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いつからこうなったのだろう。
私がこうなってしまったのは。
別に……自分ではいつでも殺されてもいいと思っていた。
悪魔に殺されても人間に殺されてもまた、転生できるから。
でも、そう思えば思うほど。
悪魔が憎くてたまらないのだ。
でも、人間は関係ないから、何を言われても大丈夫なはずだった。
 
『1』
 
私は朝早くにおきて着替えを済ませていた。
悩むのは昨日のことだった。
麻生唯をいくら許せないからとは言っても、いきなりグーで殴って、気絶させたうえにあばら骨まで折ってしまったのだ。
しかし、あれから時間が少ししかたってないことには驚いたけれど、どうやら廃棄ナンバーにも自己治癒能力が半端なくあることに少しほっとした。
今日は学校へ登校の日だ。
 
「で?唯君とは仲直りしたんやないの?」
 
みどりさんが言うと私がいう。
 
『ええ。そうなんですけれど』
 
そう。確かにそうなのだが、歯切れが悪い言い方に彼女が抗議をしてきた。
 
「なんや。えらい歯切れの悪い言い方やな」
 
彼女が言うのも無理はない。私はまだ、麻生唯があんなことをするのかと思うと、心配でしょうがないのだ。
 
『私は……麻生唯を許せません。でも、あの攻撃には反省をしています。だから、どうすればいいのか……わかりません』
 
「ふぅん。えらい消極的な言い訳やな」
 
『私は言い訳なんて!』
 
「そんなことで感情的になるなんて、栞らしくないよなぁ」
 
『……っ!』
 
「……まあ、私は珍しいものが見られたからいいとして……なんや。不満がありそうな顔やなぁ」
 
『私は麻生唯の考え方が分かりません。いきなり、友達になってくれだなんて。そういうことを普通に考えてありえると思いますか?』
 
そういうことをグーで殴った人に普通は言わない。
 
「それは向こうの方の思考がぶっ飛んでんのやろ。健全な男子にはよくありがちな展開や」
 
『で?次はどういうことが考えられますか?』
 
「ん?私やったら押し倒して、即行でゲットするけど」
 
『お姉ちゃんに聞いた私が馬鹿でした』
 
「まあ、男女の恋愛感情なんてそんなもんや」
 
『…………』
 
「栞……あんた。唯君の思考が読めなくてイライラしてないか?」
 
『その通りです』
 
私は朝食を食べ終わると、外に出た。
ああ。今日もいい天気だけど、私には憂鬱でしかない。
私はため息を吐いて学校へと向かったのだった。
 
『2』
 
全く。いくら私が正規のガーディアンじゃないからと言っても満員電車の中で普通に痴漢するか?しかも相手は悪魔だし。相手の女の子は嫌がっているし。しかも、私の学校の制服だし。
 
「いや……やめてください」
 
止めてあげてよ。とか言われても。誰も止めないんだろうなぁ。
しょうがない。悪魔だし。これがもしも人間だったら見逃しはしても、警察には訴えるだろう。だが相手は悪魔だし殺すか。しかし、そう思ってため息を吐いたそのときだった。
 
「イヤアアアアァァァァっ!痴漢よ!」
 
痴漢された少女の近くにいた少女が叫んだ。あの格好は遊学館の制服だった。
 
「ちっ!」
 
すると、奴は最後尾まで逃げていく。
しまった。私らしくないミスだった。帰ったらお姉ちゃんに言われそうで怖い。
何とか人を振り払い追いつくと、奴は窓から逃げようとする。
私はため息を吐いた。普通に考えたら即死的なスピードなのに……と思った瞬間。スピードが急に遅くなって駅について止まってしまった。しまった。これも奴の計算のうちか。
 
「じゃあな。間抜けな人間ども!」
 
私はため息を吐いた。これでは奴の底が知れる。私は窓ガラスを割って外に出た。
線路沿いに奴を確認すると、思いっきり捻ってジャンプする。
奴の反対側に回って着地すると、奴が驚いた。
 
「なっ!」
 
『こんにちは。そして、さようなら』
 
そう言ってグーで殴ろうとしたとき、それは起こった。
 
『えっ?』
 
奴がすでに灰化していた。
一体どこから?と辺りを見回すと、そこにいたのは一人の女性だった。
私の丁度真後ろから、弓で射たのだ。
 
「あら?当たったわね」
 
私は振り向いて、その女性を見た。髪は独特の日本の黒色で長く、すらっと伸ばしている。
化粧はしていないので、素肌が年齢よりも若干幼く感じさせている。
そして、何よりも驚いたのはこの人。私と同じ制服を着ていたのだ。
 
「それにしても……灰化しちゃったわね。いろいろと聞きたいことがあったのに……」
 
彼女がそう言うと私は踵を返して、行こうとすると。
 
「あっ!ちょっと待ってよ」
 
彼女が私のあとをついてくる。
非常に迷惑なのだが、断るわけにはいかないので……そのまま歩いていると。
 
「私……この街に来たの初めてなんです。だから、学校へ行く道を教えてくれるとありがたいんだけど」
 
どうやら転校生みたいだ。しかし、私はすたすたと歩く。
彼女は何を思ったのか、私の前にまで走ってきて。
 
「あなたの名前は?」
 
どうしたものか。と迷った。いくらなんでもここは線路。しかも、彼女は一般人かもしれないのに。しかし、私は無視をして歩く。彼女の横を通っていく。
それにしても活発な人もいたもんだ。いや、あのゴシップ好きの女の子よりはマシだけれど。私はため息を吐きながら、自分のノートを取り出して、それを書いた。
 
