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 そもそもの発端は竜太の不用意な発言からだった。

「なあ、麻生。プール行かないか、プール?」

 二時間目と三時間目の中休みに教科書とノートを整理していた唯は、机の横に来た竜太へと振り向いた。

「プール?」
「室内プールなら、この時期でもやってるだろう。試験前に遊びに行こうぜ」
「別にいいけど、五人で行くの?」
「まあな。だが多分、香奈と新田とは別行動になるがな」
「別行動?」

 唯の疑問に、横あいから可奈がため息まじりに竜太の代わりに答える。

「こいつの目的はナンパなのよ」
「別にいいだろう。思いっきり遊んで、ついでに綺麗なお姉さんが居たらベストじゃん」
「あのね、中学生を相手にしてくれるわけが無いでしょ」
「そんなのやってみなくちゃわかんないだろう」

 唯そっちのけで、幼馴染同士で二人は口論を始める。二人の喧嘩は日常茶飯事なので、仲裁せずに唯は教科書の整理の続きを始める。どうもこの二人は喧嘩がある種のコミュニケーションになっているようなので、止めるのは却って良くないようなのだ。

「プールか。しばらく行ってないな」

 学校で履く水着以外を持ってないのに気付いて、唯は買いに行かねばと頭の中にメモした。






「水着ですか?」

 唯が振った話題に、芽衣が聞き返す。
 いつもの夕飯の席。残業や用事などで全員揃わないことがあるが、今日はこの家に住む住人達全員が揃って食卓を囲んでいる。これだけの人数が揃えば色々と騒がしい。そんな中、唯は水着を買いたいのだがどんな物がいいのだろうと、隣の席の芽衣に聞いたのだ。

「男性用の水着ですか……あまり派手では無くていいですが、一色のみだとちょっと地味ですから避けた方がいいでしょうか」

 コスメティック業界で働いているので、常に時代の流行を研究している芽衣が自分の見解を述べる。だが女性の水着にはある程度の知識があっても、男性用の水着となるとよくわからない。唯がコスメ界のカリスマの意見を期待しているのはわかるのだが、答えに窮してしまう。

「豹柄なんてどうです? 視線を釘付けにできますよ」
「あのね、そんなの穿いてたら目立って仕方ないじゃない。センス悪すぎ」

 ミシェルの言葉に円がすかさず突っ込む。明らかに彼女の言葉は冗談なのだが、唯が万が一にも本気で受け取ったらまずいからだ。

「それにしても、何で急に水着なんて要るの?」
「来週の休みに屋内プール行こうって、友達と約束したから」

 由佳に返した唯の何気ない返事に、全員の脳内が小さくスパークする。プールという単語がキーワードだったようだ。

「プール、いいね。しばらく行ってないし」
「屋内プールって行ったことないわ」
「プールか……悪くないわね」

 早苗、静香、京の順番にプールへ一緒に行きたいと示唆する。もちろん、唯の「連れて行く」という一言を待っているのだが、少年にはまだこういうさり気ない誘いを理解するのは難しく、何を求めているのか理解できない。唯がどう反応していいのか悩んでいるうちに、そんなさり気なさを粉砕する者が出た。

「唯様、私もプールに連れて行って」
「えっと……うん、わかった」

 楓のストレートな一言が契機になり、唯に同行したいと言った恋人達全員がプールに行くことに決まった。
 さてこうなると大騒ぎである。全員が全員、タンスやクローゼットを掻き分けて水着を探すわけなのだが、持っていなかったり、サイズが合わなくなっている人物もいる。水着を持っている人物でも、既に流行に遅れている水着が気に食わなかったりする。

「水着買わないとダメだわ」

 一時間後にリビングへと戻ってきた芽衣に、全員がはっきりと頷いた。






「唯様、こういうのはどうです?」
「あ、うん……い、色が似合ってるよ」
「そうですか? でも、ちょっと地味かなー?」

 黄色いビキニを着て一旦試着室から出た円は、すぐさま戻ってカーテンを閉めてしまう。ここは銀座のデパート内にある水着売り場。ずらりと並んだ試着室は恐ろしいことに全て唯の恋人達によって占拠されている。買い物に行くので付き合って欲しいと由佳に言われて、てっきり近所のスーパーに行くものだと思った唯が、あっさりと承諾してしまったのが運のつきだった。あれよあれよと思う間も無く、気がついたら銀座についていたのだ。


「唯様、これはどうです?」
「金色はちょっと……もうちょい薄い色がいいんじゃないかな?」
「オッケー、少し待ってね」

 ビキニに身を包んで出てきたと思ったら、ミシェルは唯の意見だけですぐに試着室へと引っ込んでしまう。先ほどから、唯はアドバイザーとして引っ張りだこなのだ。

「弱ったな……」

 試着室前にある椅子に座っている唯は大きな溜息をつく。女性達は唯がぎょっとするほど水着を試着室に持ち込んでいるので、当分試着は終わりそうにない。おまけに先ほどから彼は若い女性の店員にまじまじと見られて、途方にくれていた。グラビアアイドルのようなセックスアピールをした女性達に囲まれてやって来たと思ったら、先ほどから何度も着替える美女に意見を聞かれているのだ。どうみても中学生にしか見えない唯が何でこんなに美しい女性をはべらせているか、興味があるに違いない。

「唯様、いかがです?」
「ちょ、ちょっとセクシーすぎるかも……」
「あら……そうですわね。他の人も居るわけですし、もう少し考えますわ」

 驚くほどのVカットであるアンダーの水着を着た芽衣に、唯はドキリとしてしまう。すぐに芽衣は試着室に引っ込んでくれたが、あんな格好でプールを歩かれては唯の心臓に悪い。普通、こういう試着では男性は徐々に疲れて適当に答えたりするものだが、唯は律儀に一着一着に感想を述べていた。知識などは無いのだが、懸命に自分の考えを伝えようとする。これだけの女性と付き合っているのだから、せめてこういう買い物には誠実に付き合おうと思っているのだ。

「唯様、大丈夫ですか?」

 水着売り場を抜け出し、しばらく姿が見えなかった静香が唯の元へと戻ってくる。差し出してきた缶ジュースを受け取り、唯はほっとした表情を見せた。

「ありがとう。まあ、ちょっとしんどいね」
「すみません、わざわざつき合せてしまって」
「いや、いいって。静香さんはもういいの?」
「ええ、意外とすんなり決まりました」

 唯の質問に静香は手提げ袋を見せる。唯が缶ジュースを開ける間も無く、今度は早苗が試着室のカーテンを開けた。

「唯君、こういうのはどうかな?」
「えっと、サイズが小さくないかな」
「お姉さまはどう思います?」
「後でサイズが大きいのを探してもらえばいいんじゃないかしら?」
「オッケー、考えてみる」

 すぐさまカーテンが閉まり、早苗は再び小さなボックスの中でごそごそと動き始める。

「しかし、女性の買い物っていうのは大変だね。僕なんか、水着は適当に選んじゃったよ」
「まあ、楽しんでいますから。ついつい時間を忘れてしまうんですね」
「そうなんだ」
「特に、今日は唯様が居るから、更に楽しいんでしょう。みんな、はしゃいでますから」
「えっ……それは気づかなかった」

 静香の指摘に唯はようやく納得がいった。確かに全員の表情が生き生きとしている。楓や雛菊、京もさっきからしきりに悩んでいるが、唯のためを思えば時間がかかってもいいのだろう。

「唯様、忙しいとは思いますが、良ければこれからも皆とのデートにつきあってあげて下さい。やっぱり好きな人と何処かに行くというのは、特別なことですから」
「うん……静香さんも、今度一緒に遊びに行こう」
「あ……か、からかっては嫌ですよ」

 顔を赤らめる静香に、唯はクスクスと笑う。たまの休日もこんな風に過ごすのもいいかな、などと唯は思ったりした。

「しかし、本当に時間かかるね」
「私の見立てでは、あと三時間くらいかかりますね」
「げっ」
「晩御飯はレストランを予約してあるみたいですよ。後で唯様のスーツを買いに行くって言ってましたし」

