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【個人撮影】金貸しチンピラ二人組が美人妻を眠る子供の横でガチの輪姦レイプ中出し
誰かが泣いている。
すすり泣いている。
他人にはわからないけれど。
私には分かる。
彼女は泣いている。
私にはそんな確信があった。
『1』
決勝戦から一週間が経った。
相変わらず、私にとっては杞憂の日々が続くけれど。
それでも、私は満足していたのだ。
そう。そのときが来るまでは……。
きっかけは……そう。早苗の一言から始まった。
『静香の様子が変?』
私はガーディアンの中でも相談役を買っていた。
別に買うとか言っても、前はセックスについての悩みを京から、打ち明けさせられて、そうならばと言って、私が打開策を持ち出したところ。これがヒットして、みんながみんな……私にここをどうしたらいいのかしら?とか、相談を持ちかけてきたりもしたのだ。
私ははっきり言って相談役なんて勤まらないとか思っていたけれど。芽衣から、金をせびらかさせられて……泣く泣く引き受けたというわけだ。
そして、今回は早苗の番だった。しかし、早苗も元気が無い。というか覇気が無かった。
「そうなのよ。お姉さま。最近、元気が無いし……夜、魘されてばかりだし……」
ちなみに、私たちがいるのは喫茶店の奥にある洒落た店だった。
芽衣からの都合でここを私の相談所として管理しているというのだ。
全く、私が中学生なのは知っているでしょうに。
しかし、芽衣からお小遣い程度(額が半端じゃないけれど……)をもらっているので断るわけにも行かなかった。
さすがに、お姉ちゃんが医者なのでお金には困らないけれど、それでも彼女たちが相談を持ちかけてくること自体が珍しいので……いいと思う。どんな悩みがあるのか興味があるし、それに店の一角とはいえ、ここからじゃあ、誰も聞こえやしない。防音はばっちりだし、彼女も私が彼女たちを襲うことは考えてないのだろう。
『ふ〜む。大体、あなたが持ちかけてくるのは静香の悩みくらいね』
そうなのだ。前は由佳が「唯君とエッチしたいんだけど、シチュはどこがいいのかぁ?」とか、大体は麻生唯がらみなのだ。
しかし、早苗は違っていた。麻生唯ではなくて、静香の悩みが主だった。
「べ、別にいいじゃない。私だって、唯君と一緒にどこか行きたいとか、悩みはあるけれど……お姉さまの特にあなたが現れてから、お姉さまがおかしいのよ……」
『嫉妬は見苦しいわよ』
「嫉妬じゃないわ」
あっそ。見え見えなんだけれど。
『じゃあ、いっそのこと……押し倒しちゃえば?』
「そう思ったんだけれど。断れたわ。私が愛する人は早苗だけれど、早苗じゃダメなんだって」
『静香が……早苗を拒否したの?』
それは意外だった。意外すぎて、飲み物の紅茶をストローから口を離したくらいだ。
取り分け、レズコンビで知られる二人だけど、麻生唯が現れてから、二人の仲はギスギスしたままなのか。いや、それでも今までの彼女たちのことを考えるとおかしい部分がある。
「そうなのよー。だから、どうしたらいいのか……私もわかんないのよ」
『麻生唯には相談した?』
「した……けれど。唯君も中間試験の勉強で忙しいみたい」
『なるほど』
「ところで、あなた……中間試験の勉強はいいの?」
『早苗は?』
「う〜ん。歴史は得意だけれど、数学とか……その辺はちょい苦手かな?」
『ガーディアンですからね』
私は紅茶を飲みながら、少しだけ考える。
いや。まさか、あれの可能性は無いに等しいけれど。
それでも可能性を考慮しておいた方がよさそうだ。
「栞?」
『う〜ん。少しだけ様子を見たほうがいいんじゃない?』
「えっ?」
『悪魔の可能性が否定できないからね』
「どういうこと?」
『あなた……ナイトメアを知らないわけは無いでしょう?』
その一言に早苗が凍りついた。
「ま、まさか!そんなのありえないわ」
『だから、可能性の一つということよ』
私は淡々と答える。
ナイトメア……。
私たちと幾度となく戦ってきた悪魔たちの総称を現す。
