ガーディアン第三十話

　私の名前は真柴美恵。花も恥らう中学生の乙女で、勉強はちょっと苦手だけど、ダンスがとっても得意な女の子なの。楽しい学園生活を送っていた私なんだけど、ある日天界からやって来た自称天使のエンジェルタートル君（外見はどう見ても毛が生えた亀なんだけど）と出会ったの。何でも天界から逃げ出した邪神が地球に下りて来て、地上に混乱をもたらそうとしているらしいの。邪神達と喧嘩するのは真っ平御免……もとい、戦う力を持たないと言い張るエンジェルタートル君のお願いで、私は正義のヒロイン、サクリファイス・ミエとなって、地上の平和を守ることになったの。

「ところで、タートル君。サクリファイスって、どういう意味なの？」
「もちろん、生贄だよ」（可愛らしい声で）
「な、な、な、なーんで！？」（がびーん）

「美恵ちゃん、大変だー！」
「なにー、朝っぱらから？」

　私が目覚まし時計を見ると、まだ朝の八時。土曜日の朝ということを考えれば、早朝に等しい。

「とにかく起きて、テレビを見てよ。大変なことになってるんだ！」
「うーん、あとちょっと寝かせて」

　ぬいぐるみらしい可愛い姿で飛び回るタートル君の叫び声を無視して、私は布団に潜る。実は昨日も邪神と戦ったので、疲れが抜けていないのだ。

「起きて、起きて、起きてよ！」

　タートル君が可愛らしい声で必死に私を起こそうとするが、無視、無視、無視……。

「仕方ない、こうなったら……」

　布団を掻き分けて、タートル君がモゾモゾと私の股間の方へと入ってくる。

「何してんのよー！」
「ぐはっ！」（野太い声で）

　私はタートル君の甲羅を掴むと、思いっきり壁面に叩きつけた。可愛いタートル君だが、油断するとすぐエッチなことをしようとするのだ。
　怒りのあまり目が覚めてしまった私は、タートル君の勧める通り、しぶしぶリビングのテレビをつけることとなった。テレビ画面にアニメが映る。最近は土曜日の朝もアニメがやっているらしい。

「違う、違う、チャンネル違う」

　タートル君はリモコンを操作すると、ニュース番組に回す。画面には中継で、何処かの建物とレポーターが映っている。

「現在、篠原議員が犯人に捕らわれており、警察と睨みあいが続いております」
「篠原議員？」

　レポーターの言葉に聞き覚えがあり、私は首を捻る。

「確か、ゼネコンから政治献金を受けている疑惑があって、問題になった議員じゃなかったっけ？」
「おお、よく知ってるね、美恵ちゃん」
「だって、毎日ネットでニュースは読んでるから。しかし、今時ゼネコンから献金貰うかな、普通」
「……美恵ちゃん、意外に辛辣だね」

　タートル君と私がのん気に会話している間に、画面の中からどよめきが上がる。

「犯人が出てきました」
「うげっ」

　姿を現した犯人の姿を見て、思わず私は声が出た。長く美しい黒髪に鮮血のようなルージュ、黒い上下のビキニに、巨大な肩アーマーで漆黒の長いマントを止めた女だ。そのため息が出るほど美しい顔には、もちろん見覚えがある。

「聞けぃ、人間共！　我が名は暗黒神ダークサンシャイン！　この男は人質に取らせて貰った！」

　ダークサンシャインの大声に、警察官や報道関係者の間に動揺が走る。

「さてと、今日の朝ご飯は何があるかな？」

　それとは反対に、私はキッチンに入って冷蔵庫を漁る。

「ちょ、ちょっと美恵ちゃん！　何してるの！？」
「何って……朝ご飯の準備」
「み、美恵ちゃん……」

　呆れて声が出ないタートル君を無視して、私は卵を数個取り出して目玉焼きを作り始める。トーストにパンを入れたときに、テレビからダークサンシャインの声が聞こえてきた。

「貴様ら、愚かな人間共が幾重にも包囲を固めても無駄だ！」
「要求は何だ、ダークサンシャイン！？」
「サクリファイス・ミエをこの場に連れて来い！」

　私の名前を呼ぶ声に、げんなりとして思わず大きなため息が出てしまう。どうも最近の邪神達は私の注意を惹き付けるために、悪事を働いている傾向がある。昔はダムや火力発電所を密かに破壊しようと狙ったりしていたが、最近はパッタリと社会を混乱させようという意図が無くなってきた。それどころか、派手に露出する割には、いいんだか悪いんだか分からない悪事を働くようになってきた。談合事件の疑いのある会社ビルを爆破するとビルの前で脅したり、暴走族を捕まえてきて車やバイクを一台づつマスコミの前で破壊したり、裏金を作った公務員を捕まえて無理やりゴミ掃除をさせたりしている。その度に派手に現れては、私を呼ぼうとするのだ。

「ほら、美恵ちゃん。呼んでるよ！」
「知らない」
「そんな……人質が居るんだよ！」

　タートル君の切羽詰まった声を無視して、出来上がった目玉焼きとトーストを皿に置く。テレビの中では、尚も警察とダークサンシャインが応酬を繰り広げている。

「早くサクリファイス・ミエを呼べ！　呼ばないと人質がどうなってもいいのか！？」
「ま、待ってくれ。こちらからは連絡がつかない！」
「早くしないと、こいつに酷いことをするぞ」

