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「ひいいいいぃ!」

 男が必死に闇夜の山中を走る。彼の背後には何人もの悪魔が立っている。いや、立っていたと言うべきか。全員が塵と変わり、風に流されたからだ。

「た、助け……助けて……」

 あたふたと男は走り続ける。男は悪魔だった。山中で追ってきたガーディアンと交戦したのだが、返り討ちにするどころか十秒で決着はついてしまった。男は悪魔の姿に戻ることもできなかった。

「ひ、は、はぁはぁ……」

 二十分近く走りに走って、ようやく男は息をつく。ガーディアンは追ってきていないようだ。ここまで来れば安心だと、悪魔は人間のまま荒く呼吸を繰り返す。

「何処まで行く気だ?」
「ひっ!」

 上半身を曲げて、苦しそうに呼吸していた男の上から突然、声が降ってきた。顔を上げると、自分達を追ってきたガーディアンの女が眼前にいた。

「ゆ、許してくれ。た、頼む。このままだと奈落に戻ったら殺されちまう!」
「ならば言え。こんな山中で何をしていた」
「言ったら、許してくれるか?」
「ああ、いいだろう」

 女が頷くのを見て、男は安心したのか自分が知っていることをベラベラと喋った。

「巨大な倉庫? そんなものを、この片田舎で借りるとは……何があるんだ」

 悪魔の話を本当と判断したのか、女は考え込むような仕草をする。話を聞くと、もう用は無いとばかりに女は悪魔を置いて歩き出した。

「き、きひぇひぇ……死ねい!」

 チャンスを窺っていた悪魔は本性を現すと、腕から伸びている鎌を思いっきり振り上げる。相手が背中を見せるなどとは絶好の機会だ。隙を見せた女は無防備で、ガーディアンと言えど大けがは免れないかと見えた。

「不意打ちとは卑怯な。やはり悪は悪ということか」

 鎌が空を切り、背後から声が聞こえた瞬間、悪魔は固まった。心臓が止まりそうなくらい驚愕する。自分の目の前に確かに相手は居たはずなのだ

「正義の裁きを受けろ! はぁぁぁぁぁあ!」

 月明かりの無い山中に明かりが広がり、天へと巨大な光の柱が立ち上った。






「しっかし……」

 唯が軽い溜息とも感嘆の吐息ともつかぬ息を吐き出す。

「うちも、人が随分増えたねー」

 リビングをぐるりと唯が見回す。朝食が済んだ午前中、休日はゆっくり休みたいらしくガーディアン一同はのんびりしていた。
 ミシェルと円は大画面のテレビでワイドショーを見ている。時たま、円が報道内容などに注釈や突っ込みを入れて、ミシェルが「ふんふん」と興味があるような無いような相槌を打つ。お煎餅をバリバリ食べているミシェルは、とてもでは無いがアメリカ国籍の美人教師に見えない。
 芽衣と由佳、それに静香はソファの上で読書している。芽衣はビジネス雑誌らしき物に目を通していて、由佳はファッション誌、そして静香は何かよくわからない専門書を読んでいた。どれも唯とは縁が無いために、どのような内容か彼は理解していない。
 京と早苗は先ほどから携帯でメールのやり取りに忙しい。「何でこんなに来るかなー」などと言いつつ、早苗は必死に返信している。京はそれとは対照的に適当に打っているが、時たまその目が鋭い光を放つ。
 麗と楓は唯のすぐ傍にいる。麗は膝枕しろと言って、無理やり唯の膝を占領していた。彼女は主の膝上に頭を乗せつつ漫画を読んでいる。楓は唯の腕に体をピッタリくっつけて、じっと目を瞑っている。一言も声を発さないが、何も言わなくても満足しているのが唯にはわかっていた。
 そして百合はテーブルの上に花を並べて、生け花に勤しんでいる。華道のことは唯もよくわからないが、刺した花を眺めて「うん」などと小声で言っているのだから、いい作品が出来ているのかもしれない。
 雛菊は床の上で柔軟体操を行って、体の柔軟性を鍛えている。先ほどまでは片手だけで倒立して、腕を曲げ伸ばししていたのだから、驚嘆するしかない。さすがは剣士と言うべきか。
 総勢十一名のガーディアンが揃うと圧巻ではある。

「確かに、これだけ人数が多いと手狭だと感じますね」

 真っ先に唯に応えるのは、例の如く芽衣だ。さっきの一言は唯の独り言のようなものだが、彼女は律儀に唯の言葉を拾う。

「でも、下の階の工事ってそろそろ終わるんでしょ」
「ええ、もうすぐ移れます」

 唯が言っているのは、彼らが住んでいる真下にある階のことだ。ガーディアン達が大勢住むことを想定して、芽衣は階下を買い取って上と繋げる予定だ。工事は既に終わりに差し掛かっているらしい。

「ようやく工事も終わりかー。まったく、遅いわよ」

 漫画を閉じて、麗が寝たままで不平を言う。京や雛菊と部屋を共有していたのだが、相性が悪かったらしく、今は芽衣の部屋で寝ている。既に一部で工事が終わっている階下の部屋で寝てもいいのに、唯と離れるという選択肢は無いらしい。

「家賃も払っていないのに、偉そうだな……」
「なによ、文句あるの?」

 雛菊のもっともな指摘にも、麗はフンと鼻で笑い飛ばす。

「下の階には大きなお風呂も作る予定だから、楽しみにしていてね」
「へえ、そうなんだ」

 由佳のお風呂という言葉に、唯は自然と笑みがこぼれる。今でも各寝室にはシャワーが完備されていて便利と言えば便利なのだが、浴槽がついている部屋は二つしかない。そして残念ながら、唯の部屋にはシャワーしかなかった。

「……唯様はお風呂がお好きなのですか?」
「そうだね。好きかと言われれば、結構好きな方だよ」

 静香の質問に、唯は笑顔で答える。シャワーだけでも不便では無いのだが、やはり日本人なので風呂に入るとリラックスできるのだ。

「そういえば、唯様の部屋にはお風呂無かったんでしたっけ?」
「何で、そんな情報知ってるのよ」

 テレビから目を離して唯を見た円が聞くと、京が不審そうに彼女を見る。

「これは私の不手際でしたわ。唯様のお部屋にもお風呂を入れるべきでしたね」

 円の指摘に芽衣が唯に頭を下げる。

「いや、別にいいよ。そんなに気を使って貰わなくても」
「良ければ、私の部屋の浴室を使って下さい。せっかくの休日ですし、お昼までゆっくりとぬるめのお風呂に浸かってはいかがでしょうか?」
「ああ、それいいね」

 芽衣の提案に唯は一も二も無く賛成する。午後まで適当にダラダラ過ごすより、よっぽど日ごろの疲れが取れそうだ。
 すると生け花の手を止めて、百合が唯に向く。

「それなら、一緒に入るわ」
「ちょっと何で百合が一緒に入るのよ?」
「背中を流すのは主の下僕としては当然のことでしょ」

 怪訝そうに百合を見るミシェルに、しれっと彼女は言い放つ。もちろん百合だけに抜け駆けさせるような配下達ではない。

「それなら、唯様と私も一緒に入る」
「お姉さんも一緒に入りたいな」
「ちょっとズルイわよ。唯、私も入るわよ」
「面白そう。唯君、一緒に入ろうよ」

 たちまち十一人の半数が誘惑してきて、姦しいことこの上ない。

「ちょっと、唯様はリラックスするためにお風呂に入りたいって……」
「そんなこと言っても、芽衣も一緒に入りたいんでしょう」
「でも……」

 ミシェルの意地悪なからかいに、芽衣は視線を逸らす。入りたくないと言えば、明らかに嘘になるからだ。

「全員一緒に入ればいいじゃない。唯、とっととお風呂入るわよ」

 麗の一言で、話はあっさりとついてしまった。





「何でこうなったのかな?」

 芽衣の部屋にある浴室に浸かりながら、唯は首を捻った。リラックスするために風呂に入るという話が、いつの間にか全員一緒に入って楽しむという風に変化している。何となくしっくり来ない。
 唯は確かにガーディアンの主だが、彼女達の自由意志は尊重したいのでめったに命令することは無い。そして常にガーディアンの行動は、唯への奉仕や性交へと向っている。そうなるとガーディアン達の願望を、優しい性格の唯は叶えてあげたいと思ってしまう。唯が美女達に振り回されるのは当然の帰結だった。

「しかし、こんな大きなお風呂あったのか」

 バスタブで手足を伸ばす唯は感嘆する。円形の浴槽は唯が手足を伸ばしても十二分の広さがあり、洗い場もかなりのスペースがある。これなら何人か入っても大丈夫そうだ。

「でも、これより大きなお風呂作ってるのか……」

 階下に作られるという風呂場のことを想像してみるが、唯にはどれほどの大きさか予測がつかなかった。

「お待たせしました……」

 風呂場の扉が開き、まずは雛菊が姿を現す。続けて他の者達も浴室へと足を踏み入れてくる。大半の者はハンドタオルで股間を隠しながら入室し、その僅かな恥じらいが逆に扇情的だ。

「唯様、お風呂の湯かげんはいかがですか?」
「うん。ぬるめだから、かなりいいよ」

 浴槽に手を入れて尋ねる静香に、唯はドキドキしながら答える。普段はベッドで散々肌を重ねあっているというのに、一緒に風呂に入るというシチュエーションに唯は柄にも無く緊張してしまう。

「それでは失礼するわ」
「失礼します」

 かけ湯をした百合と雛菊が浴槽へと足を踏み入れた。それに続いて何人もがバスタブへと入って来る。

「ちょっとこれって……」
「あう……」

 あれほど広かった浴槽があっという間に一杯になってしまう。人数の容積を越えた分のお湯が縁から溢れ出る。風呂は確かに申し分が無い程に広い。だが十二人という人数が問題なのだ。
 湯はもちろん溢れ、美女の柔肌で風呂が一杯になる。押し合いへし合い、肉が詰まって唯をぐっと圧迫する。女性の体なので痛くは無いのだが、さすがに唯も圧迫感を覚えた。

「唯、ちょっと立ち上がって」
「そうそう。オーケーです」

 浴槽の壁に体を預け、足を伸ばした京と円の上に唯は座らせられる。そして唯の傍に何人かが寄り添うように座り、あぶれた者も狭いながらも何とか座るペースを確保できたようだ。

「何とかなったみたいだね」
「そうだね。でも、こういうのも悪くないんでしょ」

 早苗に耳元へと囁かれて唯が赤くなる。確かに女性達ばかりの浴室で、男一人が居るのを許されるというのは夢のようなシチュエーションだ。おまけに全員とほとんど密着したような状態で、柔らかい肌の感触が全身を包んでいるのだ。

