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■バシュアシェ


この頃、殿下の様子がおかしい。
戦闘中でも後ろを気にしておられる。
自分の援護が頼りないと感じておいでなのだろうか・・・。

避けてられている気がする。
声をお掛けしても、目を伏せ、短い返事をされる。
何か、殿下のお気に障る事でもしてしまっただろうか・・・。

そんな兆候を感じ取ったのは、自分が武器を変え、後方にまわってからだ。
女である殿下を前に出して、男の自分が後方に回るとは・・・と、思っておいでなのだろうか。

明日にでも武器を変えよう。
そう思い、宿を取った町で夜に武器屋へ赴き、手頃な得物を手に入れた。
明日からはこの斧で前線に立ち、殿下をお守りしよう。
俺はその為に、此処に在る。

宿へ戻ると、ロビーで宿の亭主に声を掛けられた。
「おたくのとこの坊ちゃんとお嬢さん方が、テラスで飲み潰れてますよ」と。
急いでテラスへ出てみると、ヴァンとパンネロ、そしてアーシェの姿があった。
皆、赤い顔をして眠りこけている。テーブルの上には酒瓶が何本も倒れている。

ヴァンを揺すり起こすと、眠そうな声で言った。
「らって〜、アーシェが飲もうっていったんらも〜」
「・・・殿下が?」
「なんかさ〜、愚痴ってたぜ〜バッシュの事〜」
核心に触れられぬまま、またヴァンは眠ってしまった。

・・・やはり自分の不甲斐なさが殿下を・・・
すっかり滅入った気分を抑え、ヴァン、パンネロを部屋に運ぶ。
再びテラスに戻ったバッシュは、眠るアーシェの傍に立った。
頬を赤く染め、安らかな寝息を立てるアーシェに思わず見とれる。

・・・殿下・・・

胸の思いを潰す様に、握り拳を硬く固める。
早く部屋に運んで差し上げなくては。しかし、自分が運ぶのは・・・
バルフレアの姿を探したが、フランと共に宿には居ない。

ふと、夜風が冷たく吹きすさび始めた。夜ともなれば気温は瞬く間に下がる。
こんな所に殿下を長く居させては・・・
意を決して、アーシェの身体をそっと抱き上げた。

細い身体は難なく浮かび上がり、腕の中に納まった。
・・・何と軽い・・・
アーシェの顔を近くに感じ、湧き上がる思いを抑える様に早足で歩き始めた。

揺らさない様に細心の注意を払い、部屋に運び込む。
思わぬ風の煽りを受けて、ドアが勢いよく閉まる。
その音に身動ぎし、閉ざされていたアーシェの瞼がゆっくりと開かれた。
「・・・バッシュ・・・?」

酔いの覚めやらぬ瞳はまだ虚ろに開かれたままだ。
「・・・申し訳ありません、殿下。お風邪を召されてはと思い・・・」
しどろもどろに言い訳がましく弁解をしながら、ベッドに優しく身体を下ろす。
「・・・無礼をお許しください」
急いで部屋を出ようとするその背に、アーシェの声が掛かる。
「・・・待ちなさい」


その声を受け、固まったバッシュはゆっくりと振り向き、片膝を突いて頭を下げた。
「・・・如何なる罰でもお申し付けください」
元はと言えば、自分の落ち度が殿下をこんな事態に陥らせてしまったのだ。
たとえ目の前から消えろと言われても従うつもりでいた。

「・・・どうして?」
ベッドに横たわったまま、アーシェの声が尋ねた。
「・・・どうして私を避けるのです」

思いもよらないアーシェの言葉に、バッシュは思わず頭を上げた。
「・・・!避けるなどとそんな・・・」
「だったらどうして後方に下がったの!?」

顔を腕で覆い、涙声で訴えるアーシェ。
バッシュは一気に困惑し、どう声をかけていいのか戸惑い黙り込む。

「・・・あなたが前で戦ってくれるから私は戦えた。
突然後方に下がるなどと言い出して・・・私がどんなに心細かったか・・・!」
次第に大きくなり、しゃくりあげるアーシェの声。

