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 夜の建設現場、巨大な鉄骨が露出したビルが闇夜にそびえている。幾つも鉄の柱と梁が組み合ったビルは、地上何十メートルもの高さだ。地上にうず高く積み上げられた鉄骨の様子を見ると、まだまだ高く作る予定のようだ。
 ひっそりと佇むその巨大な威容の中、ビルを駆ける影があった。三日月のうっすらとした明かりの下、複数の者達が鉄骨を上がっていく。

「待ちなさい!」

 京の腕から血で出来た腕が伸び、鉄骨を掴んで身体を上へと持ち上げる。それを両腕で交互に繰り返し、凄まじい速さで建設中の高層ビルを駆け上がっていく。血の腕だけで鉄骨から鉄骨を飛んでいく京の姿は、木々の間を飛ぶ猿のように軽快だ。
 京が向く視線の先には、悪魔達の姿が複数ある。腕がテナガザルのように異様に長く翼竜のような顔つきをした悪魔が数体、それと痩せこけた犬のような悪魔。奇怪な姿をした者達は京から逃れるように、必死に跳躍やぶら下がりを繰り返して上へと登っていく。

「邪魔だ!」

 心底イライラしているように京が叫ぶ。最後尾に居た四足の悪魔を、追いついた京の血爪が捉える。悪魔の身体を巨大な爪で掴むと、彼女は思いっきり鉄骨へと叩きつけた。

「ギャンッ!」

 鉄骨にぶつけられ、悪魔は犬のような叫びをあげる。鉄骨からぶら下がったまま、左手から血の鎌を伸ばして京は相手を一撃で裁断した。僅かな呼吸の間にこれだけの攻撃を繰り出すと、京は再び追跡を続行する。

「京ったら、どうしたのかしら?」

 猛烈な速さでビルを駆け上がる京を、地上から百合が見ている。その傍らには楓の姿もあった。百合は落ち着いた藍色の着物姿で、楓は白いTシャツに短パンというラフな格好だ。

「上に追い込むというのは、当初からの予定だったわ」
「それは知っているけど……彼女、何か焦っていない?」
「焦る?」
「追い込むだけならそんなに必死にならなくてもいいはずよ……京ったら、何か余裕が無いわ……」

 心配そうな百合に対し、楓は無表情に京を観察する。確かに京の動きには粗があった。普段ならば、京は猛々しい中にも卓越した戦士が持つ隙の無さがある。だが百合と楓の目には、彼女の動きに平素の余裕が見て取れなかった。

「……トイレ?」
「あ、あのね……こんなときにボケないで欲しいわ」

 楓の的外れな推測に、百合は額を押さえて首を振る。最近、楓は無表情のままでとんでもないことを言う。冷静で機械のような人物だったのが、遠い昔のようだ。

「京のような戦士が、あんな動きをするには意味があるはず。その理由がわからない」

 じっと観察したことで、楓がようやく京の異変について何かあることを察した。感情の起伏や様相などに疎い楓でも、京の動きには何か感じたのだろう。

「そうなの……少し心配」
「何かあったら私達でフォローすればいいわ。そろそろ行きましょう」
「ええ」

 百合が軽く身を屈めると、次の瞬間には天高く跳躍していた。彼女が居た場所に巨大な土煙が上がる。大地に衝撃を叩きつけ、百合はその反動で自らの身体を空中へと飛ばしたのだ。見る見るうちに彼女の体は高く上がっていく。

「失敗したわ……傍に居るべきじゃ無かった」

 土煙をモロにかぶった楓が呟く。彼女はすぐさま風を作り出すと、身体についた砂を吹き飛ばす。召還した風が徐々に渦を巻き、楓を中心に小型の竜巻を作っていく。猛烈な勢いで風が吹き荒んだとき、楓の身体は急加速して空中へと飛行した。

「追い詰めたわよ」

 京が鉄骨の上で足を止め、低く攻撃的な響きで悪魔達に告げる。とうとう悪魔達と京は頂上へと上り詰めた。

「畜生、こうなったらやっちまえ!」

 一体の悪魔が号令を発すると共に、全員が京へと殺到する。四方から迫る悪魔達に舌打ちすると、京は両腕から巨大な鎌を作り出す。

「ご苦労さま」

 悪魔達が動いたときに、ふわりと百合が最上階の鉄骨へと舞い降りる。頂上にちょうど着地できる力に跳躍を調整した動きは、自分の力を知り尽くした彼女だからこそできるのだろう。

「はいっ!」

 鉄骨に足の裏から衝撃を打ち込み、百合の体が今度は真横に飛ぶ。一気に接近した悪魔の腹に右手で掌底を叩き込み、勢いを維持したまま悪魔三体を巻き込んで突進する。

「破ッ!」
「ぐえええええっ!」

 百合の手から衝撃波が迸り、三体の悪魔を貫通して大穴を穿つ。そして、そのまま華麗に百合は反対側の鉄骨へと着地する。

「………」

 遅れてやってきた楓も空中に姿を現す。何の感情も表情に見せぬまま、彼女が両腕を振り下ろした。風の力により生み出された多数のカマイタチが宙を駆け抜ける。

「ぎぃはぁ!」
「ぐふぁ!」

 見えない真空の刃に攻撃され、悪魔達が血しぶきを上げる。そしてズルリと悪魔達の体と多数の鉄骨がずれていく。恐るべきことに鋼鉄の塊でさえもカマイタチはすっぱりと裁断した。切断面を晒しながら肉と金属の塊は地上へと落下していった。