 前言撤回。デートするなら、水族館や遊園地とかにしてくれと中学生の唯は思うのだった。






「おい、あれなんだ?」
「何かの撮影か?」

 擬似的な波が打ち寄せる砂浜に居た人間全員の注目が、一つの集団に向けられた。プールサイドにやってきたのはめったに居ないであろう美貌と、常人では有り得ないようなグラマラスな体を持つ女達。唯を守護するガーディアン達がプールに姿を現したのだ。

「唯さ……唯君。そっちに居ましたか」

 円が目ざとく群集の中から唯を見つけ、それに続いて美女軍団もゾロゾロと後についてくる。

「唯君、どうでしょうか?」
「新調した水着、似合っているかしら?」
「う、うん。似合ってますよ」

 ミシェルと由佳に唯はコクコクと頷く。何せ水着選びには散々付き合わされたからだ。微妙だなどと答えた日には、再び水着選びに狩りだされるだろう。実際のところ、ビキニ中心の水着は確かに似合っていた。
 芽衣はトップが胸の前で交差された象牙色の水着で胸の下半分が見えてしまっている。由佳はオーソドックスな薄い赤のトライアングルビキニだが、紐だけで留められた布地は胸に食い込んでいて何かあったら脱げてしまいそうだ。雛菊は黒いタンクトップビキニで、サイズが少し小さいのか胸の膨らみがはっきりと強調されている。京の着ている紫の水着はトップが首からAの字に分かれた形で、横から形のいい胸が露出してしまっている。ミシェルも由佳と同じく黄色の紐ビキニだが、下半身は大胆にもTバックだ。楓は横の布地を取り除いた黄色と黒のスーパーハイレグでよく引き締まった脚線美を晒している。円はレースがついた青いビキニで、若々しい外見に似合っている。早苗はボーイッシュな外見に反してスカートがついたAラインの水玉模様で彩られた水着に身を包んでいる。静香は清楚な白いワンピースのハイレグの上に、同じ色のパーカーを羽織っていた。
 唯の近くに居る竜太と信吾は芽衣達の可憐な水着姿と、惜しげもなく晒されたプロポーションに猛烈に感動している。

「うおお、俺はこの日のために生きていたに違いない」
「麻生、よくやった。おまえには死ぬほど感謝している」

 当初、同居人全てが泳ぎに来ると聞いた唯の友人達は驚いたが、グラマラスな美女が来るとあっては男二人に異論は無かった。むしろ喜んだ。特に竜太は女性の中に大好きなプロ野球選手の楓を見つけて、幸福の絶頂に舞いあがらんばかりだ。
 悪友二人が喜ぶ隣で、可奈とこのえは逆にため息をついている。

「みんな、プロポーション凄すぎ」
「女としての自信、失いますわ」

 唯のルームメイトたちはグラビアアイドル顔負けのナイスボディに、全員が違ったタイプの美人なのだ。やはり化粧品会社の社長を友人に持つと、随分違うのかもしれないと二人は無理やり納得するしかない。
 全員が揃うと、早速海を模したプールに飛び込む者たちと、プールサイドでゆっくり休む者たちに分かれる。雛菊にミシェル、円、早苗、それに珍しく京などは唯と遊ぶためにプールに飛び込んだ、慎吾も色々と魂胆があるかのように付いて行く。竜太は憧れの流楓選手に話を聞くために、可奈とこのえも芽衣や由佳、それに残った静香とファッション談義をするためプールサイドに残った。
 
「唯君、行きますね」
「食らえ!」
「わわわ……」

 ミシェルと京に水に引き込まれ、唯が波の下へと消える。多少息苦しくはなるが、水中に待ち構えていた早苗から必死に逃げるのは楽しかった。

「唯君!」
「わわっ!?」

 早苗に抱きつかれたまま、何とか水から顔を出した唯は飛びついてきた雛菊に押し倒されて再び水中へと潜る。薄い布地越しに張りのある胸が顔を挟んできて、公衆の場なのにドキドキしてしまう。

「あ、ずるいなー! とりゃっ」
「ひゃあっ!」

 雛菊の体を何とかどかして、浮上した唯を今度は円が襲う。京の肩に手をついて体を水平に持ち上げたと思ったら、大きく股を開いて唯の顔を挟み込む。

「わ、ぶぶぶぶぶ!」

 鼻の部分が布地越しに円の割れ目に食い込んでしまって、唯はクラクラする。そのままの勢いで水の中へと引き摺りこまれて、またも必死に唯は浮上しようとする。

「唯、食らいなさい!」
「がほっ!」

 京に体を抱き締められて、むぎゅうと背中に豊満な乳房を押し付けられたと思ったら、次の瞬間唯はバックドロップで逆さまにプールへと投げ出される。

「むぐぐぐぐ」

 息が苦しくなっていたが京を抱きつかせたまま、唯は何とか水面に顔を出すことが出来た。

「はぁはぁ……もう、勘弁してよー!」
「あはは、唯君ったら、もうギブアップ?」

 早苗が明るく笑いながら、唯が晒している二の腕へと抱きつく。自然と唯の腕が胸の谷間へと挟みこまれる。

「ギブアップ、ギブアップ。だって、息が続かないよ」
「まあ、そうですよね。ちょっと苛めすぎちゃいましたか」

 くすくす笑いながら、円が唯の元へと泳いでくる。すーっと近寄ると必要以上に近づく。

「あ、えっと……みんな、他の人が見てるから……」
「なら、人が見て居ない場所ならいいんですね」

 ミシェルが唯の肩を掴むと、腕に体重を乗せて体を持ち上げて一気に彼を水の中へと押し込む。

「ん、んんっ!?」

 水の中へと潜った唯に合わせて全員が水中に潜り、半円を描くように取り囲む。そして、雛菊、京、ミシェル、円、早苗は水着のトップに手をかけるとちらりとめくりあげて、桃色の乳首を晒した。

「あ、あふっ!」

 水面に顔を出した唯は真っ赤だった。まるでゆでだこのような肌をしている。

「うふふ、興奮した?」
「ちょっと恥ずかしかったです」
「あ、あのね……」

 楽しそうな京と雛菊に、唯はため息をつく。よっぽどはしゃいでいるのか、公衆の場でも大胆だ。

「唯くーん!」
「あうっ」

 背後から不意打ちで由佳に抱きつかれて、唯はたたらを踏む。由佳は水着が食い込んだ大きな胸を惜しげもなく、彼の背中に押し付けてくる。

「しばらくプールサイドにいるんじゃなかったの?」
「だって、楽しそうなんだもん」
「その通りですわ」
「わぶっ!」

 反対側から芽衣に胸を顔へと押し付けられる。思いっきり体重をかけてくる由佳と芽衣だが、水の浮力があるので唯は何とか堪えることができた。普段の自制心が強い芽衣とは思えない行動に、唯は驚きを隠せない。横目でちらりと見ると、楓や静香もいつの間にかやってきている。

「しかし、たまにはプールもいいわね」
「そうそう、遠慮無しに唯君に抱きつけれるわけだし」

 京に相槌を打った早苗の言葉に、全員がはたと気づく。

「唯くーん!」
「えい」
「とーりゃー!」
「わーっ!」

 静香、楓、円に飛び掛られて、唯は再び波間へと沈んでいく。そう、唯の体に抱きつき放題なのだ。どんなに強烈に抱きついても、けがをする危険性は非常に低い。それに遠くから見れば、女同士で戯れているだけに見えるはずだ。

「勘弁してよー!」
「ダメです」

 水から顔を出して悲鳴をあげる唯に、雛菊が笑いながら拒否した。美女に揉みくちゃにされて、唯の顔面が水面と水中を行ったり来たりする。

「いいな、あれ。まったく羨ましいな」
「やっぱり、一緒に住んでると家族同然なんだな。俺もあの爆乳に挟まれたいぜ」

 唯を見ながら竜太と慎吾が心の底からため息を吐く。美女が少年を弄ぶ姿を見るのは楽しいが、できれば自分達もその輪に加わりたかった。つくづく羨ましい。

「あのね、あんた達の目は節穴? あれって、家族でもしないと思うわよ……」

 異性の同級生達の言葉に、可奈がこめかみを押さえる。あれはどう見ても恋人同士がイチャイチャしているに違いないのだ。普段から女のことばかりに興味があるくせに、何一つ理解していない男二人に、可奈は大きく息を吐くのだった。