「もう、唯ったらエッチなんだから」
「だから大好きでもあるんですけどね」

 身を寄せて胸を押し付ける麗と静香に、唯の鼓動はますます早くなる。二人の胸が圧迫して身体が後ろへと押されると、京と円の胸が柔らかいクッションになって唯を受け止める。八つの豊満すぎる膨らみは、彼の性的興奮を一気に増幅させてしまう。

「リラックスして下さいね」
「……ご奉仕します」

 雛菊と楓が唯の両足を軽く上げると、爆乳で挟み込む。人の足は普段あまり自分で触ることが無い分、かえって繊細だ。足の裏を女性の持つ柔らかな肌につけながら、足の甲を胸で挟みこまれて圧迫されるのは、驚異的な心地よさだ。唯は興奮で思わず溜息を漏らす。

「ボウヤ、もっとしてあげるわ」
「そうそう。たっぷり楽しんでもらわなくちゃね」

 百合の手が睾丸を包み、ミシェルの人差し指、中指そして親指が陰茎を挟む。百合はスベスベとした手の平で睾丸を優しく揉む。絶妙な力加減の袋への愛撫に、唯の背骨を駆け上るような強烈な刺激を受ける。
 ペニスにはミシェルだけでなく、他の女性達も指を伸ばす。何本もの細い指先に撫でられ、擦られ、弄られた唯のペニスは硬度を増し、湯の中で天井へ向かってそそり立つ。指で愛撫されて、唯は極楽へと導かれていく。

「気持ちいいでしょ」
「ほらほら、いっちゃいなよ」

 早苗に耳たぶを甘噛みされ、麗に胸をぐっと押し付けられる。前後左右から弾力のある爆乳に挟まれて、唯の体に興奮が熱となって溜まっていく。麗の胸は若さによる強い張りがあり、静香の胸はしっとりと吸い付くような滑らかさがあり、円の胸は柔らかい乳房と硬くなった乳首のコントラストが素晴らしく、京の胸は豊満ながらも早い心臓の鼓動が伝わってくる。

「あら、ピクピクしてますね」
「興奮しているのね」

 芽衣と由佳が嬉しそうに唯のシャフトに指を這わす。唯のことを知り尽くしたように絡みつく指は、繊細な動きで的確にペニスに刺激を与える。これだけでも耐えられないような気持ち良さなのに、百合の手が二つの玉を握って快感を蓄積させていく。下腹部全体が熱を帯びて、興奮が高まる。

「唯様、いかがですか?」
「気持ち良いでしょうか?」

 更に雛菊と楓が足を胸で挟んでくれているのだ。足というお世辞にも綺麗では無い部分を胸でパイズリしてもらい、奉仕してもらうことに唯はこの上ない悦びを感じた。柔らかな胸の脂肪で揉まれると、唯の心はゾクゾクしてしまう。二人とも、足という初めての部分を胸に挟んでいるのに、懸命に唯を楽しませようと胸をぎこちなくぐっと寄せる。

「あ、ああっ……あ……」

 快楽の奉仕を受けつつも十分間は耐えていた唯だが、そろそろ我慢も限界にさしかかって来た。唯の快感がピークに達したと分かった女性達は、それぞれの動きを強める。

「ほらほら、いっちゃいなさい」
「幾らでも出していいのよ」
「あうっ、出る」

 胸を潰れるくらいぎゅーっと体に押し付ける麗と京の言葉に、唯の身体が勝手に反応した。

びゅる、びゅる、びゅるるるる

 湯船の中に白濁液が漏れでて、塊になって浮く。硬いペニスは芽衣、由佳、ミシェルの指に包まれたまま、大量に精を湯の中に吐き出す。

「あ、何だかいつもと違うね、これ」
「タンパク質が固まってるからかな」

 白い塊を指で器用に絡めて由佳がお湯から掬い出す。ミシェルが言うように普段より粘り気があり、指にべったりと張り付く感じだ。

「確かに……いつもとは違った味がするわ」

 同じように湯船から精液を取り出した百合が、指を舐めながら感想を述べる。

「あ、ずるい。私も私も」
「面白そう、舐めてみよう」

 百合に続いて、何人もの美女がこぞって唯の精液にたかっていく。唯には到底美味しいものには思えないのだが、本人達に言わせると舐めて味わうだけで興奮するという。一種の媚薬としての効果なのだろう。唯の精液なら舐めても美味しいと言う。

「唯様、どうでした? 随分と気持ち良さそうでしたけど」
「うん、確かに気持ち良かったよ……」

 力を抜いて寄り掛かる唯に、円がクスクス笑いながら囁く。唯の表情は呆けた感じで、愉悦に浸っているようだった。

「もっとしたい……皆の中に一杯出したい」

 唯の静かな言葉に、円は目を瞬かせる。珍しく唯がかなり欲情しているのだ。普段はもっと余裕たっぷりに円達をリードして、楽しませている唯が素直に欲望をさらけ出している。

「いいですよ。幾らでもして下さい」

 円は唯に向かって、明るい笑顔で応える。少年が常より興奮しているというのは、唯の下僕としても恋人の一人としても嬉しいことだった。

「皆、お尻出して。エッチしたくなっちゃった」
「そうなんだ、嬉しい」
「たっぷりして下さい」

 唯の命令に、早苗とミシェルが黄色い歓声をあげる。配下達はいそいそと浴槽のふちに体を預けて、丸みを帯びた尻を突き出す。かなりすし詰めでお互いにきついが、何とか十一人が並ぶことができた。美女の尻がこれだけ並んでいるのは圧巻だ。

「それじゃ、順番に行くよ」

 一番初めに唯が選んだのは円だった。彼女のなだらかな肩に手をかけると、唯はいきなり突きこんだ。

「ひゃん……唯さま、いきなりすぎますよー」

 急激な挿入に円は軽く苦笑する。普段とは違い、唯はよっぽど切羽詰っているようだった。それでも既に濡れていた膣内は唯の分身を受け止め、優しく包み込む。

「ごめん、でも……我慢できない」
「あんっ……ふあっ、ああっ」

 唯が動き始めると、円は甘いソプラノで喘ぎはじめる。円にとって愛する少年の挿入はいつだって心地よく、堪らなく気持ちいい。膣壁の凹凸を陰茎のカリ首が擦るたび、膣から熱が広がり甘え声をあげてしまう。

「あ、あふっ……ひゃん、いいです……唯さま、唯さまー」

 いつものように、このまま快楽の天国に連れていかれるのを円は確信していた。だがそれはあっさり裏切られる。

「円さん、大好き……」
「私もです……やんっ、あんっ、ふあっ……唯さまの言葉、感じちゃう」
「円さん、好き、可愛いから好き、大好き、愛してる」
「あ、唯さま……ひああああああっ、そ、そんな、ひゃああああああん」

 唯の愛がこもった囁きの連続に、円は悶絶する。身体がビクビク震え、恐ろしいまでの刺激に目をフラッシュがたかれたようにチカチカしてしまう。甘い天国から、快感の地獄に円は叩き落された。

「好き、好き、円さんのことが好き。心から愛してる」
「やああああああぁ、ひゃっ、あっ、わ、私も愛してる。い、一生お仕えします、しちゃう、しちゃうの……やああああ、言わないで、もう」
「好きだよ」
「きゃあああああぁっ」

 絶叫をあげる円の耳元で唯は愛の言葉を吹き込み続ける。円はあまりの衝撃に自分がイっているのか、感じているのかわからない。ただ強い麻薬にも似た快楽に身体が揺さぶられ続けている。

「ひあっ、ああっ、ふあぁん、あくっ、いやあっっ!」

 唯のペニスを何度も円のヴァギナは痙攣したように締め上げる。ぎゅーっと膣壁が陰茎を握りこむ度に、少年は円の体がイクのを感じていた。

「ちょ、ちょっとこれって……」
「今日の唯様ってハイテンションね」

 狂ったように泣き喚く円の様子に怯える麗に、楓が冷静に返答する。

「それじゃ、次は……」

 円の気がおかしくなる前に唯は彼女を解放して、ペニスを抜き取る。

「早苗さん、よろしくお願いします」
「え、えっと……ボクなの!?」

 てっきり時計回りで唯が来ると思っていた早苗は、円の左に居たので最後だと思っていた。早苗が心の準備を済ませる僅かな時間も与えず、唯は彼女に圧し掛かる。

「ひゃあん……唯くん……」

 早苗の若々しい膣内に唯の亀頭がズブリと沈みこむ。愛液で濡れた膣はいとも容易く肉棒を飲み込んだ。

「う、ああっ、あんっ……ゆ、唯くん!」

 ペニスで一回ぐるりとヴァギナをかき回してから、唯は腰を振り始めた。グチョグチョと重く湿った音が響き、早苗の腿へと愛液がどろりと垂れる。

「ゆ、唯くん……その、あんまり激しくしないで。ああんっ、ボク凄い感じちゃってるから」
「もっと感じて。早苗さん、早苗さん……愛してる」
「ひゃん!」
「大好き、好き、好き、好き、好き……」
「いやああああああぁぁぁっ!」

 唯が放つ愛の言霊に早苗が絶叫する。腰を一回突きこまれる度に「好き」と言われて、早苗は気が狂いそうなほどペニスで感じてしまう。子宮口にコツンと亀頭が当たるごとに感じる衝撃に、身体が壊れてしまうような錯覚を覚える。

「やっ、や、いやいやいや、ダメだよぉ……ぼ、ボクもうダメぇぇぇぇ!」

 あっという間に限界に達して、早苗は体を一気に強張らせる。反り返った身体は筋肉が収縮して、膣内も括約筋によって唯のシャフトを締め上げた。あまりにも急激なエクスタシーに早苗は酸欠に陥ったように口をパクパクと開け閉めして、必死に酸素を身体に取り込もうとする。

「次は芽衣さん」
「ゆ、唯様!?」

 早苗がイクのを振り返って見ていた芽衣はいきなりの指名に慌てふためく。芽衣は早苗のちょうど反対側で尻を湯から出していたのだが、まさか次が自分だとは思わなかった。

「芽衣さん、好きだよ……愛してる。とっても愛しい」
「やっ、唯さま……ふわあああああ、やっ、いやああああああ!」

 愛の言葉を聞きながら芽衣はペニスの槍に貫かれる。ズブリと沈み込んだ亀頭が奥に突き当たると、芽衣は自分でもわかるほど膣内がキュッと締まった。まるで身体がペニスに食いつきたいと言わんばかりだ。

「ひあ、ひゃっ、ふあっ……あ、あああああぁ、いやっ!」

 自分でも信じられないほどキツク締まるアソコの所為で、膣壁が亀頭とシャフトによって強烈に擦られる。ペニスが動く度に芽衣は全身が痺れるような感覚に襲われてしまう。股間が陰茎の摩擦を感じ取って、一気に熱くなる。