「・・・殿下!」
思わず駆け出し、ベッドの傍に片膝を突いて訴える。
「その様な事は・・・!殿下を避けるなど、この私に出来るはずもありません。
許される事ならば・・・・・常に殿下のお傍に居たいと・・・」

必死に弁解する眼差しを受け、次第に泣き止むアーシェ。
真っ赤に腫らした目を隠す様に、腕の影からこちらを伺うさまはまるで小さな子供だ。
「・・・本当に?本当にそう思うの?・・・それは、義務だから?」
潤んだ瞳を真っ直ぐに見据え、きっぱりとバッシュは言い切った。
「義務感などではありません」

ゆっくりと半身を起こしたアーシェ。
気恥ずかしそうに髪を整える姿が何とも愛らしく、バッシュは固唾を飲んだ。
「・・・義務では無いの?」

絡み合う視線を外さないまま尋ねるアーシェに、バッシュの動悸は早まった。
「・・・義務ではありません」

「・・・だったら」
突然、首に巻きつく腕に、驚きを隠せないバッシュ。
「・・・いつも傍に居て私を守りなさい」

甘い髪の香りが鼻腔をくすぐり、柔らかい身体の感触が服を通じて伝わる。
身動きも取れず、固まったバッシュ。
「・・・・・殿下・・・・・」


「・・・寂しかったのよ」
胸に顔を埋めたまま、くぐもった声が聞こえる。
摺り寄せる頬の感触に、厚い胸板から心臓は飛び出さんばかりに暴れた。

湧き上がる感情を必死に抑え、震える手でアーシェの肩を優しく掴む。
「・・・殿下。お酒を召されてお疲れの様です。そろそろお休みになられては」
そっと離そうとするが、バッシュの胸へすがって離れないアーシェ。

「・・・酔ってなどいません」
ゆっくり顔を上げ、真っ直ぐに見つめるアーシェの瞳は潤んでいた。
絡む視線。その先に在る−唇。

瞬きのその後に重なった唇は柔らかく、思考の全てを持っていかれた。
躊躇いがちに差し込まれた舌は小さな生き物の様に蠢いた。
甘い口付けに、一欠けらの自制心を何とか発動し、どうにか離れた。
「・・・・・殿下・・・・・酔っておいでです・・・・・」

暴れださんとする自分の欲をどうにか捻じ込み、諭す様に言うと、バッシュは膝を立てようとした。
「・・・いや!」
立ち上がりかけたバッシュの胸へ、再び飛び込んだ。
「・・・傍にいて」

バッシュの開いた胸元へキスを降らせる。
柔らかく湿った感触に思わず溜息を漏らす。
そのうちに辿り着いた胸の蕾に鼻を擦らせ、唇を寄せ始める。
堪らずに呻き声を上げるバッシュ。

「・・・・・うっ・・・・・・殿下・・・・・・」
アーシェの細い肩を掴んだままだった手は違う力を帯び始める。
耐える様に。求める様に。

胸から、薄く髭のざらつく顎を掠り、唇へ辿り着いたアーシェのそれは、
再び柔らかくバッシュと軽く重なった。
二、三度軽く触れるように口付けを落とし、アーシェは自分の胸へバッシュを抱いた。

「・・・殿下は、やめて」
透き通る白い胸元に抱かれたバッシュは、額の傷跡に寄せられる唇を感じた。
「・・・アーシェ、と」
一気に自制心が吹き飛ぶ。


アーシェの細い身体に、鍛え上げられた腕が巻きつく。
すがる様に、目の前の白い胸元にキスをすると、切なげな溜息が漏れた。
首筋へ舌を這わせ、うなじに辿り着くと、耳元で囁いた。
「・・・・・アーシェ」
「・・・・・ああ、バッシュ・・・・・」
歓喜の声を漏らし、首に手を絡ませるアーシェ。
積年の愛しさと欲が積もっていく。

倒れこんだベッドは音を立てて軋む。
アーシェの見上げる瞳は熱を帯び、潤んで自分を映す。
そんな視線に急き立てられるかの様に、再び唇を重ねる。
濃密に舌が絡み合う音が部屋に響いた。

