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―――たとえ、それが明かな善でも。たとえ、それが全てでも―――
 
『1』
 
あ〜。なんだろう。この気持ちのよさは……。
ずっと、こうしていたい気もするし……なんだか、まったりとしている心地よさの中に私はいた。
ピチャピチャという音がする。何かが擦れているような音もする。
私が目を開けると、衝撃の展開が待っていた。
 
「し、栞様っ!何をしているのですか?」
 
「何って……フェラチオよ。みて分からないの?」
 
栞様は自分の能力を使って、私に肉棒を取り付けてフェラチオをしてくださっていたのだ。
 
「そ、そそそ、そういうのは私の仕事であって……」
 
「あら?そうなの?余りにも可愛い寝顔だったから……つい……」
 
これではご主人様と奴隷が入れ替わっているではないか。
でも、すごく気持ちよかった。
 
「あ……いえ。栞様がお嫌じゃなかったら……その……」
 
「続けて欲しい?」
 
「は、はい!」
 
そう言うと、栞様は丹念に舐め上げていく。私の排泄するところを綺麗に舐めていく。ふと、栞様のあそこをみていた。手で触ってみると濡れていたのだ。
 
「あ……!きゃふ……!だ、ダメ!」
 
「栞様のあそこ濡れていますよ」
 
「ああ……もう。これでは立場が逆転するわね」
 
本当にこれでは私がご主人様みたいではないか。でも、栞様もそれでいいとか思っている節もある。なんだかんだ言っても栞様は私に対してはお優しいのだ。
ちょっとだけ、意地悪をしてみる。
 
「それで?どうして欲しいのですか?」
 
「完全に立場が逆転したわね………………翔子様のをください……」
 
完全に奴隷モードに入ったようだ。
 
「何が欲しいの?」
 
すると、彼女は顔を赤らめて、そして叫んだ。
 
「翔子様の逞しいオチ○ポを私のイヤラシイオマ○コの中に入れてください!エッチなこの私の中に入れてぇ――――っ!」
 
どうやら、昨日の刺激が本当に忘れられないらしい。私も同じだった。栞様に犯されて気持ちいいのだった。
 
「じゃあ、尻をこっちに向けて」
 
「は、はい」
 
栞様が嬉しそうに言う通りにする。それだけで私の肉棒は更に逞しくなり、栞様のあそこはグチョグチョに濡れていた。
そして、私は一気に貫いた。
 
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!」
 
栞様はたまらずに叫んでいた。それも歓喜の叫びだった。
 
「もっと。奥まで……奥まで来て……!」
 
何も言わなくても私も分かっているつもりだった。
 
「はい。もちろんですよ」
 
私は奥まで突き上げた。
 
「ああ……っ!気持ちいいよぉ―――っ!」
 
「私も気持ちがいいですよぉっ!」
 
パンパンと腰を打つ音が聞こえる。四つん這いになって栞様の中はとても気持ちがよかった。
でも、私も栞様もそろそろ限界が近かった。
 
「ああ……イク……!イッちゃう!」
 
「わ、私もイキそうだよっ!」
 
「また、一緒にイッてくれますか?」
 
「……ええ。もちろんですよ」
 
「ああ。嬉しい……ああ!イクううううううぅぅぅぅ――――――!!」
 
「あああああああああぁぁぁああああああぁぁぁぁ―――――っ!!」
 
私もつい気持ちよくなって……栞様のお身体に精液をいっぱい浴びせた。
 
「ああ……すごい。こんなに精液が……いっぱいに……濃くて……本当にすごい」
 
栞様を征服したという喜びが私にはあったけれど、それ以上にちょっぴり罪悪感も感じていた。
栞様を支配してしまった。これでは立場が本当に逆転してしまう。
 
「……し、栞様……」
 
「ん?何?」
 
栞様は顔にぶっ掛けられた私の精液を舐めていた。
 
「私の出した精液が好きなのですか?」
 
「好きかどうかは分からないけれど、嫌いじゃないわ。翔子様の出してくださった精液ですもの。嫌いなわけないじゃないわ」
 
そのお言葉に私の股間はまだまだいくらでも犯せるくらいに元気になった。
それに気づいて栞様が……。
 
「あら?まだ元気なのね……もったいないわ」
 
そう言って私の肉棒を舐めてくれた。私は奴隷であることをすっかり忘れて、栞様の奉仕に心が躍っていた。
ああ。気持ちいいです。栞様。
 
『2』
 
「ところでみどり様は?」
 
朝食を取っているときに私が聞いた。
 
「医者は朝から早いのよ。だから、私が起こしに行ったでしょう?」
 
だから、私も栞様も全裸だったのか。私はあの後……眠ってしまったし。
 
「ああ。なるほど」
 
それから、私たちは学校の制服を着せあった。今日から登校しなければならないからだ。
 
「うわ〜。似合ってるわ」
 
「そ、そうですか?地味な感じがしますけれど」
 
公立の学校なので地味な感じがするけれど、これはこれで似合っていそうな雰囲気だった。栞様のお褒めの言葉をいただいて、顔が真っ赤になっていたからかもしれない。
そして、学校へ行く準備が整った。
 
「さて。行きましょうか?」
 
「……はい」
 
私たちは手を繋いで学校に行くのだった。あれ?そういえば、何かを忘れているような。
 
『3』
 
「で?どうして、ニコニコの栞ちゃんがいるのか説明をしてもらえるかしら?」
 
朝っぱらから、彼女……エルメスこと……桜木藍子に捕まった私たちだったと。
そういえば、すっかり忘れていたわ。
彼女は現役バリバリの天使で私たちとは敵対はしていないけれど、本当のことを話せばするかもしれないという敵なのだ。
まあ、朝から淫行がバレたら学校でもただでは済まさないけれど。
 
「別に……私がニコニコだと行けないかしら?」
 
「……っ!そ、そんなこと言っていません!わ、私はただ、事の真偽が知りたいだけです」
 
彼女が顔を真っ赤にして反論する。そりゃあ、栞様の笑顔をみれたら、誰だって赤くはなる。
私だって、栞様の笑顔を見たときは正直言って、可愛いと思ったもん。
 
「そうか……がっかりだなぁ。私は藍子ちゃんとも友達になれるかもと思っていたのに」
 
見事な切り返しだった。栞様ってば、すごいね。がっかりしてため息を吐いたのに笑顔なんて。
私には到底真似ができなかった。
 
「えっ?と、友達ですか?」
 
「そうだよ?私が言葉を喋れなくなってからも、藍子ちゃんとも仲良くなりたいと思っていたのよ。お昼ご飯を一緒に食べたり、色々とスキンシップを取りながら生きて行こうと思ったのに……」
 
今度は泣き出した。妙にウズウズしてしょうがない。肩を抱きしめたくなる。
そして、藍子はというと、うろたえていた。
でも、私は言葉を紡がない。紡いだって意味が無いことぐらい知っているからだ。
むしろしたら、栞様からあとで説教されるのが怖い。
ひょっとしたら、二度とSEXをしてもらえないかもしれない。それだけは嫌だった。
 