「ちょっと、楓! 何も建物を壊さなくてもいいでしょうに」
「……失敗したわ」
「余計なことを……」

 悪魔達をあっという間に殲滅した百合と楓に、京は不快そうに眉を寄せる。彼女は片手の鎌を血爪に変えて伸ばすと、最後に残った一体の全身を掴み上げる。

「うぐげ、げげげげっ!」
「さあ、言いなさい! ザウラスは何処よ!?」

 血の手が持つ強烈な握力に、悪魔の体がバキバキと音を立てる。悪魔が持つ強靭な骨が、鉛筆のように脆くへし折れていく。全身の骨を折られる強烈な痛みに、悪魔は悲痛な叫びをあげた。

「し、知らねえ! 協力するとか言っていたのに、何処か行っちまった!」
「嘘を……」
「ひ、ひええええええええっ!」

 京が作り出した血鎌が空を切り裂き、悪魔の片腕をスッパリと切り落とした。あまりにも見事な斬撃に全く痛みが無い。そのことが、逆に悪魔の恐怖感を煽る。

「し、しらねえよ! 本当だよ!」
「こいつ……次は目を潰すわよ……」
「ちょ、ちょっと京!?」

 残酷な拷問をする京に、百合が慌てる。戦いのときに京は恐ろしいまでに凶暴性を発揮するが、こんな残忍なことをするようなことをするタイプではない。

「こいつは本当に知らないわ。無茶してはダメよ!」
「吐きなさい! 吐けって言ってるのよ!」
「ぐ、ぐえ……し、知らな……」

 百合の制止にも関わらず、京は口から血を噴き出して苦しむ悪魔に力を込める。

「京!」
「チッ」

 グシャリと大きな音が響き、悪魔の身体が血爪によって文字通り握り潰された。肉片が辺りに飛び散る。細かくバラバラになった体はすぐに灰となってサラサラと風に流されていく。

「京、どうしたの? あなた、今日は冷静さが無いわ」
「……帰るわ」

 百合の疑問を無視し、京は手から太い血の縄を鉄骨に引っ掛ける。足場から飛び降りると京の体がロープで減速しつつも、サーッと地上へと下りていく。
 制止する間も無かったので、百合と楓は地上へと降りた京を見守るしかない。

「帰るって……あの子、終電も無いのに歩いて帰る気?」
「タクシー?」
「わざわざタクシーは使わないでしょう」

 工事現場から徒歩で出て行く京の姿に百合は困惑する。こんな京を見るのは、百合も初めてだった。

「……付き合いきれないわ。楓、送って頂戴」
「了解」

 百合の身体が、楓の作り出した風でふわりと浮き上がった。






「ふわあああっ、おはよう」

 眠い目をゴシゴシ擦りながら、京はリビングへと入ってきた。だが挨拶に応える者は誰も居ない。ワイシャツにショーツという何ともだらしの無い格好で、彼女はリビングを見回す。

「……そうか、誰も居ないわよね」

 京がつい先程、起きてすぐに確認した時間は午後一時過ぎ。平日である今日は、ほぼ全員が働くなり学業に勤しんだりしている時間だ。京は思わず無人のリビングに挨拶してしまったバカさ加減に、自分で呆れて眉をしかめる。普段ならば気にならないことだが、最近はやたらと気が立っていた。
 空腹を訴える腹のために、彼女はキッチンへと向かう。業務用かと思われるほどバカでかい冷蔵庫を開けて、中を適当に漁る。見つけた冷凍食品のピラフを電子レンジに放り込み、ついでに納豆のパッケージも冷蔵庫から出した。
 ピラフに納豆という何とも奇妙な献立で、京は朝食と昼食をいっぺんに済ませた。

「……はぁ」

 使った皿を台所の流しに放り出すと、京は溜息をついてリビングのソファに寝転がる。
 昨日の夜はザウラスの情報を得られずに、京はフラストレーションが溜まっていた。飯田の情報通り、追っていた悪魔とザウラスは繋がりがあったようだが、既にザウラスは姿をくらましていたらしい。ザウラスを追撃することを想定して、スリーマンセルを組んでいたというのに、とんだ肩透かしを食らってしまったようだ。
 自分の行動が徒労に終わり、あまりの怒りに京はうっかり徒歩でビルを去った。そして気がついたら、見知らぬ土地で右往左往していたのだ。電信柱の上へと登って駅を探し、結局は駅前で捉まえたタクシーで帰った。家についたときにはもう明け方に近かった。楓と百合の薄情さを昨晩は恨んだが、考えてみれば勝手に帰ったのは自分のほうだ。

「らしくない……」

 こんなイジイジしながら、家でぼんやりしている自分は相当におかしかった。何事も腕力と暴力で解決し、破壊と殺傷をひたすら楽しんでいる自分らしくない。
 色々考えながら横になっていると自然に京はウトウトしてきた。昨晩あまり眠れなかったのが響いたようで、彼女はすぐに眠りに落ちていった。






「ただいまー」

 唯が玄関から声をかける。だが返事は無い。まだ夕方と言うには早い時間なので、誰も帰ってきていないと唯は判断する。常日頃なら楓か静香、それか京などの不定期に仕事が入る者、または早苗や麗、エリザヴェータなど学生達から返事がある場合が多い。今日のように挨拶が返って来ない日の方が珍しい。
 特に気にすることも無く、唯は自室へと向かう。制服をハンガーに吊るし、Tシャツと短パンという身軽な格好へと着替える。
 着替え終わると、唯はリビングへと向かう。キッチンでおやつでも探そうと思ったのだ。
 麗やミシェルなどが頻繁につまんだりするので、由佳や雛菊、静香などが常にお菓子をキッチンに補充しておいてくれている。雛菊はわらび餅やかしわ餅などしぶい和菓子を選んでくるので、唯はそれらを探すのがちょっぴり楽しみであったりする。