『小松栞です』
 
「栞?栞ちゃんかぁ。いい名前だね」
 
『あなたの名前は?』
 
この辺は検索をすれば出てくるので非常に便利だった。
 
「私の名前は桜木藍子。よろしくね。栞ちゃん」
 
人に握手を求められるのってこれで二回目だった。一回目は麻生唯と二回目は彼女と。
 
『それで?あなたは何者?』
 
握手を終えて私はノートをめくりながら彼女に聞いた。
 
「……それは私も聞きたいわ。あなたは何者なわけ?」
 
『ノーコメント』
 
「都合のいいノートね」
 
あるものはしょうがない。前にお姉ちゃんからもらったノートが役に立ってよかった。というか、似たような台詞を聞いた覚えがあるのだけれど。
しばらく私たちは線路沿いを歩いて、やっとで学校の駅前に着いた。
 
「ねえ。どうして線路沿いを歩いたの?」
 
『この方が近いから』
 
私は指を別の方向に向けながら指した。私が指を指した先には学校があった。
 
「お〜。さすがは栞ちゃん。頼りになるわ」
 
そう言って私に抱きついた。私はうっとうしくて仕方がないのだけれど。
 
「なんか。お人形さんっぽくて近寄りがたい印象があったけれど。よかったわ」
 
『何がですか?』
 
「いいや。私たち……同じクラスメイトになれるといいわね」
 
『どうして?』
 
「区立安達中学校の中学生でしょう?だから、私と同じ学年だったら、同じクラスってこともありえるでしょう?そうなったら、一番の友達にしてあげるわ」
 
うわっ!この人。麻生唯とは違うし、自己中だ。
まだ、私がOKを出してもいないのに……なんか、ミシェルと同じにおいがする。
そして、学校に着くと私は下駄箱に靴を履き替えて、彼女を案内する。
彼女は物珍しそうに……見ていたけれど。それは注目の的にしかならない。
 
「おい。誰だよ?あの子……鉄女と一緒だぜ?」
 
「さあな。あんまり関わりないほうがいいと思うぞ」
 
「でも、かわいいよなぁ」
 
「ああ。なんというか、グラマーで美人さんなんて、麻生唯の京さん以来だよ」
 
「あなた……鉄女と呼ばれているの?」
 
『別に……噂なんてどうでもいいし』
 
というか、興味がないだけだった。しかし、彼女はぷっと吹き出して笑い出した。
 
『何がおかしいの?』
 
「いや、らしいな。と思って」
 
『らしい?』
 
「私にもね。居たんだ。そういう友達が」
 
私みたいな人が居るなんて、物珍しい人も居たもんだ。
 
『ここが職員室よ。じゃあ、私はこの辺で……』
 
そう言うと、やっとで開放された。
そして、教室に帰ると少し疲れたように机に突っ伏した。
別に疲れてはいないのだが、今朝に起きた出来事を一巡してみる。
確か、お姉ちゃんと麻生唯のことを話し合っていて、電車に乗ったときに痴漢にあった人を見つけて、痴漢が悪魔で……追いかけて行ったらいきなり窓ガラスを抜けて出て行った。私が窓ガラスを割って出て行くと、体を捻って追いついた。でも、悪魔はすでに別の女性、桜木藍子という少女によって奈落に返された。
私はため息を吐いた。
彼女は一体何者なのだろう。
考えられるのは現代におけるエクソシストみたいな存在だ。巫女さんじゃないということはどこかの魔術結社だということも考えられる。
魔術結社か……あそこは随分前に誰かのガーディアンが潰したって話だけれど、まだ残っていたのか。しぶとい奴らだ。
……いや。違う。魔術結社ではない。
魔術結社なら何かシンボルのようなものが彼女に刻まれているはずだ。当然、彼女にはそんなものは刻み込まれてはいなかった。
それならなんだ?この違和感は……彼女と出会ったときに感じたこの違和感は。
……えっ?まさか。でも、そうだとすれば考えられる。
私は頭の思考の流れを操作して、思考の中であるはずのない出来事を必死で捜索する。
すると、浮かび上がったヴィジョンは想像を絶するものだったけれど。
同時に納得のできるものだった。
 
「栞さん?」
 
そのとき、私の思考の流れを止める人が現れた。麻生唯である。
 
「栞さん。大丈夫?なんか、顔色悪いよ?」
 
『いいえ。平気よ』
 
私は言葉を流れに乗せて麻生唯に伝える。私の言葉は常に麻生唯だけに伝えている。
多分、顔色が悪いのは能力を使ったせいによる一時的な混乱とヴィジョンを見たせいによる眼の疲れからだ。
私から彼女に会わなければ、会うことももうないだろう。電車の時間でさえも、一本遅らせれば済む話だ。それか、飛んで通うか。
そう。私と彼女の時間はもう終わりだった。
このときまでは……。
 
「ねぇ。今日……転校生が来るらしいわよ」
 
「ああ。見たよ。すげーかわいい子だって話じゃないか!」
 
その言葉に机に前頭部をぶつける私だった。本当にらしくない。
 
「へ〜。今日は転校生が来るんだ。どんな子かな〜?」
 
麻生唯が興味津々で私に訊ねてくる。あの顔は絶対に分かってないけれど、それでも絶対に分かりたいという顔だ。
いくら、無表情の私でも人の表情によって何を考えているのかは分かるつもりだ。
もう二度と関わりあいたくないのに、自分から関わってしまうなんて本と運にこのときの自分はどうにかしてたと思う。けれど、あとには引けなかった。
程なくして先生が入ってきて、学級委員長が号令をかける。
そして、一通り今日の用事や雑務を終えると、最後に転校生の紹介に移った。
しかし、そこにはやはり今朝に出会った少女。桜木藍子の姿があった。
みんながかわいいという中、私だけが妙に浮いている。それを感じ取ったのか。
 