　ダークサンシャインの言葉に、辺りが一斉にどよめくが、私はモソモソとトーストを齧る。タートル君が「大変だ、人質が！」などと連呼しているが、あえて気にしないことにする。

「ほら、とっとと喋れ」
「ひいぃ、確かに○○社から現金五十万円を貰いました」
「五十万円？」
「す、すみません。原価にして、二千万円近くの株も貰いました」

　ダークサンシャインに脅されて、議員バッジをつけた男が罪を告白する。それからはテレビで公開懺悔ショーになった。金を貰った見返りに何をしたか、誰を脅したか、誰が事件に関与しているかなどと議員は叫びまくる。途中で、事情を聞きつけた地検の特捜部がやってくる始末だ。そんな様子に呆れたのか、タートル君も私に何も言って来ない。
　トーストと目玉焼きを食べ終えたが満足できず、私はシリアルも食べ始めた。その頃になるとゼネコンの悪事はあらかた吐き出していて、議員は私生活の悪事まで言い始めた。

「妻に内緒で、愛人を二人囲っています」
「ほら、もっと言え」
「スカトロプレイが大好きで、二人に強要しています！」

　涙と涎でグチャグチャに無き濡れた議員は、尚も罪を告白し続ける。最早政治生命は絶たれただろう。あまりの悲惨な出来事に、私は気の毒になってきた。

「はぁぁぁぁぁ、気が乗らないけど、そろそろ行くわ」
「ああ、やっと戦ってくれるんだね、美恵ちゃん！」

　嬉しそうなタートル君とは裏腹に、ため息をついた私の気分は沈む一方だ。朝食が胃に入って居なければ、胃痛が起きていたに違いない。

「ミエ・ゴットン・トゥー・ファーザー・サクリファイス。最終セイフティロック解除、合体承認。へーーーーんしん！」

　私の身体が光に包まれ、パジャマが消え去ってレオタードのように布地が少ない服が体を包む。これだけならいいのに、胸、腕、肩、腰、膝、額と巨大なゴテゴテとしたロボットのアーマーが私を覆う。

「サクリファイス・ミエ、見参！」
「わー。凄いよ、ミエちゃん」
「どうでもいいけど、中学生がノートに書いて、数年後に発掘したときに悶絶するような魔法の合言葉は止めない？」
「ふっ、何を言っている。格好いいじゃないか」（若い男の声で）

　オタクでも微妙と思うようなセンスをしているタートル君を無視して、私は玄関にズシズシと向かう。鎧は重たいが、私にはその過重は掛かっていないので、楽なものだ。

「それじゃ、行ってきます」
「ファイトだ、ミエちゃん！」
「サクリファイス・ウィング！」

　私の呼び声に応じ、空の彼方からステルス型戦闘機が飛んできて、背中へと合体する。

「ねえ、戦闘機と合体するの止めない？　天使の羽とかがいい」
「それだとありきたりで面白く無いよ」
「私はタートル君の趣味のために戦っているわけじゃないんだけど……」

　とほほ、何だか不幸な気がすると思いつつも、私はサクリファイス・ウィング（ステルス型戦闘機）の力を借りて急上昇した。

　サクリファイス・ウィングの最高飛行速度はマッハ３だ。つまり、十秒もしないうちに私は現場にたどり着いた。もちろん、最高速度は出していない。

「サクリファイス・パンチ！」

　真上から急降下した私の拳による一撃を、パッと上を見たダークサンシャインが片手で受け止める。腕を伸ばしたまま、私のパンチを受けきったダークサンシャインだが、その衝撃でアスファルトを割って、腰まで地面にめり込んだ。

「さあ、今のうちに逃げて下さい」
「……あ、ありがとう」

　ダークサンシャインがアスファルトの地面から、自分の体を抜き出しているうちに、人質を逃がす。議員は口ではありがとうと言いながらも、生気の無い足取りで去っていく。早朝とはいえ、全国のお茶の間に自分の性癖まで知られたのだ、これ以上は生きていても仕方ないと思っているのだろう。

「ミエちゃん、来てくれたのね！　あっ、ちょっと待ってね」

　飛び跳ねんばかりの勢いで喜ぶダークサンシャインは、そそくさと後ろを向くと、何処からともなくコンパクトを取り出して鏡を覗き込む。何で私が来ると、お化粧直しをするかなあ？

「これでよしっ！　お待たせー！」
「さあ、警官の皆さん。人質は居なくなったので、やっちゃって下さい！」

　くるりと振り向いたダークサンシャインの姿に、密かに移動していた私は警官隊の背後から大声で叫ぶ。まるで手下をけしかける怪人で、こうなるとどっちが悪人なんだかわからない。

「すみません、サクリファイス・ミエさん。私達ではダークサンシャインは、ちょっと敵いそうにありません」
「えぇーっ！？」

　拳銃を向けて包囲していた警官達だが、早くも腰が引けている。機動隊員もそろそろと退却を始めていた。

「だって、お巡りさん。人質を取っていたんだから、逮捕しないと」
「ですが、あの人はライフル弾を目に打ち込んでも、瞬き一つもせずに平然としてたんですよ」
「対戦車砲を打ち込んでも、無傷でしたし」

　既に攻囲を解いて、警官達は撤収を開始していた。その手際があまりに鮮やかすぎるので、何も言えない。

「それに、サクリファイス・ミエが来たら、速やかに後は任せるようにと緊急対応マニュアルに記載してありますので」
「えーい、日本の公務員は一体どうなってるのよ！？」
「いや、日本以外でも無理だと思いますが……後はお任せします」