「あれ?」

 リビングのドアを開けて、唯はすぐにソファに横になっている京の姿に気付いた。すっかり寝入っているらしく、唯が入ってきたことにも気付かないようだ。

「珍しいな」

 ふにゃーっと力を抜いて横たわっている京の姿に、唯はクスリと笑いを漏らす。スヤスヤと眠る京の寝顔は何度も見ているが、顔つきの険が取れて普段よりかわいらしいのだ。

「疲れてるのかな? 昨日は帰ってきたの遅かったから」

 唯は京の傍に座ると、優しく頭を撫でる。緑がかった長い髪は、指を通すと少し硬めの感触だ。

「うーん、唯……」
「なーに?」

 寝言なのだろうが、呼ばれた唯は返事する。無意識の仕草で両腕を伸ばす京に、唯は体を傾けると腕の間へと身を寄せる。京は唯の背に手を回して、彼をギュッと抱き締めた。

「えっ!? ゆ、唯!?」

 寝惚けた動作だったのに、確かな感触があったので京の意識が一瞬で覚醒した。慌てて腕を解いて、彼女は唯の顔を確認する。

「おはよう」
「え、あ、お……おはよう」

 ソファで眠ってしまったことと、それを唯に見られたことに京は気恥ずかしい思いを感じてしまう。彼女はシャープな印象がある顔を微かに赤らめ、自分を覗き込む唯から目を逸らす。

「起こしちゃったかな? よく眠っていたのに」
「いや、こんなところで寝ていた私が悪いのよ。気にしないで」

 徐々に普段の冷静さを取り戻すと、京はゆっくりと身を起こす。唯と一緒のときには、すっかり大人しくなっている自分に気付いて、京は不思議に思う。少し前まで京は暴力を揮いたいという衝動が常にあったのに、唯と出会ってからはそれも随分と抜けた。破壊衝動が消えたためか、昔のクールな性格に戻ってきている。

「京さん」
「え、ちょっと、唯?」

 唯は正面から京の体に優しく抱きついた。少年の細い腕が京の背中に回され、唐突な彼の抱擁に京は驚く。

「どうしたのよ?」
「スキンシップ。京さん、ちょっと疲れてるみたいだし」
「……そうね」
「え、やっぱり疲れてるの?」

 京があっさりと肯定したことに、今度は逆に唯が驚く。身を離して京の顔を見ると、彼女は暗い面持ちを見せていた。常日頃、悠然としている京にしては珍しい。

「……ザウラスが見つからないのよ。必死に探しているけど」
「ああ、そうなんだ。足取りが掴めないの?」
「さっぱりなのよ」
「でも、ザウラスの方からやって来るみたいなことを言っていたけど」

 唯のあっさりとした言葉に、京はきっと鋭い目で彼を睨みつける。

「それが困るのよ。唯、死にたいの?」
「死ぬ気は無いけど……。あいつの狙いは僕だし、いずれは戦わないといけないと思う」
「何を寝言を言っているの! あなたに勝てるわけがないわ。戦ったら死ぬのよ」

 京は唯のシャツを掴むと、彼の顔をぐっと自分に近づける。その目には怒りが宿ったような光があった。

「……心配してくれてるんだね」
「当たり前でしょう!」
「ありがとう」

 自分は怒っているというのに、逆ににっこりと微笑む唯に京は面食らってしまう。

「でも手がかりが無いんじゃ仕方ないよ。飯田さんや円さんに情報を集めて貰おう」
「なに悠長なことを言ってるの」
「……多分、しばらくは襲ってこないと思う」

 唯が真剣な表情でボソリと零す。
 唯には確信があった。ザウラスは唯と戦うために機を見計らっており、今はその時期では無い。唯が強くなっているのを、舌なめずりしながら白亜の悪魔は待っている。一度刃を交えただけで、会話らしきものもしていないのに、唯は徐々にザウラスのことを理解してきていた。宿命のようなものが唯に伝えるのだ。

「……しばらく襲って来ないって言っても、いずれは追ってくるのでしょう?」
「そのときが来たら、まあそのときに考えようよ」

 微笑む唯に何処か余裕のようなものを京は感じる。だが京から見れば己の力を過信しているだけだ。

「唯、目を覚ましなさい。今すぐにザウラスを討たないと後悔するわよ」
「僕は大丈夫だって」
「いい加減にしなさい……私はあなたを死なせたくない……」

 怒りを押し殺して唯を睨む京に対し、唯も京のことをじっと見つめる。

「もしかして……京さん、怖がっている?」
「怖がる?」
「うん……僕がそんなに心配? 不安?」

 唯は優しく京の頬を撫でた。彼の顔は子供の心配する母親のようだ。その目は慈愛に満ちている。
 核心をつかれたことと、唯の優しい言葉に京は固まってしまう。京は自分がなかなかザウラスの足取りを追うことができなかったので、イライラしていたのだと思っていた。だがその実、京は怖かったのだ。唯の命を狙う者が居ることが怖くてたまらない。唯を失いたくないのだ。

