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どうして私たちは出会ってしまったのだろう。
どうして私たちは殺しあわなくちゃいけないのだろう。
私はいつ死んでもかまわないと思っていた。
私が死んでも転生されて、また違う誰かに私の記憶を植え付けられ、生きていけるから。
でも、私自身が一人しかいないというのも事実だった。
そう。小松栞は一人しかいない。
だから、私は生きたいと思ったのだった。
 
『1』
 
冷やしていた麦茶がぬるくなってしまっている。
氷はすでに溶けている。
夏だからしょうがないのだが、それでもこの暑さだけはどうにもならない。
それでも、みどりの話は終わらなかった。
 
「栞はな……私を巻き込むまいと一人で戦ってたんや。いいや、正確に言うなら、私たちかな?そう。某医科大学で起きたちょっとした事件も栞がすぐに解決してくれたんや」
 
みどりがそう言って話し始めた。
本当に悲しい男の物語だった。
 
『2』
 
私は某医科大学に来ていた。
ここでお姉ちゃんが講義を受けているのだ。
お姉ちゃんが苦労の末に行き着いた先がここだった。
お姉ちゃんは大学四年生だから、もうすぐでここを卒業して本格的に医者になるつもりだ。
でも、私は悪魔を狩りに出かけるついでに寄っただけなので、すぐに狩りにいくだけだった。
それなのに……どうして悪魔が大量にいるのだろうか。
一匹ずつ狩っていくしかないので、余計に手間がかかる。
私はため息を吐きながら、ここでの仕事をこなした。
 
「お〜。栞……すまんな。偉い偉い。ここまできてくれたんやな」
 
お姉ちゃんが私に撫で撫でしてくれる。
私はまたため息を吐いてそれを受け入れる。
私は鉛筆とノートを出そうとしたとき、三つ編みの女性が声をかけてきた。
 
「あれ?みどりさん。誰ですか?その子」
 
「ああ。私の妹の栞や」
 
私は軽い会釈をした。
 
「え〜?可愛いですね。本当にあなたの妹なんですか?」
 
「当たり前や!血は繋がってへんけど……」
 
「え〜?なになに?みどり妹を連れてきたの?」
 
「うわっ!かわいいね〜。何歳?」
 
「羨ましいな〜。いいな〜。私に頂戴」
 
私はもてあそばされつつあった。頭を触られたり、頬ずりされたり、抱っこされたり、まあ、私はどこを触れても無表情なのだが。
 
「アカン!もうすでにカオスと化しとるわっ!ギャア!」
 
お姉ちゃんが押されて見る見るうちに視界から消えていく。
その間に蹂躙する女性たち。
 
「ええい!散らんかい!」
 
怒号のような声が聞こえた。
 
「ええ〜?」
 
「この子はまだ、喋れへんのや!そこらで堪忍したってな」
 
「ちぇ。まあいいけれど」
 
そう言うと納得したのか、彼女たちは散って行った。
 
「すまんかったなぁ。あいつらは珍しい物好きって奴?それで……堪忍したってな」
 
私はノートに何かを書き込むとそれを姉に見せた。
 
『悪友?』
 
「いや、だから、どこからそんな知識を引っ張り出してくるんや?」
 
と突っ込む。しかし、私は聞きたいことがあった。
 
『お姉ちゃん。私のこと話したの?』
 
すると、苦虫を噛み潰したような顔になった。
 
「……まあ、一応病気があるんかないんかだけやけどな」
 
そう言うと、お姉ちゃんは進み始める。
医科大学というのは清楚なイメージをあったけれど、ここは最新設備もそろっているようだった。
 
「なあ。栞……」
 
『なんですか?』
 
この辺の文字は検索すると出てくるので、便利だった。
 
「最近、夜出歩いているやろ?」
 
私は少しだけびっくりした。しかし、無表情に私はパラパラとノートをめくる。
 
『はい……』
 
お姉ちゃんにもう嘘はつけなかった。
ただでさえ、あの男の事が気になっているはずなのに……私が話さないからだ。
でもお姉ちゃんも私を気遣ってか、何にも言わなかった。
 