 プールの高台から飛び込む、深いプールに潜る、スライダーに乗る、ベンチに寝て休む、お喋りする、そして泳ぐ。唯とその友人、それに美女たちはそれぞれ思い思いの遊び方を満喫した。さり気なさを装って、胸などを押し付けたり、思いっきり抱きついてくる女性たちにも唯は今日は何もいわない。
 しかし、唯も一旦仲間たちとは離れて、今は底が深いプールの上に浮かんでいた。

「いいな、これ……」

 底が深いので、他のプールよりは人が少なく、唯はのんびりすることが出来る。かなりの高さの飛び込み台が設置されているが、あえて飛び込もうという客は少ないようだ。もう少ししたら皆のところに戻らなければならないが、あと少しは浮かんでいようと唯は思った。
 今ごろ、ガーディアン達は色々な男に声をかけられているに違いないだろう。ナンパしに寄って来る男達を追い払うのは難儀だろうが、それは美人の運命と思って恋人達には諦めて貰うしかない。どうせ、他の男は冷たくあしらって追い返さすだけなのだから。芽衣達は絶対に他の男に興味を見せることはないと思い込んでいる唯は、自分でも知らないうちにうぬぼれているのかもしれない。ただ、配下の女性達が彼を甘やかしているので、仕方ないと言えば仕方ない。

「むぐっ!」

 プールの水にのんびりと浮いていた唯は、不意に水に引き込まれた。慌てて周囲を見回すが、自分を引きずり込んでいる物など見当たらない。水自体が唯の細い体を飲み込んでいるようだ。
 あっという間に唯は深いプールの底へと沈んでしまう。懸命にもがいて浮き上がろうとするが、浮力が発生する様子は全く無かった。

(助けて!)

 そうこうしているうちに唯の肺にある酸素がどんどん減ってくる。彼は最後の望みをかけて、自分の力を行使してメッセージを仲間に託した。音を仲間たちの耳へと直接飛ばしたのだが、届いたかどうかわからない。音を直接誰かに送るのは初めて使う能力なので、成功しているという確証は全く無かった。
 幸運なことに、唯の危機を伝えるメッセージは届いた。
 最初に飛び込んで来たのは楓だった。深いプールの底へと大量の泡と共にダイブする。彼女は巧みに泳いで、すぐさま唯のところへとやって来る。

「んんっ……」

 楓は唯の頭を抱え込み、思いっきりキスする。二人が合わせた唇の間から明らかに不自然な泡がボコボコと漏れ出す。楓が水中において、空気を作り出している証拠だった。楓の口から大量の酸素が送られて来るのを察した唯は、懸命に気体を肺に取り込む。唯には初めての経験だったが、何とかスムーズに呼吸をすることができる。楓の行使できる風の能力は、気体も自在に操るようだった。
 しばらくキスによる酸素供給を受けていた唯だが、やがて体が急に浮き上がり、水面へと顔を出すことができた。楓の体に抱きつきながら、唯は軽く咳き込んで空気を思いっきり吸い込む。プールサイドに立っている静香が重力操作で引き上げてくれたと唯は気づいた。

「唯様、大丈夫!?」
「うん、助かったよ」

 心の底から心配そうな顔をしている楓に、唯は落ち着いた様子で微笑んで無事をアピールする。主の危機に珍しく楓は感情を顔に出したようだ。

「一体、何があったの?」
「足が攣ったのですか?」

 プールへと飛び込んだ京と雛菊が平泳ぎで唯に近づく。二人は唯の腕に手を回すと、器用に立ち泳ぎでプールサイドへと唯を連れて行く。プールサイドには既にガーディアン全員が揃っているが、その中からミシェルと円が手を取って唯を引き上げた。

「プールに浮かんでいたら、いきなり水に引き込まれたんだけど」
「引き込まれた?」

 京が怪訝そうにプールを見つめる。

「何も無さそうだけど……」
「いいえ。確かに唯様は何かの力で水中に引き込まれていました」

 京に対して静香が断言する。

「重力操作で唯様を引き上げるときに、必要以上に力がかかっていましたので」
「それなら誰がこんなことを?」

 早苗が真剣に水面を見つめる。ガーディアン達は妖魔を察知する能力をそれぞれが持つ。だが彼女たちには近くにそれらしき存在を感じては居なかった。

「まさか……」

 今まで沈黙していた芽衣が何か思い当たるらしく、眉を寄せる。他の数人も何かに気づいた様子だ。

「唯様、お楽しみのところ悪いのですが、とりあえず今日のところは帰りませんか? 後日、また改めてプールにはお連れしますので」
「うん。今日も充分楽しんだから、気にしないで」

 すまなさそうな顔をしている芽衣ににっこりと唯はにっこりと微笑む。プールの営業時間はまだあるが、唯としては充分に楽しんだ。

「唯様、それでは参りましょう」

 雛菊が唯にタオルを手渡す。女性達にエスコートされて唯はプールを後にした。最後に一回、唯は自分が溺れたプールを振り返ったが、水面には波も無く、異常を感じさせるものは何も無かった。唯は何かが引っ掛かったが、素直に女性の集団に囲まれてその場を後にした。






「あれ、みんなして何処に行くの?」

 プールへと遊びに行った翌週の土曜日。自宅の廊下で、唯は昼間から出かける様子の芽衣達数人とバッタリ出くわした。見れば全員がTシャツやジーパン、または短パンなどの動きやすそうな服を着ている。

「いえ、ちょっと用事がありまして……」

 唯と廊下の真ん中で出会うのは思いがけなかったらしく、芽衣の返答は歯切れが悪い。

「用事? また悪魔退治?」
「はい。実はそうなんです」
「そうなんだ。出かける前に言ってくれればいいのに」

 唯が芽衣以外にちらりと視線を送ると、全員が慌てて目を逸らす。由佳と早苗はさり気なく視線を外したが、雛菊と京はあからさまに目を合わせたくなさそうだった。

「とりあえず、玄関まで送るよ」

 唯は訝しみながらも、芽衣達と一緒に玄関へと付いていく。

「ちょっと遅いわよ……あれ、唯様?」

 芽衣達を待っていた円がびっくりしたように唯を見る。玄関には円、楓、ミシェル、静香と残りのメンバーが揃っていた。既に靴を履いており、全員で出かけるのは一目瞭然だ。

「全員で出かけるの? そんなに大変な悪魔退治なら心配だから一緒に行きたいんだけど……」
「あ、いえ……別に大したことは無いんです。まあ、念には念を入れてということです」
「そっか。じゃあ、何かあったら携帯で連絡して頂戴」

 円の説明で納得したのか、唯はそれ以上追及するようなことは無かった。あからさまにガーディアン達は、ほっとしたような雰囲気なのだが、唯は気にしていないようだった。だが、さり気なく唯は楓に声をかける。

「楓さん、何処に行くのか聞いてる?」
「近くの川原です」

 慌てて早苗とミシェルが楓の腕を肘で突くが、既に遅かった。主に心から心酔していて、常に率直な楓が唯に咄嗟に嘘をつけるわけも無い。楓を狙い打ちされて、彼女以外の全員がしまったという表情をしている。

「それじゃ、いってらっしゃい。気をつけてね」
「それでは、行ってきます」

 意外なことに唯はあっさりと全員を解放した。唯の言葉に押されるように全員がドアを飛び出すように出て行く。

「まずったと思う?」
「そうね……唯様って頭いいから」

 ミシェルに円が頷く。少年とは言え、ときたまドキッとするほど大人びた言動を唯はしたりする。自分達が普段の様子とは違うと悟っているだろう。

「とりあえず感づかれないうちに行きましょう」

 由佳の言葉に全員が頷く。半分がエレベーターに乗り込み、残り半分がマンションの廊下の手すりを乗り越えて飛び降りた。

「うーん、どうしようかな……」

 閉まった玄関のドアを見ながら唯は腕を組む。考えてみればおかしな点が多くある。金曜日の晩と言えば、全員が唯との甘い一夜を期待して誘ってくるが、昨日はそれが無かった。悪魔退治なら、出て行く前に唯にちゃんと挨拶することが多い。それに悪魔退治に出かけるときは常ならば夜なのだ。全員揃って出て行くということも、一回や二回しかなかったはずだ。