アーシェの細い指は、バッシュの着衣の隙間に忍び込んで肌を撫でる。
その行為に後押しされる様に、バッシュも着衣の間に見える肌を愛でる。
堪らず、胸の布を摺り下ろすと、小振りだが形の良い胸は露になり、頂は上を向いて震えた。

「・・・・・あぁ・・・・・・・あっ・・・・・・・・・」
甘い香りに誘われるようにその頂に唇を落とすと、アーシェの声が甘く呻いた。
その声が起爆剤となり、バッシュの舌は速度を速めた。
舌と歯で交互に攻めればびくんびくんとしなるその身体。
バッシュの下半身に募り切った欲が膨れ上がった。
そんなバッシュを察知したのか、アーシェの手が下へ降りてバッシュ自身をさすり上げた。
「・・・・・・・うっ・・・・・・・・・・」
着衣の上からでもわかる熱と硬度。脈打つそれをアーシェは撫で続けた。


うねる身体中に夢中で唇を這わせ、下腹部へ降りたその手は着衣の中の茂みへと進んでいく。
熱を感じる茂みはじっとりと濡れ、進入した指に蜜を纏わす。

「あぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・あぁん・・・・・・・」
突起した部分に蜜を絡めれば、仰け反る身体に甲高く上がる声。
そんな声を上げる顔見たさに半身を起こせば、上気した頬に緩んだ唇。
乱れた着衣から露になった胸を突き出し、仰け反りながらしなる身体。
そんなアーシェの乱れる姿を息も荒く見下ろし、熱のこもる指。

「あぁ・・・はぁ・・・・あぁ・・・・んん・・・・・・」
その声にそそられ、アーシェの片膝を持ち上げ腰を浮かせ、下着をずらす。
蜜が糸を引き、外気に晒されるアーシェの秘部。

クチュ・・クチュ・・・ヌチュ・・・
「・・・殿下・・・もうこんなに・・・・・・」
アーシェに聞かせる様にわざと卑猥な音を響かせ、耳たぶをかじり、耳の穴へ舌を差し込む。
「・・・・・はぁあ・・・・・やぁ・・・・・・・・・・」
身を震わせ、仰け反る白い首に噛み付く。
そしてバッシュは太い指を蜜の滴る奥へと突き立てた。


「・・・あぁっ!・・・はぁっ・・・・・ああん・・・・んんっ・・・・・」
締め付ける内壁をゆっくりと進んでいくと、声は一層甘く大きく上がった。
あっという間に辿り着いた最奥に指をねじ込むと、小さな身体は大きく弾け上がった。
「あぁっ・・・あっあっあっ」
自分の指の動きに合わせて、身をよじり声を上げるその姿を見下ろす。
バッシュの中にふつふつと湧き上がる−征服感。

「・・・殿下・・・私はどうすれば・・・」
指の動きはそのままに、荒い息で見下ろしたままアーシェに囁く。
「・・・あぁっ・・・・殿下は・・・やめてぇ・・・・・あぁっ!」
指を二本に増やし、更に奥へ突き立てる。
絡みつく内壁のある一部を執拗に攻め立て、胸の蕾を揉みしだきながら再び囁く。
「・・・殿下・・・御指示を」

ふるふると首を振りながら、更に火照り出す顔。
「・・・・・早くぅ・・・・・」
躊躇いがちに呟く声を聞こえない振りでやり過ごす。
「・・・・・・あああっ!・・・・・・お願いぃ・・・・・・早くぅっ・・・・・・・・・」
「・・・それではわかりません・・・殿下」

速度を速め抜き差しするバッシュの指の動きに、アーシェは狂わんばかりに喘いだ。
「・・・・あああああっ!・・・・・・もうっ・・・いっ・・・・」
収縮を始めた内壁の変化に、バッシュは頃合を見て指を引き抜く寸前に留めた。
びくびくと脈打つ入り口は名残惜しそうに続きを求めた。
「・・・・・あぁっ・・・・・・あっ・・・・・はぁ・・・・・」
寸止めにもどかしげに荒く息をつくアーシェの顔を惚れ惚れと眺めた。