そして、長年、私たちの宿敵として呼ばれてきたのだ。
最後に戦ったのは……百年前の明治時代。その頃は私も彼女たちと一緒に参加して……要約、決着が付いた。
しかし、悪魔はまた奈落から蘇る。
「でも……でも…………うぅ…………」
『まあ、可能性の一つよ』
私はもう一回言って、彼女を慰めた。
慰めにはなってないかもしれないけれど、彼女はうんと言って……今日はそれで別れた。
しかし、次の日、現れた彼女は思いもがけない一言だった。
「お願い!栞!!唯君を助けてあげて!!」
そう言って、ボロボロになりながら、血まみれになりながら、ぐったりとしている唯を抱えた彼女が現れたのだった。
『2』
彼女のとっさの判断が功をそうしたと言えるだろう。
京ではこの怪我は治せない。いくら、『血』を司る彼女でもこんなにも穴が開いたのを塞ぎ切れないだろう。
私は力を使って、彼の血管のバイパスを繋ぐ。幸い、怪我をしているのは腕の方だったので……身体には支障はない。
けれど、こうも穴が開くというのは極めて珍しい。余程不意打ちでも食らわない限りは。
そう思って、私は彼の傷を癒していく。
しばらくして、それが済むと、私は彼の過去の記憶を辿る。彼の額に手を乗せて……すると、恐ろしいビジョンが映し出される。
やっぱりと思っていたけれど、間違いなかった。
お姉ちゃんが私に頷くと、私も頷き返した。
これで手術は終了したと。
「栞……!唯は?」
私にかけられた問いにお姉ちゃんが答える。
「安心して、私たちに治せないものなんてないわ」
『ほとんどは私がやったけれどね』
ほとんどの血管や動脈の繋ぎは私がやったに等しかった。
ただ、彼女は糸の縫合や縫いあわせをしていたに過ぎなかった。
さすがに、私では穴が開いた組織を無理矢理塞ぐことなんて、出来ないけれど。
「うん。さすがは私の妹。偉い偉い……」
「それで、唯様はどうなのですか?」
芽衣が聞くと、私が答える。
『安心して。三日もすれば退院できるわ』
「……そう。よかった」
「それにしても、誰にやられたのよ?栞が前に倒したザウラスとかいう奴か?」
「そ、それは…………」
『静香ね…………』
私がつぶやくように言うと、彼女達は驚いた。
「えっ?」
「どうして?」
『傷口の殺傷からして円形にくり抜いたような痕が見られたわ。恐らく、超極小ワームホールを放たない限りは……あんなのは付かないわ。まあ、私の中にいる『無』を司る彼女でもない限りは……』
あれは例外だ。まあ、彼女という線は薄いように見える。
「あんなのは……静香お姉さまじゃないわ!」
『あらあら?最初から全否定ですか?真実を目の前にして……』
「あ、あなたに私とお姉さまの何が分かるって言うのよ?」
そう言って、私の胸倉を掴み上げた。さすがにストレスの限界が溜まったらしい。それを彼女にぶつければいいのだが、この際だから、仕方がないか。
『そうね。何もわからないわ。でも、現実が目の前にあるのよ。麻生唯が殺されそうになったという現実がね』
「…………っ!!」
そう言うと、彼女は涙を流しながら、それを拭うために……私を放した。
『それよりも……さすがに逃げた方がよさそうね』
「えっ?」
『お姉ちゃん!』
「あいよ。地下室からばっちり逃げられるわよ」
「えっ?」
「し、栞っ!」
『いいから、あなた達は逃げなさい。お姉ちゃん。行き先はわかってるわね』
「ええ。静香もわからない場所といったら、あそこしかないわね」
『ええ。そうね』
「し、栞!」
エレベーターが閉まる。夜の病棟なので静かだった。
「栞様……」
『翔子……エルーノ……構えなさい!』
「は、はい!」
そう言うと、翔子は槍を出して、エルーノは杖を持った。
『来る……!私の後ろに!』
私は『流れ』を見て回避する。さすがに二人分だとキツイけれど……。
『二人とも……怪我はない?』
よく見ると、二人とも汗だくだったけれど、どこにも怪我はなさそうだった。
「ええ。何とか……」
「わ、私は寿命が十年くらい縮まりました」
私が周りを見ると、そこはもう、廃墟と化した瓦礫同然の山だった。