「芽衣さん、可愛い。いつも可愛いと思ってる」
「イク、イク、イクぅぅぅ。唯さま、愛してます……イクぅぅぅぅぅ!」

 芽衣が一番言われて弱い、かわいいという単語を聞いて一瞬で絶頂へと昇った。いつもより数段締め付ける膣があまりにもキツイので、唯は芽衣から自分の分身を引き抜く。ギュッと引き絞られた膣口から圧力で愛液がドロドロと垂れ、芽衣は全身をビクビクと震わせる。

「京さん」
「ちょ、ちょっと待って。そんな無理やり……ひっ!」

 背後からいきなり抱き締められて、京は逃げ場が無くなってしまう。陰唇をなぞった陰茎の先端は、膣口を探し当てるといとも容易く京の中へと潜り込む。

「あふっ……やっ、唯……やめて……わ、私まだ準備が……」
「だって京さんが好きだから、愛してるから我慢できなくて」
「ふ、ふああああああぁ。そ、そんなこと言わないで」
「京さんは僕のこと愛してる? 僕はとっても愛してる」
「やあああああっ、愛してる、愛してる。だから唯、もっとゆっくりして!」

 唯が放つ加減無しの愛情がこもった告白に、京は脳を焼かれるような高熱を感じる。あまりにも強い快感は、京には苦痛とも快楽とも取れない。少しでも唯のペニスから逃れようとする京の身体を抱き締め、唯は腰を振り続ける。

「うわぁん、やっ、やっ、あぐっ、ひああああああぁ」

 ペニスが身体を蹂躙する度に、京は気がおかしくなりそうな程に感じてしまう。涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにしながら泣き叫ぶ京を犯す唯の姿は、まるで幼子を折檻しているかのようだった。

「もう、許して、許して……あくぅぅぅぅぅう!」

 五分も挿入していないのに、京は意識がホワイトアウトしてしまう。そのまま意識を飛ばしてしまえば楽なのに、唯の強烈なストロークはすぐに京を快楽の渦へと引き戻す。

「あうっ、あふっ、あんっ……」

 京の身体が地上に引き上げられた魚のようにビクビクと跳ねるのを見て、唯はようやく陰茎を抜き出す。京の脳内は唯の愛しているという言葉で一杯になり、白濁した意識は現実と夢の中を行ったり来たりしてしまう。

「ん、もっと興奮したいな、僕。こうすればいいのかな?」
「ひあっ!」

 静香の尻を掴むと、唯は程よく熱く湿った膣内へとペニスを差し込む。子宮近くまで亀頭を侵入させ、ぐっと奥を圧迫する。

「ふあっ、ちょ、ちょっと唯くん!?」
「あうっ! 唯さま!?」

 唯は静香の両隣にいる由佳とミシェルの陰唇に指を這わすと、ヴァギナに二本づつ指を差し込んだ。二本の指を飲み込むと、熱を持った膣壁はさも嬉しそうに指を圧迫する。

「三人とも、一緒にしよう」

 唯は静香に腰を密着させながら、ゆっくりと腰を回転させ始める。由佳とミシェルに差し込んだ指もクニクニと動かし、指先で押して愛撫した。

「あふっ……唯さま……だ、ダメ……」
「あん、唯くん……そこ、そこ……」
「唯さま、凄くいい……じ、Gスポット当たってます」

 一人と性交し、二人を愛撫しているのに、唯は素晴らしいテクニックで三人の美女を喘がせていた。短い期間に数え切れないセックスをしていたため、その動きは熟練していると言っても過言ではない。

「ああっ、こんな……お、おかしくなる……ゆ、許して」
「唯くん……お姉さん、もう堪らないわ」
「ゆ、指だけでこんな……唯さまのテクニック、凄いのー!」

 唯とのセックスに、三者三様のよがり声を静香、由佳、ミシェルは奏でる。既に何度もセックスしているというのに、飽きるどころか回数をこなす度に更に感じるようになっているようだ。

「静香さん、好き。由佳さんも可愛い。ミシェルさんも大好き」
「ひあっ、ああっ!」
「ひゃあああぁん、唯くんダメぇ」
「ふあああぁ。きょ、強烈……た、耐えられない」

 唯の言葉に、三人は耐え切れずに悲鳴をあげる。ただでさえ感じているのに、心の奥まで響く愛情を告げられたのだ。心臓が大きく鼓動を刻み、身体の震えが止まらない。

「大好き、静香さんも由佳さんもミシェルさんも」
「ふわあああああっ!」
「ああっ、だめええええぇ」
「唯さま、ストップ、ストッ……あああああっ!」

 身体が壊れそうな程に快感が膨れ上がり、三人の美女はあまりにも苛烈な刺激に叫びにも似た声をあげた。由佳とミシェルは膣壁を指で擦られる度に、スイッチが入ったように何度も声を震わせる。静香はペニスで貫かれる衝撃に、普段の清楚さをかなぐり捨てて狂ったように大声で泣き喚く。

「きゃあああっ、い、くっ、あっ、あっ……も、もう我慢が……」
「わ、私も、お姉さん、もうだめぇぇぇぇえ!」
「あぁぁぁん、く、来るのぉぉ、き、きちゃうぅぅぅ!」

 挿入から五分もしないうちに静香、由佳、ミシェルは強烈なエクスタシーに押し上げられる。自分のペースや意思を無視してイカされるのは、気持ちいいを通り越して身体がバラバラにされるような感覚だ。

「うっ……僕もイクよ、イク」
「出してっ、唯さま、来てぇぇぇぇえ、中に、中に……」

ドビュ、ビュル……ビュシュッ、ビュク……ビュル、ビュッ、ビュッ

 静香の願いに応えて、唯は濃い精液を彼女の胎内へと吐き出す。そして唯はペニスを抜き取ると、続けて由佳の中に肉棒を突き込む。たっぷりと由佳の子宮へと精液を注ぎ込むと、最後にミシェルへとペニスを入れて残滓を垂れ流した。

「ああっ、熱い」
「ゆ、唯くんのが……お腹の中に溜まってる……」
「はぁん、唯さまのオチンチン……ピクピクって……」

 許容量を超えた快感にやられた三人は、ぐったりと浴槽へとずるずると崩れ落ちる。女達の膣から漏れ出た精液が湯に混ざり、白い塊になってお湯へと浮く。それぞれ意識が混濁しており、ブツブツと言葉になっていない声を口の中で呟いている。

「えっと、残ってるのは麗に楓さん、雛菊さん、それに百合さんかな?」

 振り向いた唯の目を見て、麗と雛菊が「ひっ!」と声を漏らす。愛しいはずの少年だが、その目は焦点を結んでいるのかわからないような瞳をしていた。

「唯さま、お、落ち着いて……」
「ごめん、落ち着かないんだ……まだ……物足りない」
「きゃあっ! 唯、ダメ、ダメ、やーん!」

 雛菊の制する言葉も無視して、唯は麗の手を掴むと身体を引き寄せる。麗の細い腰を掴むと、正面から幼い膣口を目掛けてずぶりと自分の肉棒を突き刺した。

「きゃんっ! ちょ、ちょっと唯……無理やりなんてダメだって」

 まだ成熟しているとは言いがたい膣内一杯に広がるペニスの感触に、麗は頬を赤くする。口とは裏腹に、心と身体は愛する主人と性交できる悦びで溢れていた。

「それじゃ、雛菊さんと楓さんもこっちに来て」
「は、はい」
「わかりました」

 唯の命令にガーディアンの中でも特に従順な二人は素直に唯へと近づく。唯は二人の腕を引っ張ると、自分に密着させる。

「や、やんっ! 唯さま!?」
「あんっ……」

 唯の手が雛菊と楓の背後に手を回し、尻を撫で回す。ソフトな感触で撫でられて、二人の美女は頬が紅潮する。

「あっ、あっ、やっ……唯、唯……唯……いいの」
「はぁはぁ……」
「ん、んんっ、んう」

 挿入されている麗は小刻みにペニスで突き上げられ、彼女はぎゅっと唯にしがみつく。浅い子宮口を突き上げられる度に腹部に振動が伝わり、快感の汗が吹き出てしまう。尻をお触りされている雛菊と楓はうっとりと唯の愛撫を受ける。手つきは優しく、じわりと臀部に広がる唯の温かみを存分に楽しむ。

「三人とも、とってもエッチだね。そんな麗も雛菊さんも楓さんも、大好き」
「あくっ……ふわあああああぁ」
「ゆ、唯さま……あああああああぁ。す、凄い」
「いいっ、いいいいいの! これ、これが欲しかったんです!」

 唯の囁きに三人は悶絶する。麗は全力で唯にしがみつき、背中に思わず爪を立ててしまう。愛の言葉と共に膣内へと指を入れられた雛菊と楓は、風呂場に響き渡る声で快感を訴える。雛菊は腰を振って必死に唯の指から逃れようとするが、膣内で一番感じるところを弄る唯の二本指はぴたりとくっついて離れない。動けば動くほど指が擦れてしまい、雛菊はますます悲鳴をあげる。逆に楓は腰を固定してたっぷりと唯の愛撫を味わう。目も眩むような強烈な快感だが、あえて全身で受け止めて脳がおかしくなるような刺激に身を委ねる。

「ゆ、唯……あ、ぐぐっ、くはっ……」
「ひ、ひぃぃぃぃい。唯さまぁ、おかしくなるぅぅぅ」
「ふわあ……やあああああん」

 三人の声がソプラノのコントラストを作る。唯の挿入と愛撫で美女達は身体がおかしくなりそうだ。途方も無く気持ちいいのだが、恐ろしく苦痛でもある。快楽地獄を味わう三人は全身を汗まみれにして唯に抱きついて離れない。

「うっ……イクよ、うっ、くっ」
「ああああああぁ、な、中で出していいから……やぁぁぁぁあ!」

ビュク、ビュク、ビュク、ビュルルルル

 麗の中へと精液を放出すると同時に麗も絶頂へと導かれる。既に限界以上に刺激を感じていた体は、耐え切れずにガクガクと痙攣してしまう。

「ふわああああ、な、何か来る……いやあああああ!」
「あっ、あっ、出します、出します。出るぅぅぅぅぅう!」

 雛菊と楓がイクと同時に股間から透明な液体が噴き出した。お湯の中に出したとは言え、おしっこを漏らしたような感覚に雛菊は羞恥心で気が狂いそうだ。楓は初めての潮吹きの感触に酔いしれ、そのまま意識がブラックアウトしてしまう。

「も、もうダメぇ……」
「いや、いや、いやぁ……」
「あくっ……ふぁ……」

 湯船に頭まで沈みこみそうになる三人を慌てて支え、唯はそっと浴槽の縁に寄りかからせてやる。麗と楓は水中でも溺れるようなことは無いだろうが、幾らなんでも女性二人をお湯に沈めるわけにはいかない。

「最後は私かしら、ボウヤ?」

 唯の正面から湯をかき分け、百合が近づく。妖艶に微笑むその顔は落ち着き払っているように見える。だが唯はその余裕たっぷりである熟女の目に、微かに浮かぶ怯えを見てとっていた。