「あっ!栞ちゃんだ!」
 
「えっ?」
 
いっせいにみんなが私のほうに視線を向ける。私はため息を吐いて……何?と言う疑問を視線で送る。
すると、見かねた先生が助け舟を出してくれた。
 
「じゃあ、席は栞君の隣でいいかな?」
 
「ええ。構いませんわ」
 
そう言うと、彼女はうきうき気分で私の隣の席に座る。
 
「なあ。桜木ってあの桜木コーポレーションの社長だよな?それとあの鉄女とどういう関係だ?麻生。聞いて来いよ」
 
クラスの一人……菊池慎吾が麻生唯に声をかける。というか、聞こえているんですけれど。
 
「どうして僕が?」
 
「だって、麻生君。鉄女と親しかったじゃない?」
 
「そうそう。この間だって一緒にお昼ご飯を食べたりしてたじゃない」
 
「あなた。随分とクラスメイトと仲がいいみたいじゃない?」
 
私の言葉の流れを聞いている最中に邪魔してきたのは藍子だった。
 
『別に……向こうから私に関わってきてるだけ』
 
これはさすがに書かないといけない。私は書いて彼女に見せる。
すると、彼女は何を思ったのか。何かを書き始めた。
 
『でも、律儀に答えているみたいじゃない?』
 
『どうして書くのよ』
 
『学校の評判を落としたくないから。あなたとは違ってね』
 
『なるほど。桜木コーポレーションの社長の愛娘のことだけはあるわ』
 
私はため息を吐きながら見せる。
しばらく、授業に集中しながら聞いていると、彼女が再び何かを書き始めた。
その内容はと言うと。
 
『あなたは一体何者?』
 
『単なる中学生よ』
 
『中学生はあんなことはできないわ!』
 
何故か、エクスクラメーションマークまで付けられた。意味ないのに。
 
『じゃあ、あなたはどうなの?天界から来た天使のエルメスさん?』
 
私はクエスチョンマークを二つで返す。
 
「……っ!」
 
その言葉に固まってしまうエルメスだった。私は無表情だったけれど、彼女は驚いているのは明らかだった。
しかも、どうやら図星の様子だった。
 
「あなた……!どうして?」
 
彼女が立って私を見つめる。すると、授業中だって気づいたのか。彼女はすみませんと着席した。
宣戦布告は成功した。しかも、どうやら思ったとおりの展開に少しだけいやになる。
そう。思ったとおりの展開になるといつも決まって悪いことが起こる。
今回は違うといいけれど。
 
『3』
 
私のデータはないはずだ。私は廃棄ナンバーだから。
廃棄ナンバーのデータはすでに名の通り廃棄されている。
だから、私はこれまで誰とも気づかずに生きてきた。静香も私と会うまでは全然気づかなかったのだろう。
しかも、私は前世とは面影もなく生きてきた。だから、私は影のように生きることができて、冷酷で無慈悲に悪魔を狩ることができたのである。
そんな私を誰も知ることができない。たとえそれが天使であってもだ。
彼女たちはガーディアンでさえ知らないかもしれない。噂で聞いたことがある程度にしか聞いていないのだろう。
 
『どうして……あなたは何も話さないの?』
 
『あなたに話す必要がないだけよ』
 
冷酷な言葉だった。
 
『どうして、私の正体に気づいたの?』
 
『ノーコメント』
 
ここで話してしまえば、彼女たちにも迷惑がかかってしまう。それは廃棄ナンバーである私でも一緒だった。
 
『じゃあ、私はあなたに対してあらゆる手段を使ってあなたのことを調べさせてもらうわ。それでもいいのね?』
 
どうやら、強硬手段に出たようだ。
 
『別に構わないけれど。もしも、それで私の周りにいる人達に危害を加えたりしたら。殺すわよ』
 
それは天使といえども悪魔と同等だった。いや悪魔より強い分、性質が悪いかもしれない。
だけど、私は悪魔といえども天使といえども確実に殺すだけの実力は持っていた。
 
『嘘よ。神に仕える私たちにそんなことができるわけないじゃない。神は今でも人間を愛してらっしゃるというのに……』
 
『殺されていった人はそうでもないみたいよ』
 
私は前世の私を思い出す。私は殺され続けてきた。
時には疎まれ、蔑まれ、そんなことがないままに生きてきたのだ。
 
「……?」
 
しかし、そんなことは知らない彼女は首を傾げるばかりだった。
私たちは何も言わずに、そのまま先生の話を聞いていて、そのまま時だけが過ぎていく。
先生から桜木。と呼ばれて、彼女がはい。と返事をする。
 
「これを解いてみろ」
 
「わかりました」
 
『じゃあ、行ってくるわね』
 
そう書き残すと、彼女は問題を数秒見てすらすらと解いていく。
そのペースは少しだけ速い。
なるほど。私に見せ付けるために緊張しているのね。
 
「す、すごい速い。小松さんか……いいえ。それ以上だわ」
 
「う〜む。鉄女は成績を見るだけならトップを誇るけどな」
 
「でも、これは新たなライバルが登場したか?」
 
ゴシップを好む彼女たちがひそひそ話をしていた。だから、聞こえているってば。
私は『流れ』でそれを聞きながら、ふと思っていた。どうして彼女がここに来たのか。
普通、天界は人間界とは干渉を持たない。いいや、持てないのだ。
天界も奈落と呼ばれているところと同じでここに来るためには……相応のリスクが伴う。
まさか……と思ってしまった。いや。それだと、彼女の過去がぴったり重なる。彼女がここに来たわけを知ってしまった。しかし、それを彼に話してどうにかしてもらうという風にはなれなかった。
私は今後も彼女と慎重に接する必要があるだろう。
その理由は麻生唯とガーディアンにある。彼らに迷惑はかけられない。
もしも、私が彼女に正体がバレたならば、彼らは天界から抹消されるかもしれない。
私……いや、私たちガーディアンと呼ばれる人達は天使とか、そういう人ならざるものにはとことん相性が悪い。天界から見たら私たちは天敵みたいなものだ。
天界から見たら悪魔も相当相性が悪いけれど彼女達は人間界に干渉を持てないからいい。
でも、私たちは干渉しすぎている。
だから、私たちは極力天界から、関わりなく生きてきたのだが。
 
「小松……これを解いてみろ」
 
私はため息を吐きながら立ち上がった。なんとも間の悪い。
私に問題を持ちかけるなんて……。
まあ、いいけれど。
問題は二次方程式の解の問題。x(2)+2x−15の問題だった。私は問題を見て、一瞬で気がつく。そして、その解を黒板に書いた。正解はx=5、−3だった。
 