「・・・こんなに」
先程の行為で濡れた自分の指を、アーシェの目の前で舐め上げる。
ペチャ・・・ペチャ・・・ペチャ

「・・・いや・・・」
自分の溢れさせた蜜が滴る指を舐めずるバッシュの熱っぽい瞳に見下ろされ、
恥ずかしさの余り、肩を窄ませ顔を隠そうとするアーシェ。
その顔は、大きな手に顎を掴まれ正面に向かわされる。

その赤く緩んだアーシェの唇に、バッシュはその指を差し込む。
「・・・んんっ・・・」
蜜でふやけ、自分の甘酸っぱい香りのするその指に口内をかき回され、舌を弄ばれる。

「・・・んっ・・・あふっ・・・・ふあっ・・・」
次第に指に絡み付いてくるアーシェの舌。
虚ろな瞳は潤み、唇と指の隙間からたまに漏れる息は熱い。
無骨な大きい手を白く長い指で掴み、夢中で舌を這わせるその姿と感触に、
押さえ切れ無くなった思いが腹の下に積もっていく。

−限界だ。


「・・・殿下・・・宜しいですか」
そう言うと、バッシュは猛りきった己を着衣から覗かせた。
はちきれんばかりに膨れ上がったバッシュ自身がその姿を現す。
堪え切れない思いが先端から溢れ、つつとその皮膚を伝った。
鍛え抜かれた腹筋に届かんとするその姿に、アーシェは身震いする。

その切っ先をアーシェへの濡れそぼった入り口にあてがうと、ゆっくりと進もうとするが。
先程の指より数段も勝る太さと熱さに、入り口が裂けそうな感覚が襲いアーシェの身を硬くする。
その緊張によりバッシュ自身は締め出されそうになり、先端をくすぐる感触に息を飲み思わず踏みとどまる。

「・・・んっ・・・」
唇を噛み締め耐えるアーシェに、優しく口付けながら囁く。
「・・・殿下・・・お気を楽に」
そっと瞳を開ければ、自分よりも必死に耐える様に眉をひそませるバッシュ。
そんなバッシュに愛おしさを感じ、両手で頬を優しく挟むと、鼻の頭に小さな口付けをした。
小さく深呼吸すると、目元を緩ませ合図をする。
「・・・大丈夫。・・・きて」

深呼吸で多少緩まった入り口は、優しくバッシュを受け入れ始める。
絡み合った目線を外す事無く、バッシュは己を静かに、深く沈めていった。
「・・・・・うっ・・・・・」
「あああああ・・・・」
双方、待ちわびた感触に歓喜の声を上げる。

はちきれんばかりの、自分の中を埋め尽くす感覚。
早くも辿り着いた最奥だったが、余る隙間を埋めるが如く、そのまた奥へと己をねじ込む。
「・・・!あああ」
隙間無く密着すると、アーシェの身体は弾かれた様にしなって震えた。

バッシュは上気したアーシェの頬に優しくその頬を寄せると、
首の後ろに差し入れた手を引き寄せ、そっと抱き締める。
そしてゆっくりと律動を始めた。

「・・・あ・・・あ・・・あ・・・」
自分の動きに合わせて上がる甘い声に後押しされる様に、その動きは力強さを増した。
蠢く内壁はしっとりと絡みつき、誘うように揺らめく腰。

「・・・っ・・・・・殿下・・・・・」
締め上げられる感触に、夢中で動きを早め、堪らず声を上げるバッシュ。
打ち付けられる肌の音と、とめどなく溢れ出る蜜の粘る音が更に己を熱く、硬くさせた。
「・・・ああっ・・・いや・・・かた・・・・・いっ・・・」
そんなバッシュの変化に、首を仰け反らせもがくアーシェの小さな身体。
乱れるその姿に、思わず終わりを迎えそうになり、一呼吸置く為にその動きを止めた。