「ああ。ご、ごめんなさい。そういうつもりで言ったわけじゃないの」
 
「ほ、本当に?」
 
「本当よ」
 
「私と友達になってくれる?」
 
「ええ。勿論よ」
 
「また一緒にお昼ご飯を食べたりしてくれる?」
 
「ええ。勿論よ」
 
「ああ。よかった」
 
栞様の泣きはらした笑顔がメチャメチャ可愛かった。それをただ見ているだけの私は何故かつまらなかった。これが俗に言う倦怠期という奴か。
確かに煩わしいほどにイライラするね。
そのあと、三人で仲良く手を繋いで登校するのだった。
途中であれ?という藍子の声が聞こえたのが耳に入ったけれど、気にしないことにした。
学校に着くと、まず、職員室に入って先生の紹介をされた。まるで転校生気分だった。
気分がウキウキする。栞様との蜜月もそうだったけれど。
 
「ここがあなたの学ぶ教室よ」
 
「は、はい」
 
「じゃあ、ちょっと待っててね。今、彼らに紹介するから」
 
そう言うと、先生は一旦教室に入って行く。そのあとで入ってといわれたので、私が教室に入る。すると、おおっ!という歓声が聞こえた。
みんなが注目している。ちょっと恥ずかしいな。
 
「ええっと、新しくここに入ってきた南翔子だ。今は小松栞の所に居候しているらしいから、栞の隣でいいな?」
 
「はい。構いません」
 
すると、担任の先生が椅子と机を持ってきてくれた。
その椅子に腰を下ろすと、チャイムが鳴った。
すると、ガヤガヤと言う生徒の声が一気に私に向かってきた。
 
「ねぇ!栞ってあの鉄女よね?あの子と一緒に住んでいるの?」
 
「ええ。そうよ」
 
「元々はどこに住んでいたの?」
 
「千葉県よ」
 
「千葉県かぁ……どうして鉄女と一緒に住んでいるの?」
 
「俺の嫁さんになって……ぐぶはぁ!」
 
「はいはい。そこまでよ。これ以上質問をすると、さすがに彼女も参っちゃうでしょう」
 
そういったのは新田このえだった。そうか。彼女は私と栞様と仲良しとまでは行かないけれど知り合いだった。だから、栞様との関係を少しは知っているようだった。
しかし、その隣で寝言を言っていた山田竜太を打つ田中可奈とは対象的な冷静な女の子だった。でも、素直にいいなと思う。幼馴染のようで可愛いかった。言うことは恐ろしいけれど。ちらっと栞様を見る。栞様は……微笑んで私を見ていた。私も微笑みで返すと。それを見ていた可奈が。
 
「それにしても、あの鉄女が笑うなんてね。まさか、翔子ちゃん何かした?」
 
「ええっと。そうですね。まあ、したと言うよりかはされたと言うか」
 
「ええ?何よそれ。なんか手品でも使ったの?」
 
実際、私は何もしていない。しかし、私は答える。
 
「私が栞さ……栞ちゃんに言ったのです。笑顔でいるようにって、私の前ではせめて……笑顔でいてくださいと」
 
「うわぁ!禁断の愛ね」
 
「そういうやましいものはないですけれど。でも、私は栞ちゃんの笑顔って素敵だと思うから」
 
「まあ、確かにそうね。無表情の女の子はよく似合うとか言うけれど、笑顔が似合う女の子もいる。あの鉄女はまさにそうね。今まで鉄女の笑顔なんて見れなかったからわからなかったけれど、いいわね」
 
そう言われると、私も元気に返事をした。
 
「はい!そうですね」
 
『4』
 
「そう言えば、栞様って何部に入っているのですか?」
 
お昼ごはんを食べている間に栞様に聞いてみた。実際、私も迷っていたのだ。
 
「ええっと。確か……色んな部を掛け持ちしてたと思うけれど、これにって決めるものがなかったらしいわ。『流れ』の私には……でも……そうね。この機会に何か入ろうかしら?でも、何部に入っていいのか……」
 
「じゃあ、私が選ぶと言うのは……ダメですね」
 
「当たり前じゃない。こんなもの……全て自分で決めていかないとダメなのよ」
 
「でも、何部に入るのですか?」
 
「……今考えているわ。帰宅部でもいいような気がするし、何部にも入らなくても声がかかることも多いから」
 
「ちなみに……前はどこから?」
 
「ええっと、吹奏楽部でピアノを弾いていたらしいわ」
 
「ぴ、ピアノ!?栞様……ピアノを弾けるのですか!?」
 
「ええ。まあ……『流れ』の私はピアノを弾いていたから……『流れ』の能力を使ったとか、お姉ちゃんが言っていたわね。あとは……ヴァイオリンを少々と言うところかしら?」
 
「ヴァイオリンも……ですか?」
 
「何年も転生をしていれば、自然と身につくものよ」
 
「ああ。なるほど。そういうことですか」
 
一緒に食べ終わって教室に戻ろうとすると、職員室の前に張り紙が張ってあるのに栞様が気がついた。
 
「あ〜。そうか。もうそんな時期なんだね」
 
「……?」
 
私が首をかしげていると、栞様が指をある方向に指す。そこにはかなり特大のポスターが貼られていた。
 
「ええっと。集え……九つの心。合唱コンクールですか?」
 
「ええ。流れの栞が最も嫌うイベントの一つよ」
 
「ああ。なるほど」
 
『流れ』を司る栞様は言葉を発することができるとしてもしないから、自然とこういうイベントは嫌いなはずだった。
 
「去年はピアノで済んだけれど、今年はどうなのかしら?」
 
「ちなみに栞様はピアノで……聞いた私が馬鹿でした」
 
そうだ。栞様のことだから、感情のこもらない音を出したに違いない。
 
「課題曲も決まらないし、一体どうなるのかしら?」
 
合唱コンクールは課題曲と自由曲との二つがある。その両方で総合的に点数が高かったクラスが優勝するらしいのだが。
 
「さすがに両方ともピアノで演奏するわけにも行かないでしょう。だから、どちらかを弾くしかなかったけれど、『流れ』を司る私が言葉を発しないから、クラスのみんなはヤキモキしていたわ」
 
「そうだったのですか……。でも、今回は大丈夫ですよね?『有』を司る栞様がいらっしゃるんですもの」
 
「そうだといいわね」
 
にっこりと微笑む栞様を見て、私はまた顔が真っ赤になってしまった。また……あそこが疼く。
 
「どうしたの?」
 
とても栞様を見て、あそこが疼いて仕方がないんです。とは言えなかった。
 
「いえ。なんでもないです……」
 
どうして?今朝、栞様としたばかりなのに……栞様の顔がまともに見られないなんて。
 
「あらあら?」
 
「えっ?」
 
すると、後ろから栞様から抱き付いてきた。
 
「キャッ!」
 
私が小さく悲鳴を上げる。
 
「翔子ちゃん。可愛いです!」
 
「ちょっと。栞様……ここ職員室前ですよ」
 
「あ……それもそうか……」
 
バレたら、退学どころじゃない。転校してすぐに退学なんて洒落にならない。
でも、栞様となら……それもありかな……と思う。
栞様と一緒ならどこにだって。何にだってなれる。
 
