通し、白く柔らかい上半身を自分の乳房に押し付ける。

  既に長時間の愛撫や抱擁でとろけきった白面の股間から、紅蓮の下腹部に透明の愛液が糸を引いて滴った。

  夏の気温と興奮で全身にうっすらと汗を滲ませた白面が、紅潮した顔を少しだけ翳らせて視線を細める。


  「…………オトモダチ、じゃ嫌なの?」

  「あぁ、嫌だね。……オトモダチってのは、こんなにしょっちゅう二人きりで抱き合うモンか?
   ……それに……白面の者のドぎつい風評の前に、オトモダチなんて関係は無意味だろ」

  腕を下げ、濡れそぼった性器の外皮を再び指でこじあける紅蓮。
  白面が片目を閉じ、荒い呼吸を繰り返しながら足首をぴん、と伸ばし、すがりつくような目で紅蓮を睨んだ。


  「………私は裏切らないわ」

  「未だに保証がねぇ。
   ……はぐらかさずに答えろよ」


  紅蓮が白面を抱いたまま、片手で性器と尻みぞをゆっくりと撫で付け始める。

  外皮の中の秘肉と、尻の入り口を愛液を引き伸ばすように捏ねまわされる感触に、白面がうわずった喘ぎを上げて背筋を仰け反らせた。

  白面の汗で濡れて尖った紅蓮の毛が、彼女の胸の先端や腹をちくちくとつつく。


  「………………貴女だけ……」

  「?」


  喘ぎながら静かに答えた声に、紅蓮が手の動きを止める。

  火照り果てた顔の白面が、まるで熱病に侵されたような目をそらし…紅蓮の肩に鼻先をうずめながらまぶたを閉じた。


  「……いいじゃない、そんなこと………これだけ無防備に身体を晒してるんだから…」

  「………答えねぇ気か?」

  「貴女も私が嫌いじゃないでしょう?……疼いてきたわ………膝立ちになって」


  顔を上げて命ずる白面に、紅蓮は数秒不満そうな顔をした後しぶしぶ相手を解放する。

  己の上から身を起こす白面に尻を向けて、ゆらゆらとハンモックのように揺れる霊絹に肘膝をついた。

  白面が欲情してとろけきった目で紅蓮の丸く大きな尻を眺め、その盛り上がった尻肉に両手をつく。


  「…何のマネだ?…モノもねぇくせに」

  「貴女こそ、どういうつもりで……………
   ……まぁ、いいわ…………もう抱くだけじゃ収まらないもの」


  呟いた白面がゆっくり、焼けた鉄に迫るような慎重さで股間を紅蓮の尻に近づける。

  愛液にまみれてほんの少し開きかけた性器が、紅蓮の黒い尻の下側に接触した。

  ぬちゃ、と卑猥な音を立てて触れ合う秘裂……最も敏感な股間で紅蓮の体温と肉の柔らかみを感じた白面は、ぞくぞくと全身を震わせて悶絶した。


  ゆっくり、味わうように腰を上下させて陰唇を捏ねまわすと、尻を突き出した紅蓮の頬もうっすらと赤みを帯びる。

  紅蓮の尻の丸さと柔らかさを腹と股で嫌というほど感じながら、白面はだんだんと性器を擦りつけるペースを早めてゆく。
  次第に紅蓮の秘裂からも生暖かい汁が滴り始め、霊絹にぽつぽつと音を立てて降り注いだ。


  「っ、…ん………!…いやらしい、尻ね……大きくて、熱くて………
   ……この中に一番敏感な部分をねじ込むなんて………男は正気じゃないわ…っ……」

  「ぅッ!ッ……い、いやらしいのはお互い様だろうが………もうそろそろ辛いんじゃねぇか…?太股までぐしょ濡れだぜ……」


  弾けるような肉の跳ねる音が響き、白い股が黒くふっさりとした尻を連打する。
  紅蓮がぎゅっ、と尻肉を引き締めて耐えると、硬くなった丸尻に白面が泣き声のようなうめきを上げてぬるぬると滑る股間を押し付けた。