「うん、最後まで待たせてごめんね」
「うふふ、私は平気だけど……ボウヤはどうなのかしら?」
「百合さんはたっぷりと可愛がってあげたかったから。好きだよ、百合さん」
「あ、く、くうっ……あ、ありがとう……」

 唯の言霊にも、百合は眉をぎゅっと寄せて耐え切る。彼女なりのプライドだろうか。だが、そんな百合に容赦なく唯は愛を伝えてくる。

「大好き、好き、好きなんだよ」
「ひっ、あ、あふっ、ふっ……ひぃ……は、はぁはぁ」

 唯の手がメロンのようにたわわな百合の胸を掴むと、自分の指を思いっきり噛んでしまう。血が出そうな程に指を咥えても、身体を駆け巡る快感に耐えられそうにない。

「愛してる、好き……百合さん、可愛いよ」
「ふああああっ、あっ、ひゃ……ぼ、ぼうや……唯ぃぃぃぃい!」

 胸をぐりぐりと押し潰され、こね回される度に百合は頭を掻き混ぜられるような錯覚を受けてしまう。乳しか揉まれてないのに、全身を触られているように感じる。先ほどまでの余裕やプライドなどは微塵も無く、百合は止め処なく愛液で股の間にある花弁を濡らす。

「ボウヤ……はぁはぁ……わ、私もう……ひふぁあぁあああああ!」

 息も絶え絶えになっている百合を押さえつけ、唯がペニスを挿入する。ドロドロに濡れきった膣はスムーズに唯を迎え入れるが、百合の精神は耐え切れない。

「あ、ああっ、ひゃっ、ああああああぁっ! あああっ、あっ、いやあああああっ!」

 百合の叫びを無視して、唯は一気にペースを上げて腰を振った。身体がカッと熱くなり、百合は瞬間的に絶頂を迎える。

「イクぅぅぅぅ……またイクぅぅぅぅ……いや、また来るぅぅぅう……きゃあああああ!」

 初心な小娘のような声をあげながら、百合は悶え狂う。すっかり浅くなった湯の中で音を立て、身体が何度も大きく反り返る。

「く、苦しいくらい、いいのぉぉぉぉ、ぼ、ボウヤの最高なのぉぉ、いやあああ!」

 纏めていた髪がはらりと崩れて、百合の長い髪が湯に浸かる。既に何度も体験しているのに、唯とのセックスは頭がおかしくなりそうなくらいの快感だ。百合の括約筋が自分の物とは思えないくらい収縮を繰り返し、唯のペニスを断続的に締め付ける。

「ひああああ、狂っちゃう。ボウヤのオチンチン、凄いの、大好きぃ!」
「僕も百合さんの中、とっても好きだよ」
「ひゃ、ひゃん、言わないで……は、恥ずかしくて、死んじゃうぅぅ!」

 軽い絶頂を繰り返し、百合の脳に快感のパルスが恐ろしいほどの速さで駆け巡る。軽い絶頂なら百合は耐えることが出来るが、その間隔が一分以下で繰り返されたら話は別だ。大きな嬌声をあげながら、ひたすら体を捩るしかない。

「出すよ、百合さん」

ビュル、ビュクッ、ビュッ、ビュッ

「ひいいいっ、ひゃああああああっ、熱い、熱いの!」

 声が涸れそうなほど声を絞り出して、百合は湯船の中に崩れ落ちる。膣内が精液で染まる感覚に全身がエクスタシーの頂点へと立つ。許容量以上の絶頂に、魂が吹き飛ばされるような感覚だったくらいだ。湯の中にグラマーな裸体が沈んで、百合の僅かに残っていた意識は一気に暗転した。






「いや、ごめんね……本当に」
「別にいいですよ。気持ち良かったですし」

 静香の背中をスポンジで洗いながら唯が謝罪する。
 あれから三時間、情事が終わったために今は全員が身を清めている。順番に女性を洗っているのは唯だ。

「まったく……唯の言うとおり、やり過ぎよ」

 身体を洗ってもらう順番待ちをしている京が溜息をつく。
 唯は百合を抱いた後も全員と交わり続けた。恐ろしいことに気絶している女性にも唯は襲い掛かり、唯に挿入されて目を覚ました人間が何人も居た。以前に激怒したときにやり過ぎたと反省したのに、教訓はあまり生かせていないようだ。

「まあ、いいじゃない。楽しめたんだから」

 風呂場のタイルに座りながらシャワーを浴びているミシェルがクスクスと笑うと、京はほんのりと頬を赤く染める。
 確かに二回目は最初のような激しいセックスではなく、優しく抱かれたために全員が満足したのは確かだった。だが麗は頬を膨らませている。

「せっかく今日は何処かに行こうと思ってたのに……今から準備したら、三時過ぎよ」
「それなら、一人だけ仲間外れで良かったの?」
「……それは絶対に嫌」

 不平をぶつける麗に由佳が突っ込むと、彼女は困ったような表情を見せる。麗はいつまでも素直になれないようだ。

「あん……唯さま……」

 唯に胸をスポンジで洗われ、静香は微かに甘えるような声をあげる。セックスをした後でまたすぐにやりたいというわけではないが、全員が身体を洗うという名目で唯とのペッティングを軽く楽しむ予定だった。

「これはまだ時間がかかりそうね」
「そうね。まあ、気長に待ちましょう」

 イチャイチャしている静香と唯を見ながら、円と芽衣はぬるいお湯に肩まで浸かった。





「どうも、こんにちはー」

 唯が古物店の引き戸を開け、中へと足を踏み入れる。店の奥にはいつものように飯田が机の前に座っている。

「麻生様、お待ちしておりました」

 今日は珍しく飯田から唯への携帯へと連絡があった。普段はこんなことは無いので、携帯のメールに書かれた文面を見た唯はすぐにマンションから古物店へとやって来ていた。三日前にもこの場に寄ったというのに、連絡が来たのには何か理由があるはずだ。それ以前に、飯田から来て欲しいというメールが来るなど初めてのことだった。
 飯田は唯が近づくと、机の上で腕を組んでから口を開いた。

「麻生様はガーディアン達が何故東京へと姿を現したか、ご存知ですか?」
「えっと……」

 飯田の思わぬ質問に、唯は僅かだが頭が真っ白になった。しかしすぐに、芽衣に伝えられた情報を頭の中で何とか整理しようとする。

「確か……悪魔と戦うためだよね。その時代に魔物が増えたところに転生する……これであってます?」
「ええ、その通りです。古代ローマの末期ぐらいからでしょうか……我々悪魔達と抗争を始めたのは」

 ふっと遠い目つきをする飯田の瞳は常人より遥かに深い色彩だった。このような目をする人物を唯はガーディアンの女性達以外に見たことが無い。

「本来は在来の魔物を退治するために生み出されたガーディアンは、すぐに我々奈落から現れた悪魔とも戦い始めました。そのため、悪魔達がやって来るゲートの位置へと常に転生し、戦い続けています」
「それは聞いたことがある」

 芽衣や円などに何度か質問し、唯はガーディアン達のほとんどがここ東京に何で日本人として転生したのか知っていた。

「そう……人々を最も堕落させられる可能性が高いここ東京を目標に、今度のゲートは開きました」
「そうなんだ……最も堕落させられる場所なのか、この東京が……」
「麻生様……ゲートは点在しているのですが、一つ巨大なゲートが数日前に開き始めました。ここ数百年で最大規模です」
「数百年で最大規模?」
「そうです。数百、数千の悪魔が通るに足るゲートです。もしこれを放置すれば東京は退廃し、魔都と化すでしょう」

 飯田の警告に唯は思わず生唾を飲み込む。

「師団長クラスの悪魔も姿を現すかもしれません。酷い戦いになるかもしれません」

 飯田は何枚かの資料を唯に渡す。

「私は残念ながら何も出来ません。勝利は麻生様とガーディアンの皆様次第でしょう。ですが半田を退けた麻生様なら、きっと勝てると信じています。どうぞご武運を」

 飯田はそれだけ言うと、机の上に広げた新聞紙に目を落とした。話は終わったらしい。早く行けと暗に告げていると理解した唯はきびすを返して出口へと向かう。入り口で一度、飯田へとペコリとお辞儀した唯は自分のマンションへと駆け出した。






「これは凄い妖気ね……」

 ワゴン車から降りた京がニヤリと笑う。その視線は街から外れた場所に建てられた倉庫に向けられている。いつもと違い、京はケプラーベストをバイクスーツの上から着込み、手にはごついグローブをしていた。

「確かにこれは尋常じゃない」

 剣道の胴着に身を包んだ雛菊が緊張した表情を見せる。
 二台のワゴン車から降り立った女性達は一様に普段とは違った真剣な顔をしていた。芽衣、由佳、ミシェルは普段のスーツとは違い動きやすそうなタイトな服に身を包み、早苗、楓、麗も運動着だ。静香は巫女の衣装で、百合は雛菊と似たような胴着を着込んでいた。そして円は網タイツのような物の上にノースリーブの和服と短パンという、忍び装束に身を包んでいる。

「悪魔退治のことはド素人の僕が言うことじゃないかもしれないけど……準備はいい?」
「ええ、いつでも大丈夫です。どうぞ、ご命令を」

 ワゴン車から最後に降り立った唯に対して、芽衣がコクリと頷く。全員が唯に視線を注ぎ、じっと見つめる。

「それじゃ、予定通り……正面突破で突撃!」

 あらかじめ決められた通り、全員が倉庫の入り口へと駆け出す。ここに来る前の話し合いで、巨大なゲートに対しては小細工が通じないという結論に達したガーディアン達は力押しで行くことに決めていた。唯を最後に、全員が倉庫の正面へと到達する。

「京さん!」
「言われなくてもわかってるわよ」

 人間の身長ほどもある爪を血で作り出し、京は一気に振り下ろした。鋭い音が響き、巨大なシャッターに大穴が開く。すぐさまその穴から中へと十二人の戦士が飛び込む。だが全員の動きが思わず止まった。

「なっ!?」

 巨大な倉庫の中は悪魔達でぎっしりと詰まっていた。角の生えた標準的な悪魔から、獣に近い悪魔まで多種多様なものが大勢居る。その数は数えきれないほどだが、千は下らないと思われた。特筆すべきは正面奥のやや右に居る巨大な悪魔だった。牛のような頭を持ち、蝙蝠の翼を持つその悪魔は身長だけで三階建ての建物に匹敵する大きさだ。そして、その横にはそれと同じくらい大きなアーチがあり、青い水面のようなものがアーチの内に広がっていた。
 ガーディアン達はあまりにも多い悪魔達の数に動きが止まってしまったが、それは敵も同じだった。突然の乱入者に凍りついたように固まっている。ほんの一瞬の静寂だったが、それを破ったのは唯だった。