後で芽衣に請求書を申請しなくちゃね。
私は悪魔に囲まれた彼女を見る。月の輝きで今は夜だというのに昼のように彼女を感じることができた。
しかし、彼女は薄笑いを浮かべて、私を見下している。
なるほど。早苗が「静香じゃない」という理由がなんとなくわかった気がする。
少なくとも、私の目の前にいるのは静香ではなく、何者かに操られた静香だった。
「あら?誰もいないじゃない?」
「さあな。どこかに隠れたか……逃げ出したか」
「追うぞ!」
「ああ……」
『エルーノ。翔子!分かっているわね』
「はい!」
「勿論です!」
そう言うと、彼女たちが空を飛んで奴等を追っていく。
『頼んだわよ』
「あら?屑にも似た人間が私に何か御用?」
『あらあら?もう記憶障害に陥ったのかしら?だったら、無理矢理にでも記憶を引っ張り出すしかなさそうね』
相手が人間かガーディアンなら、50%で充分だった。けれど、相手は悪魔でしかも静香なのだ。
「……なっ!」
『遠慮せずに100%の力を出してもいいということですね?ナイトメア』
「なっ!」
私は勢いよく飛んで彼女に一撃を浴びせた。
『はっ!』
私は彼女の後頭部に強く叩きつける。
彼女は下に落ちて行ったけれど、私はそれに追いついて……下から打ち上げる。
上空に上がったところで、彼女がキッと私を睨み付けた。
ワームホールが来る。私は直感でそれを知っていた。いいや、正確には流れで先読みをしていただけだったけれど。
『以前の静香から見たら屑みたいなワームホールですね』
私はワームホールを弾きながら、そう言った。
実際、以前の彼女なら、私の隕石の衝突を超えるほどのワームホールを放っていたはずだ。
やはり、思っていた通りだ。奴は完璧に静香の力を操られていない。
麻生唯の攻撃もそうだ。
もしも、奴が完璧に静香の力を操られているのならば……彼は今頃、墓の下にいてもおかしくないはず。
静香は悪夢を見ても……心のどこかで唯のことを思っているのだ。
「わ、私は最強の能力を手に入れたのだ!き、貴様なんかに負けるはずが……!」
『最強の能力?笑わせますわね。その程度の力で最強を手に入れたと思っているのですか』
「な、なんだと?」
『最強とはそれを誇示しない人のことです。むやみに最強なんて名乗るんじゃありません』
すると、私は気づいた。奴の力が増大していることに。
『し、静香!!』
私が叫んだけれど、静香もそれに飲み込まれる。
現れたのは巨大な触手とそれに埋め込まれた静香の全裸の姿だった。
それを私が縛られる。
『ぐっ……はぁっ!!』
私は何とかカマイタチを起こして触手を切り落とす。だけど、次々から出てきて切りがない。
再生もしているし……私は一気に片をつけることにしたけれど……。
『…………私には出来ないわ』
もしも、やれば、静香を殺すことになる。
彼女の気持ちがまだ残っている。微かだけれど、優しい気持ち。
それがある限り、私は彼女を殺せない。
しかし、次の瞬間、私の中である変化が生まれた。
何故か、一瞬だけ、疲れのようなものが感じられた。
『ま、まさか、彼女の力を吸収して増大しているというのですか?』
だとしたら、この触手はヤバイ。私の力を吸収するどころか……カマイタチの纏っていた風まで吸収されていた。
風ではダメ。ならば。
『セイントビーム!!』
聖なる光ならばどうだ。と思って試してみた。
案外、効いたような気がする。
焼き焦げた臭いと共に……軽い腐乱臭の臭いがする。
よく見ると、切り裂かれた触手は黒い霧となって消えていく。
ということは……攻撃は有効だということだ。
問題はその程度。度合いの問題だった。
あんまり大きいと、静香を殺してしまう。
けれど、弱いと再生してしまう。
けれど、静香を殺さずに強い能力を発する能力は……今の私にはない。
スターライトストリームでは彼女を殺してしまうし、ゴッドセイバーなんてもってのほかだった。すると、奴は更に巨大化する。触手もそれの倍に増えていく。
『ま、まずい!都市にも被害が…………っ!』
しまった。後ろを見ている隙にやられた!?