「か、完璧な答えだ」
 
周囲から、おおっ!という歓声が沸く。
私は方程式と聞いていつだったか、兄の言葉を思い出す。
 
『人間という生き物は方程式では到底測れないんだよ。計算式では解けない問題がいっぱいあるんだ。それは無限の可能性。無限の強さなんだよ』
 
兄がいつも言葉にしていたこと。そして、ヴェガに吸収される前に言っていたことだった。
私たちはガーディアンで化け物だけれど。でも、長年人間と一緒に暮らして彼女たちとは違う暮らしをしてきた。
人間と触れて聞いて、人間は方程式では到底測れない……その意味を少しだけ理解した気がするからだ。
歩きながら、一瞬麻生唯を見て、彼は気がつくと、私は目を逸らした。そして、着席した。
そう。彼こそがその原点とも言えるかもしれない人物だったから。
 
『4』
 
昼休みに屋上に呼び出された。麻生唯に。
私は眼でなんですか?と聞くような顔をすると。
 
「いや、また……一緒にご飯をどうかなと」
 
「そうよ。一緒に食べようよ」
 
切り替え早っ!というかいつの間に?
私の隣には当然のように彼女がいて、すでにそこには、新田このえや山田竜太、田中可奈や菊池慎吾といったいつものメンバーが揃っていた。
私はため息を吐きながら、指定された席に座った。
 
「ごめんね。本当は彼女と一緒に食べたかったんだろうけれど」
 
私は首を振りながら、彼に言う。
 
『いいえ。ついでだから、あなたにも言いたかったことがあるので』
 
私は言葉に流れを乗せて彼だけに伝わるように言う。
 
「言いたかったこと?」
 
「麻生君。何独り言を言っているの?」
 
「い、いや。なんでもないよ」
 
麻生唯が乾いた声であははは。と笑う。
 
『麻生唯』
 
『なんですか?』
 
今度は麻生唯が私だけに聞こえるように言う。
 
『ごめんなさい。昨日のこと』
 
『えっ?ひょっとしてザウラスに襲われたときのことを言っているの?』
 
『はい。その……あばら骨は大丈夫ですか?』
 
私がやったようなものだから、そのことを謝罪しなければと思った。
 
『うん。京さんが治してくれたからね。もう大丈夫だよ』
 
『すみません。本当は私が治すつもりだったのですけれど』
 
『ひょっとして、責任を感じてる?』
 
『ええ。それともう一つ。話しておかなければならないことが……』
 
私は山田竜太と田中可奈の二人がけんかをしているのを見て言った。
 
『何ですか?』
 
『私たちは常に狙われていることを忘れないでください』
 
私は弁当箱の蓋を開けながら言う。
 
『……どういうこと?』
 
『内閣特殊事案対策室……と言うものをご存知ですか?』
 
『知っているよ』
 
『なら、話が早い。私のところにも来ました』
 
私は玉子焼きを食べながら、彼の言葉を待った。
 
『えっ?そうだったのですか』
 
ということは彼も内閣特殊事案対策室と係わり合いを持ったということになる。遅かった。
 
『ええ。私は当然、蹴りましたが。それともう一つ。天界という機関は?』
 
『いや。それは初耳です』
 
『そうですか。簡単に申し上げると、天使が直轄する機関と申し上げます』
 
『て、天使ですか?』
 
『ええ。神の御使いとして彼女達は存在し、その従事内容は神に仕える。そして彼女達の目的は神を冒涜する悪魔を私たちと同じことをすることです。そう。私たちが彼等を奈落へ帰すことを目的としているように彼女たちも同じことを目的としています』
 
『わからないな。どうして、そんな人達が僕たちを狙うというの?』
 
『分かりませんか?私たちは転生できる。輪廻を回ることができるということです。それはすなわち、神を冒涜するのと一緒じゃないですか』
 
『そう言うものなの?』
 
『向こうはどう思っているかは分かりませんけれど、私なりに彼女たちと戦って得た結果です』
 
『なるほど。僕も気をつけるようにするよ』
 
『ええ。特に堕天使には気をつけてください。彼等は人をも喰らい、その能力も奪い取ることができますから』
 
『わかったよ』
 
「あ〜。いいなぁ。麻生君の弁当!」
 
今日の彼の弁当はコロッケとハンバーグと焼き魚だった。それも市販されているものではなく手作りだった。
 
「えっと。食べる?」
 
「食べてもいいの?」
 
「うん。実は由佳さんが作りすぎちゃって……栞さんも食べますか?」
 
『遠慮します』
 
そう言って首を横に振った。
 
「栞さん?」
 
『麻生唯。身近にいる人に注意してください。では……』
 
私は無表情に言って、彼のそばから離れる。
 
「あっ!待ってよ!」
 
そう言って桜木藍子が食べ終わり、私についてくる。
 
「あなたって意外と人気者なのね。ビックリしちゃった。でも、肝心のあの話はされてないみたいだけれど」
 
『当たり前です。あんな話をしたら、怖がって誰も近づかなくなりますよ』
 
そうでなくても私は鉄女とか、色々な噂が飛び交っているというのに。
私が書きながらため息を吐いた。
 
「あなた……昔、兄がいたんですってね」
 
『ええ。それが何か?』
 
「驚かないのね。私が知っていることに……」
 
『どうせ、調べたんでしょう。私の身辺などを』
 
天界という機関なら、それくらいのことはやりかねない。
肝心の私がガーディアンと言うことは知らないらしいけれど。
私は教室に戻って、本を広げる。
 
「何を読んでいるの?」
 
『授業の復習』
 
「えっと。そんなにも勉強が好きなの?」
 
『いいえ。でも、テスト範囲だから』
 
「あなた……本当に何者なの?」
 
『私は私よ。小松栞です』
 
この辺はほとんどお姉ちゃんが聞いてきたことがあるから、それをめくりながら、答える。
彼女が私の隣に座る。
 
「今朝のあの力は何?」
 
彼女は少し緊張しながら聞いてきた。
 
『私の身辺を調べたんじゃないの?』
 
「いいえ。聞いたのはあなたには兄がいたということくらいよ」
 
『対悪魔経歴を調べたら、私が何者かなんて一発でわかると思うけれど』
 
「ええ。そうね。参考にさせてもらうわ」
 
まあ、私の対悪魔経歴を調べたら、とんでもない結果が生むということは目に見えているけれど。
 
「あ、あの……」
 
そのときだった。キョロキョロと辺りを見回している一人の少女がいた。
髪の毛が腰にくるまで長く、黒い。おそらく、私よりも長いその髪の毛をツインテールにして縛っている。
 