　あっという間に周囲が無人となってしまった。マスコミ関係者も、警察に引き連れられて、退避させられてしまったらしい。残ったのは私とダークサンシャイン……。

「やっと二人っきりになれたわね」
「じゃあ、そういうことで」
「ちょっと待ってよ！」

　にじり寄るダークサンシャインに背を向けた私を、彼女は肩をがっしりと掴んで止めた。

「逃がさないわ。早速だけど、封神界に連れて行くわよ！」
「やだ、やだ、やだ……わーん！」

　次元に裂け目が現れて、嫌がる私をダークサンシャインはその中に引き摺りこんだ。

　封神界というのは亜空間の一種で、ここでは邪神の力が十倍にパワーアップするという。対戦車砲でもビクともしない敵が、十倍にも強くなるんだから、堪ったものではない。

「……何よ、これ？」

　連れて来られた場所は、ピンク色の壁紙に丸い円形のベッドがある部屋だった。封神界は邪神の思うがまま地形などが作られるが、この場はとても戦う場所に見えない。

「何で、ラブホテルみたいなの、この部屋？」
「だって、ラブホテルですもの」

　ベッドに座って「の」の字を書きながら、恥らうダークサンシャインに私は思わず冷や汗が出る。男の人なら超絶美人で色気満載の女性が、顔を赤く染めているの姿は喜びそうだが、私は女だ。そりゃ、ちょっと私もクラクラしちゃうけど……。

「ダークサンシャイン、勝負だ！」
「セックス勝負？」
「違ーう！　普通に勝負だ！」

　すっとぼけたことを言うダークサンシャインを前に、私は両手を胸の前に構えるウルトラマン風のファイティングポーズを取った。
　読者の皆様はもうお気づきかもしれないが……その……邪神達は私の体を狙っているのだ。初めて邪神達に挑んだ私は、封神界に連れて来られて、何日にも渡って輪姦された。三日間の前戯を終えてから、処女を奪われた私は快楽の地獄に落とされた。
　数日後、溢れんばかりのお土産を貰って見送られた私は、それを放り捨てて必死の思いで家にたどり着いた。そこでタートル君に初めて真実を語られたのだ。この世に現れた邪神達はあまりにも強力なので、力で止めるのはほぼ不可能。そのために、私は彼女達を静めるための生贄に選ばれたのだ。サクリファイスは、文字通り生贄という意味だったのだ。真実を知った日、私はタートル君を便所に流してから、涙が涸れるまで泣いた。生贄に耐えられるような体への変身能力を授かった私は、毎回邪神達のオモチャにされるのだった。

「勝負よ、ダークサンシャイン」
「勝負って言っても……か弱いミエちゃんに暴力は揮えないわ」
「何をー！」

　意気込む私に、ダークサンシャインは困った顔をする。恋人に我侭を言われて、参ったなあという雰囲気を醸し出す彼女に、私はますます腹が立つ。

「だってねぇ……ミエちゃん、ちょっと握手してみて」
「握手？」

　むかつく程にスラリと綺麗なダークサンシャインの手を、私は言われるがまま握る。

「強く握ってみて」
「後悔しないでよ」

　私はぐぐっと握る手に力を込めた。サクリファイス・ミエの強力アームは、鉄骨を捻り潰すほどの威力がある。だがどんなに力を込めても、ダークサンシャインの細い手はピクリともしなかった。

「やっぱり……これじゃ、封神界の外でも全然駄目よ」
「うー……あ、あいたたたたた！」

　ダークサンシャインが握り返すと、私の手がミシミシと音を立てた。彼女はほとんど力を込めているように見えない。痛がる私を見て、ダークサンシャインは慌てて手を離す。

「ごめんなさい、大丈夫？」

　彼女は私の手を両手で取ると、アーマー越しに優しく撫でる。好意は少し嬉しいのだけど……く、悔しい。

「こうなったら、必殺技よ！」
「撃つの？」
「………」

　冷静に聞き返すダークサンシャインに私は絶句する。サクリファイス・ミエのスーツには、多数の必殺武器が装備されている。だが、どれも問題があるのだ。ビルを十棟貫通する程の威力があるが、代わりに腕が吹き飛ぶアームレーザー。山に穴を大きく穿つほどのエネルギー波を放つ代わりに、子供が産めない体になってしまうブレストエナジーキャノン。街一つを吹き飛ばす威力だが、自分の体を完全に破壊するファイナル・サクリファイスなど、どれ一つ取っても犠牲を要求する。「流石は名前にサクリファイスって、つくだけあるね」と脳天気に言ったタートル君を、私は手賀沼に沈めたことがある。

「こうなったら、ブレストエナジーキャノンを……」
「わーっ、待って頂戴。自分の体は大事にしなさい。親御さんが悲しむわ」
「人を散々強姦しておいてよく言うわね」

　必死に説得するダークサンシャインに、私はじとっとした目を送る。邪神達の中で私とエッチすることに一番執着しているのは彼女だ。こちらとしては堪ったものではない。

「えっと、最終的に和姦になってれば、オッケーってことで」
「何よ！　こんな汚れた体じゃ、お嫁に行けないわ！」
「じゃあ、私が責任取るから。うーん、子供はアメフトが出来るくらいは欲しいわね」
「……ファイナル・サクリファイス使ってやる」
「わー、ごめんごめん。ご機嫌直して……ね、ね」