触手が私の脚に絡みつく。
その触手は私を地面に思いっきり叩きつける。
『がはっ!』
ま…………まず……い。このままじゃ…………私まで…………。
それから、何度も何度も叩きつけられて、私の力も吸収されて……。
私の意識は一度そこで閉じてしまった。
『3』
誰かが泣いている。
すすり泣いている。
他人にはわからないけれど。
私には分かる。
私は彼女に触れた。
どうしたの?と聞いた。
すると、彼女がこう答えた。
「人間って、どうしてこんなにも脆いの?」
と。すると、私は人間は脆いけれど、その分……儚いのよ。と言う。
すると、少女は私に触れてこう言う。
『どうして……儚いの?』
『どうして……弱いの?』
これは……過去の私?彼女の素顔が見えないから、なんとも言えないけれど。
そうだ。あれは……千年前の私だ。
あの頃の私は最低だった。
その頃の私は人間の命というものを理解していなかった。
そのために幾度となく、人間に殺されて……生まれたもう一人の私。
まさか……また、目覚めるというのか?
千年の時を経て……最凶の私が……!
目を覚ますのか?
『無』を司る私……。
『4』
ナイトメアの一人……プレゼンは勝利を確信していた。目の前にはぐったりとして動かない一人の少女がいる。
さすがに元の姿に戻るのは骨が折れる。
それもそのはずだった。プレゼンはナイトメアの一人。
ナイトメアは人の悪夢を喰らい、その人物に寄生することが出来るのだ。
実際、静香もその餌食になった人物の一人である。
そして、事実……最強の力を取ったと思っていた。
あとはじっくりと楽しめばいいと思っていた。
この時までは……。
異変に気づいたのは……一人の少女の身体だった。
まるで、逆再生をするように……徐々に幼さを取り戻して行っている。
いくらプレゼンでも……年齢を退行することは出来ない。いくらなんでもそんな自然の摂理に反することは出来ない。
すると、突然。
彼女を中心に世界が鼓動したように感じた。
「な、なんだ?こ、この気……」
ドクン!
少女の身体が一定期に達したとき……それは起こる。
『見たわね……』
少女が言ったとき、悪魔の断末魔が聞こえた。
最初は何が起こったかなんて、プレゼンは分からなかった。
ただ、目の前の少女が生きていて……自分に向かって消えろといった瞬間。
腕がなくなっていた。
静香の左腕の先から肩にまでかけて……ごっそりと無くなっていた。
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ―――――――っ!!」
当然、本体にまで影響があるプレゼンの身体は絶叫を上げる。
そして、彼女が絶叫を上げた静香の口にまで言って……。
再び……。
『見たわね……』
「ひっ!」
彼女の眼を見たとき、短い悲鳴を上げた。
それはこの世ならざる者……超越。全てを超越する目だった。
……ギラリと睨む鋭い眼。月明かりで照らし出すしかないのに……それが……余計にプレゼンを恐怖に陥れる結果となった。
『消えろ……』
彼女が顔全体を覆い、小さな手を伸ばそうとしたとき……それを全力でプレゼンが避ける。
が、しかし……一足遅かった。
まるで、それが当然の法則であるように。
まるで、それが当然の答えであるかのように。
静香の右足部分が無くなっていた。右足から膝までの部分がごっそりと無くなっていた。
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――っ!!」
(も、もう駄目だ。これ以上この女と居るのは危険……ならば、逃げるしかない)
そう思い、プレゼンが静香と分離したとき、奴がはっきりと口にした。
『見たわね……』
見た?何を見たというのだ?しかし、考えても答えが出てこない。
ならば今は全力で逃げるのみだった。
しかし、彼女はダブダブの衣類を身に纏い……。
最後にまるで、ゴミを掃除するかのように……飛んでいる蚊をぺシッとたたくような言い方で言い放った。