  足を広げ相手の尻たぶを両腿で挟むように、これまでの人生で一番あられもない体勢で紅蓮に覆い被さる白面。

  紅蓮の背で汗だくになった乳房を潰すと、白面は静かに体中を震わせて達したようだった。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


  背の上でぐったりとなった白面の顔を首を捻って流し見ながら、紅蓮は膝と肘を伸ばして霊絹の上に倒れこむ。

  長い距離を全力疾走したような激しい呼吸を繰り返す白面が、今にも死に絶えそうな顔でゆっくりと唾を飲む。

  ぅぐ、と苦しげな音・・・・・・・・・陽はすでに、落ちていた。























                      ・・・・・また・・・・・・・




                      ・・・・また・・バチ当たりな者めらがおる・・・・・・


                      女の匂いじゃ・・・・・女・・・・・・・人の女じゃぁ・・・・・・






  日暮の声も失せた、暗く蒼い闇のこもった荒れ寺・・・・・・・・・

  腐った軒下からぐちゃり、ぐちゃりと、耳ざわりな泥を捏ねるような音がのし上がってくる。

  空にかかった半月の光に照らされた障子に、太く、ごわごわした怪異。




                      ・・痴れ者・・・・・骨ごと皆で喰ろうてやろう・・・・・・・

                      それがええ・・・それがええ・・・・・・仏様のバチじゃぁ・・・



                      わしゃぁ耳がえぇ・・・・・仏様の声が聞こえるかも知れん・・・・・・・


                      ならばわしにゃ舌ぁくれぇ・・・・・・極楽に念仏が届くかも知れん・・・・・・




  細かい鉄の重なり合うような濁った声を立てる影が、すとん、と障子を絶妙な強さで脇へ押し飛ばす。

  肉を潰すような足音と共に室内に侵入したのは、全身が微細な赤い毛に覆われた、巨大な猿のような生き物。

  その肩口と胸には合計四つの血にまみれた顔面が浮かび、かちかちと欠けて細かくなった歯を噛み鳴らしている。

  泥と血、そして得体の知れない肉塊で汚れた足が、畳の上に赤黒く醜悪な痕跡を残して獲物の方へ向かう・・・・・・


  妖は絹の塊の上から匂ってくる強い雌香に、一斉に全ての鼻をひくつかせてぐるりと頭部の目玉を縦に転がした。




                      ・・・・・なんと品の無い臭いか・・・・鼻が曲がりそうじゃ・・・


                      なんと、この女・・・・・べべを着とらんぞ・・・・・・・


                      まっ裸じゃ・・・・村人が久々に贄(にえ)でも出してくれたのかのぉ・・・・・・・・




  ころころと笑う顔面・・・・・・そして妖の太く脂ぎった腕が、ずい、と仰向けになった女の乳房に向かってのばされる。

  まずは2つのまりのような肉をむしりとり、存分にかぶりついてやろう。


  そう思って鋭い爪が女の柔肌に触れようとした瞬間。




                      !!!!!




  声も無く驚愕する妖の腕が、強引にばちばちと鋭い音を立てて引き裂かれた。

  妖の腕を掴み、相手以上に鋭く太い爪を突き刺す黒い影。


  ・・・・・・気配すら感じさせずに外から戻ってきた字伏せが、妖を背後から襲い、両腕の肉をこそぎ取ってゆく。

  派手に血飛沫を上げて壊されてゆく腕に、妖は絶叫し、足をばたつかせ全ての顔面を裂けんばかりに歪めて絶叫した。




                      ぎいいぃぃやあああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!


                      なっ、、、、長飛丸ぅウゥぅぅううううーーーー!!!