「まあ、いいか」

 きっと女性達にも唯には言いたくないことがあるのだろう。唯はプライベートを尊重した方がいいと思って玄関に背を向けた。
 だが、心の片隅で何かが引っかかった。

「音を辿れば、気づかれないかな? とりあえず、やってみよう」

 唯は玄関の鍵を取りに、自室に早足で向かった。






 楓が言ったように、ガーディアンの女戦士達は川原へとやって来ていた。休日の昼間だが、道が舗装されてもなく、背の高い草が一面に広がっているだけの川原なので人のけはいは全くと言っていいほど無い。彼女達は高い草を掻き分け、川の方へと歩みだす。

「時間ぴったしね」

 川へと出ると、一人の少女がガーディアン達を待ち構えていた。小学生くらいの少女は髪をツインテールに結んでおり、ワンピースに身を包んでいる。幼い服装とは対照的に利発そうな顔立ちで、間違いなく美少女と言っていいだろう。特筆すべきはまだ幼い体に似合わず、ワンピースを大きく押し上げている胸だ。その胸のサイズはある種、異様とも言える。まだかなりの若さだというのにそのアンバランスな体が、一種の色香を作り出していた。

「素直にやって来たのね、麗」

 好意的ではない芽衣の口調に、船越麗はうっすらと笑ってみせる。それを挑発と受け取ったのか、雛菊と京の目が剣呑そうに薄く閉じる。

「さあ、何で唯様に手を出したか教えて貰おうかしら」
「何でって、決まってるでしょう」

 芽衣の厳しく詰問するような口調を意に介さず、麗は僅かに嘲るように返答する。

「主なんてろくなものじゃないわ。もし私達に過度な干渉をするような奴だったら、こっそり殺しちゃった方がいいでしょう」
「唯様は違うわ」
「そう? 既に九人のガーディアンを従えているわけでしょ。邪魔に決まっているわよ」
「そんなことは無い。あなたも唯様に仕えればわかるわ」
「まっぴらごめんよ」

 麗は舌を出した。年相応に見えるそれは傍から見ればかわいいが、芽衣達には通じなかったようだ。気がつけば麗はじわじわと仲間たちに半円に囲まれていた。

「それなら仕方ないわね」

 麗の正面に立った京がじりじりと彼女に近づく。既に手からは血が爪の形を象っている。

「唯様に手を出したことを命で償って貰う」

 雛菊がTシャツとズボンを大きくずらす。晒した腹から、剣士である彼女はすらりと巨大な剣を引き抜く。

「そんなことが出来る?」

 九人に囲まれながらも、麗は顔色一つ変えない。余裕とも言える様子だ。

「この人数だ、諦めろ」
「何で私が話し合いの場所を川原にしたと思ったの?」

 麗の言葉に、全員が失敗を悟った。

「バカね!」

 川の水が蛇のようにうねって巻き上がると、麗を含めてガーディアン全員を飲み込んだ。
 船越麗が水を操るガーディアンなのは、彼女達には周知の事実だ。それなら罠に容易に気づきそうなものだが、唯を攻撃されたことに対しての怒りが全員の冷静な判断力を奪っていた。

「わあっ!」
「ああっ!」

 水流が襲い掛かる寸前に早苗と芽衣は石と氷の壁を張ったのだが、巨大な水の量に一瞬で飲み込まれてしまった。ガーディアン達を襲った水流は川から盛り上がり、円状に猛烈な渦を巻く。

「うぐっ……」

 京が必死に自ら作った血で出来た武器を伸ばそうとするが、血が大量の水分に混ざって形の維持さえも難しくなっている。対抗する能力が全くと無いと言ってもいい雛菊は、水に翻弄されて木の葉のように流されてしまう。円は大きく開けた川原だったために得意の影へと潜る術も使えず、水と相性のいい雷撃使いのミシェルは真っ先に強烈な水圧で締め上げられて意識を奪われていた。

「くうっ」

 かろうじて残ったのは重力使いの静香と、自力で酸素を作れる風使いの楓だけだ。静香は球状に水を押し返すバリアを形成し、楓は水流に抗わずに冷静に流れに身を任せている。だが静香は猛烈な水圧を押し返すほどの力を作れず、楓が外から呼んだ猛風は水に阻まれている。

「ごぼっ、あぐっ!」

 最も水と相性が悪いとも言える由佳は手も足も出ない。流れる水流に、水を蒸発させるだけの熱を作れず、溺れたまま水に流されている。早苗も由佳と同様で、芽衣は何とか氷の塊を自らの周りに張りバリアとしたが、何も出来ないのは一緒だ。

「呆気ないものね。主からすぐに自由にしてあげるから、待っていて頂戴」

 勝ち誇る麗に万事休すかと思われた、そのとき、

「みんなっ!」

 水流の向こう側から唯が駆け寄ってくるのが、何人かの目に映る。川原にたどり着いた彼は、異常な動きをする水にすぐ異変を察して走り出していた。

「唯様、来てはいけません!」

 静香が思わず叫ぶが、水越しでは音が伝わるはずもない。

「手間が省けたわ。死んで貰うわよ!」

 円状に渦巻いていた水流から、ダムが決壊したかのように大量の水が唯を襲う。あっという間に唯は圧倒的な量の水にその身を飲み込まれた。水中で唯は水に流されている仲間と、悠然と水に浮かぶ少女の姿を微かに見た。

「うぐっ!」

 ずんっという音と共に突然、麗の体が独楽のように回転した。それと同時に水がコントロールを失い、物理法則に従って川原全体へと水が四方へと流れた。
 自分を飲み込む水圧が消えた同時に、静香は全員が川へと流されないようにそれぞれの体を重力操作で固定する。

「げほっ。げほっ」

 体を地面に叩きつけられて、唯は大きくむせた。強烈な衝撃に体が恐ろしく痛み、肺が水を吐き出すために咳が止まらない。
 水流に呑まれた瞬間、唯は反射的に麗へと音撃を放っていた。唯が指向性を持たせた強烈な音は、空気より伝達しやすい水を通って強力な衝撃を麗に叩きつけたのだ。狙ったわけではないが、相性の良かった攻撃が結果的に全員を救った。だが唯が強烈な音に指向性を持たせなかったら全員がノックアウトされていただろうし、唯の身体が草地に投げ出されなかったら彼自身の命も危なかっただろう。

「こ、こいつ……」

 水が引いた川原で真っ先に立ち直ったのは京だった。全身に怒りをたぎらせ、自らの血液を腕くらいの長さの血刀へと変えると、麗へと近づいていく。

「あっ……」

 唯の攻撃をもろに食らって朦朧としている麗は、身動きが取れない。ぼやけた頭で近づく京を見た彼女は、ぼんやりと今回の生が終わったと思った。

「待って。全員攻撃禁止」

 苦しげな唯の呟きは、確かに全員の耳に届いた。痛む体をごまかし、唯は全員の耳に命令する言葉を届けたのだ。
 主の言葉にガーディアンは逆らえない。京は血刀を体内に納めると、急いで唯の元へと走り出した。既に静香と芽衣、それに楓が彼の元へと集まっていた。唯はぐったりと再び倒れてこみ、身動き一つしていない。

「唯様!」
「全く、むちゃして」

 唯の体を揺する静香を押しのけ、京が唯の体を調べる。意識を集中すれば、京は他人の血の動きも見ることが可能だ。血流の動きから出血や血管の損傷を探る。幸い大きな異常は無く、けがは打撲程度で済んだらしい。