『消えろ』
(ま、間違いない…………奴こそが…………)
しかし、それは長くは続かなかった。
プレゼンは跡形もなく消えていた。
まるで、無に帰したように。
『5』
「やっとで追いつきましたよ!」
「ちっ!しぶとい天使だ!」
「生憎と諦めの悪さだけは天下一品ですからね。内のお姉さま方は……」
「あら?それは私も含まれているのかしら?嬉しいわね」
すると、キーンと言う音と共に……悪魔の身体が朽ち果てる。
「なっ!まさか……!本体が!?」
「き、消える……」
「えっ?」
「まさか……栞様が?」
「やった!さすがは栞様ですね」
それにしても、何だろう。この感じ……悪魔が栞様に殺されて嬉しいはずなのに……。
私の……何かが訴えかけている。
私が感じているもの……それは……恐怖だった。
「…………?どうしたのですか?翔子様」
「麻生唯たちがいない?」
「えっ?本当だ……まさか……!でも、大丈夫ですよね?敵は倒しちゃったんだし……」
「いや。違う!麻生唯たちの目的は……!」
そう。何と言うか失念していた。
「戻るわよ!」
「えっ?は、ハイ!」
『6』
『フン……なんとも不甲斐ない姿じゃのう』
「うっ……こ、ここは…………っ!!」
静香が言葉にならない叫びを上げる。
彼女は片腕と片足と両方を失っていたからだ。
彼女は片足と片腕を抑えながら起き上がる。
『おや?気が付いたか?だが、最強の能力者もこの有様では形無しじゃな』
「あなたは……?…………っ!」
彼女が言って驚いた。
生きているはずがないと思っていた。
あれから千年も経っているのだ。とっくの昔に死んだと思っていたのだ。
『昔の宵に戻ったのか?『神祖の姫君』……私の姿を見るのは貴様だけだと思っておうた』
彼女が反射的に飛び起きる。
「…………そんな……どうしてあなたがここに?」
よく見ると、街や道路が寸断されていた。
『片足や片腕だけで戦えるのか?随分と器用なことをするもんじゃな』
「…………ぐっ!」
さすがにこの状態では戦えないと、彼女でもわかっていた。
片腕と片足から先がないのだ。
しかし、それよりも聞きたいことがあった。
「この街の惨状もあなたの仕業なのですか?」
『…………やれやれ。知らないというのも……また一興かのう……』
「答えなさい!」
しばらく考えてから、彼女が答えた。
『……そうじゃ。私がやった……当然じゃろ?すべからく人間も悪魔も消え去ればよいと考えておる。じゃが、それにしても、人間がこうも弱いとは思わなんだがな……もう少し……抵抗を見せても良かったのじゃが……』
「…………どうして、そんなことを言うの?昔のあなたはそんなんじゃなかった!」
『人間から私を殺してくる。だから、人間が嫌い……だから、私は身を守る……当然じゃ』
「…………っ!」
まるで、栞とは真逆の存在だった。
いいや、栞は人間に殺されても仕方がないと思っていた。静香もそれくらいのことをやってきたのだから、殺されても仕方がないと思っていた。
それでも、栞は人間を守ってきたのだ。それと同時に静香も守ってきた。
けれど、彼女はそれの逆をする。
いや、必要のないものを壊すという上では……静香も彼女も同じなのだろう。
程度が違うだけだ。彼女をいとも簡単に人間を壊すことも出来る。
『あなたも壊してあげようかのう?』
「…………っ!」
圧倒的な殺気を放たれて、静香は身震いした。
別に自分が危害を加えられようが良いが、静香と唯のとの関係を知られると……彼まで危害を加えかねない。
『……千年前の決着をつけようではないか』
「ええ。そうね……」
千年前は結局、決着はつかなかった。
彼女も静香も十日間……戦い続けて……互いが倒れて戦死するまで決着が付かなかったのだ。けれど、正直言って……静香は決着なんて……どうでも良かった。
今でも静香はそうだけれど、最強の称号なんて……欲しくなかった。そんなものは鬱陶しいだけ。今では興味本位に上級悪魔が襲ってくるだけの……本当に鬱陶しいものでしかなかったのだ。