「誰だろうね」
 
『さあ?』
 
「あの……小松栞さんはいませんか?」
 
私……?見たこともない少女だけど、少し引っかかることがあった。
彼女……どこかで見たことがあるのだった。
どこだっけ?朝……どこかで見たことがあるような。
 
「栞?いるよ」
 
山田竜太が対応して私を呼んだ。
私が立ち上がって、少女に近づく。顔は可愛いけれど、私と接点は……そこまで思って思い出した。この子……今朝、痴漢に遭われた少女だ。どうやら顔も一致する。
 
『私に何のよう?あなたは誰?』
 
ノートを見せた。しまった。逆だったけれど。何とか伝わったようだ。
 
「あ、あの……!私……C組の松島七恵といいます。そ、それで……今朝、助けてくれた礼を言いに来ました。ありがとうございます」
 
そう言って、一礼をした。
 
「おい。あいつ、なんて言った?」
 
「ええっと。なんか、痴漢に遭われたっぽいよ」
 
「何?痴漢だと?羨ましい……ごふぅ!」
 
「どうでもいいけれど、鉄女に勇気があるわね」
 
みんなが口々に言う。だから、聞こえているんだってば。
私はノートに書き始めた。
 
『別に気にする必要はないわ。それに助けたのは私じゃないから』
 
そう。実際に私は何もしていない。
 
「それで、その痴漢はどうなったんですか?」
 
『安心して、ちゃんと警察に書類送検したから。今頃、反省しているでしょうね』
 
まあ、行き先は留置場じゃなくて、奈落だけれどね。
 
「そうですか。ありがとうございます」
 
そう言ってまた一礼された。
なんか慣れてないけれど、彼女がこうするのは少しだけ眼に見えていたような気がする。なんとなくだけれど、予感がしたのだ。
 
「小松さんって近寄りがたい存在だけれど、案外優しいですね」
 
まあ。普段、私は何も言わないからね。それに無表情だから。でも、それが人間に忌み嫌われていることは……少なからずとも彼女は私の本質を見抜いている。
私はため息を吐いた。しかし、そのとき、チャイムが鳴った。
 