　可愛らしくお願いするダークサンシャインに、私はため息をつく。美人が低姿勢で構ってくれるのは、私が女でも確かに悪い気はしない。レイプされたとは言え、優しかったし、いつもニコニコ接して親愛の情を示してくれる。私はダークサンシャインに、いまいち恨みを抱けなかった。

「……何やってるの？」
「何って……やだわ、脱がせてるのよ」

　トラックがぶつかっても傷一つつかないサクリファイス・ミエの強化アーマーを、ダークサンシャインは新聞紙を破く如く素手でバラバラに千切っていく。

「それとも、ミエちゃんは着衣エッチが好き？」
「えーい、いきなり人の服を脱がすなー！」

　アーマーがバラバラになってしまったので、レオタード姿で私は叫ぶ。

「いつでもいつでもいつでも、エッチばっかり。ちょっとは、我慢が出来ないの！？」
「だって、我慢すると暴れたくなるんだもん」
「………」

　そうなのだ。私が生贄になっているから、邪神達は大人しくなっているのだ。サクリファイス・ミエが体を捧げなければ、彼女たちは世界の文明くらい軽く滅ぼしてしまうだろう。別に私だけがヒロインをやらなくてもいいのだが、そうしたら私の代わりに他の女の子が身を捧げなければならない。
　子犬のように潤んだ瞳で私を見つめるダークサンシャインに、私はため息をつく。男の人なら、問答無用で彼女に飛びかかるのだろうが、生憎と私は女なのだ。

「はぁ、仕方ない」
「エッチおっけー？」

　目を輝かせるダークサンシャインを無視して、私はベッドの上に大の字に寝転がった。

「さあ、犯せー！　廃人になるまで、好きに犯せー！」
「……そう言われると、手を出し辛いんだけど」

　大声で喚く私を前に、彼女は困ったように乾いた笑いを浮かべる。それでもベッドの上に上がると、彼女は私を正面から抱き締めた。

「いい匂い……ミエちゃん、大好きよ」
「ふん、調子いいんだから」

　髪に顔を埋めて、ダークサンシャインはすんすんと匂いを嗅ぐ。美しい女神のそんな行為に、私は顔が赤くなるのがわかった。
　ダークサンシャインは、その気になれば世界を灰にするような強力な力を持った、邪神達のリーダーだ。でも私みたいな子供にかまけて、彼女は破壊なんかちっともしようとしなくなった。天界の力を与えられたサクリファイス・ミエは、邪神達を誘惑する力を持っているらしい。その力に縛られて彼女は私に構っていると一度指摘したことがあるが、ダークサンシャインは「ミエちゃんが人間の姿で居るのを見たことがあるけど、それでも好きな気持ちは変わらなかった。それがとっても嬉しかった」と言っていた。彼女も私が邪神を静めるための生贄なのは気付いているが、好きな気持ちは別だと主張していた。そんなことを言われても……私は困る。

「ミエちゃん……」

　キスで唇を奪われながら、ダークサンシャインに胸を優しく触られる。本当はキスをされているときに体は弄って欲しくないのだが、彼女は我慢が出来ないと言っていた。キスだけも一杯してくれるのだが。

「ん、あっ、ああぁん、やっ、ダメぇ……」
「ふふっ、ミエちゃんったら、敏感なんだから」

　ダークサンシャインは軽く勃起し始めた乳首を、レオタード越しに指でなぞる。彼女の軽く伸びた爪がつつっと胸の先端を撫でる度に、身体が震えてしまう。彼女の瞳は欲情しきった目で私を見ている。

「び、敏感な体にしたのは誰よ……」
「うふふ、私かしら……ああ、もう辛抱たまらない」

　彼女は私のレオタードを爪でピッと切り裂くと、自分もビキニを脱ぎ捨てた。その股間からは、その……巨大なオチンチンが生えている。

「ミエちゃんのその台詞、そそるわ……前戯の途中なのに、もうビンビンになっちゃって、我慢できないの」
「ちょっと待ってよ。何でそんなに興奮してるのよ！？　ＡＶの見過ぎじゃない？」
「うーん、ミエちゃんのエッチな同人誌、読みすぎたかしら」

　ダークサンシャインの言葉に、私はがっくりする。

「だ、誰よ、そんなものを書いてるの！」
「うちの部下。結構私達の間では流通してるわよ」
「あんた達、何してるのよ……」

　ダークサンシャインが言っている部下というのは、悪の組織などでお約束の戦闘員のことだろう。全身を黒タイツで覆っている格好で、掛け声がやたら甲高いのだ。一度大地震の被災地を助けるために、ダークサンシャインにお願いして手助けして貰ったのだが、恐ろしいことにワラワラとこの戦闘員が十万人近くも出てきた。おかげで瓦礫の下に埋もれた人達が大勢助かったのだが……ダークサンシャインに助けて貰った代償は大きかった。思い出したくも無い。

「あ、そういえば、そろそろ等身大人形が完成するわね。買わないと」
「あ、あんた達ねえ……人の許可も取らずに、勝手なことをするな！」

　思わず叫ぶ私の前に、ダークサンシャインは太くて大きなオチンチンを突き出す。その迫力に、思わず声が出ない。

「ミエちゃん、舐めて……」
「……まったく、自分勝手なんだから」

　私はダークサンシャインの長い棒を握ると、口でパクリと咥えた。絶世の美女の股間に生えた凶暴な男性器は酷くアンバランスで、それが妙にエロチックだ。

「あん、いきなり咥えてくれるなんて嬉しい……ああっ！」

　亀頭の周り（カリって言うらしい）を舌でペロペロと嘗め回す。それだけでダークサンシャインの身体が、ビクビクと震え始める。彼女の話によると、ダークサンシャインは自分で好きに性器を生やせるらしい。「もちろん、精液はちゃんと精子がたっぷりで、通常の十倍濃縮よ」と言った彼女の頭を、私は思いっきりグーで殴ったことがある。