だからこそ、静香は寂しかったのかもしれない。今では、早苗がいてくれて……千年もの間……悪魔との戦いの最中で前線を断ってきた彼女だけれど……本当は千年もの間……自分は寂しかったのだ。
今までの行いが過ちだったと気づくまで……千年もかかったのだ。
だからこそ、ここで死ぬのも悪くはなかった。
『満身創痍だな。そんな身で私に敵うとでも思うているのか?』
「…………」
静香は何も言わない。片足で立ち、バランスを失いながらも片腕に力を込める。
そして、彼女に向かって突進しようと思ったとき。
それは起こった。
「止めて!二人ともっ!!」
主の声に静香と彼女の動きが止まる。
建物の影から、麻生唯が姿を現して……声を放ったのだ。
彼女が止まったのは驚きと失念。そして……。
『あれが今代の主かえ……?』
「…………」
静香は何も言わない。ただ、麻生唯の姿を見ているだけに驚いていたのだ。
しかし、何も言わないということは肯定を表しているのと同じことだった。
だが、彼女の思ったことは全く……別のことだった。
『ふむ……中々面白い……』
「えっ?」
『この勝負……一時預けるとしようかのう?』
「えっ?どうして?」
『今のあなたと戦っても、面白くもなんともない。精々余生を楽しむことじゃな』
そう言うと、彼女が消えた。消えてしまった。
「…………」
「静香さん!」
静香が唯に振り向いた。けれど、彼女は上空で落下をする形となってしまった。静香の意識は一度、そこで閉じたのだった。
『7』
静香が意識を取り戻したのは……芽衣のマンションだった。
彼女は仰向けに寝ていたのだった。
「…………ここは……?」
「あっ。起きられましたか?」
そこにいたのは……天使の……誰だったっけ?
「麻生唯さんとは話しはしたことがありますけれど、あなたとは初めましてですね。エルーノと申します」
そう言うと、彼女は丁寧にお辞儀をした。そうだった。唯様から、話は聞いていたけれど、すっかり忘れていた。栞の新しい下僕の名前を……。
「あなたが……どうしてここに?」
「話を掻い摘んで話をしますと……あなたをここに運んだのは私で……あなたの腕や足をが無くなられていたので……勝手ながら治癒させていただきました。どこか……痛いところは無いですか?」
いつの間にか足や手が元に戻っていた。
「仔細は無いけれど…………唯様は?みんなは?」
「安心してください。皆さん……無事ですよ」
「静香さん!」
「静香……!」
「お姉さま……ようやく起きになられたのですね……良かった」
「そう…………みんな……良かったわ…………?栞は?栞はどうしたの?」
彼女の名前を出すとみんなの顔が曇る。
「栞様は……行方不明です」
代表としてエルーノが言う。
「えっ?」
「知りたいのはこっちのほうです。一体……何があったのですか?」
「…………そう……なんだ」
「えっ?」
「栞は……また、代わってしまったのよ。より恐ろしい人に…………」
「えっ?……まさか……!」
「そう。『無』を司る栞に……代わってしまったのよ」
その言葉に誰もが口を閉ざしてしまった。
『無』を司る栞は残虐非道とは聞いていたから、みんなが固まったのだろう。
そういった静香自身でさえ、震えが止まらなかった。
「静香さん……昔、栞さんと何かあったんじゃないですか?」
「……はい。その通りです……」
「良かったら、そのときの話を聞かせてもらえるかな?」
「…………良いですけれど……長いですよ」
「構わないよ。みんなも知りたがっていたし。ね?」
「はい。私もお姉さまの過去を知りたいです」
長年、連れ添っている早苗でさえも知らない過去。
「分かりました……お話をしましょう。早苗……お茶を持ってきてくれる?」
「はい」
そう言って、早苗が部屋を出て……お茶を持ってきた。
そして、静香が話を始めたのだった。
それは一人の少女の悲しい過去だった。
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