アーシェの小さな身体は快感に打ち震え、埋没したままのバッシュにさざめく内壁の動きは止まない。
ぐったりとうなだれ、荒い息をつく唇は赤く震えている。
そんなアーシェを抱き締めると、ぐるりと回転しアーシェを自分の上にする。

胸に振る柔らかい髪を優しく撫で、ぐったりしたアーシェの肩を起こした。
「・・・!はぁっ・・・・・」
結合したままの箇所が体勢を変えたはずみで新たな刺激を与え、アーシェは身震いした。
下に目線を落とせば、うっとりと見上げるバッシュの表情に出会う。

「・・・・・あぁん・・・・」
両手でアーシェの小高い胸を下からさすりあげれば、白い胴はうねって顎を仰け反らせた。
そんな姿にバッシュ自身は更に猛り始める。
そんな変化に再び喉を鳴らし、次第にアーシェの身体が上下に揺れ始めた。

「・・・・・くっ・・・・・」
厚い胸板に手を付き、必死でその身体を支えながら律動するアーシェ。
拙い動きだが、咥え込む感触がバッシュに切ない溜息を漏らさせる。
溢れた蜜はアーシェの脚を伝ってバッシュの腿を濡らしていく。

倒れこみそうになる身体を両手で支え、そのまま胸を揉みしだき、蕾を摘み上げる。
「あぁっ!・・・・・・あっ・・あっ・・あっ・・・」
支える逞しい腕をすがる様に握り締め、その手の思いのままに声を上げる。
そのまま前に倒れこむアーシェの身体は、細い腕で自分を支えた。

「はぁ・・あん・・あぁ・・ん・・」
バッシュは、目の前に突き出された胸に遠慮なく顔を埋め、その蕾を味わった。
重力のせいで柔らかさを増したその膨らみに舌を這わせ、蕾を甘噛みすれば、
細い首を振りながら甘い声を漏らし、仰け反るその白い身体。
そんなアーシェの姿に、堪え切れなくなった欲が弾ける。

「ああぁっ!」
アーシェの細い腰を掴み、固定したかと思えば下から一気にどすんと突き上げる。
途端にアーシェの身体は仰け反り、胸を突き出して震えだした。
アーシェの腰をグラインドさせ、狭い体内を探ったかと思えばまた突き上げる。
自分の中で暴れる一物に、気も狂わんばかりに声を上げるアーシェ。
「あああ・・・!」
胸を仰け反らせ、唇に張り付く髪を指で払いつつ、自分の頭を掻き抱くアーシェの悩ましい姿。
それを見て更に太さを増すバッシュ自身は、もうはちきれる寸前だった。

「・・・殿下!」
半身を起こしてアーシェを抱き締め、自分の下へ組み敷く。
少し身を離して様子を伺えば、潤んだ瞳に迎えられる。
上気した頬は朱に染まり、半開きの唇からは荒く熱い息が弾む。
そんな顔をうっとりと眺めていると、細い腕が首に巻きついた。
「・・・最後に・・・もう一度・・・・・・呼んで」
耳元に寄せた唇から、懇願の声が吐息混じりに漏れた。

「・・・・・・・・っ、アーシェ・・・・・・・・」
その言葉に一気に駆り立てられる様に、己を最奥へ突きたてた。
しっかりと絡みつくその腕が解けない様に、しっかりと抱き締め、律動を始める。
「・・・あぁ・・・バッシュ・・・バッシュ・・・」
うわごとの様に繰り返される自分の名。
いつもと違って甘く響くその声に、バッシュは我を忘れて律動を繰り返した。

「・・・・・・・・・!あああバッシュっ・・・・・・・・」
最後の絶叫を搾り出し、アーシェは絶頂に達した。
びくんびくんと収縮を繰り返すその内壁に絞り上げられ、バッシュも下腹部に走る震えを感じた。
がくがくと震えだす身体を必死に抑え、律動は速度を増した。