「大丈夫みたいね、気を失っているだけだわ。骨も折れてないし、脳も無事よ。しばらく打撲で身動きできないかもしれないけど、命に別状は無いわ」

 京の診断に静香と芽衣はほっとする。自分達は戦いで命を失ってもまた現世に戻れるが、唯はそうもいかないのだ。

「それでは、私は早苗達を連れてきますね」
「お願い。京、残りの人の検査もお願い」
「わかってるわよ」

 芽衣は地面に正座すると、唯の頭を膝の上へと乗せる。静香は残りの仲間をふわりと重力操作で浮かして一箇所に運び、京が一応の診断を下す。そんな中、京はちらりと倒れたままの麗を見る。お互いを知り尽くした仲間とはいえ、麗一人に手玉に取られたのが京には信じられなかった。

「さてと、どうしましょうかね」

 芽衣はよろよろと地面から起き上がった麗の姿を見て、ぼそりと呟いた。






「んっ、あれっ?」

 唯は自室で目を覚ました。ゆっくりとその身を起こそうとすると、背中に鈍い痛みを感じる。どうやら、したたかに地面に投げ出されたのが効いているようだ。
 濡れた服から寝巻きに着替えており、体も濡れてはいなかった。どうやら配下の女性達が綺麗に整えてくれたようだ。
 まだ体は痛むが、唯は起き上がると廊下へと出て行った。

「あっ、唯様。起きたんですか?」

 唯がリビングに入ると、真っ先に気づいたのは円だった。彼女の声で一斉に全員の顔がこちらに向く。どうやら全員が揃っているらしく、その中には唯が水中で見た少女の姿もあった。

「まだ無理なさってはいけませんわ」
「酷い打撲だから」

 慌てて立ち上がると、芽衣と楓が唯へと早足で近づく。

「でも、ちょっと話が聞きたくて」
「とりあえず、お座り下さい。ソファで楽になさって」

 二人は唯の手をわざわざ引いて、ソファへと彼を座らせる。唯は体が痛むのは事実なので、好意に甘えて楽な体勢で柔らかいソファの背にもたれ掛かった。

「それで、君は誰?」

 唯は水中に一目見た少女にまずは話しかける。反射的に大音量の攻撃を仕掛けたが、唯には彼女が水を操って攻撃してきたという半ば確信に似たものがあった。
 だが、少女は不機嫌そうに唯を見ているだけで、返事を返さない。

「麗! すみません、唯様。この子は船越麗、我々と同じガーディアンです」

 何も語ろうとしない麗を叱り付けてから、代わりに芽衣が答えを返す。

「ガーディアン、こんな小さな子が……」
「あんたなんかに子供扱いされる覚えは無いわよ!」

 唯の一言に、麗は鋭く噛み付く。だが唯にはまだ小学生くらいの少女が、芽衣や京達と同じガーディアンには見えなかった。配下に従えている能力者達の中で一番若い早苗さえ、高校生で唯より年上だからだ。

「ごめん、年は関係無いよね」

 しかし考えてみれば転生を繰り返し、前世の記憶を持つガーディアンならば年は関係無いように思えた。自ら武器を振るう雛菊と、自らを武器として振るう京は別として、水を操って遠隔攻撃ができるなら幼くてもガーディアンとして問題は無いはずだ。

「全く、こんな子供に何でみんな仕えているのよ?」
「うん、その通りなんだけど」

 麗の怪訝そうな表情に、唯は苦笑を返す。子供に子供扱いされているが、長年生きてきた麗の意見なら納得できた。

「麗、あなたは唯君の凄さを知らないから、そういう事が言えるのよ」
「凄さ? こんな子供がどんな凄さを持ってるのよ」

 諭すような由佳の言葉を麗は一蹴する。

「ほう……その子供……お前が侮っている唯様の攻撃でぶっ倒れたのは何処の誰だったかな?」
「………」

 雛菊のきつい皮肉に麗は絶句する。唯の一見軟弱そうな外見に惑わされたが、考えてみれば自分を倒す程の能力を持っていたのだ、本来はガーディアンに命令する能力しか持たない主が。

「あの能力は何?」
「能力?」
「惚けないでよ、私を攻撃したあれよ」
「ああ、あれか。音だよ」

 気色ばむ麗に、唯はあっさりと答えを返す。

「正確に言えば、ありったけの大音量を直接飛ばしたんだけど……痛かった?」
「……痛かったどころじゃないわよ」

 バツの悪そうな唯に、麗はボソリと呟く。
 水を伝ってきた音がぶつかったとき、麗は全身がバラバラになるような強烈な衝撃を受けた。最後の瞬間にありったけの力でガードしなければ、全身の骨が砕けていたかもしれない。
 それだけの強烈な音を放ったのも脅威だが、水中に居た他の者達を傷つけないような指向性を持たせられるのは凄い能力と言わざるを得ない。

「何であんたがそんな能力を持ってるのよ!?」
「何でって言われても……やっぱりガーディアンの主になったからじゃないかな?」

 唯の説明に麗は納得がいかないように、じっと彼の顔を見つめる。だが唯自身は嘘をついている様子も無い。麗は周りを見回して仲間達を見るが、誰も答えを持っていないようだ。

「多分だけど……今までの主にも本当は音を操る能力があったんじゃないかしら?」

 円が難しい顔をして、推論を述べる。

「今までの主達のほとんどは、利己的で欲望を満たす道具とだけしか私達を見てなかったけど、唯様はそうでは無いわ。欲望に溺れることが無いから、能力に気づく余裕があったのじゃないかしら」
「なるほど」
「それなら納得がいきますわ」

 円の説明に雛菊と芽衣が頷く。唯も含めて他の全員も、円の説明した理屈に納得せざるを得ない。唯の能力には未知の部分が多いが、とりあえずは推測が成り立った。

「でも僕って欲望に弱いと思うんだけどな……」

 恥ずかしそうに言う唯に、何人かの顔が赤くなる。

「ちょっと何よ、みんなして」
「うるさい。麗は黙ってなさい」

 眉をひそめる麗を京がにべも無くあしらう。

「大体、まだあなたの処分が決まってないわ」
「そうそう。麗のことどうしようか?」

 京の指摘に、早苗が全員を見回す。

「うーん、こういうときのケースって……」
「大体、今まではお決まりのパターンだったわよね」
「ちょっと何よ。私をどうするつもり?」

 二人で勝手に納得している様子の由佳とミシェルに、麗は慌てたように聞く。京が怒りで自分を殺そうとしたほど好いている主に手をかけたのだ、とんでもなく重い処分だったら困る。

「唯様に犯してもらいなさい」

 楓が至極簡潔に刑罰を言い渡す。口には出さなかったが、唯と麗を除いたこの場に居る全員がそう思っている。

「ちょっと待ってよー! 私にこんなガキに抱かれろって言うの!?」
「こんなガキ……ね」
「知らないっていうのは罪ね」

 早苗とミシェルが目を見交わして苦笑する。性に関しては自分の百倍くらい通じているミシェルがにやにやしているのは、麗にはたまらなく恐ろしかった。

「さあ、それじゃ麗」
「観念してね」

 両隣に居た芽衣と静香が麗の腕をがっちりと掴む。唖然としている麗は何も出来ない。

「ちょっと待って、ストップストップ」

 再び待ったをかけたのは麗ではなく、驚くことに唯本人だった。

「ぼ、僕にそんなちっちゃな子を抱けって言うの? 無理、無理、絶対無理」

 唯がブルブルと首を横に振る。芽衣達のような色気のある大人の女性や、若くても年上の女子校生の早苗には幾らでもときめいたり、欲情することができるが自分より年下となると別だ。唯自身さえも性的なことには早いくらいなのだ、それより幼い少女に手を出せるとは思えない。

「唯様、ダメでしょうか?」
「ダメ、絶対にダメ」

 抱くはずの唯自身に否定されたのでは仕方ない。芽衣と静香は諦めて麗の腕を放した。唯が幼い少女に興味が無いのは年上としては嬉しいが、麗を服従させられないことで芽衣達にしてみれば複雑な気分だ。