「あの男のこと……栞のなんなん?」
 
『ノーコメントです』
 
「どうして、そんな項目があるんや!?」
 
『ノーコメントです』
 
「あ〜。やっぱりあげるんや無かったわ。こんなもん……私とのコミュニケーションをとるための道具や言うても、コミュニケーションもとれへんような道具なんていらんやろ」
 
そう言って私のノートを取り上げる。
私は名残惜しそうにそれを見る。別にいらなかったけれど。無いならないで、それも困った。しかし、お姉ちゃんは少し言い過ぎたのか。
 
「嘘や嘘。これがないと、コミュニケーションもとれないからなぁ」
 
私に返してくれた。私はノートを大事そうに抱え込む。それを見てお姉ちゃんは満足そうに微笑む。
しかし、そのときまた、悪魔の気配を感じた。
私はため息を吐いた。
 
『お姉ちゃん。トイレはどこですか?』
 
「うん?向かい側の奥やけど?」
 
『ちょっと。トイレに行ってきます』
 
「ああ。いっといで」
 
そして、私は悪魔狩りに精を出すのであった。
意識を集中して、悪魔を絞る。
最近は人間に似た悪魔が出没してるから、見分けるのも一苦労だった。
でも、私は間違えない。
それがたとえ女に化けていようとも、なんに化けていようとも動いている限り、私の眼に狂いは無かった。
いた。B塔の四階だ。私は走った。
その男は白い白衣を着ている。
全く、この私を騙せると思っているのか。医者に化けていればばれないと思っているのか。
 
「おや?君はいったい……どこかの迷子か?」
 
『私はガーディアンの廃棄ナンバーだ』
 
「ま、まさか!」
 
そう言って逃げようとするが、私から逃げられるはずも無い。
 
「あ、足が動かない」
 
『あなたの足に流れる血を止めました。逃げられませんよ』
 
「た、頼む……命だけは助けてくれ」
 
『それは私に頼むのではなく……神様に頼むんですね』
 
そう言って私が彼に向かって突いた。
 
「ギャアアアアァァァァ――――――っ!!」
 
彼は叫びながら黒い灰になった。
私はヴェガに会ってから、冷酷、残忍になったような気がする。
悪魔に対して一切の容赦がなくなったような気がする。
悪魔は狡賢くて、冷酷で残忍だった。
まるで今の私のような……そんな感じだった。
本当の悪魔なのは案外、私のほうかもと思ってしまう。
こういっては何だけれど。
私は悪魔を狩っている確率はヴェガ以外では。全戦全勝だった。
だから、私が死ぬのはいつも病気とか、人間に殺されるとかそういうのが当たり前だった。
私は人間に殺されてばかりだった。
過ぎた力は時に人から蔑まれる。
それが疑心暗鬼に変わり、私は殺される。
そういうのが多かった。
でも、私は人間に殺されてもいいと思っていた。
何故なら、私は恐怖の対象だからだ。
それでも、私は悪魔を狩り続けなければならない。
だって、それこそが私が生きている存在定義なのだから。
何のために力を得て、何のために力を振るうのか。
私には分かっていたから。
分かっているつもりだった。
それが大きな敗因を招くことも知らなかったのだから。
 
『???』
 
「なるほど。では、もうすでに……上級悪魔では手に負えないというわけですか」
 
とあるビルのオフィス。そこには悪魔の幹部たちがいつものとおりに集まっていた。
 
「ええ。もうすでに味方の被害は百五十から二百近くです。それも低級だけじゃなく、上級悪魔、中級悪魔まで被害が及んでいます」
 
「何?そんなにもか……」
 
辺りでどよめきが走る。
さすがに二百近くも全滅させられては問題だった。それが何十人ならともかく、相手はたった一人の小娘。これでは悪魔の名が廃るというより沽券にかかわる。
そこに銀髪をした好青年が現れた。ヴェガである。
 
「ヴェガ様」
 
「中々、しぶといようだな」
 
「はっ!申し訳ありませぬ。奴らの場所を突き止めてはいるのですが、何しろ、監視につけている奴まで奈落に送り返されるしまつでして、我々はすでに手を打っているのでご安心ください」
 