ふと、こんな事を思った。


−嗚呼、いっそ夢であってくれ−


最後に一番奥深いところへ己を突きたてた瞬間、やってきた終焉に堪らずに叫ぶ。
「・・・っ・・・・・アーシェ・・・・・アーシェぇぇぇ!」
白い激流はアーシェの中へ熱く注ぎ込まれた。

「・・・んっ・・・んっ・・・んっ」
熱い流れを体内に感じ、喉を鳴らすアーシェ。
その顔には珠の様な汗が光り、細く満足げな溜息を漏らした。


ぐったりとアーシェの上に覆いかぶさったバッシュの身体は汗にまみれ湯気が立っていた。
そんな身体を優しく抱き締め、汗に湿る髪を撫でた。
余韻に息も整わぬまま、バッシュはアーシェの胸の中に優しく抱かれた。

「・・・・・くっ」
身体を僅かにずらし、まだ収まりきらない己をそっと引き抜くと、バッシュの証が共にアーシェの中から零れた。
「・・・んっ・・・」
身動ぎし、閉じ合わされるアーシェの細い脚。
アーシェの横に倒れこむと、どちらからともなく身を寄せ合った。
次第に冷気が肌を覚まし、冷静になる思考。



−これは夢なのだろうか。

祈る様な気持ちでアーシェの顔を覗き込むと。
まどろみの中で視線に気付き、目元を緩めて躊躇いがちに差し出される唇。

−夢であってくれ。


軽くついばむ様に二、三度口付けを交わすと、アーシェはそのまま安らかな寝息を立て始めた。



眠るアーシェの身体をベッドの中に仕舞い込み、周りを整えるとバッシュは部屋を出ようとした。
「・・・・バ・・・シュ・・・」
アーシェの声に驚き振り向くと、寝返りをうつアーシェの姿。
その寝言に胸を掴まれ、再びバッシュはベッドの傍へ膝をつき、そっと手を取り上げると小指に口付けをした。
そして静かにその部屋を後にした。



明くる朝、バッシュが集合場所で最初に出くわしたのはヴァンとパンネロだった。
昨晩の事を謝られ、その後の展開を思い出し顔を赤らめるバッシュに不思議そうな二人。
そこへアーシェがやってきて、いつもと変わらない凛とした表情で「おはよう」と告げられる。

「・・・おはようございます、殿下」
頭を下げるバッシュの横を過ぎ、二人の前へ進むアーシェ。
「昨晩はごめんなさいね、ヴァン、パンネロ。愚痴につき合わせてしまって」
「いいんです、アーシェさん。・・・で、仲直りしたんですか?」
小声で聞くパンネロにアーシェはくすりと笑い。
「・・・昨日は寝てしまったから、これからお説教よ」

パンネロに引きずられその場を離れるヴァンを横目に、アーシェはバッシュに向き直った。
向こうではフランとバルフレアも集まっている。
そちら側に背を向け、アーシェは口を開いた。

「・・・昨日、私はお酒を飲んで寝てしまったわ。気付いたら朝だったの」
「・・・はっ」
涼しげな瞳で淡々と囁くアーシェを直視できず、バッシュは頭を下げた。


−これで、いい。あれは夢だったと−

切ない思いに胸を締め付けられたバッシュが次に聞いたのは小さな声だった。


「・・・また私が酒に飲まれる様な事があったら・・・あなたが介抱しなさい」

優しい声に思わず顔を上げると、目元を緩ませたアーシェの顔があった。
そう、昨日見た・・・あの顔だ。


「・・・さ、行きましょう」
皆の方へ向き直った顔はもういつものアーシェに戻っていた。



「おーい、バッシュ出発するぜ!」
ヴァンが、うずくまっているバッシュに声を掛ける。
「・・・ちょっと靴の紐が良くない様だ。先に行ってくれ」
顔を上げないままにバッシュが答える。
「わかったー、早くなー!」
走り去る足跡にほっとしたバッシュは、祈る様に思った。


−落ち着け、俺の暗き波動よ−


その後の戦闘で、先陣に立つバッシュだったが、
間近で見るアーシェの尻に再び前屈みになりながら必死に斧を振るう姿は召喚獣の様だったとか






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