「う、うわっ……ミエちゃん、上手い……上手すぎるわ」

　徐々に口に溜まってきた唾液を、私は彼女のオチンチンに何度も擦り付ける。ねっとりと茎から流れ落ちる温かな唾を、何度も執拗にまぶしているとダークサンシャインの目が快感で虚ろになっていく。

「ん、あむっ、ふむ……ん、んんっ、あむ」

　彼女の大きく太いオチンチンは、先っぽだけでも口が一杯になってしまうくらいだ。このオチンチンで無理やり乙女の純潔を奪われたと思うと、ちょっと頭に来る。ちょっとしか頭に来ないのが、また悲しいのだが。

「やん、ミエちゃん。歯、立てちゃダメ」

　軽く上の歯を当て、下からペロペロとオチンチンを舐めると、彼女は震える声を出して悦ぶ。初めてフェラチオさせられたときは怒って噛み付いたのだが、喜ぶだけだったので、もう噛み千切るのは諦めた。ダイヤモンドか何かでこの太い棒は出来てるのか？

「もうダメっ。ごめん、我慢できないわ」
「う、うぐっ！」

　ダークサンシャインはいきなり私の頭を掴むと、思いっきり腰を突き込んだ。長いオチンチンの先端が咽喉の奥を直撃して、私は呻いた。

「ごめん、ごめん、ごめんね……で、でも止まらないの！」
「げ、うげっ、うぐ……」

　一方的に腰を動かされて、彼女のオチンチンが私の咽喉を犯す。粘膜に硬い棒が当たって、凄まじく苦しい。ダークサンシャインによると、イラマチオと言うらしい……って、冷静になってる場合じゃない。こういう場合はリバース（嘔吐）してしまうのが普通なのだが、変身して異常に頑丈になっている私は、困ったことにこんな陵辱にも耐えられるのだ。

「あ、ああん、ひゃん、やぁん」
「う、うぐ、うぐぐ、げはっ！」

　無理やり口の奥を犯されているのに、少し苦しいだけで体は耐えている。途中で私が中断しないので、すぐにダークサンシャインの顔が切なそうな表情へと変わっていく。

「で、出ちゃう、出ちゃうわ。飲んで、ミエちゃん……飲んで」
「ん、んんっ……んーっ！」

ばびゅっ、びゅるるる、びゅっ、びゅるるる……

　目で嫌だと言う私を無視して、ダークサンシャインは思いっきり咽喉の奥に精液を出した。正直に言うと嫌なのだが、仕方なくサービスで彼女の精液を飲んでやる。

「ふぁぁ……」
「うぐ、ぐっ、ん……」

　ビクンビクン射精し続けるオチンチンを咥え、私は懸命に精子を胃に流し込む。苦くてしょっぱい精液を飲む、飲む、飲……ちょっと待ってよ、出し過ぎじゃない？

「うっ、うー、うー！」

　とんでもない量の精液に、徐々に胃が一杯になってくる。まさか、おしっこしてるんじゃないでしょうね？　だが幸いなことに彼女が出したのは精液のみだった。たっぷりと二分近く飲み続けて、私はようやく解放された。

「ごめん……大丈夫！？」
「うー、気持ち悪い……」

　オチンチンを抜いてダークサンシャインは心配するように声をかけてくる。あれほどの量のドロドロを飲んだのに、身体が強化されているので少し気持ち悪いだけで済んだ。変身してなかったら、吐いてたどころの騒ぎじゃないだろう。

「ん、あむっ……」
「み、ミエちゃん！？」

　毒を食らわば皿までだ。一度口から離れたオチンチンに顔を近づけると、ペロペロと舐めて精液と唾液を拭いてやる。全く、何でこんなサービスまでするようになっちゃったんだろう。

「はい、おしまい」
「ミエちゃん……私、嬉しい」

　私のご奉仕（こう言えばいいのだろうか？）に感動したのか、ダークサンシャインは潤んだ瞳で私を見ている。そんな彼女の表情には、女の私でもグッとくるものがあるが、それを私は無理やり押し隠す。

「はいはい。それじゃ、すっきりしたところで、またね」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「うわっ！」

　ベッドから下りようとした私を、ダークサンシャインが思いっきり抱きついて引き止める。ロケットマシュマロおっぱいが背にぴったりくっついて、その大きさと柔らかさにちょっとどころじゃなく悔しくなる。

「何よ、スッキリしたでしょう。もう帰る」
「な、何で！？　これからが気持ちいいところでしょう？」
「人の気持ちも考えずに、オチンチンを咽喉に突っ込んで、精液を飲ませるような人……じゃなくて、神様のことなんか知りません」
「そんなー」

　私はベッドから逃げようとするが、ダークサンシャインは柔らかい体で私を抱き締めて離さない。その腕は鉄で出来ているのかと思うくらいピクリともせず、一向に抜け出せない。

「ごめん、謝るからー」

　涙で顔をグシャグシャにする女神に、私は思わず力が抜けた。美が結晶したかのような神様は、泣き顔まで美しい。そんな姿を見たら、もう何も言えない。

「わかった、わかった。最後までさせてあげるから」
「良かったー……ありがとう。もうしないから」
「はいはい、絶対に破るんだから、そんな約束しなくていいよ」
「じゃあ、またイラマチオしていい？」
「……グーで殴るよ」
「ごめんなさい」