「そうよ、怖いのよ……悪い? 唯を失うのが……唯が死ぬのが怖いのよ」

 京の目に涙が浮かび上がると、堰を切ったように涙がこぼれ落ちる。その顔はまるで親とはぐれた子供のようだ。唯はぎゅっと京の体を抱き締める。

「そう簡単に死なないって。大丈夫だから」
「何でそう言い切れるのよ。簡単に言わないでよ」
「京さんや皆を信じてるから。僕もむざむざ死ぬつもりは無いよ」
「でも……でも、いつかは死ぬんでしょ。私を置いていくのでしょう」

 京がぐっと唯のシャツを握る手に力を込める。
 唯はガーディアンと違って、死んだら転生しない。死後の世界があるのか、それとも記憶を失って生まれ変わるのかはわからないが、死んだら京とは二度と会わないのだ。京が幾ら望んだとしても。

「確かにいつかは別れなくちゃいけないときが来るかもしれない。でもきっと大丈夫。僕は両親が死んだときはもう人生が終わったと思った。でも、こうやってまた笑って暮らしてる。京さんには皆が居る。一人じゃないから、きっと乗り越えられる」
「嘘よ、信じられない」
「……もし、どうしても耐えられないなら、転生を止める方法を見つけよう。僕の命が尽きた後、京さんも一緒に休もう」

 京の目が見開かれる。悠久の時を生き続けるガーディアンの転生を止める、それは自殺してくれと言うのに等しい。だが唯はその禁を破って欲しいというのだ。

「二千年以上頑張ってきたんだ。もし京さんが望むなら、そろそろ休んでもいいと思う」
「う、うわああああああ、唯、唯!」

 唯の言葉に京は火がついたように泣き出した。涙と共に恐怖が流れていく。唯は確かに自分を愛してくれている、それだけで充分だった。






「ごめん、みっともないところを見せちゃって」

 泣き腫らした目を、京は軽く擦る。何もかも忘れて、唯の胸で思いっきり泣いてしまったのだ。本当にらしくない。

「いいって。京さんって普段は大人しいから、今日は本音で語ってくれて嬉しいと思ったよ」
「お、大人しい? 私が?」

 どうも京が自分で考えている自身のイメージと、唯が見る京のイメージが乖離しているようだった。京は自分では凶暴な暴れ者と考えている。現に毎週のように喧嘩などの騒動を起こしているのだが……。

「これからは、もう少し自分の身に気をつけるから。安心して」
「うん……それなら文句は無いけど」
「また何かあったら、いつでも言ってね」

 唯の手が優しく京の頭を撫でる。主の思わぬ行動に、京はみるみるうちに顔が赤くなっていく。あまりの恥ずかしさに止めて欲しいのだが、声が咽喉から出てこない。それに頭を撫でてもらって、心の何処かで嬉しいと思っている自分が居るのだ。

「京さんにはもっと甘えて欲しいな。皆と居ると、一歩引いてるって感じだし」
「そんなことは無いわよ」
「そうかな? だといいんだけど」

 唯の唇が京の赤く染まった頬にくっつく。固まってしまった京の顔に、何度も何度も口付けを繰り返し、キスの雨を降らす。普段の京なら、これくらいは笑顔で受け入れる余裕があるが、どうも自分の弱みを唯に見せてしまったために、普段の冷静さを失っている。

「あ、あのさ……唯……」
「ん? なに?」
「わ、私の部屋に来ない?」

 京はガチガチに緊張しながら、唯を誘う。普段から何度も激しいセックスをしているというのに、これではまるで初めて恋人を家に招き入れる少女のようだ。

「うん、いいよ」

 京の申し出に、唯はあっさりと乗る。唯は彼女の手を引きつつ立ち上がると、紳士的にリードして歩き始めた。
 心臓がおかしくなりそうなくらいドキドキしながら、京は唯についていく。自分の弱みを見せたから、恥ずかしいのだと京は思っている。だが実際には胸の内から恋心が溢れてきて、止まらないのだ。京は唯に惚れ直している。まったく自分らしくないと彼女は自嘲するが、それでも鼓動の高まりは収まる様子を見せない。
 京の自室へと辿りつくと、ドアを開けて唯は京を中へと先に入れる。自分の部屋だというのに、京は緊張してしまう。
 京の部屋はシンプルで、タンスやベッドなど基本的な調度品以外は特に見当たらない。目に付くと言えば、ベッドテーブルの上に置いてあるバイクの雑誌くらいだ。

「京さん……」

 唯が京の腰を抱いて導き、ゆっくりと彼女をベッドの上へと押し倒す。そしてそっと圧し掛かると、唯は京の胸の谷間へと顔を埋める。仰向けに寝ているのに、京の双乳は優しく彼の顔を挟むくらい綺麗な形を保っていた。

「ゆ、唯?」
「なーに?」

 体をずらし、唯は京の体に抱きついて彼女の頬に頬擦りする。まるで子猫が甘える仕草のようだ。そんな唯のストレートな愛情表現に、京は戸惑ってどうしていいのかわからない。

「え、えっと……恥ずかしいんだけど……」
「そうなんだ。折角二人っきりだから、甘えて欲しいなって思ったんだけど」
「え!? あ、うん……」

 甘える仕草を止めて、軽く抱きつくだけにした唯に京は残念さを感じる。心臓が爆発しそうなほど恥ずかしく思えたのに、今は唯のスキンシップが恋しいのだ。普段はあれほどセックスで乱れているのに、こんなに自分が固くなっているなんてらしくなかった。

「唯……」

 そっと唯の頭を京が撫でると、彼はにっこりとして素直にそれを受け入れる。自分でもどうしてこういう仕草がしたかったのかわからない。だが自分が唯の頭を撫でているのに、それとは逆に京自身の胸に暖かいものが広がっていく。