「……そうか」
 
突然、栞様が口に出した。
 
「そういうこともありか……」
 
「……?何がですか?」
 
「決まったわ。私の部活動。翔子も気に入ると思うけれど」
 
「えっと。どんな部活ですか?」
 
「麻雀部」
 
「ふぇ?」
 
「面白そうじゃない?いきなり、全国を狙えるかもよ?」
 
ええっと。それは確かに面白そうなのですけれど。でも、今頃麻雀をするのですか。
でも、栞様らしいと思う。
なんだかんだ言っても栞様は優しいお方なのだ。
 
「さあ。そうと決まったら、早速出しに行きましょう」
 
「えっと。私もですか?」
 
「ええ。そうよ。今度の秋季大会に間に合わせたいのだからね。早く来なさい」
 
「は、はい!」
 
でも、てっきりオカルト研究部とか、心霊写真部(いや、そんなのはないか……)とか、普通じゃあありえないところに行くかと思ったけれど。
意外と普通のところに入ったのだ。
 
「……そうか。一応、最終確認をしておくけれど。本当に麻雀部に入部するんだな」
 
放課後、私たちは職員室にいた。
 
「はい。よろしくお願いします」
 
「顧問は石渡先生だから、こっちの入部手続きはその人に渡してくれ」
 
「あの……それで石渡先生は?」
 
「あれ?そう言えばいないな。ああ。そうか。石渡先生は出張でいないんだったわ」
 
「じゃあ。どなたに渡せばいいのですか?」
 
「麻雀部に部長がいたと思うけれど。その人に渡せばいいよ」
 
「はい。失礼しました」
 
まあ、しょうがないか。早速、乗り込むとするか。麻雀部に。
麻雀部に入ると、そこには誰もいなかった。
部屋の左の隅にはベットと無数の対局用の読書本棚が……その中には無数の牌譜の本があるだけだった。そして、中央には綺麗な麻雀卓が置いてあった。
右には掃除道具が置いてあるだけの簡素な部屋だった。
 
「うわ〜。すごいですね」
 
「環境はよさそうね。手入れも行き届いているし。何より綺麗だわ」
 
「あら?見学者ですか?」
 
「後ろを振り向くと、ショートボブカットの少女がいた。綺麗な子だった」
 
「いいえ。入部希望者ですけれど。部長は……?」
 
「ああ。私が部長の春居です。あなた達麻雀は初めて?」
 
「いえ。子供のころにやったことがあります。ね?」
 
「は、はい」
 
「そう……じゃあ。ルールは知っているわね。麻雀部の部員は全部で五名。あなた達も合わせたら七人になるわね。男子が二人。女子が三人。あなた達は女子だから……これで五人揃ったわけね。秋季大会に出れるわ。まあ、自己紹介は後々に兼ねるとして……」
 
「おっ!やっとるな」
 
男子生徒が入ってきた。その男子生徒は黒髪をさらっと長く伸ばしている。
その隣には清純な女子生徒がいた。
その女の子は「どうも」と言って、部屋の隅に居座っていた。
 
「あら?誠人君。遊里も……」
 
「なに?見学者?」
 
「いえ。入部希望者ですよ」
 
「ほほーう。差し詰め部長が連れてきた……カモということですか?」
 
誰がカモだ。誰が……まあ、そう言っていられるのも今のうちだ。栞様はそこいらの麻雀の相手とは格が違いすぎるんだからね。
 
「じゃあ、早速特打ち開始をしましょうか……」
 
「はい!」
 
「は、はい……」
 
あれ?栞様が緊張しているのは気のせいでしょうか。私の心配はよそに試合が始まっていく。すると、いきなりだった。さっきの誠人とか言う人がリーチをかけてきた。
 
「リーチ!」
 
「だ、ダブリー?」
 
「……!」
 
私は考える。とりあえず、北を切る。それにしてもなんだ?この人は……栞様に似た人間なのか。
そして、二巡目で……上がってしまった。
 
「ツモ。ダブリー一発ツモ。2000・3900」
 
「なっ!」
 
「よっしゃ!飛ばして終わらすぞ!」
 
「なっ!私を相手に飛ばして終わらす……ですって?」
 
東二局目。八巡目にして私が聴牌した。
 
「(このリャンピン切り待ちが広いし、危険牌でもないから切れるわよね?もしも、相手が栞様のような相手だとしても。私は攻める!)」
 
そう言って、彼女はリーチをかけた。
 
「リー……」
 
かけようとしたときだった。
 
「ロン……タンヤオ三色ドラ3!18000」
 
「なっ!」
 
ここで単騎待ち?しかも、三色を狙われていた。
この人……栞様以上の化け物なのか?私は栞様の顔を見た。栞様は微笑んでいた。
 
「どうしたの?翔子ちゃん」
 
「あ。いえ」
 
そうだった。私が栞様に助けを求めるなんて、もっての他だった。ここは自力で上がるしかないのだ。
しかし、その後も。
 
「ツモ……!4000オール!」
 
「……くっ!」
 
やっぱり、この人……強いなんてものじゃない。
 
「……なるほどね」
 
「えっ?」
 
ここに来て、初めて……栞様がお声を出した。
 
「世の中……いろんな人がいるのね。それによって色んな打ち手がいる」
 
そう言って背もたれに寄りかかる栞様。
 
「誠人君だったっけ?」
 
「何だよ?」
 
「予告するわ。あなたを飛ばして終わらせて見せる」
 
「なっ!」
 
それは栞様の初めて出した予告宣言だった。
でも、どうやって?私がへまをしたばかりに、私の点は残り1000点しかない。あるとすれば、直撃のみだけど。
 
「フン……面白いな。あと、一局もすれば終わるのにどうやって、この点差をどうすると言うんだ?」
 
その通りだ。栞様の今の能力は『有』のはず。流れを司る栞様なら、流れを読んで上がれるような感じがするけれど。でも、『有』の能力者は麻雀には関係ないはず。それで……どうやって上がると言うのですか。いや、それは私の先入観。思い込みによるものであって、栞様はまだ未知なる可能性が残っているような感じがするのか?
 
『5』
 
私は緊張していた。こんな部員で全中を狙えるのかと。でも、そんなのは杞憂に過ぎなかった。彼と一緒なら、多分、世界でも活躍できるかもしれない。
でも、それと勝負は別だ。彼に敗北と言う文字を叩き込んでやろうじゃないの。
 
「…………」
 
あらあら?急にやる気になってきたじゃない。私が何かをすると思っている。翔子の目はそんな眼だった。
……まあ、今回は私が勝つけれど。来週は彼女に勝たせてあげたいな。私はリー牌をしながらそんなことを考えていた。
 
「(微妙な手ね。ウーシャンテンから上がれる確率ってどれくらいだっけ?流れを司るあの人なら……わかるだろうけれど。私には分からないわね。でも、今更、自分にはない能力を悔やんでも仕方がないから……私は私らしく。勝ちに行きましょう!)」
 
七巡目にドラを引いたけれど。さすがに裏めったわね。ドラの両隣の牌を切っちゃってるし。他のみんなはドラ牌を二枚切っているし。あるとすれば、地獄単騎しかないわね。まあ、この牌に意味があるかもしれないから、残しておきましょう。
そして、次の八巡目でようやく役がそろった。
 