　調子に乗るダークサンシャインに私は釘を刺す。外見はすらりとした大人の美女なのに、言動はまるで子供だ。これではどっちが大人でどっちが子供なのかわからない。これでも何億年も生きている神様で、普段はしゃっきりしてるのだが……私の前では甘えん坊なので、時たまそんな事実が疑わしくなってくる。

「じゃあ、さっきのお礼に……」
「ちょ、ちょっと！」

　お尻に手を回すと、ダークサンシャインはコロリと私の体を転がして、逆さまにする。首を支えにして開脚している私の体勢は、丁度開脚前転している途中のような感じだ。とんでもなく恥ずかしい格好で私を固定すると、ダークサンシャインは爪先で股間のデルタ地帯のレオタードを切り裂いた。私のおま……おま……じゃなくて、股間が露になってしまう。

「ミエちゃんのオマ○コ、とっても綺麗」
「恥ずかしいことをストレートに言わないでよ！」

　超絶美女に性器を褒められて、私は真っ赤になる。どうしようもない痴女だが、こうも美人だと許してしまいそうな雰囲気がダークサンシャインにはある。全く、とんでもないことだ。

「それじゃ、食べちゃうね」
「ちょ、ちょっとタンマ！　きゃうんっ！」

　ダークサンシャインは言葉通り、食べてしまいそうな勢いで私の股間にしゃぶりつく。口全体で性器を覆って温めながら、舌先で割れ目を何往復もさせる。

「う、やっ……あ、ああぁ、ひぁ……」

　股間のスジを熱い舌で舐めて、ダークサンシャインはゆっくりと割れ目を広げていく。すっかり彼女に開発されてしまった私の体は、ゾクゾクしながら喜びを感じる。ううっ、シャワーも浴びてないのに……。

「あんっ♪　ミエちゃんの中から、エッチなお汁が出てきたわよ」
「い、イチイチ恥ずかしいこと言わないでよ！」
「うふふ、いつまでも初々しいミエちゃんって、大好きよ」

　ダークサンシャインは心の底から喜んでいるような表情で、私のアソコを再びペロペロと舐め始めた。

「う、ひっ、そこだめ、そこ、そこはダメ！」

　彼女の長い舌が、絡みつくようにクリトリスを嘗め回す。身体がガクガクと震えてしまうほどの快感なのに、ダークサンシャインは私の腰を抱えて逃そうとしない。

「うっ、いや、いや、いやぁっ！」

　感じやすい私がどんどん昂ってきているのを察して、ダークサンシャインは私の膣の中に舌を差し込む。

「ひっ、ダメ！　舐めちゃいやー、やっ、やっ、いやー！」

　何かの力を使っているのか、非人間的な程に伸ばびる舌を彼女は容赦なく奥へと差し込んでくる。そして、その先端で子宮口をぺロリと舐めた。

「や、やだ……やだやだやだ、止めてよー！」

　私の最奥を、ダークサンシャインは執拗に舐め続ける。子宮口を舐めて、私を絶頂に導くのが彼女の大好きな行為らしい。「赤ちゃんを作るところの入り口を舐めるのって、ゾクゾクしない？」って言ったこの変態に、つい怒りで両の目に指で目潰しを食らわしたこともある。だが、そんなことにも一切めげずにダークサンシャインは、しょっちゅう膣内を舐めてくる。

「うっ、ひ、やだやだ、きちゃう、きちゃう……やぁぁぁ！」

　膣全体を熱い舌で嘗め回されて、私は頭が熱くなっていく。嫌がる私に興奮しているのか、ダークサンシャインの目は危ない輝きを放っている。何かの生き物のように膣内で暴れまわる舌に、私の意識は一気に真っ白になった。

「ひっ！　い、いくぅぅぅぅ！」

　ガクガク震えて絶頂を迎える私を固定して、ダークサンシャインは尚もアソコを掻き回す。自分の膣がキュッと締まって彼女の舌を締め付けているのがわかるが、痛くは無いらしい。イッてしまった私は、ダークサンシャインが舌を抜くまで、声が出ないほどの余韻に浸ってしまった。

「イっちゃったみたいね、ミエちゃん」
「……うん」

　気持ち良過ぎて、私は呆然としながら頷く。子宮口を嘗め回されていっちゃうなんて、変態みたいなのに……。でもダークサンシャインは、私をそういう体に調教してしまった。もうモラルも何も投げ捨てて、私は考えることを止めてしまいそうになる。

「……何やってるの？」
「えっ？　えっと、ミエちゃんのエッチなお汁、好きだから」

　割れ目に真紅の唇をつけて舐めていたダークサンシャインだが、今度は何処からかストローを取り出していた。あまりにも突飛な行動に、私も理性を取り戻した。

「あ、あんたねぇ……そんな物で人の液体を吸おうとしないでよ！　バカ、エッチ、変態！」
「きゃん、ごめんなさい！」

　ダークサンシャインは頭を抱えて、身を竦める。大の大人が、幼稚園生みたいな怯え方をしないでよ……。

「全くもう……」

　ダークサンシャインの細い腕から腰を解放された私は、ベッドの上にゴロリと転がる。全く、頭に来るわね……ふと、気付いたんだけど、さっきから私ってかなり乱暴になってる？
　ダークサンシャインの顔を見ると、怯えながらごめんなさいって顔をしている。い、いけない、これではどっちが悪役なんだかわからない。か弱いヒロインのイメージが台無しだわ。