「唯……好き……」
「うん、僕も好き」

 優しい笑顔の少年に、血の女戦士は胸が激しく震える。唯は京の好意を素直に受け入れてくれている。自分が何をしてもあるがままで受け入れてくれるという感覚が、京に伝わってきた。それが何より愛しい。

「ん……唯……」
「うん……」

 首筋に顔を埋めて、何度も何度も少年の細い首にキスする。唯の口から甘い声が漏れて、京は心が温かくなっていく。

「唯……唯……」

 もう京の口からは唯の名前しか出てこない。顔をキスして、頬擦りして、髪の毛を撫でて、ギュッと体を抱いて、ひたすら唯とのスキンシップを求める。目の前に居る少年が愛しくて堪らない。狂おしい情欲とはまた違う、甘い心の渇望が唯を求めて止まない。

「唯……キスして……」
「うん、いいよ……」

 普段なら京から唯の唇を奪うところだが、今は彼からキスをして欲しくて堪らなかった。唯の唇が京の唇と重なる。触れるだけの優しいキス。だがそれだけでも京の胸が活火山のような激しい鼓動を刻む。チュッチュッと音を立てて、何度も何度も唇が触れては離れる。今まで感じたことのない熱い胸の高まりに、京は唯をかき抱いてキスをおねだりする。

「唯……京のこと抱いて……」
「うん。京さんのこと抱かせて」

 普段は絶対にしない少女のような甘い台詞で、京は唯を求める。京には安心感があった、唯には自分の本心を晒していいのだと。幼子のように甘えるのを力強く受け止めて貰えるのを京は理解してしまった。唯の前では誇り高き熟練の戦士でも、血に狂った狂戦士でなくてもいいのだ。年に似合わぬ甘えん坊でも構わない。
 京は唯のTシャツと短パンに手をかけて脱がせる。素肌を合わせてお互いに抱き合い、温もりを感じあう。

「唯の体……温かい……」

 唯の少年らしい瑞々しい肌の温もりに、京は恍惚としてしまう。自分より背も体格も小さいこの子が、実際は自分を包んでくれるような大きな包容力があるのだ。

「京さんも温かいよ……」

 唯も京の柔肌とその体温に、心地良さを感じる。普段は何事にも冷然としていて、ときたま凶暴さも見せる京が、本心を曝け出して唯にその身を預けてくれているのだ。唯の心は嬉しさで満たされている。

「唯……愛してる」
「僕も……京さんのことを心から愛してる」

 唯の言霊が京の胸奥へと響く。主が使える力ある愛の言葉。それは京の淫欲を呼び起こさず、今は胸の内を温かくしてくれる。燃える情欲を喚起するのとは違う、その言霊も京は非常に嬉しかった。

「ん……んんっ……んん……」

 お互いに啄ばむキスを繰り返し、二人は体を抱き合う。ペッティングもしない、シンプルな抱擁の繰り返し。だが胸の高まりに体は反応し、京の中から愛液が漏れてきて、唯のペニスも徐々に硬くなっていく。

「唯……あ、ああっ……ん、んん……」

 京が股を軽く開くと、唯が硬くなった股間を押し付ける。ショーツとトランクス越しに触れ合う性器に、二人の呼吸が荒くなっていく。ソフトな感触が逆に、熱く昂る唯と京にとっては適度な刺激となってちょうどいい。

「あ、あふっ……あ、ああっ……唯、唯……」

 京は腕と一緒に、スラリとした足で唯の腰まで抱きかかえてしまう。触れ合う性器をより密着させて、少年の硬くなった陰茎を感じようとする。はしたないとは思っても、身体が止まらない。

「う、ああっ……ああん……き、気持ちいいの……」
「京さん……」
「ああっ!」

 唯に首筋へとキスして貰うだけで、京の身体が電気でも流されたかのようにビクンと跳ねる。既にショーツはべっとりと濡れて、唯のトランクスまでも淫液で汚していく。

「ふあ、ああっ……唯……あ、ああっ……」
「京さん、可愛いな」
「嬉しい、ありがとう」

 喘ぎながらにっこりと微笑む京に、唯も喜びを感じる。普段とは違う京の素直な笑顔はとても愛らしかった。トランクスにジワリと先走りの汁が漏れ出て、布地に滲んでいる京の愛液と混ざり合う。生温かい京の粘液をもっと感じたくて、唯はより強く彼女に腰を押し付ける。

「あ、ああっ……ふあ、あん、やっ、ごめん……わ、私もうダメかも……」
「うん、それじゃ一回イって楽になろう」
「うん……うん……」

 京と唯が互いの体をギュッと抱き合う。性器を擦り付けあうという、最も原始的なペッティングで二人の体は芯から熱くなっている。

「あ、あっ、やだ、くる、きちゃう……あ、ああっ……ふあっ……」

 唯が角度を上手く調節し、京のクリトリスを硬いペニスで圧迫する。女性器の中でも特に敏感な場所を刺激され、京の身体が大きく仰け反る。腰から強烈な刺激が広がり、震えが全身へと奔る。

「や、やっ、あ、唯、唯……ふあ、ああっ、あく、あ、あぁぁぁん!」

びゅ、びゅる、びゅ、どびゅ

 京の身体がガクガクと痙攣すると同時に、唯の尿道から精子が迸る。二人は同時に達した。唯のトランクスから白い粘液が溢れ出し、尻までべっとりと濡れた京のショーツへとこびり付く。