「リーチ!」
 
「なっ!」
 
「うそっ?」
 
よく見ると、他の部員も揃っていた。
 
「(フフフ……外野が騒いでいますね。まあ、当然か。パーピン切って地獄単騎待ちなんだもの……普通はドラを切って待ちを広げるのが普通。でもね)」
 
「フフフ……ハハハハハ……!リーチ!これで終わりだぁ!」
 
そう言って、ドラを切った。馬鹿が。そんなもの通るわけないでしょう。
 
「ロン……」
 
「えっ?」
 
さて、裏ドラ乗るかな?と思ってみてみると。なんと。裏ドラがドラ牌と同じだった。
これはラッキー。
 
「リーチ一発ドラ4……12000!」
 
「なっ!その待ちで地獄単騎だと?」
 
「何?この人……理解が不能だわ」
 
「さすが……栞さ……栞ちゃん」
 
「さて……次に行きましょうか」
 
すると、誠人が不敵に笑った。
……なるほど。今のは運か何かと勘違いしているのね。でも、それが逆に利用できるわ。
そして、それは第一巡目にして起こった。誠人が何気に捨てた牌。それが当たりだった。
 
「ロン……人和のみ……8000点です」
 
「えっ?」
 
「ば、馬鹿な?」
 
「相変わらずの強運の持ち主ですね。栞ちゃん」
 
「ありがとう。嬉しいわ」
 
「フン……そんなのは偶然に決まっている」
 
「……まあいいけれど」
 
そして次の手配だけれど。ありゃあ。最初から字牌がバラバラで五枚も並べられているね。
ヤオ九牌は三枚揃っているけれど。あれを狙ってみようかしら?
そう思って、リャンピンを捨てた。
 
「えっ!」
 
「おい。まさか……あれを狙う気か?」
 
役満。国士無双。親なら48000点は持っていかれるわね。
 
「まさか。無理でしょう。すでにみんなが気づいている頃だし……」
 
フフフ。みんなが戸惑っているわね。今でも彼等の心のうちが読めるわ。
 
「(……何を狙っていやがる?まさか、国士無双か?いや、そんなことはありえない)」
 
とね。まあ、私からイーピンを切っているのだから、ありえないけれど。それも計算のうちよ。
そして、七巡目にしてきたと思った。
 
「リーチ!」
 
「なっ!」
 
「おおっ!揃ったのか?」
 
「すごいわ」
 
国士無双……聴牌。待ちは九ピン。すでに三枚切れているから残りは一枚。まさに地獄単騎ね。
 
「さて。後は待つだけね」
 
「(くそっ!何が待ちなのかさっぱり分からないぜ!まさか、聴牌したのか?国士無双を……馬鹿な。そんなオカルトがあってたまるか!そんなオカルトが……!)」
 
ああ。心の叫びが聞こえるわね。あ〜あ。聴牌したわね。これで九ピンを切れば私の勝ち。
切らなければ流局ね。
でも、彼は結局。切るしかない運命なのであった。
 
「通らばリーチ!」
 
「……通るわけないでしょう。ロン!国士無双……役満!48000点です!」
 
「この子……本当に彼をハコテンで終わらせちゃった」
 
「終局ですね」
 
「ええ。そうね。ありがとう」
 
「えっ?」
 
「あの子……このままだと。自分が一番だと思い込んじゃうでしょう?」
 
「ああ。なるほど」
 
確かにそういう面があった。自分が最強だと思っているから、自分に自信が溢れているから、それをへこませて上げたのだ。
そして、その自信を逆手に取った。見事な方法だった。
 
「それにしても、本当にハコテンにして終わらせるなんてね」
 
「まさか、自分でもそんなことになるとは思わなかったですけれど」
 
「誠人君……去年の春季、秋季大会の全中経験者なのよ」
 
「へ〜。そうだったのですか」
 
「でも、それでも……化け物の栞ちゃんには敵わなかったということですね」
 
化け物って言わないでくれるかしら?
 
「そんなオカルト……ありえるわけないでしょう!」
 
「誠人君……」
 
「部長!もう一回チャンスをください!」
 
「って言っているけれど……どうする?」
 
「じゃあ、もう一局だけ。いいですよ」
 
「すみません。私はちょっと降りますね」
 
「あら?もう帰るの?」
 
「……お店の手伝いに行かないといけないので」
 
そう言うと、遊里という人は帰っていった。
 
「じゃあ、私が入ろうかしら」
 
「ぶ、部長自ら?」
 
「…………!」
 
そうだ。この人がさっきから、圧倒的な殺気と実力を持っていた。
まるで、この卓を支配しているかのような……。そんな殺気を持っていた。
一体、どんな打ち手なのだろうか。でも、この人には全力で行かないと負ける気がした。
 
「さあ……始めましょうか」
 
そう言うと、彼女は自分の牌を取っていった。
 
「(また、微妙な手。リャンシャンテンだけれど、リーチのみか)」
 
そして、七巡目が過ぎたとき、私の中で何かが起こる。
 
「(なんだ?これは……)」
 
イーシャンテンなのに聴牌できない。それは彼も同じだった。
でも、彼女は聴牌をしている。その捨て牌から想像できる。
タンピン三色。安目でも、7700点は持っていかれる。
だからこのリャンソーは捨てられない。
そして九巡目に聴牌はしたけれど、リャンソーを切らないと聴牌できない。
 
「(くっ!どうする?)」
 
最初から、7700点は痛い。これからの点差を考えればのことだった。ならば、いっそのこと……同時狙いで行ってみるか。
私はそう思って、パーピンを切ってリーチをかけた。
 
「リーチ!」
 
待ちはリャンソーの地獄単騎待ち。彼女はウーソーを捨てているから。っていうか、それだと……三色は消されるから、ウーソー待ちは無い。
だけど、そのときだった。彼女がスーソーを捨てたのだ。
 
「(えっ!?そこで、スーソー切り?)
 
まさか!タンヤオを捨てて三色とピンフのみを狙うつもりか?
すでにイーピンとイーマンは三枚ずつ切れているから、残るのはまた、地獄単騎のみ。
次の瞬間、私は思った。
 
「(まさか!彼女の狙いはこっち!?)」
 
さっきから、九ピンと九萬が捨てられてない。まさか、狙いは……純チャンか?
まさか、彼女が九ピンと九萬両方を持っていて、それで捨てられないでいるとしたら。
そのとき、翔子が九ピンを捨てた。
 
「ポンっ!」
 
彼女が鳴いた。これで確定的だった。彼女は確実に純チャンを狙っている。
すると、最悪な事態が起こってしまう。
十三巡目で私が次に引く牌は九ソー!お願いだから、引かないで……!
 