「フム……期待しているぞ」
 
「はっ!」
 
そう言うと、ヴェガは寝室に戻っていった。
 
「と、とにかく、全力で奴を殺せ!どんな手を使ってもかまわん!」
 
しかし、これが後にとんでもない事態を引き起こすことになろうとは彼等も知る由は無かった。
というより、知らなかったのである。
 
『3』
 
なんか、最近、お兄ちゃんの様子が変だった。
私がそれに気づいたのは夜ご飯を食べているときだった。いつもよりも食が進まない程度だった。
はっきり変だと気づいたのはよく転倒するということだった。
分からないけれど。いつもの兄とどこかが変だった。
お姉ちゃんに聞いてもお姉ちゃんも分からないと言っているけれど。明らかに変だった。
そして、それが日に増しているような気がする。
でも、お兄ちゃんに聞いても何でもないよという。
だけど、次の日の学校の帰り道。というか、朝の登校時からなのだが、誰かにつけられている気がする。しかも、これは悪魔ではない。人間だ。
私の力に興味本位で近づいてきたのか。
それとも、悪魔に頼まれて私に近づいてきたのか。どうも後者が近い気がする。
私はこれまで目立った行動は控えているつもりだった。どうしても、人の目に付く場合は人払いの術式まで済ませてしまうほどだ。
それにこの殺気……見たことがある。あのヴェガに近い静かなる殺気に近かった。
なるほど、向こうからのこのことやってきたのか。
でもある意味上級悪魔よりも厄介だった。
私は人を殺せない。いや、殺したことが無いのだ。
殺すと何かが私を突き動かしそうだから。だから殺せないのだ。
私は路地へ逃げる。走る。
奴が追いかけてくる。さすがに、見つかったようだ。
 
「ちっ!」
 
私は奥に逃げ込んで、逆に待ち伏せをする。私は足を突き出して、転ばせようとした。すると、簡単に転げ落ちた。
私は奴に近づく。奴の年齢は四十代前半、なかなか恰幅のいい青年男性とも取れない容姿だった。
私は無表情に聞いた。
 
『何者?』
 
私は足を踏み潰した。それだけで相手の骨が折れる音がする。
 
「ぐあっ!」
 
人間は悪魔よりも脆いと思っている。簡単に口に出す。
 
「ま、待て!話すから!」
 
そう言うと、ヴェガから命令をされているのが分かった。自分の名前、住所。奴の住所など、居場所も吐いてくれた。
 
『早く行きなさい。次は無いわよ』
 
私が無表情に言葉を流れに乗せて言うと。奴は行こうとしたが、次の瞬間、私が羽交い絞めにされた。
まずい。本気で首を絞めようとしている。
私は力を入れる。私は上空に飛んだ。次の瞬間、彼の頭が屋根にぶつかって気絶した。
あ、危なかった。私は息を整える。奴らは着実に私の弱点を突いてくる。
私は救急車を呼んで、警察にも電話した。
これで一安心だ。しかし、私をなおも襲ってくるとは……やはり奴をつぶすしかないのか。
だが、丁度良い。
奴の居場所もばれた。
今度こそ決着をつけてやる。
私は走り出した。
決行は今晩。今度こそ決着をつけるために。
 
『4』
 
「私もしっとったつもりやったんやけどなぁ。栞が何かをするのを黙ってみてるだけでしかなかったんや。そう……黙ってみてるだけでしか……なかったんや。でも、栞も修太ももう少し相談してもよかったと思う」
 
「修太さんもって、まさか!」
 
唯にもわかったのだろう。みどりは頷いていった。
 
「そうや。修太は病気でな。末期の癌やった。癌の侵食が早くてな。もう次の桜は見れない言われとった。しかも、それを栞にいう必要はないと言いよった。もちろん、私は激昂したよ。そんなんで兄が務まるか?ってな。でも、彼は結局……自分の死期まで、栞には話さなかったんや。でも、彼は自分の人生を全うして生きた。だからな。ちぃっとも後悔なんてしてないと思う。でも、今更やけど知ってたんちゃうかなぁ?」
 
「な、何を?」
 
「栞に殺されることを。そしてそれを望んでいたことを」
 
「えっ?」
 
「つまり、修太とヴェガは同一人物やったっちゅうことや」
 
「……っ!」
 
「いや、同一人物やなくて……分身みたいなもんかな?修太が分身体や。修太も栞も全然、きづかへんと生きてきた。それもそのはずや。栞の魔力感知能力も『流れ』という能力も全ては修太にはむかへんようにされてた。だからこそ、修太は人間やとかん違いしとったんや。でも、栞が気づかないままだったからこそ、修太は生きてこられたんや。修太が……それにきづいたんは……病気のことを知ってからや。だから、栞に病気のことを話さなかったんや。自分の死期が近い上に……本当は悪魔でしたじゃあ、笑い者にすらならへんからなぁ」
 
「じゃあ、草太君は?」
 
「ああ。栞が殺した。あの子の性格から、わかってるやろ?」
 
悪魔の子供は結局悪魔だ。人間にはならない。
 
「思えば、修太と栞が両極端な性格なのもそのせいやろうな。多分、互いに相容れぬ状態だった。栞の両極端な性格。悪魔には冷酷残忍で人間には優しい性格はきっと修太が後に生まれてくる悪魔を自分のような悲劇を繰り返してはならないと思っていたそうや」
 