「麗、ミシェルさん、由佳さん、百合さん!」
「はいっ!」

 唯が出した渾身の叫びに、四人は両手を前に突き出し力を放った。ミシェルの電光が直線上に伸び、由佳の火炎が扇状に広がり、麗の放った二対の水流が敵を切り裂き、百合の衝撃が正面の敵を吹き飛ばした。

「潰せぇ!」

 低い声で巨大な悪魔が叫び、悪魔達もガーディアン達へと殺到した。たちまちガーディアンの周囲は乱戦になった。

「りゃああああ!」
「はぁぁぁぁぁ!」

 雛菊と京の両者は正面から悪魔の群れへと飛び込む。二人の姿はあっという間に悪魔の集団に飲み込まれ、唯の視界から消える。

「たあっ!」

 二つの剣を柄で繋げた巨大な剣を振り、雛菊が周囲の敵をなぎ倒す。剣は雛菊の体を中心に風車の如く回転し、数の圧力で押そうとした悪魔達はたちまち真っ二つに倒されていく。

「ていやーっ!」

 血を巨大な鎌に変えた京は芝でも刈るように、一気に十数体の悪魔をなぎ倒す。鎌は京の意思で自在に大きさを変え、いきなり伸びる刃が相手を襲う。凄まじい速さで振り回される血鎌に、悪魔達は手も足も出ずに両断されていく。

「楓さん、上を!」
「了解……」

 唯の命令に楓は抑揚の無い声で答えると、地を蹴って空中へと飛び上がった。空中を羽ばたく翼を持った悪魔達の群れの真ん中へと風を纏って突撃する。目を一旦閉じて集中した彼女は、力を解放して強烈な風の圧力で全員を壁へと叩きつけた。

「はぁぁぁ!」

 芽衣が片手から横なぎに白い光線を放つと、殺到してきた悪魔達が凍りつく。氷の彫像と化した悪魔達は駆けてきた勢いのまま倒れると、白い氷の塊と化してバラバラに砕け散る。

「食らいなさい!」
「やああああっ!」

 静香が振り上げた両拳を振り下ろすと、何十体もの悪魔が何かに踏み潰されたかのようにべちゃりと潰れた。早苗のかけ声と共にコンクリートが割れると、人間ほどの大きさで作られた石の円錐が多数飛び出し、悪魔達を串刺しにする。
 ガーディアン達の力は圧倒的だった。小型の竜巻を楓が起こすと、百体以上の悪魔が風の渦にバラバラにされる。影から影を飛び、漆黒の刃で相手を背後から相手を突き刺す円に、悪魔達は次々と血を流して倒れていく。水道管を破壊して水を引き出した麗は、豊富な水を使った水圧カッターを放って思うがままに敵を裁断していく。割れたコンクリートを重力で操り、敵の頭上へと叩きつける静香になす術も無く悪魔は潰されていく。唯も強烈な音撃を敵に叩き込み、動きが止まった相手をミシェルの放電や芽衣の氷槍が襲う。
 しかしパックリと開いたゲートからは次から次へと悪魔達が飛び出してくる。まるで濁流の如く流れ込んでくる悪魔達が作る数の圧力に、ガーディアン達はゲートに近づくことさえできない。

「潰せ、潰せ、潰せぇ!」
「あいつ、あれしか言えないのかしら?」

 ひっきりなしに同じ命令を言う巨大な悪魔に、ミシェルが眉を顰める。ガーディアン達はその悪魔が師団長クラスの強力な悪魔だと知っていた。頭はさして良さそうでは無いが、力があることは見ただけでわかる。

「ならば、これでどうかしら!」

 百合が放った渾身の衝撃波が悪魔の波を真っ二つに裂き、ゲートへと迫る。すると巨大な悪魔は炎のムチを放ち、衝撃波に叩きつける。巨大な爆音が上がり、二つの力は相殺した。

「くくく、残念だったな! 今まで散々苦渋を舐めさせてくれた恨み、今こそ晴らさせてもらう。ここが貴様達の墓場だ!」
「臭い台詞言ってるんじゃないわよ!」

 悪魔の言葉に麗は怒りを剥き出しにして叫ぶ。だが彼女の水流も、何十メートルも距離があると防がれてしまうのが目に見えている。悪魔のリーダーやゲートに手を出せず、ガーディアン達は間近の悪魔達を掃討し続けることしかできなかった。常人とは違うとは言え、このままだとガーディアン達の力が先に力が尽きるのが目に見えている。

「ううっ」

 戦いが始まり両者の力が均衡してから三十分、まずは唯が片膝をついた。

「唯様!」
「だ、大丈夫……」

 駆け寄ろうとする芽衣を唯は片手で制する。一番に体力が尽きたのはやはり唯だった。超常的な能力を授かったとは言え、元は普通の人間だったのだ、無理もない。荒く息を吐く唯は汗まみれになっている。既に音を操る能力は残り一回という程度まで憔悴していた。

「はぁはぁ……くそっ」

 情事のときとは違い、スタミナに限界がある唯は疲労のために身動きが取れない。主とはいえ、疲労に喘ぐ小僧の姿を見て、師団長は愉快そうに哄笑する。

「ふはははは、幾らでも代わりは居る。せいぜい足掻くがいい!」

 悪魔の言葉にガーディアン達は歯噛みする。雑魚を幾ら倒しても意味は無いのだ。ゲートを破壊し、高らかに笑う悪魔に一撃食らわせてやりたいが、目の前に居る敵を倒すのに精一杯だ。愛しい少年が苦しそうにしているのに、駆け寄ることさえできない。

「くっ、どうにもならないの!?」
「考えてる……もう少し待ってよ」
「もう少しってどれくらいよ?」

 苛つきながら火球を操り片端から敵を焼き尽くす由佳に、悪魔の影を実体化して互いに戦わせている円が叫び返す。全員が持てる限りの技を尽くすが、打開策には至らない。これだけの数に突撃されると、力を溜めて大技を放つことも出来ない。

「ごめん、みんな……頑張ってとしか……」

 自分の無力さに唯が小声で嘆く。万事休すと思われたそのとき、

「待てい!」

 倉庫の中に響き渡るようなソプラノの大音声が響く。天井の梁になっている鉄骨の間から、ゆっくりと何者かが歩み出す。

「あれってもしかして……」
「……バカがやって来た」

 早苗の驚きの言葉に、頭痛がするのか麗はこめかみを抑える。

「光あるところ、闇あり。闇あるところ、光あり。いつの世にも悪が絶えることは無い」

 姿を現したその女は、西洋系の理知的な整った顔立ちをしている。大きく目立つのはショートに纏めた見事な白銀のプラチナブロンドだ。その髪の色は見事と言うしかない。次に目につくのはジャケットの上からでもわかる、組んだ腕からはみ出た巨大な胸だろう。均整の取れた体だけに、その巨大すぎる胸が一際目立つ。

「だが闇は決して光を阻むことはできない。それと同様に悪が正義に勝った試しは無い! 悪は必ず滅ぶのだ」

 キリッとした顔で叫ぶその姿は確かに決まっている。だがガーディアン達は呆れたようにポカンと見たり、頭を横に振ったり、溜息をついている。

「な、何者だ!?」

 よせばいいのに巨大な悪魔はプラチナブランドの美女を誰何(すいか)する。手下達も同様に固まって頭上を見ているが、折角の好機にもガーディアン達は動こうとしない。

「ガーディアン最後の戦士、光輝きし者、エリザヴェータ・アンドルス・イヴァノフ!」

 何がどうなっているかはわからないが、首元から黒いマスクが自動的に引き上がる。エリザヴェータは鉄骨を蹴り、地上へと飛び降りた。

「行くぞ、悪魔達! 貴様らに相応しい奈落へと叩き落としてやる!」

 見事にコンクリートの床へと着地したエリザヴェータの姿が、一瞬でかき消えた。

「なっ、何処だ!?」

 相手の姿を見失った悪魔がうろたえる中、エリザヴェータが再びその姿を現す。移動した彼女の背後に居た悪魔達がバタバタと倒れ、塵の塊と化して消えていく。

「まったく登場が派手ね」
「隠れていたなら、こっそりあいつを倒してくれてもいいのに……」

 疲れたような溜息を吐く百合に、由佳が同調する。これはガーディアンの総意だろう。

「全く、状況というのを考えて欲しいわ」
「格好いい……」
「えっ、唯様!?」

 芽衣の言葉とは逆に唯は感動している。テレビでしか見たことの無いような、正義のヒロインが登場したのだから、少年としては興奮してしまう。目を輝かせる主に、芽衣、由佳、ミシェル、早苗、百合、麗は「本気?」と言わんばかりに彼を見る。

「何をしている? 一気に決めるぞ」
「言われなくったって……」
「やってやるわよ」

 エリザヴェータに叫び返した京が地面に拳を叩きつけると共に、地を割って巨大な赤い柱が何本も吹き上がる。京の血で出来た紅の柱は、飲み込まれた悪魔達を一瞬で粉砕した。雛菊の服を突き破り、細身の剣が幾本も突き出し、一気に伸びる。剣は途中で幾重にも分かれ、剣の大樹となって倉庫全体を覆った。逃げ場も少なく、次々と悪魔達が刃の枝に切り刻まれる。

「これで……」
「終わりよ!」

 エリザヴェータの登場で稼いだ時間を使って、由佳、麗、早苗、楓、ミシェルが溜めていた力を解放する。赤、青、黄色の閃光と巨大な地割れ、そして尋常では無い突風が吹きすさぶ。

「くそぉぉぉぉ!」

 だが五人の強烈な攻撃を師団長は球状に広がる紫のバリアで包み、ゲートを死守しようとする。

「無駄な足掻きは寄せ。 神魔覆滅、奈落に去るが良い!」

 エリザヴェータが放った強烈な光、レーザーが直撃して六人の力がバリアを突き破った。六つに束ねられたエネルギーがゲートに吸い込まれると、異次元に通じる道を作っていたアーチにひびが入る。

「これで終わりね」

 静香が手の平の上に作り出した黒球が、彼女の意思に導かれるようにゲートを通って奈落へと放たれる。それから五秒が経過すると、轟音を立ててゲートが崩れた。何かに吸い込まれるかの如く、バリバリと音を立ててアーチが縮んでいく。静香が作り出したマイクロブラックホールが異次元でフルパワーを放ったに違いない。

「ば、バカな……」
「でりゃああああああ!」
「はあああああああっ!」

 呆然とする師団長へと、剣と血の結界を駆け抜けて唯と百合が肉薄する。バリアを張ったために防御結界が消えた無防備な悪魔の足に、両者は右の拳を叩き込んだ。最後に微かに残った力を使った唯のフルパワーの音撃と、最大までエネルギーを溜め込んだ百合の衝撃が叩き込まれて、悪魔の足が吹き飛んだ。

「ぐ、ぐああああああっ!」

 倒れ込む悪魔を百合が華麗にかわす。唯も身を投げ出して倒れつつも、何とか悪魔の巨体を避けることができた。そして顔をあげた悪魔の巨大な額に芽衣がぴったりと手の平をつける。