そう思って、積もる。
だが、結果的に……積もった牌は九ソーだった。
これはどうしようもない。
 
「ロン……12000点」
 
確実に私のミスだ。ドラが乗っているから、12000点。裏が乗っていないだけまだましだったけれど。
それでも、純チャンを見抜けなかったのは悔しかった。
 
「くっ!」
 
「あなた……どうして、リャンソーを捨てなかったの?」
 
「だって、三色を狙っていたのでしょう?」
 
「正解よ。でも、あなたは五門張を捨てて単騎を残した。しかも地獄単騎。あなたが捨てていれば、安めでも7700点だったはず。なのに、捨てなかった」
 
「でも、それすらも知っていて……純チャンで上がられたのでしょう?あなたは……だから、私はしくじったのよ。大方、私の捨て牌を見てリーチのみだと知っていたのでしょう」
 
「ええ。でも、裏が乗っていれば、分からなかったわ」
 
「地獄単騎の私にそれを言いますか?」
 
「…………フフフ……それもそうね」
 
『6』
 
な、何?……この人達……栞様は彼女の当たり牌を止めているし、彼女は彼女で純チャンを狙っていた。こんなのはありえない。
そもそも、麻雀で三色を捨てて純チャンで上がるなんて、一体どれだけの確立ですか?
私は栞様の顔を見た。栞様は余裕のない顔をしていた。
まさか、それほどの相手なのか?この人は……。
 
「さて、続きをしましょうか」
 
「ええ」
 
栞様が負ける?なんとなくだけれど、私にはそんな予感がしていた。
しかし、栞様は諦めてはいなかった。
次の彼女の親番のときにそれは起こる。
 
「リーチ!」
 
彼女のリーチをカンしてしまった。
 
「カン……」
 
「えっ?」
 
その名の由来は高い嶺でも咲き誇る。
 
「ツモ……嶺上ツモ……メンチン……4300・8300」
 
「なっ!嶺上開花ですって?」
 
「し、しかも、倍満で……」
 
やっぱり、『有』を司る栞様でも嶺上開花で上がれるんだ。
もはや得意分野とでも言えばいい。でも『流れ』を司る栞様はもっと綺麗に上がれていたような気がする。
 
「やっぱり強いわね。栞ちゃん」
 
「……ありがとうございます」
 
栞様は部長に礼を言う。
 
「さて、続けましょうか」
 
「それにしても、翔子ちゃんの麻雀はぱっとしないな〜」
 
「彼女は役満を上がるのが得意なんですよ。土壇場で奇跡の大逆転を狙うのが彼女のやり方ですね。だから、今まで上がられなかった。でも、役満以外の役を上がることもありますけれどね」
 
「えっ?嘘でしょう!?」
 
「さすがにその兆候が見られていますね」
 
そう言うと、栞様が私の牌を倒す。大三元、四暗刻のダブル役満がそろっていた。
 
「……っ!」
 
全員が息を呑む。これが上がられていたら確実に飛ばされていた。
 
「さっきから、中と白とかが揃わなかったのはそのためですね」
 
栞様が説明をする。
 
「な、何なの?あなた達は?」
 
「私たちは普通の中学生ですよ」
 
普通の人より長く生きているけれど。
 
「さて……次がオーラスですか」
 
ここまでの点差は栞様と彼女が僅差だった。流局聴牌なのが多かったけれど、でも、彼女の国士無双聴牌だけはぞっとした。でも、栞様も負けてはいなかった。必死に彼女の捨て牌を予想して……切り抜けていく。私は配牌を見てみる。
 
「(やれやれ。ここまで来て役満のあれですか……)」
 
役満……九連宝燈。幻の役満といわれるあれである。イーシャンテンでこれって鬼ですか。
 
「(でも、上がれないんだよね。これ……)」
 
上がったら命を落とすと言われている幻の役満。私はそんな迷信は信じないけれど。
 
「あっ……」
 
来た。来てしまった。幻の役満を聴牌してしまったのだ。
 
「(でも、これで上がっても安めでも満貫手……ならば……!)」
 
「リーチです!」
 
私はリーチ宣言をしていた。
待ちは二萬なら、幻の役満九連宝燈。その他ならチンイーソのみで満貫狙いだけれど。
三巡目でこれって人間ですか?いや、天使ですけれど。
 
『7』
 
「(早い。でも、みんなが東を切っているから、大四喜待ちは無い)」
 
私は西を捨てた。しかし、他のみんなは現物を切っている。
すると、彼女は中を捨てた。
まさか、国士でもないし、三元牌は私が持っているから、それでもない。
 
「その中……ポンよ」
 
私は中をポンしながら捨てる牌を考える。考えれば考えるほど分からなくなる。まさか、あの幻の役満……九連宝燈?
私の中には二萬がある。これを捨てると、確実に直撃を食らう。
でも、まさか……翔子に限ってそんなことないよね。
だが、私の手はいつの間にか止まっていた。
 
「栞ちゃん?どうかしたのですか?」
 
彼女が心配そうに聞いている。
 
「なんでもないわ」
 
私は微笑みながら、彼女に告げる。そして、九ピンを切る。今はこれでいい。
しかし、そう考えているうちにどんどん、逃げ道がなくなってくる。
ついにはメンホン聴牌をしてしまった。これで二萬を切れば、イースーソー待ちで上がれる。だが、その前に大きな障害が立ち塞がっていた。
彼女はリャンピンやソーズを捨てている。
くっ!まさか、本当に九連宝燈を狙っているのか。
だとすれば、これは超危険牌だ。
……試してみるか。私はそう思って、二萬を捨ててしまった。
全体に不穏な空気が流れた。彼女が積もろうかどうかを迷うくらいに。
 
『8』
 
まさか、本当に捨てる人がいるなんて思わなかった。それも私が慕っているご主人様に。
どうしよう。これでロン宣言をすれば、確実に逆転できる。
もしも、私が上がっても問題はない。私なんて死ねばいいとか思っているし、実際にはそれまで数多くの人々を殺してきたのだ。今更、死んでも悔いはない。
問題はこれを上がると栞様の点棒がかなり減ってしまい、結果的には私が逆転勝ちをしたことになる。
そうなると、栞様に申し訳が立たない。
 
「どうしたの?上がらないの?」
 
知っているくせに……栞様は私のことを知った上で余計なプレッシャーをかけてきているのだ。もしも、上がればトップになるけれど、栞様との縁は切れてしまうかもしれない。
でも、私は……ごめんなさい。栞様!
 
「その二萬……ロンです!役満……九連宝燈……32000点です」
 
「こ、これで……彼女が逆転トップだ」
 
「し、信じられねぇ!」
 
「栞……ちゃん……ごめんなさい。私……私……っ!」
 
「何を謝る必要があるのよ。私はこの結果に満足しているっていうのに」
 
「えっ?」
 
「麻雀というのは運の割合が大半を占めるわ。今回は私があなたより運がなかったと言うこと。それだけなのよ。だから、あなたが謝る必要なんてどこにもないのよ。いいえ。むしろ九連宝燈で上がらなかったらこっちが怒っていたところだったわ」
 
「ええっ?」
 
「まあ、色々とあったけれど、少しは成長したようね。翔子ちゃん」
 
「…………」
 
栞様は私の頭を撫でてくれた。私は顔を真っ赤にしながら、それをすっかりと享受する。
やはり、栞様は私の思っていた通りの優しくて……素晴らしいお方でした。だからこそ、私が惹かれたかもしれませんね。
 
「さて、今日はおしまいにして……続きは明日ね」
 
「はい。お疲れ様でした」
 
「翔子ちゃん……帰ろうか」
 
「はい!」
 
「あの子達が本当にこの部に入部してくれてラッキーだったわ」
 
「ええ。そうですね」
 
「ああ。それにしても、あの子達と全中制覇に乗り出すと……うずうずするわね」
 
「……部長?」
 
「今日は……眠れなさそう。どうしようかしら?」
 
「…………」
 
私たちが去った後でも彼女たちはそう呟いていた。
 
「あ〜。それにしても楽しかったわね」
 
「そうですね〜」
 
「こんなにもドキドキしたのは久しぶりよ」
 
実際、私もドキドキしていた。栞様はそんな私の気持ちも知らずにさっさと歩を進めていく。こんなことは他人には言えないけれど、栞様は絶世の美女とも謳われるような容姿をしている。しかも、笑顔も素敵だから……こんな美少女を私が一人占めできるとすると、自然とドキドキしてしまうのだ。
こんな……こんなお姉さまがいてくれたらなぁと思う。
私は今まで独りだったから、独りきりだったから、天使の間では尊敬できる人はいたけれど、人間で……ガーディアンで……しかも、廃棄ナンバーのこの人を好きになってしまったのだ。
お姉さまになって欲しい。その思いが私を強くしていた。
 