「あっ!もう行かなくちゃ」
 
『もしも、困ったことがあったらここに連絡するといいわ』
 
そう言うと、私の携帯電話の電話番号を書いたメモを渡した。
 
「あ、ありがとうございます」
 
彼女は手を振って私と別れた。
 
「いい子じゃない?」
 
私はため息を吐きながら、彼女を見る。
 
『人の事を勝手に盗み聞きしてるのではありませんよ』
 
「盗み聞きなんて人聞きの悪い。ちょっと聞き耳を立ててたくらいで……」
 
『それを一般的に盗み聞きと言うのですよ』
 
「うぐっ!」
 
私はまたため息を吐いて、席に戻る。
 
「ねえ。栞ちゃん?」
 
『何ですか?』
 
「まるで、どこかに潜入捜査しているような書き方……やめてはくれませんか?」
 
『あら?私は結構気に入っているけれど』
 
私は能力を使ってスラスラっと書いている。
 
「ど、どうしてそんな文字がスラスラっと書けるのよ」
 
そんなことを言われても書けるものは仕方がない。
 
「ねえ。栞ちゃん」
 
『はい?』
 
「あなたって処女?」
 
『そうですけれど。それが何か?』
 
「い、いや。なんでもないよ」
 
『まさか、サキュバスだとでも思ったとか?』
 
「いやいや。まさか」
 
あははは。と笑う藍子。どうやら、図星だったようだ。私はため息を吐いて言う。
 
『ひょっとしたら、サキュバスよりも厄介な存在かもしれませんね』
 
そう書いてふと止まった。そして書き直す。
 
「ん?どうしたの?」
 
『いいえ。なんでもありません』
 
私はそれを書いて彼女に見せたけれど、自分の正体がバレるのがちょっと癪で嫌だったからである。
 
『5』
 
放課後。私のところに訪れたのは驚くべき人物だった。
 
『静香……どうしたの?』
 
「唯さまは?」
 
『ああ、今、先生に呼び出されているところよ』
 
「何か粗相をしたの?」
 
『いいえ。進路の資料を集めているみたい。彼……日直らしいから』
 
「そうだったの」
 
安心したようなため息を吐いた。
 
『じゃあね』
 
そう言って別れようとすると、静香が言う。
 
「あっ!待って」
 
『何?』
 
私は立ち止まって彼女の話を聞こうとすると、周囲からざわめきが聞こえる。
あの子は誰だ?的なことだったけれど。
 
「……私が今日会いに来たのは栞のほうなの」
 
『私?』
 
私に向かって指を指す私。
 
「ええ。少し、言いたいことがあって」
 
『……場所を変えましょう』
 
そう言うと、私は行こうとしだしたそのときだった。悪魔の気配がしたのだ。それも身近にいる。
 
『静香……気づいた?』
 
「ええ。悪魔ね」
 
『全く、しょうがないわね』
 
「あら?面倒くさそうな顔ね」
 
そう言ってクスクス笑う静香。
 
『今朝も居たからね。こうも続くとさすがに嫌になるわよ』
 
「まあ……それはしょうがないわね」
 
まあ、そんなことを言っても今更どうしようもないのだけれど。
 
「行きますか?」
 
『ええ。そうね』
 
私が言うと、少しだけ驚いた。いつもは好戦的でなくて大人しい彼女が率先して悪魔狩りに手を貸そうというのだ。
 
『どういう風の吹き回し?』
 
「何が……かしら?」
 
『いつものあなたなら行ってらっしゃい……とか言って見送るあなたが何故?』
 
「……あれ?そういえば、どうしてかしら?」
 
どうやら、彼女自身も分からないらしい。私はため息を吐いて。
 
『何か言いたいことがあると言っていたけれど。何ですか?』
 
「そういえば、そうだったわ。実は言いたいことがあるというか、質問があるというか」
 
『…………?』
 
「栞……この間から、天使が見張っていたことを知っている?」
 
『ええ。それなりに若干は感じていたけれど』
 
「唯さまも感じてはいたけれど、どうしようか迷っているらしくて。それで栞に相談しようと思ったの」
 
『なるほど。彼女が私の中学に転校したのはそういうことですか』
 
「どういうこと?」
 
『実は……』
 
そう言うと、私は今までの経緯を彼女に説明した。
説明をし終わると、彼女がう〜んとうなり声を上げながら。
 
「なるほど。そういうことがあったのですか」
 
『エルメスもそうだけれど。内閣特殊事案対策室も何らかの形で動き出そうとしているわ』
 
私が言うと、彼女がため息を吐いて。
 
「まるで、四面楚歌ね。それで……?栞はどうするつもりなのかしら?」
 
『別に何もしないわ』
 
「えっ?」
 
これには静香も驚いた。
 
『私の標的はあくまで悪魔よ。まあ、むこうがもしもちょっかいを出してくるなら考えてもいいけれど。天使は人を殺せないしね』
 
「殺したら、堕天使に変わるものね」
 
『そういうことよ。だから、向こうがその気でない限り、私たちは戦う必要もないわ。一応、麻生唯にも忠告はしておいたから大丈夫だと思うけれど』
 
すると、私たちがたどり着いた場所は廃墟となったボーリング場だった。
窓ガラスがいくつか割れていて、建物も古錆びて今にも倒壊しそうなところだった。
私が進むと話が聞こえた。
 
『静香。分かっているとは思うけれど』
 
「ええ。わかっているわ」
 
私たちが確認しあったのはここから先はおしゃべりは禁物だということ。
まあ、悪魔に会ったら会ったで殺せばいいだけだけれど。
私は奥へと進む。静かも後ろからついてくる。
私は話し声に耳を済ませる。
どうやら、話し声は四つしている。二人はどうやら人間らしい。口が塞がれていて、モガモガ言っている。もう二人は悪魔だと思う。女と男だったから間違いないはずだ。
50mぐらいまで進むとその声もはっきりしてきた。
 
「へへへ。この通り二人とも上玉ですぜ」
 
「そうか。それはご苦労だったな。これは手土産にサキュバス様にいい報告ができそうだ」
 
サキュバス。古くから淫魔として人々を淫らな行為をしてきた人物だった。
もう10mほど行くと、視認できた。しかし、そのとき。私は驚いてしまった。後ろに黒い羽根の堕天使がいるのだ。反射的に私が隠れると静香も慌てて隠れる。
どうして堕天使がここに?
そうか……段々点と線が結ばれてきた。エルメスがここに来た理由の一つは堕天使になった彼女を救うためだった。
ということは彼女がゼラキエルか……。
 
「栞……どうしたの?」
 
『静香……堕天使がいます』
 
「えっ?」
 
『しかも、その堕天使が悪魔であるサキュバスに仕えています。多分、淫呪にやられたと思いますけれど』
 
「なるほど。それによって淫魔に逆らえなくなったのね。多分、その過程で人間を殺してしまって堕天使になったと」
 
サキュバスの淫呪は人間でも女性でも一般人ならとてつもない威力を発する。麻生唯が使う言霊の威力よりも絶大な威力を誇るのだ。
だから、淫魔に逆らうことができなくなってしまったのだ。
 
『そう考えるのが普通ですね』
 
よく見ると、彼女は少女のような体躯をしている。おそらく、藍子とは同期か先輩後輩の関係なのだろう。
そして、あるときを境に失踪した彼女を探し出すためにこの街へとやってきて、私の中学に転校してきた。そう考えると全ての辻褄が合う。
さて。そこまで考えて、どうするか。サキュバスの居場所を見つけて殺すのは容易いけれど、彼女を元に戻せるかどうかが分からない。
もしも、サキュバスを殺したとしても、彼女が天使に戻るとは限らないのだ。それは彼女が自ら受けた罰なのだ。
私はやれやれとため息を吐いた。
 
『全く。私は相手の思考の流れを変えるのは嫌なのですけれど……今回は致し方ありませんね』
 
一回それをして見事に失敗したことがあった。けれど、今回はたとえ、うまくいかなかったとしてもいいのだ。
 
「どうしたの?」
 
『静香は人質と悪魔の方を頼みます。静香なら、一瞬にして消せるでしょう』
 
「ええ。可能だけれど。あなたはどうするの?」
 
『私はあの堕天使を相手にしますけれど、殺しはしません』
 
「えっと。それでどうするの?」
 
彼女が何だか、後ろ汗をかきながら私に呟く。
 
『拘束してサキュバスの居場所を吐かせます』
 
さも当然のように私が無表情に言った。
 
『6』
 
「……間抜けが……つけられていたな」
 
「えっ?なっ!」
 
一瞬にして、悪魔が灰になった。静香が放ったワームホールが悪魔に向かって貫いたのだ。
 
「何者だ?」
 
『さて、あとはあなた一人ね』
 
「まさか、天界から差し向けられた刺客か?」
 
『違うわよ。あんなのと一緒にしないでくれる?心外だわ……』
 
私がそう言うと、彼女がすばやく槍を出した。
 
「栞……こっちはOKよ」
 
静香が女性たちを解放したらしい。
 
「貴様!サキュバス様への土産物を……よくも!」
 
彼女が叫ぶと静香に向かっていく。
 
『あなたの相手は私だと言っているでしょう!』
 
私は彼女に追いついて、右蹴りを放つ。壁のほうまで吹き飛ばされて叩きつけられた。
 
「くそっ!…………なっ!」
 
そのとき、彼女が反射的に上空に飛んで避ける。
さすがは腐っても天使。私のセイントビームを避けるなんて、見事としか言いようがないけれど。
私はすぐに次の術を繰り出した。
大気中の水分を氷に変えて、雹を降らせた。
 