「じゃあ、栞さんは本当に……自分の兄を?」
 
「ああ。殺した。それ以外に方法がなかったんや。ヴェガが気がついたんは……修太と栞が奴の本社に乗り込んだときや。修太は連れて行けないと栞はごねたけど、修太は自分でついていくってきかへんかった。草太もつれていくと言い出してな。もう、とめるどころか、疲れ切っていたわ」
 
そして、それは大きな間違いだったと気づくのも、時間の問題だった。
 
『5』
 
本当に自分が情けなくなってくる。
どうしてお姉ちゃんも止めなかったのだろう。なんか、疲れてた顔をしていたけれど。
しかも、まだ三歳にも満たない草太君を連れてくるなんて、考えられなかった。
 
「栞……準備はいいか?」
 
『ええ』
 
でも、まあ、低級悪魔なら……殺されることもないかもしれない。
私たちは乗り込む。
今度こそ、決着をつけるために。
 
「しっかし、意外に殺風景なんだな。もうちょっと魔王の城みたいなイメージを持っていたんだけど」
 
そこは普通のビルの内部だった。
 
『お兄ちゃん……イメージが貧相です』
 
私は何度目か分からないため息を吐いた。
このごろ最近はため息の数が増えているような気がする。
ただでさえ、私は片腕を失っているのに……ひょっとしたら、守れないかもしれない。なんていうことが頭の片隅によぎる。
私はその思考を取っ払い、目の前の敵に集中する。
 
『お兄ちゃん!下がってて』
 
そう言うと、私は『流れ』を駆使してグーで敵を殴る。敵は奥にまで吹き飛んで、黒い霧になって四散した。
私はそれを見ながら、一匹ずつ一掃していく。
 
『お兄ちゃん。少しジャンプして』
 
「こ、こうか?って、うわああぁぁ――――っ!」
 
少しだけジャンプしただけなのにまるで無重力に陥っている気分だった。
私が流れを駆使して、上に浮かせたのだ。
そして、その間に私は地面をグーで殴る。
流れに乗った私の拳は簡単に自分が割れた。
私は飛んでお兄ちゃんを掴む。一方悪魔は地下に落ちて四散した。
 
『ちょっと浮かせすぎたみたいです。ごめんなさい』
 
そう言って、服に付着した埃を払いながら、下にゆっくりと降りる。
 
「まあ。いいけどよ。でも、まだいるみたいだぞ」
 
『ええ。そうですね』
 
私がそう言って、残りの全ての敵を能力で殲滅させる。
 
「栞!上からも」
 
『わかっているわ!』
 
そう言うと上空に飛翔して体を捻り、裏拳を叩き込む。それによって、敵は吹き飛ばされて、しかもそれが別の敵に当たり、二重、三重へと敵が押しつぶされる。
それは私が『流れ』によって敵が別の敵に当たるように仕向けたからだ。
 
『さて、そろそろ。終わりにしましょうか』
 
冷酷残忍に敵を殺しまくる。
お兄ちゃんはただ見てるだけだった。
だけど、それがいけなかった。
 
「う、うわああああぁぁぁぁ―――――っ!」
 
『しまった!』
 
戦っている最中ですっかり忘れてた。お兄ちゃんがいることを。
私はお兄ちゃんを追ったけれど、影も形も見つからなかった。
しまった。やっぱり連れてくるんじゃなかったと後悔する。
いや、悔やんだことを悔やんでも仕方がない。これからどうするかを考えよう。
私はそう思って、先に進んだ。生きているんなら、またどこか出会えるはずだったから。
 
『6』
 
「フン……貴様も気づいているのだろう?支倉修太。いや、我が一部よ」
 
「ああ。とっくの昔に気づいていたさ。だけど、俺は今も昔も変わらないよ……悪魔というものがいなければ、こんな悲しいことは起きなかった。だから、終わりにしよう」
 
「いや、始まるのさ。大いなる私の目的が……今こそ達成されるときだ……安心しろ。貴様もすぐに我が一部にしてやるさ」
 
「気づいているか?過去、悪魔が人間に勝ったためしがないということを。そう。人間は生き続ける。いや、生き続けるべきなんだ。誰かを待っている者。帰りを待っている者。それを人が強くするということを」
 