「普通はそうよね。唯がこんな頭のいかれたオバサン達と違って、良かったわ」
「お、おばさん!?」
「こいつ……唯君、犯っちゃって!」

 調子に乗った麗の言葉に、全員が殺気立つ。次の瞬間には、ほぼ全員が麗に飛び掛っていた。思わず麗は唯に助けを求める。

「きゃーっ! 唯、助けてー」
「ちょっと待って! 全員落ち着いて!」

 唯の命令に全員の動きがピタリと止まり、麗はとりあえず事なきを得た。だが彼女の発言は、その後に麗の処分をどうするかの話し合いに大いに響いた。唯は強硬に処刑を主張する全員を何とか説得して、麗を監視するということで決着をつけたが、明け方近くまで時間を要することになった。






 麗の処分を決定してから数日が経った。
 唯は麗から受けた傷が二日くらい痛んだが、京の能力で何度か治療して貰うとあっさりと青黒い打撲が消えた。既に体は何とも無い。こういうときに、改めて唯はいかに凄い仲間達と一緒に居るか実感する。
 麗は監視するということだが、唯はこの点に関してはあまり心配していなかった。直接話したことで自分に悪意が無いということはわかってもらったつもりだ。あまり束縛しなければ麗も唯を攻撃する気は起きないだろう。他のガーディアン達とは違い完全に服従させてないので、彼女の猜疑心で寝首をかかれる可能性はあるが。

「あれ、麗どうしたの?」

 夜半に部屋から出た唯は、廊下で麗に出くわした。見れば麗は薄い青の寝巻きを着ている。

「どうしたのって……部屋に戻る途中だけど」

 唯の質問に麗はあからさまに嫌そうな顔を見せる。

「いや夕飯を一緒に食べてたのは知ってるけど、今日はここに泊まっていくの?」
「今日からここに暮らすのよ、聞いてないの? その方が監視に都合がいいって」

 何も知らない唯が目を丸くしているのに満足したのか、麗は相好を崩す。

「でも、ご両親は心配しない?」
「芽衣が前から手を回していてね。現世での両親も芽衣が私を引き取ることに同意しているわ」
「そうか……」

 かなりの資産家である芽衣のことだ。財力や地位で何とかしたのかな、と唯は勝手に納得する。

「ところで、麗って呼び捨てにするの止めてくれない。あなたみたいな子供に言われると、癪に障るのよね」
「そう言っても、僕よりまだ小さな子にさん付けとか難しいからなあ。それに周りの人に変だと思われるとまずいし」
「でも、かなりむかつくのよ。何とかしてよ」
「うーん、麗も僕のことを呼び捨てにしてるんだから、麗が呼び方を変えてくれたら考えるよ」
「生意気ね」

 にこにこと笑っている唯とは対照的に、麗は不機嫌そうだ。一時は殺そうとした相手なのだ。まだ麗としては唯に心を開けないみたいだ。

「まあ、いいわ。その代わりにこっちも呼び捨てのままにさせて貰うわ」
「別にそれで構わないよ」

 唯が部屋の近くにあるほぼ自分専用の洗面所に入る。後を追って何故か麗もついてくる。
 唯が寝起きしている部屋の周りは、ほぼ彼専用のスペースとして設定されている。充分に広いシャワー室、洗面所、トイレ、洗濯機に物置。その反面、増える一方のガーディアン達によって、彼女達自身の居住区域は狭くなっている。シャワーを浴びるのもローテーションで苦労しているようだった。
 唯としては申し訳なく思うのだが、芽衣は下のフロアを全部買い取ってスペースを広くするので心配ないと笑う。それなら唯としても安心だが、そのうちマンションの建物全体が芽衣の物になるのではないかと思ってしまう。

「ねえ、ちょっと聞いたんだけどさ」
「なに?」

 歯磨きを終えたと見て、麗が唯に話しかける。

「唯ってセックスが凄い上手いって本当?」
「うっ」

 幼い少女にストレートに聞かれて、思わず唯の動きが固まる。見れば、麗は意地悪そうにニヤニヤと笑っている。

「中学生のクセに、そんなにしまくってるんだ。マセてるのねー」
「うん、自分でもそう思うんだけど……」
「自覚はあるんだー。変態じゃないの?」

 唯は自室に逃げ込もうとするが、麗がさも当たり前のように付いてくる。

「若い頃からセックスばっかりしてると、バカになるわよ」
「うん、気をつけるよ」
「本当? そんなに急に止められるの?」

 ベッドに腰掛ける唯の横に、麗も座る。唯としては苛められるのは本望では無いが、新しい仲間ともう少し話したかった。部屋から麗を追い出そうという考えを押し殺して、ぐっと我慢する。

「でもそんなにしたいんだったら、私も抱いたら良かったのに」
「だからダメだって。そんな小さな子を抱くなんて」
「ふーん、本心はどうだか」

 麗はパジャマのボタンを上から順に二つ外し、布地を大きく押し上げている巨大な胸の谷間を見せた。わざと見せ付けるように腕で挟んで、唯にアピールする。

「本当は抱きたいんでしょ。こんな幼い私に欲情してるんでしょ」
「してないって」

 麗は自分の胸を揉み、唯にしなだれかかってアピールするが、唯の反応は薄い。あの手この手で唯を誘惑するが、結局は徒労に終わった。

「意気地無し。好きにしたければしていいのに」

 唯の不甲斐ないように見える態度に頭に来たのか、麗はドンと唯を片手で叩く。そういうところは年相応に見える。

「本当は麗が抱かれたいの?」
「なに?」

 主が冷静に発した言葉に、麗が目を見開く。

「ば、バカ言わないでよ。誰があんたなんかみたいなガキに抱かれたいって思うのよ」

 凄まじい剣幕で麗は怒鳴るが、その顔はほんのりと赤い。自分の指摘が図星だったことに唯自身も驚いている。売り言葉に買い言葉というやつだったのだが、思わぬ反応だった。

「素直に言えばいいのに」
「だから誰もそんなこと言ってないでしょ、このエロガキ!」

 真っ赤になって麗は否定する。だが唯の手が麗の腕を掴むと、ビクッと麗の体が大きく震える。

「放しなさいよ、放せ、放せ、この変態! ロリコン!」
「そうかもしれない。何て言ってもいいよ。でも、僕は麗のこと好きだよ」

 罵詈雑言をわめき散らす麗とは反対に唯は優しく笑いかける。

「な、何よそれ」
「だから、可愛い麗が好きだって言ったんだよ」
「ひゃっん」

 唯の言葉を頭が理解すると同時に、麗の体に衝撃が走る。まるで体全体の組織が唯の台詞に反応したかのようだ。

「これって何? 体がゾクリって……」
「僕の力の一つらしいよ」

 唯は麗の細い肩を掴むと、ゆっくりと柔らかなベッドに押し倒す。抵抗することも忘れて麗の体が横たわる。

「麗、可愛いよ」
「きゃっ!」

 唯の言葉一つで、麗の体は悦びを感じてしまう。頬にキスされると、唇から凄まじい熱が体中に広がるような錯覚を覚える。

「やめなさいよ。唯、やめて……」
「ごめんね。麗が可愛くて止まらない」
「い、言わないで……ああっ!」

 体が跳ねるほどの快感が、唯から囁かれるだけで全身を駆ける。何度も転生を繰り返してきたのに、こんなのは初めてだった。
 唯の手がボタンにかかり、大きく膨らんだ少女の胸が外気へと晒される。その巨大さはとても小学生とは思えない。