  ズシ!!と、無慈悲な紅蓮の稲妻が妖の背面を撃ち、妖の目や口から雷光がほとばしる。

  そして阿鼻叫喚を散々撒き散らしてもだえる妖の肉体が、次の瞬間には激しい破裂音を響かせて粉々に砕け散った。


  真っ赤に染まる室内、けだるげに半身を起こした白面の身体にも、赤い斑点がいくつも飛び散っている。

  紅蓮は僅かに唇の狭間に侵入した肉片を不味そうに吐き出しながら、霊絹の上の白面にぐい、と顔を傾けて言った。


  「・・・・・・・・・誰だ、今の間抜けな名前」

  「・・・どうってことないわ・・・・・・・・・ほんの少し・・・わずらわしいだけの名・・・・・・・・・」


  豊かな乳房を片手で覆いながら、汗に濡れた髪を掻く白面。

  紅蓮は妖の死骸を眼中に無いかのように踏み砕きながら、霊絹に片手をかけ、未だ相手の体液の残る尻を押し上げる。

  一瞬物欲しそうな目付きをした白面に小さく鼻を鳴らしながら、紅蓮が白面の額や胸元についた血を指で拭った。


  「私と間違えるなら、そいつも字伏せってことか・・・・・・・・・俺が殺っちまっていいんだろ」

  「・・・ええ・・・・・・固執するほどの相手じゃない・・・・・・・・・
   ねえ紅蓮、どこに行ってたの?」

  「散歩だよ、悪ぃか」


  答える紅蓮の口元に顔を寄せ、白面がすん、とその臭いを嗅ぐ。

  妖の死の臭いの他に、若い女の使う香水の臭いが混じっていた。


  「・・・・・・・・・つまみ食い付きの散策ね。」

  「あんたに抱かれた後はムショウに腹が減るんだよ。」


  見かけだけは上等だから、と零す紅蓮に、白面は無言で両腕を伸ばし、小さく笑う。


  「抱いて。一人で寝かせておいた罰よ」

  「・・・・・・けっ・・」


  白面の脇に腕を通し、裸体のまま抱いてやる紅蓮。

  白面は再び己の元に戻ってきた身体の熱を味わいながら、紅蓮の胸元に顔をうずめて息を吐く。

  ・・・・・・隅の畳に、今日はここに泊まることにしたのだろう・・・・・・黒蜻蛉が未だ外に出ずに羽を休めていた。


  「・・・・・・・・・私が抱けるのは・・・貴女だけ・・・・・・・・・妖や人は皆私を憎むし、滅ぼそうとするわ・・・・・・・・・でも、貴女だけは・・・・・・」

  「・・・・」

  「・・・嘘じゃないの・・・・・・・・・貴女に言った事に嘘は一つもない・・・・・・・・・・・・・・・
   ・・・・・・同じ“暗黒”だから・・・・・・私は貴女に全てを委ねられる・・・・・・・・・・・



   ・・・・・紅蓮・・・・・・死ぬまで・・・一緒にいてくれる・・・・・・?」



終幕


あとがき(匿名影)

チャームポイントは黒蜻蛉君です!!!(いきなり何
どうも、匿名影でございます。今回の文はいかがでしたでしょうか。
原作でほんの少ししか出番の無い白面の化身を主人公に持ってきた本作。実物の恐ろしげなイメージよりも、恋する女のイメージを優先してみました。
自分以外の全てを滅ぼそうとする恐怖の化身、白面。
そんな彼女が唯一心を開ける者、滅ぼさずにいられる者は、白面と同程度に汚れ、闇に染まった紅蓮のみ。
原作で白面が紅蓮を道具と見ていたか、友と見ていたかは分かりません(むしろ前者の可能性が高いかも)。
しかし・・・・・・しかし二次小説じゃ全ては影の思うがままじゃーーー!!\(。∀゚)ノシアヒャヒャヒャ

ハイ、ちょっと傲慢になってみました。すいません(。。;
結局何が書きたかったかというと、Hシーンもそうですが世の闇に潜み、悪として生きる大人の恋愛のようなものを具現化してみたかったのです。
この世の何よりも汚れた自分だから、同じ闇に染まった者しか愛せない。
しかしだからこそ強くお互いを掴み、離れずにいられる・・・・・・
と、そんなちょっとほろ苦い妄想をぶち込んだ文章でありました。
ちなみに一番上手く描けたな、と自画自賛するのは恐怖の二大妖怪に切り裂かれたお猿さんです(・∀・

絵師雪見の後書
影様から「白面の乳は桃っぽく」とリクを頂いてました
丸さと瑞々しさを表現しようと頑張りましたが
さて上手く行っているかどうか…(;´Д`)アアン