「それは幻想に過ぎない。一時の強さでしかないものをどうして願い続けるのだ?」
 
「決まってるだろ?人間という生き物は方程式では到底測れないんだよ。計算式では解けない問題がいっぱいあるんだ。それは無限の可能性。無限の強さなんだよ。それが悪魔に打ち勝つんだ。それに比べたら、俺たちはなんて脆いんだろうな」
 
それはどんな術より、どんな技よりも強いということを証明してくれた。たった一人の少女だった。
 
「だ、黙れ!」
 
「迷ったか?そうだろうな。今お前は無限の強さというものに惹かれているただの悪魔に過ぎないんだからな。嫉妬したか?そうだろうな。俺を吸収してもそれは、一時の強さを得るだけでしかない。無限には程遠い」
 
彼がそう言うと。ヴェガが彼を取り込む。
 
「そうだ。取り込むがいい。そうすれば、あんたは嘆くだろうな」
 
「なんだと?」
 
「悲しむがいいさ。こんな悪魔に生まれてきたことを」
 
『お兄ちゃん!』
 
栞がドアを蹴破って入ってきた。
 
『7』
 
何よ……これ。どうなっているの?
お兄ちゃんが悪魔?
嘘だ。夢なら覚めて欲しかった。
でも、どんなにあれでも現実が目の前にある。
 
「フン…………やっとで完了だ。心地いい響きだ」
 
奴は私に眼もくれず、ただ自分に陶酔していた。
私は構える。こうなっては何が真実なのかなんてどうでもいい。
とりあえず、目の前の敵を倒すのみだった。
だけど、倒せるのか?あれは私の大好きなお兄ちゃんだ。
しかし、敵は待ってはくれなかった。私に容赦のない攻撃を加える。
 
『がはっ!』
 
手で圧力を加える。文字通りの掌圧だった。
甘かった。あいつはもう私の知っているお兄ちゃんではない。
そう思ったら、少しだけ心の迷いや何かが覚めた気持ちになってきた。
あれはもうお兄ちゃんじゃない。お兄ちゃんだけど、お兄ちゃんじゃないんだ。
そう思ったら、さすがに冷静になってきた。もう、何が真実かなんて、どうでも良かった。
 
「フム……少々、やりすぎるかもしれんな」
 
私は彼の言葉を無視してその辺を探索し始める。多分、お兄ちゃんのことだから、この辺に隠しているはずだった。
お。いたいた。
 
「何をしている?」
 
そこにいたのは草太だった。相変わらず泣いていた。
ごめんね。みどりさん。でも、これは当然の行いだから。
だから、私はたとえ赤子でも冷酷残忍に殺すことができた。
 
「なっ!」
 
一瞬で苦しまずに殺した。泣き声が止んで、一瞬で灰にしたのだ。
 
『私も少々やりすぎるかもしれません。覚悟してください』
 
そう宣言してから奴に向き直った。もう迷いはなかった。
敵は強いけれど、相手はお兄ちゃんだけれど。それでも私は迷わない。
すると、先程お兄ちゃんをさらった上級悪魔が出てきた。
しかし、私はそれを読んでいた。『流れ』を私は読んでそいつらを蹴り飛ばす。
一瞬にして、灰にした。瞬殺に驚くヴェガ。
 
「ば、馬鹿なっ!」
 
『昔のあなたと私だったら、あなたのほうが強かったかもしれないわね』
 
私は無表情に宣告する。だけど、静かな殺気を纏って……私は冷ややかにヴェガを見つめ、そして、言い放つ。
 
『あなたに一つだけ、指摘してあげましょう。それはこの世で不滅なるものは唯一つ。それは決してあなたなどではないということを』
 
「だ、黙れッ!!尻尾を巻いて逃げた人間が何を偉そうに口にするか!?」
 
私は奴の流れを読んで避ける。
上級悪魔も潰したから、これで五分の戦いだった。
だけど、五分だったら負ける。
私は全ての流れを見る。
奴の動き、奴の眼、奴の手足。
常に全力で。それは兄も望んでいたことだ、
私は兄の言葉を思い出す。あれは、お姉ちゃんが来る前の日のことだった。
 