「あ、あふ……はぁはぁ……や、まだ身体が震えてる……す、凄い……」

 軽いエクスタシーを何度か感じて、京がビクビクと震えた。唯にしがみ付く京の肢体から振動が彼へと伝わる。唯がぐっと陰茎を陰唇に押し付けると、京の腕に込める力が更に強くなった。

「はぁはぁ……よ、良かった……唯、ごめんね、パンツ汚しちゃって」

 体の痙攣が徐々に治まり、京の身体が弛緩する。京は唯の唇にキスすると、彼の体を抱いて自分の胸に押し付けた。唯の胸を柔らかな双乳が受け止める。

「気にしないで、京さんのショーツを汚しちゃったのは僕も一緒だから」
「わ、私のは……じ、自分で汚したから」

 京の顔が赤くなる。ショーツに広がった愛液は臀部まで濡らし、京の尻へとべっとりと張り付いている。あまり心地良いとは言えない感触に、京は羞恥心を覚えてしまう。

「唯、気持ち悪いでしょう。綺麗にしてあげる」

 唯の肩を掴んで体から離すと、京は彼をベッドへと押し倒して体を入れ替えた。膝立ちになると、京は自分のショーツを血爪で素早く切り破る。そして唯のトランクスを慎重な手つきで脱がす。

「京さん……」
「きちんと掃除してあげる……私が汚したものだから」

 京は体を唯の足元へずらすと、うつ伏せに寝て彼の股間へと顔を近づける。僅かに柔らかくなったペニスを掴み、京はそっと口をあてがった。

「あ、あう……京さん……」

 京の赤い舌が唯のシャフトを舐め上げる。根元から亀頭に向かって様々な角度で陰茎を舐め、京は丹念に精液と先走り汁を丁寧に拭き取っていく。

「ん……ん、んんっ……唯のベトベトしてる……ん……」

 ある程度拭き取れたたと判断した京は、口を開けて唯のペニスを咥える。亀頭をパクリと咥えると一旦動きを止め、唾液を口内に溜めていく。生温かい唾液が唯のペニスの先端にかかり、充分に湿ったと京が判断するとゆっくり根元まで飲み込んでいく。

「あ……う……きょ、京さん……」

 湿った唇がシャフトをなぞる感触に、唯が身震いする。きゅっと絞られた口がペニスを往復していく。唯がフェラチオされるときに、一番好きな方法だった。

「ん……唯の美味しい……あむ、ん、ん、んっ」

 既に何度も肌身を重ね合っているので、京も唯の好みを熟知している。テンポ良く唯のペニスを擦り上げ、彼を楽しませるために心のこもった奉仕をしていく。

「んむ、あむ……んん、ん、んく……はむ……」

 角度をつけ、京は唯の亀頭を自分の頬へと擦り付ける。先端が温かく柔らかい口内粘膜に沈み込む感触に、唯も高まっていく。舌を絡ませ、唇でシャフトをなぞり、頬で擦りあげる。京は持てるテクニックを全て使い、唯にフェラチオする。

「あ、ああっ……京さん……」
「もうイキそう? わかったわ……好きなだけ出して……」

 唯の力無い言葉に絶頂が近いことを感じ取って、京がフィニッシュにかかる。顔にかかる髪を指でかき上げると、唇をすぼめて肉棒を挟みこみ、速いピッチで動き出す。頭を大きく揺らして上下し、根元まで何度も唇を往復させる。

「う、あっ、出すよ!」

びゅ、びゅ、びゅくびゅく、びゅる

 唯の警告と同時に、京は尿道を舌で軽く押さえる。飛び出る精液の勢いを上手く殺し、ゆっくりと口内へと精液を溜めていく。熱い精液の感触に京は酔ったように頬が赤くなる。愛する唯をイカすことができ、嬉しさが胸の奥から自然に溢れてくる。

「ん、んん、んっ……」

 二度目だというのに強い粘つきがあって濃厚な精液を京は飲み込んでいく。量も常人より多いため、飲み込むのにはなかなか時間がかかる。

「ぷはっ……唯の濃くて美味しい……はぁ……私、凄い好きなのよ……」

 唇を離すと、うっとりとした表情で京が唯に伝える。その余りにもストレートな淫語と、妖艶な表情に唯はドキリとしてしまう。普段も道行く人が振り返るほど美しく、独特の危険さを感じさせる色気を持つ京だが、今は一段と色っぽかった。

「唯……まだまだ行ける? 今日はもっと唯を楽しませてあげたい……」

 唯の返事を待たずに、京は彼のペニスを巨大な胸に挟みこむ。京の両手によって寄せられた柔らかな脂肪の塊に、ズブズブと少年の肉棒が沈み込む。

「うあ……い、いいの、京さん?」
「うん、いいわよ。いつもたっぷりしてもらっているから、そのお返し。ちょっと待ってよね」

 京の口からとろりと生暖かな唾液が落とされる。透明な液体は胸にかかると、上手い具合に豊満な胸の谷間へと流れ込んでいく。

「これでいいわよね……唯……」

 両胸を手でフニフニと動かし、京はたっぷりと唾液と陰茎を馴染ませる。充分なスムーズさを確保できたと見た京は、ぎゅっとペニスを乳房で挟み込み、上下に動かし始めた。

「唯の熱い……硬くて、凄いわよ……」
「あ、あの……ありがとう」

 上目遣いで微笑みながら褒められて、唯は軽くどもりながら京に答える。上半身を大きく揺さぶり、京は激しくシャフトを擦りたてる。片胸が手に到底収まらないくらいの巨大な乳房はマシュマロのように柔らかく、その谷間の深さにペニスが何処までも沈みこんでしまう。