「とっとと消えなさい。目障りなの……」

 冷酷な目をした芽衣が呟いた一言の後、奈落でも相当な力を持った悪魔は瞬く間に氷ついた。

「サヨウナラ」

 後ろを向いた芽衣が指をパチンと鳴らすと、氷塊はバラバラに砕け散った。氷の粒子まで粉々になった悪魔は、風に攫われたかのようにかき消えた。

「お、終わった……」

 唯は立ち上がろうとしたが力が入らずに尻もちをつく。そして体全体を使い苦しそうに呼吸する。心臓が恐ろしく速く鼓動を刻み、胸が痛いほどだ。少年は既に限界以上の力を使っていた。倒された悪魔達は既に塵へと変わり、後には穴だらけになった倉庫だけが激闘の後を物語っている。どうやら戦いに勝ったようだ。

「唯様、大丈夫ですか?」
「は、はぁはぁ……ちょ、ちょっと大丈夫じゃないかも。もう少し待って」

 駆けてきた楓のフラットな声に心配するトーンを僅かに感じて、唯は苦しいながらも笑顔を作る。確かに何かをやり遂げた達成感に唯は満足していたので、自然に笑みが出てきた。

「唯様……」

 芽衣の声に、呼吸を整えつつ楓と百合の肩を借りて唯がヨロヨロと立ち上がる。既にガーディアン全員が彼の前に集まっていた。皆を代表して芽衣が唯の前へと立つ。

「最後のガーディアンであるエリザヴェータが来たことにより、ガーディアン全員が揃いました。我が主、この身を賭して忠誠を誓います」

 芽衣の言葉と共に、美女達が一斉に片膝をついて頭を垂れる。その姿は確かに古代から戦い続けた忠実な戦士だった。

「我が下僕達よ。我が剣、我が盾、我が力となりて、忠誠を尽くせ。その代償として、限りない愛を捧げよう」

 唯の意思に反して、スラスラと言葉が口から出た。この台詞が何処から出てきたのかと感じる前に、唯とガーディアン達の姿が光に包まれる。

 主とガーディアンの契約が今ここに正式に結ばれた。






「ああ、やだやだ。クサイったらありゃしない」

 契約が完了すると、真っ先に麗が立ち上がり、不機嫌そうに不平を漏らす。

「こんなことするのなんて千年ぶりよ。まったく、またやることになるなんて思ってもいなかったわ」
「麗、言葉が過ぎるぞ。これは我々の古代からのしきたりだ」
「あのね、最後にノコノコやってきて、そんなに威張らないでよ」

 ビシッと窘めるエリザヴェータに、麗はうんざりしたように反論する。

「全く、出てくるチャンスを窺っていたとしか思えないわ」
「そんなことは無い。これでも場所を特定してから、真っ直ぐここに来たんだぞ」

 疑わしそうに見る円にも、エリザヴェータは真剣な表情で否定する。

「見てたんでしょ?」
「ほんの十五分程だ。しばらくは様子を窺わないとな」
「やっぱり、見てたんじゃない」

 悪びれないエリザヴェータに、円はため息をつく。ガーディアン全員が彼女の昔からの性格を知っている。いきなり登場しては、美味しいところを攫っていくことが多いのだ。

「えっと、彼女が……」
「はい、ガーディアン最後の一人、エリザヴェータです」

 耳打ちする唯に、雛菊はエリザヴェータを改めて紹介する。

「エリザヴェータ・アンドルス・イヴァノフです。主殿のために馳せ参じました」
「あ、唯でいいですよ。どうも、ありがとうございます。助かりました」

 唯の右手をひしっと両手で握るエリザヴェータに、少年はドキドキしてしまう。流暢な日本語を喋っているとは言え、エリザヴェータは外国人なので緊張しているのかもしれない。

「唯殿の力、とくと拝見させて頂きました。このような素晴らしい力をお持ちの上、人格者とお見受けします」
「じ、人格者だなんて……」
「謙遜なさらなくて結構です。千年ぶりにガーディアン全員が揃って、正式な契約が結ばれたのです。これは重要なことです」

 心底感動しているようなエリザヴェータの言葉に、唯は頬を赤くする。ガーディアン全員にちやほやされているとは言え、そこまで自信家ではない唯は照れて仕方ない。

「ふふふ、ボウヤの素晴らしい力はあれだけじゃないからね」
「まだ、何かあるのか?」
「すぐに知ることになるわよ」

 何かを含んだような物言いをする百合と由佳に、エリザヴェータは首を捻る。エリザヴェータにしてみれば、唯が音の力を操るだけでも凄いことなのだ。更に自らの危険を顧みず、ガーディアンと共に戦いに参加する唯の姿は孤高の正義を貫くエリザヴェータの心をうった。唯が戦っている姿が興味深くて、ついつい戦いに参加しそびれたのはそういう経緯がある。

「あ、悪いんだけど、そろそろ引き上げていいかな? 積もる話もあると思うんだけど、身体がちょっとダルくて……」
「これは失礼しました。すぐに車にお連れしますわ」

 唯に芽衣は慌てて肩を貸す。笑顔を取り繕っているが、元は常人の彼にとって相当に辛いはずだ。

「大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫。今回は前みたいに倒れたりしないよ」
「無理しないでよね」

 芽衣とは反対側に京がついて身体を支えてもらい、唯は車へと連れて行かれた。その後にガーディアン達も続く。
 こうして巨大ゲートの破壊は、エリザヴェータの参戦もあって見事に完遂された。





「しっかし……広いなー」

 浴槽に浸かりながら、改めて唯が感嘆の声を出す。戦いが空けてから一夜、学校をサボって唯は入浴していた。この日ちょうどマンションの工事が終わり、芽衣へと引き渡されたのだ。これで芽衣はこのマンションを屋上から三階分手に入れたことになる。
 巨大な風呂も完成しており、その広さに唯の先ほどの言葉に繋がることになった。マンションでもかなり高い位置の階だというのに巨大な岩風呂が作られているのだ。唯の眼前にはマジックミラーで出来た巨大な窓があり、都内に広がる宅地が一望できる。凄いと言うしかない。岩風呂以外にも、うたせ湯などもある。

「芽衣さんって、やっぱりお金持ちなんだなー。最近、株でまた儲けたとか言ってたし」

 この家に住んでいると、つくづく庶民の自分と差があると唯は感じる。
 そういう彼も一度、自分の預金残高を確認するために銀行に行ったとき、桁が二つくらい増えていて泡を食った覚えがある。芽衣と由佳、それに楓から莫大な額の振込みがされており、銀行から逃げ帰ってしまった。幾らでも金を使う余裕があるというのに、金銭について唯はかなりの節約家……いや、無欲と言うべきだろう。

「失礼しまーす!」

 引き戸が開けられ、早苗の元気な声が広大な浴室に響き渡る。後から続けてミシェルや楓が続き、ガーディアンの面々が入ってくる。唯と同様に、激戦後の休暇と称して全員が仕事や学校を休んでいた。他の人間はともかく、教鞭をとっている雛菊とミシェルは大丈夫なのかと思ってしまう。
 少年とは言え男が入浴しているというのに、美女達は物怖じする様子が無い。おしとやかな静香や恥ずかしがりやの雛菊も、期待にドキドキして肌が紅潮しているとは言え、別に裸身を晒すのは気にしていることは無いみたいだ。ただ一人の例外を除いて。

「お、おい……いいのか、本当に?」
「全く、何を恥ずかしがってるんだか。とっとと入りなさい」
「ほらほら」

 麗と円に押されて、エリザヴェータが入室してくる。大事な部分をハンドタオルで隠しているとはいえ、透き通るような肌とたわわに実った胸は隠しては居なかった。

「唯君、新しいお風呂はどう? 気にいった?」
「いや、もう驚くだけで。とにかく凄いと思うよ」

 扇情的なプロポーションを晒しながらにっこりと微笑む由佳に、唯は素直な感想を述べる。気に入るか気に入らないかの問題では無かった。

「こんなに広かったら、掃除が大変じゃない?」
「あのね、何のために私が居ると思っているの。唯は余計なことを考えずに大好きな風呂を楽しめばいいのよ」

 唯の心配を、麗が一蹴する。彼女だけがシャワーを固定したまま、お湯を操ってまだ幼い体全体を手際良く流している。水を操る麗なら、水回りの掃除はお手のものなのだろう。

「唯、入るわよ」
「あ、どうぞ。遠慮しないで入っちゃって」

 唯の許可を一応取ってから、京がすらりとした足で浴槽に入ってくる。「失礼します」などと言いながら、次々と美女達が岩風呂へと入浴する。

「これだけ広いと、全員が入っても平気だね」
「ええ、そうですわね」

 ちゃっかりと唯の隣というポールポジションを取った芽衣が同意する。十三人が風呂に入っても、今度の浴場はまだ余裕があった。この大人数を想定して作ってあったに違いない。

「唯様、お体の調子はどうですか? 疲れは残っていませんか?」
「大丈夫。全然平気だよ」

 心配そうに肩を触ってくる芽衣に唯はにっこりと笑う。確かに昨日の晩は家に辿りつくと、寝る前の挨拶もそこそこに泥のように眠り込んだ。だが一晩ゆっくりと休み、遅めに起きたのが良かったのか、倦怠感は残っていなかった。

「それは良かった……ボウヤ、準備は出来ている?」
「恒例のお・た・の・し・み」

 妖艶に百合とミシェルが唯に笑いかける。

「ほら、早く」
「し、しかしだな……」

 何が何だかわからない唯の前へと、早苗にせっつかれたエリザヴェータが唯の前へと進み出る。

「唯様、エリザヴェータも抱いていいのよ」
「で、でも……」

 百合の甘い誘惑に、唯は躊躇する。エリザヴェータはガーディアン最後の一人だが、まだ彼女も唯も心の準備は出来て居ないのだ。

「最後の処女ですよ、楽しまなくっちゃ損ですよ」
「あ、その……バージンなんだ」

 悪魔の囁きを吹き込むミシェルに、唯はゴクリと生唾を飲み込む。手を伸ばせば届くところに、東欧の美女が自分に抱かれるために居るのだ。男としては女の初めては無理やりにでも奪いたくなってしまう。

「そういえば、エリザヴェータも性には興味無かったわよね。男性経験ってどれくらいあるの?」

 早苗は素直な疑問をエリザヴェータにぶつける。

「何を言っている。私は二千年以上処女だぞ」
「ぶっ!」

 あっさりと言い放つエリザヴェータに、早苗、ミシェル、麗、雛菊、由佳が思わず噴き出した。残りの人間も唖然としている。

「あ、あんた……い、一回もしたことも無いの?」
「それが何か?」

 麗の驚愕の叫びに、エリザヴェータは素直に頷く。

「し、信じられない」
「そうね」

 性には同じくらい疎いと思っていた雛菊と楓も、よもやここまでエリザヴェータがセックスと無縁だとは思わなかった。確かに二千年以上のガーディアンの歴史において、彼女が主に仕えたのは片手で数えるくらいしかなかったのだ。