「麗、麗、麗……」

 名前を何度も囁きながら、唯の手が胸を触る。麗の胸はまだ若いからか、ゴムのような強い弾力で指を強く押し返して、すぐに元の形へと戻ろうとする。

「ふあっ、やん、ああっ!」

 胸を触られているだけなのに、頭にじーんと快感が広がって大きな声をあげてしまう。唯の言葉も愛撫も、麗の体どころか精神を揺さぶってくる。

「ひゃぁ、やめ、やめて、だめっ!」
「大丈夫、優しくしてあげるからね」

 胸を揉まれると、更に強い刺激が麗の小さな体を襲う。胸をふにふにと軽く揉まれると、大きく盛り上がった胸全体が電気でビリビリするような感覚だ。

「ひゃっ、ふはっ、お、おかしくなっちゃう」
「大丈夫、大丈夫、大丈夫だからね」

 唯の言う通り、強すぎる刺激が徐々に収まっていく。その代わり、何とも甘い感覚が体を浸食していく。

「あん……はぁ……ふぁ……何かいい……」

 麻薬にも似た蕩けるような感覚に、麗の意識がずぶずぶと呑み込まれていく。胸の愛撫だけなのに、全身はドロドロの快感が満たされたプールに浸かっているようだ。意識が混濁しているのに、全く怖くない。もしこんなのがずっと続くのなら、永遠にこの状態でもいいくらいだ。

「はぁ……うぅん……ああっ……」
「そろそろいいかな?」
「えっ?」

 パジャマの上を脱がせてから、唯の手が麗のズボンに手にかかる。ふと見れば自分の股間がぐっしょりと濡れており、べったりと自分の太ももに張り付いていた。

「きゃっ、見ないで!」

 気がつけばショーツ全体も愛液を吸いきれずにぐっしょりと濡れている。こんな恥ずかしいことは初めてで、麗の顔がゆでだこのように赤くなる。

「おかしいことなんて無いよ。好きだよ」

 唯の優しい一言で、麗の羞恥心が意識の片隅へと押しやられてしまう。唯がショーツごとズボンを脱がしても、自分から腰を浮かして麗は手伝ってしまう。

「あっ……」

 脱がせてから気づいたが、麗の股間にはまだ何も生えてなかった。恥毛の無い股間を見て、つい唯の動きが止まってしまう。唯が今まで抱いてきた女性はヘアを綺麗に整えており、綺麗なブイカットの陰毛があったのだが、麗にはそれが無かった。胸が巨大なだけに無毛なのはアンバランスで、唯にはより卑猥に見える。

「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」

 虚ろな目で尋ねてくる麗をキスでごまかし、唯は彼女のほっそりとした太ももの裏を持ち上げる。麗の薄く開いた陰唇のスジが唯の目の前に露になった。

「唯……」

 麗は期待する表情で唯を見ているが、彼はこんな幼い体に自分のペニスが入るのだろうかという不安がもたげてきた。とりあえず亀頭を麗のぐっしょりとした膣口に当て、具合を確かめてみる。

「あんっ……」

 麗の入り口は狭いが、充分すぎるほどに漏れ出した愛液がすぐにペニスの先端を濡らした。亀頭の感触が気持ちいいのか、麗自身が腰を動かして膣口を擦り付けてくる。

(これならいけるかもしれない)

 唯はぐっと腰に体重を乗せて、麗の中へと自分を突きこんだ。

「ああっ!」

 細い膣口を押し広げ、シャフトが体内へと入った。膣内はぬるりとしていて、処女膜の抵抗も唯は勢いに任せて押し破る。

「くっ」
「あうっ……痛っ」

 膣壁が今まで抱いた誰よりも締め付けてきており、陰茎全体がグッと圧迫される。体内にかかる圧力に麗のヴァギナから愛液と共に処女血も漏れ出す。

「唯……」
「大丈夫?」

 目尻に溜まった麗の涙を唯は唇で拭う。そして少女の痛みも潮が引くように和らいでいく。

「唯、動いて……おちんちん動かして」
「うん、わかった」

 そろそろと唯が腰を動かし、慎重に膣壁を擦る。

「いやぁ、焦らさないで。もっと強く動かして」

 麗のおねだりに安心したのか、唯はペースを上げて彼女を突き始めた。

「あんっ、ふあっ、はん、ひゃん……いいの、いい」

 テンポよく動く唯の肉棒に、麗がかわいげのある嬌声をあげ始める。嬉しそうに笑うその笑顔はとても淫らで、少女というよりは雌そのものだ。

「ふあっ、あん、突いて……そこそこ、もっと押し込んでぇ」

 麗の内部はまだ浅い奥行きなので、亀頭がすぐに子宮口を突いてしまう。ずんずんと奥を押されるたびに、麗は身をくねらせて愛液を漏らす。

「ああん、唯好き、好きなの、おちんちん頂戴、もっと頂戴」
「僕も好きだよ」
「ひゃぁぁぁあ、いいのー」

 快感に脳を焼かれて淫らな言葉を口走る麗。唯は更に彼女を気持ちよくさせようとペニスをリズミカルに前後させる。

「ふぅ、あっ、あん、ああっ……」

 体が勝手に反応して、自然と麗の口から喘ぎ声が漏れ出てしまう。ガチガチに硬くなった少年のペニスに犯される度に、堪らない衝撃が体に走る。全身を走る神経がビリビリとした感覚を伝達し、膣が絶え間なく淫液を漏らしてシーツを汚す。

「唯……おかしくなっちゃう……私の体、変なの……」
「大丈夫、変になっていいんだよ」
「ひゃぁあぁん、いいの、おちんちん凄いの」

 唯の言葉に安心したのか、麗は声を抑えようともせずに叫ぶ。
 膣壁の締め付けがあまりに強く、唯は徐々に耐えられなくなってきた。まだ未成熟な膣内はヒダが浅く、ペニスがゴムで締められているようだ。

「麗、ごめん。僕、そろそろ出ちゃいそう」
「出して、出して。わ、私もイキそう、イク、イク、イクぅ!」

 必死に抑えていた快感を、麗は逆に貪るように全身で受け止める。リミットを解除した途端、麗は圧倒的な刺激にあっという間に達してしまう。

「イク、イっちゃう、だめ、だめ、だめぇぇぇぇえ!」

 狭い膣内がグウッとすぼまり、麗が唯の体に両手両足で抱きつく。

ぶびゅっ、どびゅ、びゅる、びゅく、びゅっ

 麗の子宮口に向かって濃い精液が叩きつけられる。幼い膣は精液を貪るように体内へと飲み込もうと動き、その熱い感触に麗は吐息を漏らす。あっという間に膣内が満たされて逆流し始める。
 唯もきつい締め付けに心地よさを感じて、軽く身震いする。ペニスがドロドロに汚れて、愛液や自分自身の精液の温かさが伝わる。

「ふあっ、熱い……お腹の中熱い……」

 麗の体が弛緩し、唯の背に回した腕がくたりとベッドのシーツに投げ出される。

「気持ち良かった?」
「うん、凄い良かった……」

 にっこりと微笑む唯に、麗も満足そうに頷いて見せる。ガーディアンの他の仲間が唯の体に溺れるのも無理は無いと素直に麗は納得できた。エクスタシーの何とも言えない余韻に浸って、麗はすっかりリラックスする。唯の背中を撫でたり、その薄い胸を触って楽しむ。
 そして、そのまま十分以上が経過したのだが、

「ねえ……」
「なに?」
「い、いつまでそれ、中に入れてるのよ」
「それ?」
「オチンチンよ、オチンチン。英語で言うとペニス!」

 射精しても唯の陰茎は萎えず、麗の体に突き刺さったままだった。互いに満足したし、シャワーでも浴びようと麗は思うのに、ペニスが膣内に入ったままでは体が疼いて仕方ない。

「いや、もう一回しようかなって」
「ちょ、ちょっと。無理よ、無理。体が壊れちゃうわよ」
「だ・い・じょ・う・ぶ」
「そんな可愛く言ってもダメだってば。放せ、触るな、バカ、エッチ、色情魔!」