「もしも、俺が悪魔だったら、栞はどうするんだ?」
 
『えっ?』
 
「もしも、俺が悪魔だったら、栞は俺も殺すの?」
 
『はい……私は……悪魔だったら、誰でも……赤子でも殺します』
 
「うん。それが正解だね」
 
『えっ?』
 
「その迷いのない顔。僕は好きだよ」
 
『……はい』
 
あの時はありえないと思っていたから口にしたけれど、今にして思えば、あれはお兄ちゃんの覚悟だと思った。
そして、これがお兄ちゃんの出した方程式の最後の答えだった。
 
「ぐっ!こいつ……」
 
しかし、そのとき、ヴェガが変形を見せ始める。
グニョグニョと体が隆起して、先ほどよりも強い魔力を発する。常人ならその魔力に触れただけで気絶しそうだった。
 
「フン……さすがはガーディアン。だが、貴様は完全体の私にどれだけ近づくことができるかな?」
 
だけど、私は彼に追い越すために生まれたのだ。
まるで精神が麻痺しているような感じ。
だけど、それでもいい。
私は構える。私は廃棄ナンバーだから。
精神が麻痺しているくらいが丁度良かった。
感情はすでに麻痺しているけれど、精神まで麻痺をするとどうなるのだろう。
それは驚きとか、そういうのもなくなって見える。
しばらく戦ってみると、相手の強さがわかるというが、相手の底まではわからない。
たとえば、MPというものがあるとすればどうだろう。
相手のMPを尽きれば勝ちだけど、そもそも相手のMPがわからないと勝てないものだ。
そう。これは見えない戦い。
私は彼の動きを『流れ』という能力一つで避け続けていた。
奴が醜悪になりながら、魔力が大幅に上がったりしても動じなかった。
でも、同時に怖かった。
なんだろう。この気持ち。お兄ちゃんと戦っているというのに。
私はお兄ちゃんを超えるということが。
怖くて仕方がなかった。
でも、同時に……越えたいとも思ってしまうのだ。
相手は私と同じかそれ以上だというのに……。
私はもう限界が近いのに。
私はまだ戦える。
 
「くそっ!ちょこまかと……動きやがって!」
 
そう言うと奴が私に向かってデスボールを放った。
避けられない。避けたら地上に当たって、みんなが死んでしまう。
でも、その名の通り、デスボールは死の玉。
それに触れたら、文字通り……消滅して消える。
でも、私は避けないし、触れる気も無い。
私はエネルギーを集める。
 
『全てのエネルギーよ。私に力を貸して』
 
それは地球上全てに存在するエネルギー。太陽、月、海、空、雲、山、木、土、花や草など。切りがないエネルギーを『流れ』でかき集める。
すると、不思議なことが起こった。私の左腕がまるで見る見るうちに早回しのように再生していく。それはまるで、何者かの贈り物のように。それに再生した左腕で触れると、暖かかった。そして、同時に理解した。これは……みんなからの贈り物だった。
全てのものに対するありがとうの気持ち。そして、これはお礼だった。
私は『流れ』でかき集めると、それは……巨大な剣になった。それを『流れ』で放つ。
 
『ゴッド・セイバー!!』
 
それは奴が放ったデスボールですらもかき消してしまうほどの威力だった。
 
「ぐっ!くそっ!こんなもの……!」
 
そう言って奴が止めるが、私が突拍子で思いついて『流れ』でかき集めたものだ。ゆえに制御はできないけれど。
その分、威力は絶大だった。
 
「そ、そんな……!ギャアアアアアアァァァァァァァ――――っ!!」
 
奴はありえない奇声を発しながら、特上の黒い霧を発して消えていった。
私はその場で倒れてしまった。
もう一歩も動けなかった。
これほど強い敵は見たことがなかった。
それゆえの苦肉の策だった。
 
『よくやったね。栞』
 
どこからか、お兄ちゃんの声が聞こえる。
 
『これから、君は戦い続けていくんだろう?』
 
私は心の中で、はいと頷いた。
もう『流れ』で声を届かせるには不可能に近い。ここまで来るのにどれだけの能力を駆使して使ったか分からない。でも、お兄ちゃんには通じたみたいだった。
 
『だったら、悪魔を許すな。たとえそれが君の知っている人だとしても。それが君の主でも、そしてそれが、君の好きな人でもだ。これがお兄ちゃんにしてあげられる最後のメッセージ(命令)だ』
 
私はこれまで幾度となく、お兄ちゃんと『流れ』で会話をしたけれど。
ちゃんと、喋ったことはなかった。だからこそ、この声だけは肉声で届けさせたいと思った。私は気力を振り絞る。
 
「…………お兄ちゃん!!ありがとう!ありがとう―――――――――っ!!」
 
その声はどことなく響いて、奈落の底にまで届くと良いな。と思った。
 
『8』
 
それから栞は三日間、死んだように眠ってたんや。私が必死に看病をしてあげたんやけれど。その間は何も言わなかった。まるで人形のようにボーっとしとったんや。けどな。ある日……栞の退院の前日やったわ。私がいつものように栞の病室に訪れたときやった。
いつものように花を生けてて。そのときやった。私が愛想笑いをすると、栞は何かを言った。
 