「唯、私の胸……どうかしら?」
「柔らかくていいよ……あ、あ、凄いって」

 亀頭を激しく擦る乳房の圧迫感に、唯の腰が震えそうなほどの快感を受ける。唾液が潤滑油になり、京の滑らかな肌を激しく滑る感触に唯は身悶えしそうだ。ガーディアン達の爆乳はまるで唯を楽しませるだけのために作られているようだ。京の胸も例外ではない。

「はぁはぁ……唯のに擦られて……わ、私もおかしくなりそう」
「きょ、京さん……」

 胸の中に火の塊を入れられたようなほど熱くなっている京は、心臓近くをペニスに擦られているだけで身体中の血流が早くなっていくように感じる。熱く硬く、そして大きくそそり立つ唯の肉槍に、このまま心臓ごと貫いて欲しいくらいだ。

「あ、あう……京さん……」
「出して! 唯……私にあなたの精液を頂戴。あなたの赤ちゃんの素をかけて!」

 強弱と緩急をつけてパイズリされて、唯の限界が近づく。主が射精したがっているのを感じ取り、京は焦らさずに胸の圧迫を強めると、一番速いペースで唯のシャフトを擦りあげる。柔らかな脂肪が包み込む感触に、唯の腰が蕩けきった。

「うあっ、出るっ!」
「出して! 私にかけて……一杯かけて!」

どびゅ、びゅっ、びゅっ、びゅっ

 果てしなく奥に吸い込まれるような錯覚を覚えつつ、唯は射精した。胸の圧力も加わって、両胸の間から盛大に精液が噴出す。強烈な勢いの白濁液は京の顔を直撃し、べっとりと彼女の美貌を汚した。

「はぁ……温かい……唯のがたっぷり……」

 片方の瞼に張り付いたぷるぷるの精液を指で掬い、京は口へと含む。まるで薄くならない濃い精液の味に、京は嬉しくなってしまう。まるで自分への愛情のように感じるからだ。苦くてしょっぱくて、京の大好きな味だった。

「大丈夫? 一杯かけちゃったけど……」
「うん……逆に嬉しい……」

 手の平で顔についた精液を拭い、京は指でペロペロと白い液体を舐める。自分にこびりついた精子の匂いに、彼女はまた性欲をそそられてしまう。胸に張り付く精液を手で塗り広げ、匂いをたっぷりと自分の体へと染み込ませる。

「唯……そろそろ……」
「うん、抱かせて……京さんの身体を抱きたい……」

 京に手を引っ張ってもらい、唯が身を起こす。少年があぐらをかき、京がその上へと正面から跨る。

「京さん……」
「唯……」

 唯と京の唇が重なり合う。互いに舌を出して、舌先だけでチロチロと戯れる。それだけでも両者の胸に灯った火が燃え上がった。

「唯……入れるわよ……」
「うん、来て」

 べっとりと精液にまみれ、雄の匂いが纏わりついていても、京は美しかった。美貌の女戦士が腰を落とし、少年のペニスをゆっくりと自分の胎内へと沈み込ませる。

「う、あっ、ああっ! ひあっ!」

 膣口を通過し、膣壁を掻き分けて、唯のペニスが最奥の子宮口へと辿り付く。亀頭の先端が胎内にコツンと当たった感触に、京がビクンと震わせる。

「唯、唯……唯……」

 驚いたことに京の瞳から涙がボロボロとこぼれ落ちる。まるでバージンを愛する男に捧げた少女のようだ。胸の奥が詰まったような感触がして、京は感極まってしまった。

「京さん……嬉しいよ」
「わ、私も。唯、好き、愛してるのよ……もう離さないで」

 ぐすぐすと泣き始めた京の身体を唯はギュッと抱き締める。それだけで京の胸がうち震えてしまう。あやすように京の身体を抱き締めつつ、唯が動き出す。

「あ、唯……唯……うあん……はぁん……」

 軽く身体を揺さぶるだけの優しい結合、それだけでも京の身体は性愛に満たされてしまう。幼児のようにグスグス泣きながら、京は愛する少年にギュッと抱きつく。このままずっと抱き締めて貰いたかった。

「はぁ……あ、うっ……唯……あくっ、くっ……はぁん……」

 細かく振動して亀頭の先端が子宮口を軽く刺激する。雌の本能が新しい生命の予感を得て、膣圧を上げて射精を促す。膣内を唯に満たされ、京の心も熱くなっていく。

「はっ、やん、あっああっ……だ、ダメ、すぐにイっちゃいそう」
「イってもいいよ。何度でもしてあげる」
「や、やだ……一緒にイキたいの……も、もうもたないから」

 京は唯にしがみつき、ジワジワと押し寄せる快楽に必死に抵抗する。京の願いを聞いて、唯はギュッと彼女を力の限り抱き締める。柔らかな京の肢体と体温を感じて自分をぐっと高めていく。

「唯、唯、もたない……あ、ああっ、もっと強く抱いて……」
「うん、京さん……京……」

 京の膣で自分の分身と身体で全身を包まれて、唯も強い快感を覚える。一気に高まる射精感に逆らわずに、そのまま駆け抜けた。

「京さん!」
「唯! ああっ!」

びゅるるる、びゅ、びゅ、びゅびゅっ

 敏感になっている京の身体が、精液が子宮口を叩く感触を感じ取る。膣が引き締まり、蠕動する。

「あ、ああああっ! ひあっ、あっ、唯、唯、唯ぃぃぃぃ!」

 大きな声で泣き叫び、京が絶頂へと達する。子宮に流れ込む精子に頭が熱くなり、必死に唯へと彼女は抱きついた。心が唯への思いで一杯になる。

「あ、ああっ、あっ、あっ……唯……」

 射精の余韻でビクビクと上下するペニスに、京が荒い息を吐く。既に満たされている京の身体は唯のほんのちょっとの動きでさえも、強い刺激だった。京は今までで最高のエクスタシーを感じて、何も考えられない。