「あ……あの……栞様……私……っ!」
 
「……っ!?」
 
そのとき、私のところに飛び込んできたのは藍子の姿だった。
 
「藍子ちゃん!」
 
そのとき、栞様が藍子を支えた。
 
「どうしたの?こんなにもボロボロになって……」
 
彼女の服はボロボロでところどころに肌が露出している。
 
「早く……逃げて…………あいつが……来る」
 
「えっ?」
 
「なっ!?」
 
「おや?懐かしい匂いがしたと思ったら、あなたでしたか……ゼラキエル」
 
そこにいたのは昔の私と同じの真っ黒な翼をしていた堕天使だった。
白と黒の基調としたワンピースを着ている。
そして、極めつけはコバルトブルーの瞳だった。見たことがある。
私は脳内で検索モードを開始して、その中でワンピースとコバルトブルーの瞳に写ったたった一人の少女を探してみた。数少ない情報の中でたった一人の少女と合致する。
 
「あら?天界でも指折りの戦闘力を持ったあなたがまさか、堕天使になるなんてね」
 
「それは……あなたも同じでしょう」
 
なるほど。彼女は私が堕天使から、天使に戻った事は知らないのだ。
まあ、私も信じられないことではあるけれど。
私が笑みを浮かべると、栞様が……。
 
「知り合いなのね」
 
「ええ。彼女も私と同じ天使でした」
 
栞様がため息を吐いて言う。
 
「今は……堕天使なのね」
 
私が頷くと、栞様が奴を確認した。そのときだった。
 
「翔子!右!!」
 
「えっ?」
 
そのとき、すでに彼女がいて、私を蹴り飛ばした。
私は大きく吹き飛ばされてしまった。
完全な油断だった。
 
『9』
 
「あら〜?完全に吹き飛んじゃったわね」
 
そのとき、彼女が私に目掛けて大きく振りかぶった。私は後ろに逃げてその攻撃を避けたけれど、地面に大きな亀裂が走った。
うわ〜。すごい力。これが彼女の言う天界でも指折りの戦闘力か。
 
「どうでもいいけれど、あんまり……この星を壊さないでね」
 
私が微笑むと、彼女がものすごくドキッとして後ろに下がった。
 
「な、何者だ?」
 
あら?一瞬にして殺気を流したのがばれちゃったみたい。私の悪い癖だわ。
 
「私?そうね。天界に巻き込まれた一般人というところかしら?私は悪魔とは戦うけれど、それ以外だったら、戦わない主義なのよね……だから……諦めてくれない?そうしてくれたら、私もあなたに対して危害を加えないと誓うわ」
 
「だ……ダメです……栞ちゃん」
 
「えっ?」
 
「堕天使は……本当に死ぬまで…………人間を殺し続けるのです」
 
「あらあら?そうなの?」
 
私が笑顔で問う。けれど、彼女は私を見上げて蹴り飛ばした。
 
「ぐっ!確かに厄介な存在ね。堕天使というものは……ちょっと、本気を出したくなったわ……悪いけれど……死んじゃったらごめんね。私はやりすぎると、『流れ』を司るあのことは違って加減が難しくなるのよ」
 
「えっ?」
 
「なっ!?」
 
「はっ!」
 
すると、私は彼女に向かってグーで殴って吹き飛ばした。そして、それに追いついて蹴り上げる。それすらも追いついて両手を組んで下に打ち落とす。
下には大きな穴が開いて私はその中心に向かって膝で彼女の背中を打ち付ける。
 
「ぶはぁ!」
 
まるで湖から必死にはい上がってきた人みたいな奇声を上げる。血を吐き出して、ピクピクと震えている。
やれやれ。もう終わりですか。つまらないわ。悪魔なら、もう少しだけ立ち上がるのに。
 
「本当につまらないわ。これだけで戦意喪失ですか?」
 
「…………う…………ああ…………」
 
彼女は言葉にならないことを口走って、気を失った。その上で私は彼女の首を締め付ける。
 
「死になさい……っ!」
 
そのとき、私の耳にはっきりと届く声が聞こえた。
 
『ダメ!やめて!!』
 
やれやれ。もうお目覚めですか。もう少しだけ、翔子ちゃんと遊んでいたかったけれど、しょうがないわね。
私は鈍痛を抑えながら、彼女を放した。
 
「し、栞ちゃん……?」
 
「よく覚えておきなさい。今回は私が出たから良かったものの……次に私や翔子ちゃんを傷つける人は……多分……殺されるわよ」
 
「えっ?」
 
「私にはもう一人の私がいる。対になる『無』を司る人が……その人を呼び起こしてしまったら、最後……よ」
 
そう言うと、私は再び深い眠りについてしまった。
 
『10』
 
ふぅ…………やれやれ。『有』を司る私も困ったものね。
あれだけヒントをばら撒いておいて、私に託すなんて……酷いにもほどがある。
まあ、今回は私のミスだけに言えないけれど。
それに……ちょっとだけ、笑顔を取り戻したから……私は微笑を浮かべながら、そう思う。
さて、壊れたものとかは『流れ』を使って戻せるからいいとして、問題は……。
 
『あら?もう起き上がれるようになったの?』
 
彼女に酷くやられながらも、藍子は自分の右腕を抑えて立ち上がっていた。
そんな彼女に私は『流れ』を彼女に送りながら無表情に言う。
 
「あ……あなたは……一体……」
 
私は大きなため息を吐く。
 
『見ての通り、私は多重人格者よ』
 
「な、なんで?」
 
『私には生まれつきこの能力というか不思議な力が使えるようになったの。そうそう。アルゼイドを退けたのも私の中の彼女が使った不思議な力のおかげよ。それだけよ……』
 
「本当にそれだけ?」
 
『ええ。それだけです』
 
「じゃあ、多重人格と言うのは?」
 
『私は……生まれてから今まで、この力を人の前で使い続けてきた。その結果、どうなったと思う?人から疎まれて蔑まれて、気づいたら笑顔を失くしていた。しかし、それでも飽き足らず人間は私に向かって罵声を浴びせる。過度のストレスで生まれたのが……』
 
「彼女たち……ですか……」
 
『そういうことよ。でも、私は……言葉を失くしてからも人間の味方だといい続けてきた』
 
「栞ちゃん…………」
 
『大切な兄が死んでからも……ずっと……人間の味方です』
 
私は淡々と口を紡ぐ。
 
「栞様……ごめんなさい」
 
『あら?あなたも起きたの?』
 
「まさか、『流れ』を司る栞様に?」
 
『……ええ。そうよ。ごめんなさいね』
 
「……はい。わかりました」
 
『さてと。積もる話は後にして、この子ね』
 
「ええっと。栞様?」
 
『何かしら?』
 
「その人をどうするつもりなの?」
 
私の問いかけに藍子が答えた。
 
『あら?決まってるじゃない』
 
私は彼女を抱き上げながら、微笑んで告げる。
 
『天使に戻してあげるのよ』
 
『11』
 
「あ……やっぱり……ですか」
 
私はため息を吐いて、それを口にする。
まあ、栞様に数々の無礼を働いたから、それだけじゃあ済まされないんだけれど。
でも、栞様がそうしたいと仰るのだから、それに従うしかないのだ。
 