 抵抗しようとする麗の手首を唯は掴んで抑え込む。そしてそのままペニスをゆっくりと動かし始める。

「ば、ばかぁ……や、やめてよぉ、おかしくなっちゃうって……」

 ゆるゆるとした男根の動きに、麗の豊かな胸の奥が熱くなっていく。先ほどより刺激的ではないが、熟練しているような唯の腰つきに、麗の色欲が燃え上がる。

「はっ、はふっ……だめだって……クセになっちゃうよぉ……」
「大丈夫。幾らでも満足させてあげるから」
「だめ、だめぇ……いやだって……」

 麗の膣内は愛液と精液でぐちょぐちょで、かき回すたびに音が響く。麗はぎゅっと目を閉じて耐えようとするが、ペニスが膣壁を擦る度に理性の壁が崩されてしまう。

「ああっ、ふあっ……ぁ……あぁっ……」

 すっかり体から力の抜けた麗の体を抱き起こすと、唯は麗を腰の上に乗せて背中に手を回す。対面座位の形になり、上になった麗を突き上げ始める。

「あ、ああっ、ふ、深い……あん……お、おちんちん奥までとどくぅ……」

 小刻みに麗を揺すり、唯はペニスで彼女の奥を突く。強すぎず適度な刺激は麗の思考を奪っていく。唯も二回目なので、余裕を持って麗の膣内を味わい、子宮口の感触を楽しめた。

「やだぁ、何も考えられない……唯のおちんちんがずんずんって突いて……頭が真っ白……」
「麗、可愛いよ」
「やんっ、それに弱いのぉ」

 唯の言葉に反応して、麗の膣口がペニスの根元をギュッと締めつけた。密着した二人の体に挟まれた巨乳が押し潰れ、唯の薄い胸板を麗の硬くなった乳首が擦る。

「ゆいー」

 甘える麗の唇を唯が口付けして吸いたてる。麗は自ら桜色の小さな唇を開き、唯の舌をねだった。舌が絡まり、唾液を流し込まれて麗がそれを嚥下していく。

「あっ、いくっ、だめっ、ゆ、唯……ふわっ」

 ぶるりと麗が震え、軽い絶頂を迎える。それでも唯の動きは止まらず、緩急や動きをつけて麗の体も心もゆさぶっていく。イッた直後の神経は敏感で、何度も何度も軽いエクスタシーに襲われる。

「あうっ、またいっちゃう、あっあっ、やん、いやっ」

 連続でイキつづける麗だがそれが苦痛ではなく、どんどんと快楽に溺れていく。かなりの時間を麗は貫き続けられたが、やがて唯が力を込めて少女を抱き寄せる。

「イクよ、麗」
「うん、いいよ。好きにして」

 麗の中を急ピッチで唯はピストンする。それを受け入れるように、麗は体の力を抜いて膣だけをぎゅっと締めつけた。

「うくっ……」

 再び麗の中で唯が弾けた。膣内をペニスがビクビク動き、それを感じ取って膣壁も蠕動を繰り返す。

「はぁん……唯の動いてる……」

 唯が達すると同時に麗も静かに絶頂を迎え、快楽の波に流されていく。一回目より二回目の方が唯への愛情が麗には増すような感じがした。今度は余韻をたっぷり貪らず、唯はペニスを股間から抜き取る。

「麗、舐めて綺麗にしてくれる?」
「うん、いいよ……」

 ベッドの上に立ち上がり、自らの男根を唯は麗につきつける。目の前に出された少年のペニスの根元を愛しそうに人差し指と親指で挟み、小さな口で麗はゆっくりとシャフトを飲み込む。口に含んだ陰茎を舌で舐め、こびりついた精液と自分の愛液を唾に溶かして少女は飲み込む。

「唯の精液、美味しい……」
「もう一回したいんだけどいいよね」
「いいよ……唯が満足するまでして……」

 小悪魔的な雰囲気はすっかりなりを潜め、麗は従順そうに唯へ微笑む。麗はすっかり唯に服従していた。もう唯の体無しでは生きられないだろう。

「あ、あふっ、ふっ……唯、いいよぉ……」

 初めて抱く少女の感触に溺れた唯は麗のことを抱き続け、何度も何度も精液で彼女の子宮を満たし続けた。






「おはよう、みんな」

 翌日も唯はいつもと変わらない様子でリビングへと顔を出した。朝の食卓で出勤前の女性達と挨拶を交わす。

「唯様、麗を抱いたんですね」

 コーンフレークを掻き混ぜるスプーンを止めて、円が唯に聞く。

「うん。やっぱりまずかったかな?」
「いえ、私は一向に構わないですよ」

 謝罪の代わりに微笑む唯に、円は気にしてないと手を振ってアピールする。

「唯君、本当に麗を抱いたの!?」
「……全然気づきませんでした」

 驚く早苗と静香はパンにバターを塗る手が止まってしまう。その反面、芽衣と由佳、それにミシェルは涼しい顔をしている。

「芽衣達は気づいていたの?」
「うーん、確証は無かったけど薄々気づいていたと言えばいいかしら」
「唯君って結構手が早いから」

 一番付き合いの長い芽衣と由佳のコンビには唯の行動パターンなどお見通しなのだろう。

「さすがは唯様。それでこそ主ですわ」

 性に通じているミシェルは、起きてきた唯の様子を見ただけで看破してしまった。ここはさすがと言うべきか。

「唯様……正直私には意外でした」

 雛菊は味噌汁のお椀を持ったまま固まっている。唯が麗みたいな小さな子に手を出したのがショックなのだろう。幾ら心酔しているとはいえ、恋人が小学生を抱いたとはまだ信じられない。

「唯様、ずるい」

 楓は無表情だが唯には拗ねているのがわかる。

「今晩、たっぷりしてあげるから許してくれる?」
「うん、もちろん。精液で溺れるくらいたっぷりして下さい」
「う、げほげほっ」

 ストレートな楓の台詞に唯が苦笑して、牛乳を飲んでいた早苗がむせた。無表情だが、楓の心情は意外と単純みたいだ。発言はとんでもないが。

「おはよう」

 随分と遅れて麗がテーブルへとやってきて、席につく。昨日は何ごとも無かったとでも言うような仕草なのだが、唯を除いた全員の注目が集まっている。思わず気が強い麗もたじろぐ。

「な、何よ?」
「昨日はお楽しみだったようね」

 ミシェルが親父臭い言い方で麗に笑いかける。その笑顔までも、何処かオッサン臭い。
 一方からかわれた麗は顔がカッと赤くなっている。わざわざ一緒に起きた唯を先に行かせ、自分は身支度を完全にしてから来たのに全員が昨晩の情事を知っているみたいなのだ。真っ先に隣に座っている当事者の一人の唯を疑うが、目が合っても逸らさずに「何?」と目で聞いている。

「べ、別に何も無かっ……」
「へえ、何も無かったっていうの?」
「こ、こいつが私を無理やり押し倒したのよ。だから、私は嫌々セックスしたのよ!」

 隣に座る唯を指差した麗の責任転嫁とも言える発言に、全員の目が険しくなる。だがミシェルと円はニヤニヤと麗を見たままだ。

「果たしてそうかしら?」
「ひゃぁあぁん、いいの、おちんちん凄いの……って言ってたのは何処の誰かしら?」
「なっ!?」

 クスクス笑う円に麗の頭にますます血が昇る。

「もしかして、み、見てたの!?」
「ばっちり影の中から見てました。麗があんまり唯様におねだりして長くエッチするもんだから、途中で寝ちゃったけど」
「ば、バカー! そんなことしてないわよ」

 ビンタを一発思いっきり放って、麗がリビングルームから駆け出す。後に残ったのは、

「何で僕がビンタされたの?」
「い、いや私もさっぱりわからないです。すみません、唯様。からかいすぎたみたいです」

 呆然とする唯の頬には真っ赤な手形が出来ていた。寝坊してやってきた京は、バツの悪そうな円と、唖然としているその他の人間、それに頬を赤く腫らした唯を見て首を傾げた。






 余談だが、唯の災難はそれだけに留まらなかった。

「麻生君、何でもみじがほっぺに出来てるのかな?」
「是非とも詳しく私達に教えて欲しいですわ」
「麻生、おまえ風呂覗いたんだろう。誰だ? 誰の入浴だ? くー、羨ましい」
「それとも下着ドロしたのか? 俺にも分け……」

 登校した唯を待っていたのは、リポーターのように囲んで質問してくる友人達の質問攻めだった。

「ノーコメント、ノーコメント、勘弁してよー」

 自分より若い子とエッチしたのが原因だとは死んでも言えない唯だった。







    


























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