『どうして、何も言わないの?』
 
最初は空耳やと思っていた。栞は無表情だから。私は再び愛想笑いを浮かべたときだった。
 
『どうして、何も言わないの?』
 
もう一度聞いてきた。今度は空耳やないと思った。きっと、これがあいつのいっとった『流れ』とかいう能力だったのだ。
 
『私はあなたの夫を殺したというのに……あなたが恨み言を言えれば、私も満足できるのに……あなたは何も言わない。どうしてなの?』
 
「どうして言われてもなぁ……」
 
私は頭を掻きながら、それでも最良の答えを導き出す。
 
「あんたの兄から栞のことをよろしく頼む言われたしな」
 
『それはあなたしか頼む人がいないからよ。私は……草太も殺したわ』
 
「そうやろな」
 
ここは我慢や。あたしが泣いたらあかんやろ。本当は栞のほうが辛いはずなのに。
それでも涙腺はきつくて、もう……いつ涙が出てもおかしくなかった。
 
『私は分からない。普通なら、怒って喚き散らして……しまうのに……あなたはそれを行わない。どうしてなの?』
 
「じゃあ、どうしてあんた……平気なの?」
 
私はとうとう、涙腺が溢れてしまった。溢れてしまったものは外に出るしかないのだ。
 
『私は二千年以上も戦ってきた。だから平……』
 
「違う!そういうことやない。辛くないの?怖くないの?兄が死んで……これからさきどうしようって怖くはないの?私は怖いわ。だって、それが人間だから。あんただって人間でしょう?」
 
最後は嗚咽を漏らして泣いてしまっていた。
違う。そんなことを言いたいのやないのに。
だけど、その頭を彼女は撫でてくれた。
 
『……私がお兄ちゃんと戦ったとき、確かに怖かったわ。それは……兄がいなくなるから怖いんじゃなくて、兄を超えることが怖かった。でも……たとえ満足な結果でも、私は兄を超えることが辛かった』
 
それはまるで自分の兄を目標にしとるみたいやった。
 
「栞……」
 
しばらく、栞のところで泣いて栞の名前を口にした。
 
『何ですか?』
 
「これからいっぱい話をしてくれるか?どんなことでもいい。些細なことでもいい。全てを受け入れる覚悟はするから。私……もっと強くなりたいんや。栞を守れるように……大切な人を守れるように……」
 
『……はい』
 
彼女は無表情だけど、確かにそう言った。
 
『9』
 
「栞さんにそんな過去があったんですか?」
 
「そうや。これが栞に関する全てや。まあ、栞はそれだけやない。まだまだ未知なる能力が潜んでそうやけどなぁ」
 
「そうですね。流れというと、もう少し応用が利きそうな感じですけど。ビームすらも曲げられそうな感じですよね?」
 
「……やっぱり、栞のいっとった通りの人物やなぁ」
 
「えっ?」
 
「栞もあんただけは怖い言うてたで。それだけ音というものは応用が利くんだそうだ」
 
「ええっと。そうなんですか?」
 
「そのうち、世界中のひそひそ話も聞こえるようになるかもしれへんなぁ」
 
「や、止めてくださいよ。そんな怖い話」
 
「でも、注意深く聞いていればええだけやろ。その点、栞は感じやすいからなぁ」
 
「そうですね」
 
「それよりも、今日は聞いてくれたお礼や」
 
そう言うと、彼女は服を捲し上げて、裸になった。
 
「今日はお姉さんがサービスしてあげるさかい。うんと甘えてな」
 
「誘っていますか?」
 
「いや。唯君の実力がみたいだけや…………あ……うん……ん」
 
そう言うとみどりは口付けをした。
みどりの優しくて柔らかい唇で唯は一瞬、心臓がしびれるかと思った。
 
「んふっ……」
 
それからゆっくりと舌を絡ませる。
ガーディアンで手馴れてるとはいえ、さすがはガーディアンの主だとみどりは思った。
それから、優しくおっぱいを触る。成熟していて、とても気持ちよさそうだった。
 