『氷雨!』
 
傷が十個ほど出来上がる。全てが当たったからだ。麗や芽衣なら百個ほど作れそうだけれど、私がこれが限界だった。
全てを操るには相当の集中力が必要になる。
だけど、それも囮だとも知らずに……私は次の術を放った。
氷を水に変えて電気分解。水素を三重結合させて、小規模な爆発を起こさせた。
彼女の壁の近くにあった窓ガラスが割れまくって、彼女が横に大きく吹き飛んだ。そのままぶっ飛んでピンに当たる。
 
『ストライクかしら?』
 
「ええ。見事にね。お疲れ様」
 
『さて、帰りましょうか』
 
私は彼女に近づいて、すでに気絶している彼女を持ち上げる。
 
「ええ。そうね」
 
彼女がそう言うと、私は彼女を連れたまま帰宅した。
 
『7』
 
私が家に帰ると、すぐにお姉ちゃんに電話した。三回コールして、お姉ちゃんが出た。
 
「もしもし。栞?どないした?」
 
『お姉ちゃん……例の部屋……使ってもいい?』
 
「なんや?急に……」
 
そう言うと、私は今までの経緯を全てお姉ちゃんに説明した。
 
「なるほどなぁ。で?栞はどうして彼女を天使に戻そうと思ったんや?」
 
『これがもしも、自分の意思でやろうと思ったのなら、放っておきますけれど……』
 
「悪魔の手によってやられたのならば、全力で駆逐するか。栞らしいね」
 
『ええ。その通りです』
 
お姉ちゃんは私の本質を見抜いている。だから、私も気を許せるのだ。
 
「よっしゃ。わかった。後のことは任せてな」
 
『ありがとう。お姉ちゃん』
 
そう言うと、電話を切った。
お姉ちゃんの了解は取った。
彼女を例の部屋へと運ぶ。
 
「……お久しぶり。お兄ちゃん」
 
私は生の声でお兄ちゃんの写真に向かって声をかける。私が訪れたのはかつての兄の部屋だった。そして、お兄ちゃんとお姉ちゃんが性交をしたところでもある。
だから、お姉ちゃんの了解を取ったことには重大な意味を持つのだ。
私は準備に早速取り掛かる。彼女を椅子に自分の能力で作り出した鎖で縛り付けて、固定させる。その過程で彼女がようやく目が覚めた。
 
「う……はっ!ここは……!?」
 
すぐに状況を理解する。彼女はキッと私を睨みつけ、強情そうな顔をしている。
 
『あなたの心の中を覗かせてもらったけれど、面白い能力を持っているのね』
 
私は無表情に言うけれど、心の奥底では微笑んでいた。
 
「貴様!私をどうするつもりだ?」
 
『ん?実験をするつもりだけれど?あなたを堕天使から天使に戻せるかどうかをね』
 
すると、彼女は青ざめるどころか笑い出した。
 
「ふははははは!幾度となくそのような実験をしたものがいたが、どれも全部からぶりで終わったのだ。いくら貴様が何をしようと、それは変わらぬ!」
 
『あら?それはどうかしら?私は全ての流れを司る者よ。天使の行動やその他の行動なんて読むのは容易いわ。例えば……』
 
そう言うと、私は彼女の服の上から胸を揉んだ。
実は後から分かったことなのだが、彼女は胸が比較的に大きい事に気づいた。それは彼女を運んでいてわかったことなのだが、だからこそ、サキュバスからも認められたのだろう。
 
「んあっ!」
 
彼女の体がビクンと大きく仰け反る。
 
『相手の性感帯とか……相手の思考の流れとかもね』
 
そう言うと、彼女はゾッとした。そう。私の能力をフルに使えば、相手の胸を揉むだけでイカせられるのだ。
 
「ひゃあっ!そんな……やめっ!」
 
『あらあら?こんなにも濡らしているのに……今更、やめてなんて言われてもね』
 
そう言うと、私は彼女のオマ○コへと手が伸びた。
すると、彼女のアソコは蜜で大きく濡れていた。
 
『感じやすいのですね』
 
「ち、違うっ!そんなんじゃあ……ないわ」
 
『あらあら?じゃあ、これは何かしら?』
 
私は彼女を陵辱していた。ねっとりとした粘液を見せつけて、彼女に何かを問う。
 
「そ、それは…………」
 
彼女が羞恥心で顔が赤くなっていた。
 
『さて、私の能力はそれだけじゃないのよ。例えば、ここにある鎖に触れると……』
 
私が彼女の縛っている鎖に触れただけで、まるで、それが伝染したみたいに彼女が激しい喘ぎ声を上げた。
私の能力は鎖に触れただけでそれを能力で通してイカせることもできるのだ。
 
「ひゃああああぁぁぁぁん―――――――!!」
 
すると、彼女は潮を噴いてしまった。噴出した勢いはとめどなく溢れ出てくる。
 
『どう?気持ちいいの?』
 
「や、やめて……みないでぇ……!ああ……」
 
やはり、同姓では見られるのも恥ずかしいのだろう。
 
『ダーメです。気持ちいいというまでやめないわ』
 
そう言うと、私は鎖を撫で回しながら、彼女の頬に口をつける。すでに全身性感帯になった彼女の体は敏感に反応を見せる。
だけど、私は無表情でそれを見ているだけだった。
 
「ひゃう!ああっ!」
 
彼女を落とせるのは時間の問題だな。そう思った私は決定的な言葉を投げかけた。
 
『どう?気持ちいいんでしょう?私があなたに触れただけであなたはこんなにも感じているのよ。敵だった私にイカされるのって……とても気持ちのいいことですよ。ほら。言って。言えば楽になりますよ』
 