「ほ、本当にいいのかな……エリザヴェータさん、経験が無いって言うし」

 話を聞いていた唯が弱音を思わず吐く。自分の力を過小評価しているのか、唯にはこの世で最も性について初心者と思われる女性を抱く自信が無い。

「何を弱気になっているんです!」
「唯様ならきっと大丈夫です。私が保証します」
「男は度胸よ。思い切ってぶつかりなさい」

 雛菊、静香、京の順に励まされ、唯はようやく自信を取り戻す。

「エリザヴェータさんが良ければ、是非ともセックスのパートナーになって欲しい」
「私には良くわかりませんが……もし、唯殿がどうしてもと言うなら……。私がこれと見込んだ主殿ですし」
「あ、でも初めてが皆の前でいいのかな?」

 唯が周囲を見回すと、十一人の女性と目が合う。確かにロストバージンを他人の前で行うのは、デリカシーに欠けると言えるだろう。ただ既に芽衣、由佳、雛菊、京、静香、早苗と半数が他人の前で処女を奪われているのだが。

「はいはい、一回目くらいは好きにさせてあげるわよ」

 麗が仕方ないというポーズで力を行使する。湯煙が一気に膨れ上がり、暖かな霧が辺りを包む。あまりの濃霧に、鼻先を近づけるくらいで無いと相手の顔も見えない。何も見えないので、唯はエリザヴェータの腕を掴んで胸元まで引き寄せる。

「エリザヴェータさん……ちょっと無理やりかもしれないけど」
「いえ、そんな……私も唯殿には少し興味がありますし」
「必ず気持ち良くしてあげるから……」

 唯は目を閉じると、頬を赤く染めるエリザヴェータの唇に唇を近づけた。

「……ちょっと静か過ぎない?」
「知らないわよ」

 ミシェルの訝しげな声に、麗は不機嫌そうに答える。唯とエリザヴェータを包む霧の向こう側からは何も聞こえてこない。霧を作ったとはいえ、唯やエリザヴェータの声を遮断する能力は麗には無い。それなのに、あまりにも静かなのだ。

「もしかして、唯様の能力ではないの? 音を使えるのだし」
「しまった、それを失念してた」

 静香の指摘に円が額に手を当てる。

「興味あったのになー。だって二千年の処女よ。どんなセックスするか興味あるじゃない」
「仕方ないわ。当分、二人とも戻ってこないでしょうし、体でも洗って待ってましょう」

 心底悔しそうな円とは対照的に、淡々とした百合は立ち上がって湯船から出た。

「エリザヴェータさん……」
「んっ!」

 唇を合わせるだけの軽いキスを長い間行い、ようやく唯はエリザヴェータを解放する。きりりとした顔立ちである東欧美女の頬はほんのりと桃色に染まっていた。

「あの、唯どの……」
「何かな?」
「今のは……私のファーストキスでした」
「そうなんだ」

 視線を下げて恥らうエリザヴェータが、唯には好ましく見える。だがエリザヴェータが先ほど言った台詞の意味を理解して、少年は上擦った声を出す。

「も、もしかして、今のって……」
「はい。二千年生きてきて、生まれて初めてのキスです」

 エリザヴェータの顔を眺めながら、唯は思わず呆然としてしまう。悠久の時を生きてきた女性のファーストキス。それだけに留まらず、今からバージンをも奪おうとしているのだ。唯は妙な責任を感じてしまう。

「エリザヴェータさん……」

 唯がエリザヴェータの頬に手を当て、自分へと向かせる。唯以上に彼女は緊張しているのだ、自分がリードしなければいけないと少年は己に渇を入れた。

「ゆっくりしよう。初めてだから、スローペースで行こう」
「はい。不肖ながら、お相手致します」

 柔らかなエリザヴェータの頬を唯は優しく手で擦る。見つめあいながら、唯はエリザヴェータの頬や髪を撫でた。くすぐったいような温かい感触にエリザヴェータは目を細める。

「んっ……」

 エリザヴェータの顔を撫でる手が下がり、彼女の首筋や肩を這う。優しいペッティングに、エリザヴェータの身体が自然とほぐれてくる。

「ああっ……」

 肩から下りてきた唯の手が軽くエリザヴェータの胸へと向かう。ほとんど誰にも触らせたことのない胸を愛撫され、エリザヴェータの身体が緊張で硬直する。胸に手を置きながら、唯はエリザヴェータの唇を奪う。

「ん、んん……あっ……」

 エリザヴェータの唇を吸い、唯は舌で軽くそのピンクのリップをなぞる。無意識に唯の体を手で押し返そうとするエリザヴェータの腰を片手で引き寄せ、反対の手で円を描くように左胸をこね回す。

「ゆ、唯どの……何だか怖いです……このようなことは初めてですので」
「うん、仕方ないよ。でも、僕に全て任せて。可愛いよ、エリザヴェータさん」

 唇を離した唯が、エリザヴェータの耳元へと囁く。途端に胸がドクンと異常に大きな鼓動を放ち、彼女の息が詰まる。

「ゆ、唯どの!? こ、これは?」
「大丈夫、体を楽にして……」

 エリザヴェータの体を動かし、唯が肢体の背後へと回る。脇から胸へと手を伸ばし、エリザヴェータの豊か過ぎるほどに膨らんだ乳房を唯は軽く持ち上げた。唯は寄せて上げるように手を動かし、巨大な乳房を刺激する。

「や……唯どの、ダメです。そんな胸を掴んだら……ああっ」

 軽く胸を掴まれて、美女の顔が羞恥心で歪む。軽く愛撫されているだけなのに、心臓の鼓動は加速的に速まり、肌から汗が噴き出す。

「ああっ、手を離して下さい。こ、このような感覚に私は……」
「大丈夫。エリザヴェータさん、好きだよ……」
「ひ、ひゃあん!」

 エリザヴェータの身体が緊張で硬くなると、唯は彼女の耳に言霊を吹き込む。体全体が熱くなり、心臓の鼓動で胸が痛いほどだ。それなのに両胸を手でやんわりと揉まれると、快感が全身を侵食してくる。

「ダメ、ダメです。唯どの……は、離してぇ!」

 自分では全力で唯を振り解こうとしているのに、エリザヴェータの体は弱弱しく体を揺するだけだ。全身から力が抜け、愛撫にひたすら身を任せることしか出来ない。生まれて初めてのペッティングは、エリザヴェータには信じられないような快感だった。

「あ、あふっ……あ、ああっ、ひあっ……」

 胸からの刺激は強烈な電流を流し込まれるほどなのに、美女の身体と心はそれを求めてやまない。中指が硬く勃った乳首に当たり、胸の先端から走る快感に体全体が震えてしまう。唯も美女の見た目よりずっと柔らかい形の良い胸に、夢中になってくる。

「怖いです、唯どの……わ、私にはこんなことはやはり……」
「大丈夫、すぐに慣れるからね」

 感じたことの無い異質な感覚に、めったなことでは動じないエリザヴェータが怯えた声を出す。それを無視して、唯は胸を優しいタッチでひたすら揉む。厚い胸の脂肪越しにも心臓が早鐘のように脈打っているが、少年は手を止めようとしない。

「は、はっ、は、はあ……」

 エリザヴェータの呼吸が早まり、霧によって重く湿った空気を懸命に肺へと取り込もうとする。身体の中が火を焚かれたように熱くなり、胸を揉む手がそれを熱くさせた。優しいタッチが逆に酷くエリザヴェータを快感で苛ませる。

「唯どの、唯どの……」

 エリザヴェータは普段の言動とは似つかわしくないほどの弱弱しい悲鳴をあげる。体の中に膨れ上がる熱が、唯への想いに変わっていくのを止めることができない。一度唯を意識すると、もう頭の中は唯のことしか考えられなくなっていた。

「私は……おかしくなってしまいました……」

 いつもエリザヴェータが持っている正義に燃える瞳が、とろんと呆けた目になって唯を仰ぎ見る。胸からの愛撫で理性は跡形も無く崩れて、もっと唯に愛して欲しいと本能が叫びをあげる。

「あっ、ああっ……あ……」

 片手がごく自然に股間へと伸び、エリザヴェータは自らの割れ目を擦り始めた。

「ん、んんっ、んっ!」
「エリザヴェータさん、随分と気持ちよくなってきたみたいだね」

 ぎこちなく陰唇を指で強く擦り始めた処女に、唯は優しく話しかける。尻にペニスの先端が当たって、エリザヴェータの身体がビクリと震えた。心の奥底が肉棒を欲して仕方ない。

「唯どの、助けて。私は、私はおかしくなってしまう。助けて……」
「うん。安心して」

 泣き顔で訴えるエリザヴェータに、唯は軽く頷く。自分の体なのに意思通りに動かず、焼けそうな熱が溜まってしまっている。彼女は感じたことのない体験に、気が狂いそうだった。今も胸を揉み続けてもらわないと、自分が死んでしまうような錯覚を感じている。

「力を抜いてね」

 唯はぐっとエリザヴェータの胸を押し潰しながら、彼女の体を持ち上げる。ビクビク震えるエリザヴェータの体をそっと下ろすと、恐ろしく手際良くペニスの下へと彼女を導いた。

「あっ、あああああああぁ!」

 ズブズブと沈みこむ肉棒に、エリザヴェータは咽喉の奥から大きな叫びをあげた。何かを破られる感触、そして誰にも侵されたことのない胎内へと熱い肉が沈み込む感触。

「や、やっ、いやあああああっ」

 痛みは無い。あまりにも気持ちいいのだ。許容量以上の麻薬を打たれたように、全身が快楽に支配されておかしくなりそうだった。

「あ、あうっ、うあっ……わ、私……」
「動くね」
「ま、待って……あああああっ!」

 唯のペニスがゆっくりと膣内で円運動を始める。奥まで入り込んだシャフトが膣壁を擦る感触に、肌に鳥肌が立つ。処女膜につけられた傷口を擦られているのに、痛みという感覚自体が無い。

「ん、気持ちいいよ……」

 ずっと処女だったとは思えないくらい柔らかく男根を受け入れたエリザヴェータの膣に、唯も軽く息を吐く。ガーディアン全員が違うヴァギナの感触を持っており、他の者とは違う膣の感触に唯は改めて初めての人間を抱いているのを理解できた。

「ふわっ、あ、ああっ、うあ、あん、うぅ……ひあん、あっ、あっ!」

 唯が肉棒を動かす度に、エリザヴェータは大きな声をあげる。初めて男を受け入れた性器なのに、美女の膣壁は唯の男根を優しく包み込み、ギュッと絞り上げる。

「エリザヴェータさん……」
「ゆ、唯どのぉ……」

 初めての性交だというのに、エリザヴェータは唯のピストン運動に猛烈な快感を覚えることができた。唯のペニスによる一突き一突きが、今まで二千年も知らなかった男に抱かれる悦びを教えてくれる。