「どう?ガーディアンよりかはちっちゃいけど」
 
「そんなことないよ。とても綺麗だよ。みどりさん」
 
「嬉しいわ……あっ……ふっ……ふっ……ん」
 
やはり、元来ガーディアンを縛るための言霊はこの人には効かないみたいだ。分かっていたことだけど、でも、みどりの下は濡れていた。
 
「みどりさんの下……濡れてるよ」
 
唯がみどりのクリトリスに触れると、彼女は捩りながら。
 
「そうやね。久しぶりに興奮してきたわぁ」
 
と言う。唯は革ベルトをはずしてそのまま裸になる。
 
「うん。この調子だと、もう入るかな?」
 
「うん。入れて」
 
そう言うと、思いっきり肉棒を突き刺した。
 
「ああぁぁ―――っ!!」
 
すでに濡れているそれは簡単に受け入れられた。
彼女も久しぶりのSEXに興奮しているのだろう。
そして、それは唯も同じだった。
唯もまた見知らぬ人のSEXに興奮を感じていた。しかも、それがついさっき出会ったばかりの女性に……とは言っても彼女とは話はしたことがあるのだが。
 
「う、動いて……いいよ…………あ……ああ……ん」
 
「みどりさん。ところで今日は危険日ですか?」
 
「ううん。安全日やけど?」
 
「そうですか。なら、よかった」
 
「ひょっとして中出しするん?別にかまわへんけど……むちゃくちゃ恥ずかしいわ」
 
「どうして……ですか?」
 
「なんか、催促してるみたいで……ああ……っ!」
 
「だって、気持ちいいんだよ」
 
「ああ……!私も気持ちええわ……!出して!そして、忘れさせてな!」
 
「もうそろそろ。イキそうだよ」
 
「私も……イクっ!イッちゃう!!…………やあああああぁぁぁぁ――――――っ!!」
 
白濁する精液を全身に浴びながら、それでも彼女は絶頂を迎えた。
 
「ああ。気持ちええわ。SEXってこんなにも気持ちよかったんやなぁ」
 
「あの……もう一回……やってもいいですか?」
 
「ええよ。私も溜まってたところやし」
 
『お姉ちゃん……何をやってるんですか?』
 
そこに栞が現れた。唯もセックスをしていてすっかり忘れていたのだ。音を使うことを。
 
「いや。唯君の実力を見てみるために……」
 
『お姉ちゃん?』
 
「いや。その……お帰り。栞……」
 
「ごめんなさい。栞さん……」
 
『麻生唯が謝ることはないわ。どうせ、お姉ちゃんが私の過去を話してお兄ちゃんのことを忘れさせてとか言ってたのでしょう?』
 
「ひょっとして、見てました?」
 
『あら?私の能力を知らないの?』
 
「そういえばそうでした……」
 
彼女の能力は『流れ』。この場で見ていなくても、感じ取ってしまうのだった。
唯は彼女に送ってもらっている。
 
「そういえば、栞さん」
 
『何ですか?』
 
「怒ってない?」
 
『怒ってます』
 
横を見ると、すました顔をしていた。相変わらず、無表情だけど天邪鬼なところがある。
 
『麻生唯』
 
「なんですか?」
 
『私はこの身体に転生されるまで、何十万という敵を殺してきたのです。時には好きだった人とか、ときには血の繋がらない姉だったりとか。だから、今更……兄を殺したからといって何かが変わるわけではないです。言いたかったことはそれだけです』
 
「栞さんはお兄さんの死をなんとも思っていないの?」
 
『ええ。毛ほどにも感じてないです』
 
そう言うと、無表情にそう言った。
 
「僕には分からないな」
 
『分からなくていいです。というより、分かっちゃダメなんです』
 
「うん。わかってるよ。でも、栞さんはどうしてそんなにも強いの?」
 
『私は……強くはないです。ただ……強がっているだけ……』
 
「えっ?」
 
『本当は今にも折れそうなくらいの精神を必死に支えているだけの虚軸に過ぎません。でも、悪魔との戦いがそれを忘れさせてくれる唯一のカンフル剤なんです』
 
そう言うとあたりは暗闇に包まれつつあった。
 
「この辺でいいです」
 
『そうですか。ああ。そうそう。一つだけ言い忘れていました』
 
「なんですか?」
 
『もしも、魔物が頻発しそうだったら、私を呼んでください。電話番号を書いておきます』
 
そう言うと彼女は電話番号を書いて唯に渡した。
 
「どういう風の吹き回し?」
 
『いえ。もしも、必要なくなったら捨ててもかまいません』
 
「じゃあ、僕が栞さんを仲間にしたいと言ったら?」
 
『それはまた、相談することにします。それでは……』
 
そう言うと彼女は消えていった。
唯はその足で帰宅したのだった。













     




















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