「ほら、許してあげるから。泣かないでよ、もう」
「うん、ごめんね」

　私に抱きついて、ダークサンシャインはチュッとオデコにキスする。こういう仕草は大人っぽくて、私も気にいっているんだけど。

「わわっ！」

　私のお腹に温かい液体がかかる。見れば、ダークサンシャインの凶暴な性器の先から、精液がビュルビュルと飛んでいた。

「ご、ごめんなさい。ちょっと我慢しすぎちゃって……」
「さっき出したばかりなのに、もう？　はぁ……まるでセックスマシーンね。本当に太陽神なの？」
「本当よ、本当」

　ガチガチに硬くなった肉棒（何だか嫌な表現だけど）から、ダークサンシャインはたっぷりと射精して、私の胸とお腹を汚す。私は精液にまみれて、ベトベトになってしまう。

「はぁ、仕方ないわね。いいわよ、セックスしても」
「わぁ！　待ってたわ」
「……さあ、突っ込みなさい！　好きに突っ込みなさい！」
「む、ムード台無しね」

　大の字になって叫ぶ私に、ダークサンシャインはまたも苦笑してしまう。

「あのね、ムードなんていつも無いじゃない」
「いいえ、あるわよ……ミエちゃんを、犯してるっていう感じの危ないムードが」

　ダークサンシャインの目が獲物を狙うようにギラリと光る。彼女が言っているのは、泣き叫ぶ正義のヒロインを無理やり犯しているようなムードのことだろう。最近は立場が逆になってきてるから、そんな雰囲気は全然無いんだけど。ダークサンシャインは私の膝裏を掴んで太ももをぐっと広げ、正常位でペニスを押し付ける。

「それじゃ、犯すわよ」

　それでも、ダークサンシャインの静かな言葉に、私は緊張してしまう。その理由は……、

「う、ああっ！　ひっ、ああっ！」

　ダークサンシャインが持つオチンチンは、やたらと大きいのだ。これを入れられると、お腹が一杯になって、凄く苦しい。狭い穴を大きく拡張されて、息をするのも大変なくらいだ。

「動くわよ」
「ま、待って……あ、ああっ、やめ、ストップ……いやぁ！」

　待ったをかける私を無視して、ダークサンシャインは腰を動かし始める。こういう風に苦しむ私を見て、彼女は明らかに興奮している。ダークサンシャインの、元からのサディスティックな部分を刺激しているに違いない。

「うあ、あっ、あくっ、くう……やめて、やめて、やめて！」
「ミエちゃん、可愛いわ。最高よ」

　思わず声をあげる私に、目の前の美女はぺロリと私の頬をなめて、ますますペースをあげる。普段は私がセックスのペースを握っているが、いざ挿入したら、立場が再度逆転してしまう。こうやって本番では苛めて楽しめるから、ダークサンシャインは普段は主導権を私に渡しているのだろう。

「い、い、うくっ、苦しい、やだ、嫌だよ！」
「ごめんね、ミエちゃん。でも、あなたのオマ○コ、締め付けて気持ちいいの」

　ズンズンと杭打ち機のようにオチンチンを突き込む彼女に、私は悲鳴をあげてしまう。それが邪神を喜ばせるだけだとわかっていても。

「ひっ、ふっ、ああっ、やっ、やっ、いやぁ！」

　苦しくて息をするのもままならない。それなのに、私のアソコはダークサンシャインのモノを飲み込んで、気持ち良くするように動く。私自身の体も、苦しさから逃れようと、脳に快感のパルスを送り続ける。

「ば、馬鹿になっちゃう……いや、やっ、き、気持ちいい」
「ミエちゃん……」

　思わず本音が漏れて、ダークサンシャインは嬉しそうに私を抱き締める。もの凄い速さでピストン運動をし始めた彼女の背に、私は腕を回して必死に抱きつく。ダークサンシャインの体はとっても柔らかくて、彼女より背が低い私は包まれるような感覚になる。いつもの感触、私が気に入っている感触……。

「ふぁぁぁぁぁあっ！　いっちゃうぅぅぅぅぅ！」
「出すわよ……ミエちゃん、中に」
「出して、出して！」

びゅるるるる、びゅしゅっ、びゅっ、びゅっ

　私が達すると同時に、ダークサンシャインも射精した。お腹をズンズンと貫く快感が体を突き抜けて、私の意識がホワイトアウトする。私の奥にダークサンシャインの精液が溜まるのを感じながら、アソコはぎゅっとオチンチンを握り締めた。

「はぁはぁ……ミエちゃん、今日は中出しは嫌がらなかったわね。安全日？」

　意識がさ迷っていた私を、上に乗っかっているダークサンシャインが、声をかけて現実に引き戻す。それでも、余韻が体を駆け巡っていて、とっても気持ちいい。

「ピル飲んでるから……」
「何ですって！？」

　折角エクスタシーが終わった後を楽しんでいたのに、ダークサンシャインは私の肩を掴んで揺する。

「ピルなんてダメよ、ミエちゃん」
「な、何で！？　避妊はしっかりしないと」
「ダメよ！　そ、それだと、ミエちゃんを妊娠させられないじゃない」

　本気で言うダークサンシャインに、私は唖然としたあと、フツフツと怒りが沸いてきた。

「何であなたと赤ちゃん作らなくちゃいけないのよ！　女同士でしょ！」
「別に女同士でも、作れるなら作ってもいいと思うわよ」
「む、無責任」
「それに……『だめぇ、中は。赤ちゃん出来ちゃう！』って台詞が聞けないし」