「はっ、あん、ああん、んん、ふう……あぅ、いい、いいです……唯どののおちんちんが、こんなにいいなんて!」

 余りに気持ち良過ぎて、エリザヴェータは本当にこの天上の快感を我が身に受け入れていいのかわからない。そんなエリザヴェータの想いを無視して、唯の男根は彼女の身体をとことん蕩けさせてくる。

「も、もうダメです! な、何かくる……き、来てる……ひああああ!」

 身体が絶頂に向かって走り始め、その強烈な感覚にエリザヴェータは声を振り絞って甘い悲鳴をあげる。この自分より遥かに若い男に、エリザヴェータは改めて雌だと心身に刻みつけられているようだ。

「あ、ああっ……お、おかしくなりますー。唯どの、助けて、助けて、ふああああ、ひ、ひっ、あっ!」

 エクスタシーというものを知らないエリザヴェータは、ひたすら声を発して押し寄せる快感の波を耐えようとする。このまま限界まで我慢して達したら、間違いなく意識が飛んでしまうだろう。

「エリザヴェータさん、大好き」
「い、いや、来ちゃううううううぅ。あ、あ、あぁぁぁぁぁぁっ!」

 エリザヴェータの状態を察した唯が、言葉で軽く一押しする。それだけでエリザヴェータの体は絶頂へと押し上げられた。目を瞑って、震える彼女は血が出そうになるほど唇を噛み締め、体中を駆け巡る快感に耐える。意識は全くないのにエリザヴェータの身体は膣を断続的に締めつけ、唯へと懸命に精子をおねだりする。

「くっ……」

ドビュ、ビュッ、ビュッ

 まだまだ余裕があったが、唯はあえて尿道を緩めて白濁液を解き放つ。気持ち良さは中途半端とも言えたが、エリザヴェータの初めてである体験はちゃんとしたセックスにしてやりたかった。それに、絶頂で収縮する彼女の膣壁は十二分に唯へと快感を与えてくれていた。早めの射精を唯は存分に味わい、子宮と膣から漏れて湯船に溢れるほど大量の精液を美女の胎内へと注ぎ込む。

「あ、ああっ、こ、こんなのって……唯どの……死んじゃう」

 エクスタシーの余韻に、エリザヴェータは身体が固まっている。二千年を超えて初めてを初恋の人にあげられた喜びか、その目の端からは涙が流れていた。初めて出された精子の熱さが、エリザヴェータをますます熱くする。

「大丈夫、エリザヴェータさん?」
「は、はい、唯どの。でも、体が熱くなって……何も考えられないです」
「それなら、体を鎮めないとね」

 唯がエリザヴェータの胎内から陰茎を抜き出すと、白濁液が漏れ出して湯に溶け出す。

「ああん……あっ!」

 ペニスがヴァギナから抜ける感触にエリザヴェータは残念そうな声を出すが、すぐに風呂に押し倒される。プラチナブロンドの美女は四つん這いにさせられると、湯の上に綺麗な丸みを帯びたヒップを突き出されるようなポーズを取らされた。

「ゆ、唯どの?」

 エリザヴェータは初めて裸で取らされるポーズに、顔を羞恥に染める。湯に少し拡散したとはいえ、膣の中から破瓜の血と精子が零れ落ちて太ももに流れ落ちているのだ。そんな性器を男に晒すのは、処女の血を失ったばかりのエリザヴェータには胸が爆発しそうなほど恥ずかしかった。

「はぁん、あ、い、いきなり……こ、こんな、ふわぁ……」

 唯はエリザヴェータの尻たぶを掴むと、再び亀頭の先端を陰唇に擦り付ける。処女を失ったばかりのヴァギナは血が出ていて、見ていて若干痛々しい。

「はぁ、唯どのぉ……ああ、唯どののおちんちんは素晴らしいな」

 だがロストバージンしたばかりだというのに、エリザヴェータは痛みなど見せずにうっとりとした声を漏らす。エリザヴェータにとってズキンズキンとした破瓜の鈍痛さえ、今は唯に抱かれた悦びなのだ。ヒップを軽く上下して、サーモンピンクの陰唇で亀頭の先を愛撫するなど、先ほどまで処女だったとは思えない動きまで見せる。

「ありがとう、エリザヴェータさん。お礼してあげるね」
「ふあああああ、ま、また入ってきます。あ、ありがとうございます」

 処女喪失したばかりの小陰唇を押し広げ、唯はエリザヴェータの中へと男根を押し入れる。狭い膣道を押し広げて奥までペニスが侵入すると、たちまち柔らかいヒダがシャフトに絡み付いてくる。

「ああ、あ、速い……う、うう、う、ああ、ふあ……」

 先ほどよりスピードが出せる体位になったことで、唯はピッチを上げて動き始める。その激しいピストン運動にエリザヴェータも翻弄されるしかない。

「ああん! こ、このポーズだとぜんぜん違う! ゆ、唯どの、これ……す、凄い……」

 体位を変えたことで亀頭が当たる感覚が変わったのか、エリザヴェータはより甘い声をあげる。

「ひう、ふう、あぁぁ、はぁはぁ……あぁん、あ、あっ!」

 唯はエリザヴェータの声が一番甘い声を出す角度とペースを維持して、腰を振り続ける。エリザヴェータは興奮が鎮まるどころか、更なる興奮で心を焼かれる。

「ゆ、唯どのぉ……あぁ、あぁ、あ……はぁ、あん、うぅ」

 エリザヴェータが四つん這いになって湯船の底についている手が、震えるほどに感じてしまう。だが崩れ落ちてしまっては湯船に溺れてしまうので、必死に手をつっぱって我慢する。

「唯どの、も、もうだめぇ、だめですぅ……ふぁ、あ、あ、あぁ、はぁ……」

 未知の快感に翻弄されて、エリザヴェータは息がどんどんあがってくる。彼女の声が切羽詰るのと合わせるように、膣圧が上がって男根を締め上げる。その圧迫を楽しむように唯はグイグイと腰を動かし続ける。

「ふわああ、あっ、うう、ひぐ、ぐ、あぐぅぅ……はぁん……」

 括約筋が収縮して、狭まった膣をぐいぐいと亀頭で押し広げられる感触に、エリザヴェータは身体をますます硬直させる。膣壁のヒダををカリ首で擦られるだけで、背筋全体が震えるようなゾクゾクしてしまう。

「こ、こんなこと……ふうう、あっ、ひぐっ……うぐう」

 エリザヴェータの整った表情が、強烈な快感で大きく歪む。甘い声が漏られるのを抑えきれず、唯が動くたびにエリザヴェータは嬌声をあげる。

「ゆ、唯どのぉ、唯どのぉ……あ、あん、んぅ、あ、あぁ……」
「エリザヴェータさん、可愛いよ」
「そ、そんな……ふわああああ、あ、ああっ! ひぐぅ……」

 唯はエリザヴェータの喘ぎ声が聞きたくて、ヴァギナを擦り、子宮口を突きまくる。更に言霊でエリザヴェータの感度を上げるために、優しく囁く。

「な、何かく、来る……い、イク、イク、はぐぅぅ、い、イクぅぅぅぅ……イキますっ!」

 エリザヴェータが一際大きく身体を逸らし、エクスタシーに達する。世の中でこんなにも強い刺激があるのかと驚く程に、鮮烈な衝撃だった。

びゅる、どびゅ、ぶびゅびゅ、どっぴゅ、どびゅ、びゅるるる

 エリザヴェータが絶頂に達した直後に、唯も尿道を緩めて射精する。既に一度精液を注ぎ込まれた子宮に、更に新鮮な精子を美女は注ぎ込まれる。

「あ、熱い! ゆ、唯どの!」

 自分の胎内で唯の性器が脈動するのを感じて、エリザヴェータは深い満足に包まれる。自分が唯を絶頂に導けたことが、何故かとても誇らしかった。セックスの相手が自分で感じてくれたのが、雌としての本能を刺激しているのかもしれない。エリザヴェータは涙が目の端から溢れ出し、止めることができなかった。

「は、はう、あ、あ、あっ、あぁ……あぁん、あ、はぁ……」

 エリザヴェータは性交の余韻で喘ぎ、細かい呼吸を繰り返す。

「エリザヴェータさん、最高だったよ」
「わ、私は……今日、この日を忘れません」

 涙の跡に唯がキスをすると、エリザヴェータは唯に寄り掛かる。初めて女になったせいか、つい先ほどとは違う色香が彼女には漂っていた。
 唯が膣からペニスを抜くと、精液と処女血が白と紅い華を湯船に咲かせる。二人は互いに身体を預けて二十分近く寄り添った。

「ちょっと、唯!」
「わっ!?」

 霧の中からぬっと現れた麗の顔に、思わず大声を出してしまう。

「な、何?」
「何じゃないわよ! 一体、一回のセックスにどのくらいの時間掛けてるのよ。後がつっかえてるのよ!」

 霧が晴れると、麗を除いた十人の美女が唯の視界へと入ってくる。全員が待ちくたびれたかのような表情で唯を見ている。

「ご、ごめん……でも、エリザヴェータさんは初めてだったし」
「まあ、そうですわね」
「仕方無いとは思うんだけど」

 百合と円が苦笑する。二千年経って初めてが女になったのだから、多少は我慢するべきだとは全員が思っている。だが、

「唯どの……」

 とろんとした表情で唯の身体に抱きつくエリザヴェータの恋人かの如き態度に、全員のジェラシーに火がついた。

「唯くーん、お姉さんのおっぱい舐めてみない? 甘いわよー」
「唯さま、幾らでもしゃぶって奉仕しますわ」
「唯さま、外国仕込みのテクニックはいかが? 天国に何度でも連れて行っちゃうわよー」
「唯、こんなオバさんたちは放っておいて、熟れてない果実を食べてみない?」
「うわーっ!」

 殺到してきた美女に押し倒され、唯の上半身が湯船に沈む。かろうじてエリザヴェータの身体は両手で突き放して、彼女は巻き込まないようにする。

「唯どの!?」

 ぶくぶくと泡を吐き出しながら、湯船の中で唯は考える。

(全員で十二人か……一日に二回づつ各自を相手にすると、日に二十四回……僕、長生きできるかな?)

 少年の心配も尤もだ。だが彼の計算は大間違いで、その日は三十六回という数字だった。







「例のゲートが閉じました」
「信じられんな。だが、大いに助かったな」
「ええ、彼女達の実力はすごいです」
「最初は眉唾ものだと思っていたのだが……伝承が本当だったとはな」
「それでは……」
「もちろん、こちらに引き込む。あの力は軍隊にも匹敵する。必ずこちらに引き込め、必ずな」







   































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