彼女にとって私の言葉は催眠術のような感じだったのかもしれない。
あまりの刺激に彼女は激しく身体を仰け反らせ、私の悪魔の言葉についに禁断の言葉を吐いてしまった。
 
「あっ……ああぁんっ!き、気持ちいいですぅ!」
 
天使にとってそれは自分の敬愛する神をも超える気持ちのよさだったのかもしれない。
ちょっと鎖を撫でたりしたくらいで、潮を噴いてしまう可愛らしさに私は無表情だけれど、心の底では笑みを浮かべている。
 
『あらあら?天使って淫猥でスケベだったのですね』
 
「そんなことを言わないでっ!あっ……!でも、気持ちがいいのぉ!!」
 
すでに彼女は涎を垂らしながら、絶叫を上げていた。
 
『で?どうして欲しいの?』
 
私の手が止まる。
 
「ふぇ?」
 
『どうして欲しいの?』
 
「えっと……その……入れて欲しいです」
 
『聞こえないのですけれど』
 
そう言うと、彼女が真っ赤になって叫んだ。
 
「わ、私のあそこにあなたの手に持っているものを突っ込んでください!」
 
私の手にはバイブを持っていた。イボイボ付きのやつだけれど。
 
『別に入れてあげてもいいけれど、条件があるわ』
 
「えっ?」
 
『私の奴隷になりなさい。そうすれば、入れてあげる』
 
「えっ?そんな……」
 
『いやなの?』
 
そう言って、彼女の鎖をさする。私の麻薬のような快感に彼女は再び禁断の言葉を口にした。
 
「ひぃぃぃやあああああぁぁぁぁん!!なります!私はあなた様の奴隷になりますから!入れてくださいっ!!」
 
私は彼女の鎖を解いて、床に寝かせる。彼女はパンツを脱いでいっし纏わぬ姿になった。
ヴィイイイインとバイブが振動してそれが……彼女の膣の中に入る。すると、それはすっぽりと入って彼女が嬌声を上げる。
 
「あああああああぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ!気持ちいいよぉ!!」
 
『しょうがないメス奴隷ですね。私の名前は小松栞だけれど。私のことはご主人様とお呼びなさい。そうすれば、それだけであなたは絶頂を迎えられ、ものすごい快感を得ることになるわ』
 
私の催眠術のような暗示に言う。
 
「ご、ご主人様……うあ……イク……っ!イッちゃう!」
 
『いいわ。イキなさい』
 
私が命令すると、彼女は黒い羽根を広げながら。
 
「ああ……!イクうううううぅぅうううぅぅっ!!」
 
絶頂を迎えながら気を失った。
 
『8』
 
さて、ここからが本番だ。
私はすやすやと私の膝元で座って眠っている彼女を見る。
私は彼女に触れながら、彼女の過去を探していたのだ。
彼女は合計で八人以上も人を殺している。
私はいつものようなため息ではなくて、深呼吸のようなため息を吐く。
失敗して、彼女を殺してしまうことはある。
過去に一回だけやって自分を殺したことがある。何度も転生を行って自業自得だと思って過ごしてきた。
でも、今回は違う。今回は自分じゃない。彼女自身のためにやっていることだった。もしも、私が失敗して彼女が戻らなかったらアウトだ。
しかも、今回は加減が知らない。自分の第六感を信じてやるしかないのだ。
前回は自分の未熟さゆえに自分を殺してしまった。でも、それでもやるしかないのだ。
私は気合を入れる。
 
『さて、やりますか……』
 
私は彼女の頭を触りながら、思いっきり力を注ぎ込んだ。
私がやろうとしていることは年齢退行をしているのだ。
成長は年齢と共に伸びていく。私が行っているのはそれの逆の方法だった。
そう。私は彼女の肉体を若返らせるというのをやっているのだ。
肉体を若返らせれば、彼女は真っ白い翼を取り戻すのではないかと思ったのだ。
しかし、これには膨大なリスクが背負うのだ。
まず、第一に私の精神力の問題だった。肉体の若返りは膨大に精神力を消費する。
第二の問題は彼女の実年齢だ。見た限りでは彼女は悠久の時を生きている。
そして、第三にどこでやめればいいのか皆目見当がつかない点だった。私が生まれる前から、彼女はサキュバスの淫呪にかかっている。だからこそ、手探りでそれを把握しなければならないのだ。
だけど、そんなに昔ではないことぐらいはわかっていた。もしも、五十年前とか、百年前とかだったら、天界で問題になっているはずだし、人間界でも影響が少しあってもいいくらいだ。
時間にしておよそ五時間半ぐらいになって、さすがに疲れてきた。彼女は二十年ぐらい若返っているはずなのに彼女の体躯は今のままだった。
私はさらに退行をかける。すると、六時間ほどで、それは起こった。
 
『…………綺麗……ですね』
 
彼女の羽根は見事に真っ白になり、以前のような輝きを取り戻している。
 
『ふぅ……』
 
さすがにこれ以上すると、私の体力が持たないのでやめた。
それでも、彼女はさっきと変わっていた。
翼は真っ白なのはもちろんだが、肌がつやつやしている。私が観察していると。
 
「う……ん?」
 
『あら?起きたみたいね。気分はどう?』
 
「はい。おはようございます。ご主人様」
 
『…………』
 
しまった!年齢を退行するので精一杯で記憶の方を退行するのを度忘れてた!
 
「どうかしたのですか?」
 
さっきと口調すらも変わっている。
 
『いいえ。なんでもないわ。ちなみに今は夜中よ』
 
「あ……すみません」
 
『……まあいいわ。もう一回しますか?』
 
「はい。よろしくお願いします!」
 
そう言うと、私は彼女の体を求め合った。
心の片隅で罪悪感を感じながら。











     




















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