　ポッと頬を赤く染めるダークサンシャインに、頭痛がしてくる。

「エロ本の読み過ぎよ……」
「だって、あれって凄い興奮するんだもん。それに避妊は世の中の摂理に反するわ」
「何処かの宗教みたいなことを……邪神の癖に」

　イッた気持ち良さも吹き飛んだ私は、ポカリとダークサンシャインの頭を殴る。

「いたーい、ミエちゃんの意地悪！」
「はいはい、抜いて抜いて。まったく、ガバガバになっちゃうわ」

　捨てられた子犬のような顔をしているダークサンシャインの表情を無視して、私は出来るだけ冷たく言う。全く、人を何だと思ってるんだか……。

「んっ」
「あんっ」

　オチンチンが抜けるとき、ズルリとした感触があって、二人とも声が出てしまう。抜けた後は、大きく開いたアソコから、ドロリとした精液が流れてくる。

「うわっ、相変わらず凄いわね……まったく、出し過ぎよ」
「だって、興奮するんだもん」
「こらっ、指で掬って中に入れようとするんじゃない！」

　オイタしようとするダークサンシャインの頭をポカポカと叩く。全く、恥ずかしいことばっかりするんだから……。

「ちょっと、何それ？」

　ゴソゴソと、何処からか白い液体が入ったペットボトルを、ダークサンシャインは取り出す。一見するとカルピスみたいなのだが、良く見ると明らかに飲み物じゃない。

「私の、せ・い・え・き♪」
「はぁ！？」

　イヤンイヤンと恥らう姿に反して、トンデモナイことを言うダークサンシャインに、私は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

「ほら、一杯注いであげないと、赤ちゃん出来ないと思って……ミエちゃんのことを思って、一杯オナニーしたのよ」

　更に何処にしまってあったのかわからないクスコを、片手で掲げて見せるダークサンシャインに私は声も出ない。一見すると、とっても優しそうな女神の笑みを見て、私は思わずプッツンしてしまった。

「馬鹿！　エッチ！　変態！　死んじゃえー！」
「ちょ、ちょっとミエちゃん、落ち着いて……あいた、いたっ！」

　私は手当たり次第、掴める物をダークサンシャインに投げつける。何て思考してるのよ、この邪神は！　同じ女だとは思えない程、ぶっとんだ思考をした彼女に、私はついていけない。世界を滅ぼす邪神の頭を、私は再度ポカポカと殴ったのだった。

「ふあー、幸せ」

　一夜明けた日曜日。私はお布団にくるまって、ゴロゴロしていた。もうお昼近くだが、そんなのも気にしない。ただただ惰眠を貪るだけなのだ。
　昨日はあれから結局ペットボトルの精液は注がれるわ、中に出されるのを本気で嫌がる演技を要求されるわ、体を洗うために風呂に入ったのにエッチしまくって何時までたっても綺麗にならかったと散々だった。あの美人に本気で泣きつかれると、私も拒否できないのだ。帰りに高級料亭で晩御飯を奢って貰ったが、腰が痛くてそれどころじゃなかったし。

「全く、ダークサンシャインめ。覚えてろよー、むにゃむにゃ」

　ちょっぴりまだ怒ってるが、まあそれも寝て解消できるだろう。今日は一日ゴロゴロしていようっと。

「大変だ、美恵ちゃん！」

　心地良い気分でお布団に包まっていた私だが、タートル君の一声でそのいい気分が吹き飛んだ。

「ダークサンシャインがまた街で暴れてるんだ！」
「あっそう。私には関係なーい」
「ちょっと、美恵ちゃんは正義のヒロインでしょ」

　私の頭上で飛び回るタートル君を無視して、私は布団をかぶる。しばらく騒いでたタートル君だが、しばらくして小型テレビを何処からか引っ張り出してきて、電源をつけた。

「大変です、ダークサンシャインが再び現れました！　サクリファイス・ミエを呼ばないと、○○○洋菓子店の工場を爆破すると言っています」
「ほら、大変なことになってるよ」

　タートル君はそう言うが、私には本当にどうでもいいことだ。

「いいじゃない、あそこのお菓子、大腸菌が検出されたとかで大騒ぎになってるし」
「で、でも……」
「今日はサクリファイス・ミエは生理休暇を取りまーす」
「そんなー！」

　グルグルと布団に包まった私だが、テレビでは尚中継が続いている。大きくアップになっているダークサンシャインが大声で叫んでいるのがわかる。

「サクリファイス・ミエは何処だ！？　五分以内に呼ばないと、工場を塵にするぞ！」
「ほら。工場を壊されたら、働いていた人は失業しちゃうよ！」
「ああ、もう。うるさいわね！」

　必死に叫ぶタートル君の声に、私は布団を跳ね除けて、上半身を起こした。
　それからきっかり五分後、現場に着いた私はダークサンシャインの頭を、グーパンチで殴っていた。

　私の名前は真柴美恵。平和のために戦う正義のヒロインよ。地球を救うために、とってもとっても邪悪な邪神を倒すために戦っているわ。いつかは、この不毛な戦いに終止符を打ってみせる。

「無理だと思うんだけど。それにミエちゃんは戦うより、エッチしてるときの方が可愛いわよ」
「こ、こいつ……いつかはファイナル・サクリファイスを食らわしてやる」

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