「ええっと、どうやって?」
 
『まあ、やり方は色々あるけれど。とりあえず、家に帰ってじっくりと考えるわ。あなたも早く治して、明日には登校できるようにしなさいね。それじゃあ』
 
そう言ってポカンと口を開けたままの彼女を放っておいて、私たちは家路に着いた。
 
『翔子……彼女を例の部屋に……』
 
「それは構いませんけれど、本当にやるのですか?」
 
『あら?翔子は反対なの?まあ、それはそうか……』
 
栞様は私の気持ちを知っている。私がどれだけ栞様を想っているのかを……。
 
『でも、あなたがそれを言うかしら?』
 
「うっ!」
 
『私を殺そうとしたあなたが……』
 
「そ、それはもう……忘れてください。わかりました!彼女を好きにしてください」
 
それを言われると辛い。私も栞様を襲って殺そうとした天使なのだ。
……返り討ちに合わされたけれど。
 
「うっ……」
 
そのとき、タイミング良く彼女が起きた。あ〜あ。これから地獄のような快楽が待っているんだろうなぁ。
私も同じ手でやられたし。
彼女は私を見て、栞様をキッと睨みつけた。
ああ、私もやったわね。栞様を睨みつけたわ。
しかし、知らないというのはある意味で得ね。
彼女は鎖で縛ってあるので、自由に身動きが取れないでいた。それでも、口の自由は許されるらしいけれど。
 
『翔子……この子の名前は?』
 
「エルーノです」
 
『エルーノちゃんですか……?』
 
「私を……どうするつもり?」
 
「殺すならさっさと殺しなさいよって私も言ったけれど、栞様はそんなことは一言も口にしてないわよ」
 
「なっ!あなた……どうして!?」
 
どうやら、私の後ろにある白い翼が目に映ったらしい。
彼女は私と何度か戦ったことがある。私が堕天使で彼女が天使だった頃の話だけれど。
それが立場が逆転しようとは夢にも思わなかったのだろう。
それにしても覚えていたのか。
でも、どういう経緯で彼女が堕天使になったのかは知らなかった。
 
「あら?私の後ろにある白い翼がそんなにも珍しいかしら?」
 
「ま、まさか……あなたが……?」
 
そう言って栞様の顔を見る。どうやら、ばれちゃったみたい。
 
『そうよ。私が彼女を堕天使から天使に戻したのよ』
 
「…………っ!」
 
彼女の表情は驚きに変わっていく。
 
『まあ、そういうことだから、あなたも受け入れなさい』
 
そう言うと、栞様はエルーノの胸を揉み始めた。
 
「あん!」
 
『あら?こんな格好をしているくせに……感度はいいのね』
 
栞様の言葉は逆説的に言うと陵辱の言葉以外なにものでもなかった。
 
「ひゃん……あ、ダメ……ダメ……」
 
『何がダメなの?こんなに濡らしちゃって乳首もたっちゃって……気持ちよさそうにしちゃって』
 
「ち、違っ……ひゃあああああぁぁぁぁん!」
 
『あら?可愛い声で鳴くのね。それじゃあ、これはどうかしら?』
 
わざと聞こえなかったように彼女が言う。彼女の言いたいことはわかるけれど、栞様の前ではそんなのは無意味だ。
栞様は彼女の鎖を触っていて、それを彼女の性感帯に通じているのだ。
どう考えたっておかしいと思うだろうけれど、それ以上に快楽が彼女を蹂躙しているので、それ以上のことは考えられないのだ。
ああ、そういえば『流れ』を司る栞様はSだったけれど、『有』を司る栞様はMだったような気がすると、失礼ながらも私は思う。まあ、どちらも気持ちいいのだから、変わりはないけれど。
それにしても、栞様のテクニックは本当にすごい。相手がイクまで決して止めないのだから……ああ、次第に快楽を享受してきたわね。私もあれでやられたから人のことは言えないけれど。
彼女の悲鳴はやがて、喘ぎに変わりつつある。
 
「あ……ああ……ああ!」
 
乳首は服の上からでもわかるようにビンビンに立ち、あそこは愛液で溢れ返っており、更に彼女は潮を噴いてしまったのだ。
彼女自身も何が起きたのかわからない様子だった。
私も実際、初めてあれをやらされたときは潮を噴いてしまったのだ。
あ〜。それにしても気持ちよさそうね。
とか思いながらも、私のあそこも濡れていた。
しかし、それを知らない栞様は彼女に向かって辛らつな言葉を吐く。
 
『あらあら?そんなにも気持ちよかったのかしら?』
 
今頃、羞恥心が沸いてきたのか、彼女は顔を真っ赤にしながら、喘いだ。
 
「いやぁ……ああ……ああ……あぅ」
 
小刻みに動かして、快楽を味わい始めた。あ〜あ。陥落も時間の問題ね。すでに私に使われたテクニックを使ってるし、もうそろそろ……かしら?
 