「唯、唯、唯、唯……」
「京さん……」

 恋人の名前を呼びながら、再び涙を流し始めた京を唯は優しく抱き締める。

「何処にも行かないでね……何処にも……」

 怖がる子供のように京は唯へとぐっとしがみ付く。繋がったまま二人はお互いの身体をずっと抱き締めていた。






「よく眠ってるな……」

 ベッドに横たわり、スヤスヤと眠る京の顔を唯は撫でる。京の寝顔はまるで遊びつかれたような幼子のようだ。
 セックスの後、グスグスと泣き続けた京は、そのうち糸が切れたように意識を無くしてしまった。心が高揚したり、不安になったりしたのがよっぽど身体に響いたようだ。泣き疲れたのもあるだろう。京の身体を離した唯は、洗面所からタオルを取ってくると、彼女の全身を拭いて優しく寝かせた。
 事に及んでから一時間しか経っていないのに、唯には随分と長く感じる。きっと京も同じように感じていたに違いない。

「不安にさせてごめんね」

 京の頭を唯が撫でると、京は僅かに寝顔を緩ませる。
 唯はここ数週間だけで力の使いすぎで二度ほど疲労困憊になり、一度は大けがをしている。治療にあたった京が不安がるのも尤もだった。おまけに人の身で、ガーディアン達より強いと思われる悪魔にまで命を狙われている。

「ザウラス……」

 圧倒的な力を持ち、自分と戦った悪魔。今でも唯の瞼にその白い姿は焼きついている。いずれあいまみえるのは確実だろう。その時に自分を主と慕ってくれている者のために、生き延びることができるのだろうか?

「………」

 唯は右手をグッと握り締める。その手の中へと音が集まっていく。未だ誰にも見せたことの無い新たな技を無意識に唯は発動していた。
 勝てるかはわからない。だが生き延びるためなら何でもするつもりだった。そのために新たな力を幾つか用意している。

「唯君」

 遠くの方から唯を呼ぶ由佳の声が聞こえる。どうやら階下の廊下からみたいだ。物思いにふけっていて、どうやら随分と時間が経っていたらしい。多分由佳は夕飯の準備が出来たので、唯を呼びに来たのだろう。
 京を起こすか唯は考えたが、安らかに眠る彼女を見た後に彼は無言でそっと部屋を出て行った。






「お、おはよう……」
「おはよう」

 リビングに現れた京に、ガーディアンの全員が唱和して挨拶を返す。既に夜の九時を過ぎている。京は夕方からずっと眠りこけてしまったようだ。バツが悪そうな京を、冷たい視線で全員が見つめる。リビングにはガーディアンは揃っているが、唯の姿は無い。

「え、えっと……」
「キッチンにご飯が用意してあるから、適当に温めて食べて」
「うん」

 何処と無く余所余所しい静香の言葉を受けて、京はそそくさとキッチンへと移動する。皿ごとラップに包んであったハンバーグを電子レンジに入れると、居たたまれなくなって京が口を開いた。

「一体、何なのよ。何か私のこと気に食わない?」
「唯様がそっとしておいてあげてって言うから、追及しないつもりだったけど……」
「一人だけ抱いて貰って……抜け駆け?」

 芽衣と麗にジロリと睨まれ、京は思わずたじろぐ。

「そ、そんなの……あなた達だって一緒じゃないのよ!」
「でも、妙にボウヤが優しいのよね。何だか気を使ってあげてるっていうか……」
「おまけに目が腫れてるし……何かあったんでしょ」

 百合と円の指摘に、京はぐうの音も出ない。唯に優しく慰めて貰って、一杯甘えてしまったなどとは死んでも口には出来なかった。

「これは……」
「審問の必要ありだな」

 いつの間にか両脇に来たエリザヴェータと雛菊が、京の両腕をがっちりと掴む。

「ちょ、ちょっと離しなさい」
「言いなさい、何があったの?」
「言わない、言わない、絶対に言わないわよ」

 無表情な楓に迫られて恐怖を感じた京は、首をブンブンと左右に振る。取り乱す京に、何かあったのは確実と見て、全員の目がギラリと光った。

「こいつ、ムイちゃえー!」
「さあ、吐きなさい。吐いてすっきりしなさい!」
「いやー、離しなさいよ!」

 わっと飛び掛る仲間に、京は必死に抵抗する。壮絶な音を立てて、女達の身体が絡み合う。圧倒的な数の差を物ともせず、京は獣のように暴れ、残りの人間が必死に取り押さえる。服が破れる音が響き、悲鳴が何度もあがる。

「……何やってるの?」

 キッチンで取っ組み合う配下の姿に、唯が呆れたように全員を見る。トイレに行っている五分の間に、全員が半裸でフローリングの床に寝転がっていたのだから無理はない。

「え、えっと……」
「ゆ、唯様……こ、これはですね……」
「はぁ……みんなもっと仲良くしようよ。不満なら一人づつ、一杯可愛がってあげるからさ」

 二千歳以上も年下の少年にたしなめられて、ガーディアン達は顔を真っ赤にするしかなかった。















   































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