「どう?気持ちいい?気持ちいいなら……いいって言いなさい。そうすれば、あなたは更なる快楽に身をおくことになるわ」
 
「ああ……はあ!あああああぁぁぁぁぁ――――っ!……いい…………」
 
彼女が快楽で恍惚の表情になる。よほど気持ちがいいらしい。
 
『どうしたの?気持ちいいの?』
 
さすがに根負けしたのか、彼女は自分の羞恥心を忘れて私と同じ言葉を叫んだ。
 
「あっ……ああぁんっ!き、気持ちいいですぅ!」
 
ついに彼女が陥落して溢れ出てくる蜜の量は半端じゃなかった。
 
「す、すごい……すごく気持ちよさそう……」
 
私は彼女を見て、つい自分のあそこを弄んでいた。私の愛液も半端なく出てくる量だった。
必死で押し殺していた声が漏れ始める。
私も彼女もそれは同じだった。
 
「ああ、気持ちいいよぉ!」
 
「あん……」
 
私のクリトリスが当たったみたいだった。
 
『どう?気持ちいいでしょう?』
 
「はい。とっても……ああん!」
 
もはや、彼女も快楽の虜になりつつある。
 
『でも、あなたはまだまだそんなものでは物足りないといっているわよ。ほら……言って見なさい。何が欲しいの?』
 
「そ、そんなの……言えません……」
 
『あら?さっきまで散々恥ずかしい台詞を言ってきたあなたが……何が言えないって?』
 
「ああん……!」
 
すると、彼女は快楽に負けて、再び恥ずかしい台詞を言わざる終えなくなる。
私も言ったわね。あの台詞。
 
「えっと……その……入れて欲しいです」
 
『聞こえないのですけれど』
 
そう言うと、彼女が真っ赤になって叫んだ。
 
「わ、私のあそこにあなたの手に持っているものを突っ込んでください!」
 
栞様の手にはバイブを持っていた。イボイボ付きのやつだけれど。
 
『別に入れてあげてもいいけれど、条件があるわ』
 
なんか、妙に私と同じ台詞を吐いてシンクロするね。
 
「えっ?」
 
すると、栞様はとんでもないことを口にした。
 
『彼女の……翔子ちゃんの前で四つん這いになって翔子ちゃんの愛液を舐めなさい』
 
栞様は彼女の鎖を解き放つ。
 
「ええっ?」
 
「は、はい!」
 
すると、彼女が従順そうに私の目の前に来て私の膣の中を舐め始める。すると……。
 
『あら?誰が……彼女の膣の中を舐めろと言った?』
 
「えっ?」
 
すると、栞様は薄ら笑いを浮かべた。
 
『まずは、頭(こうべ)を垂れて「お願いします。翔子様」でしょう?』
 
鞭で彼女を叩く。S全開の栞様だった。
 
「痛い!」
 
痛いとか言いながらも彼女は恍惚の表情を浮かべる。あの顔はもっとして欲しいという顔だった。
私も鞭でやられたときは痛かったけれど、その反面、栞様の能力のせいか気持ちがいい。
 
『ほら……早く言いなさい!』
 
ビシィ!バシィン!と叩く彼女。
 
「あう!あひっ!……お、お願いします……翔子様……」
 
『卑しい私目にあなた様の愛液を飲ませてくださいませ』
 
「卑しい私目にあなた様の愛液を飲ませてくださいませ」
 
栞様の言葉を唱和する。
 
『ですって。どうする?』
 
うわぁ。栞様が目でウインクする。なるほど。そういうシチュエーションか。
 
「え〜?どうしようかなぁ?」
 
『あ〜あ。嫌われちゃったわね。あなた……』
 
「そ、そんな!お願いします!翔子様!なんでもしますから……」
 
趣旨が変わっていることにも彼女は気づいていない。どうやら、彼女は完全に快楽の虜になったようだ。
私はため息を吐きながら微笑んで彼女に問う。
 
「本当になんでもする?」
 
「は、はい!」
 
すると、彼女は喜んで答える。どうでもいいけれど、彼女が私の後で本当に良かったわ。ひょっとしたら、私がいわされる羽目になるかもしれないからね。
そう。栞様に会う順番が変わっていたら、私が言わされる羽目になっていたかもしれない。
 
「じゃあ、床に落ちた私の愛液を舐めなさい。そうね。ただ舐めるだけじゃあつまらないから……私の愛液を舐めながら、今まで自分に行ってきたことを謝罪しなさい。私に対してと栞様に対してと両方よ。それで栞様と私が満足したら私の愛液を舐めさせてあげるわ」
 
それはある意味残酷な命令だったけれど。
 
「ふぁい。わ、私は栞様と翔子様に蹴りやパンチを入れてしまい……ご、ごめんなさい!」
 
「どうです?栞様」
 
『あなたも残酷な命令をするのね。でも……』
 
「そうね。誠意が足りないからもう一回やり直しね」
 
私たち二人は面白いから放置しておこう。そして、それを十数回繰り返した後、ようやく彼女には誠意が感じられ始めたけれど、彼女の舌はもう惚けていて、頬は蕩けそうなほど真っ赤だった。素直にその顔が可愛いなと思ったのは、20回ぐらい過ぎてからのことだった。ああ。いいわね。倦怠期を越えた私の意見だった。
彼女なら栞様の下僕としてでも良いということに私は決めたのだった。
 
「ど、どうれすか?」
 
もう舌もろくに回っていない顔でそんなことを呟いている。
 
「ええ。充分だわ。今度からその顔で私たちに頼むのよ。さあ、もう一回おねだりなさい」
 
「ふ、ふぁい。お願いします……卑しい私目にあなた様の愛液を飲ませてくださいませ」
 
その顔がなんとも快感だった。
 
「はい。どうぞ」
 
すると、いつの間にか私のあそこは肉棒に変わっていた。
 
「し、栞様?」
 
『ん?何?』
 
「あ、あの……これは……」
 
『ああ。『有』を司るあの人を少しだけ真似てみたのよ。流れを司る私なら、簡単かなと思ったけれど、案外難しいのね』
 
「ええっと。ということは……」
 
『ええ。精液も出るわよ』
 
そう言ったとき、彼女が私の肉棒を何の疑いもなく舐め始める。
 
「ああ。逞しい。これが翔子様のチ○ポ」
 
すると、彼女の手が途中で止まった。
 
「あれ?」
 
どうしたのかと思ってみてみると、栞様が彼女に向かって自分で作り出した肉棒で突いていた。
 
「あん……!気持ちいいよぉ!」
 
『あら?あなた処女だったのね。でも、あなたが舐めないと彼女もイケないでしょう』
 
栞様は彼女が処女でも悪びれる様子もなく、むしろ自然な形で奪っていく。
 
「し、栞様……わ、私……もう……」
 
「わ、私もイキそうです!」
 
『ええ。いいわよ。あなた達もイキなさい。私ももうすぐで……』
 
「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!!」
 
彼女が絶叫を上げたのと同時に。
 
「ぐっ!出る!」
 
彼女が手を離して気絶してしまったので、彼女の顔に私の精液と。
 
『うっ!出ちゃうわ』
 
栞様が飛び出して、彼女の顔にご自分の精液をかける。
 
「あ〜。気持ちよかったわ」
 
『私も……さて、私はまだ仕事が残っているからね。あなたはもう休みなさい』
 
「えっ?でも……」
 
『大丈夫よ。すぐに終わるから』
 
「……なら、一緒に居させてもらっても構いませんか?」
 
『別に構わないけれど……急にどうしたの?』
 
「栞様に言いたいことがあって……」
 
『言いたいこと?』
 
「お帰りなさい。栞様……」
 
そう言うと……栞様は私に向かって微笑んでくださったのだ。
 
「ええ。ただいま……」
 
そのとき、栞様は初めて言葉を発したのだ。
その言葉はどんな声優よりも愛しくて、どんな女優よりも綺麗な声だった。
栞様がやっとで私だけに心を開いてくださった瞬間だった。
 
「じゃあ、私はシャワーを浴びてきますね」
 
『ええ。構わないわ』
 
すると、彼女から邪気が薄れていくのを感じた。
栞様が彼女を膝枕にして、頭を撫でているところだった。
それを見ていいなぁ。とか思いながら、私はシャワーを浴びにいくのだった。
 
『12』
 
翔子が退室した後、彼女が見る見るうちに黒い翼から白い翼に変わっていくのを私は感じていた。
彼女の過去は翔子の過去より比較的に人を殺した量が少ないことが判明した。そのために早くに終わらせることができたのだ。
でも、翔子のときみたいに記憶を消すとかいう方法はもう使わないことにした。
今回は覚えてはいたけれど、翔子も満足そうな顔をしていたし、何よりも彼女を抱いていて、私も気持ちよかったからだった。
 
『あ〜あ。合唱コンクールか。嫌なんだよねぇ。あれに出るの……』
 
今回もピアノだけで済むといいのだけれど、前回は声は出さなかったし。今回はそうもいかないようだ。
そう言えば、発声練習なんてしたことが無かったような気がしたのは気のせいではないだろう。
しかし、この合唱コンクールがさらに混迷を極めるとは私自身も気づくはずが無かった。










     




















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