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■バッシュ×アーシェ


「ん〜やっぱり良いよねここは!凄く落ち着くし。ねぇヴァン、二人で久々に出 掛けない?」
「あぁ、いいぜ。アーシェ、戻るのは少し遅くなるかも!」


 モブ退治に一段落ついた一行は、ラバナスタに戻って来た。
青々と広がる空の下でヴァンとパンネロの姿が小さくなっていく。
「若いねぇーあいつらは。俺もあーやって無邪気な青春時代があったのか?」
バルフレアがフランの顔を覗いたが、フランは表情を崩さずに言い放った。。
「私にふらないで欲しいわ。貴方の全てを知っている訳じゃないもの。」
「冷たいなぁ。そこは社交辞令でお願いしますよ。で、俺たちはどうする?」
「そんな事言うけど決まってるんでしょ。私に言わせる気なの?」
刺のある言葉とは裏腹に、フランの表情は和らいでいる。この顔だ…とバルフレア は負けました、とでも言うように自分の頬を掻いた。
「叶わないな、フランには。では今夜もお付き合いお願い致します。そう言う訳 だ、アーシェ。俺らは砂海亭に居るからよ。そんじゃ宜しくー。」
「行ってくるわ。深酒はさせないから安心して。」

 仲睦まじく歩いていく二人の背中を見つめながら残された二人、アーシェとバッ シュ。
「殿下はこれからどう致しますか?」
甘く低い声と共に、バッシュの双眸がアーシェに向けられた。
整った顔立ちに生え 揃えられた髭が良く似合っている。
自分より一頭身ほど高い彼をアーシェは見上げた。
「私はバザーに行きたいわ。色々見たいものがあって…」
「では私も同行します。買った物は私が持ちますので。」
「いいのよ、そこまでしてくれなくても。久しぶりにラバナスタへ戻って来て、皆 自由に過ごしているのだから。戦士にも休養は必要だわ、バッシュ。」
 アーシェはバッシュに微笑んだ。

 『本当は一緒に来て欲しい…』
その言葉を言えずに飲み込んだアーシェの胸には甘い疼きがあった。
バッシュをただの家臣としてではなく、特別な思いを抱いてしまうようになったの はいつからか…
しかし考えても分からない。
かと言ってラスラに対して罪悪感を感じている訳でも ない。
自分の心境の変化にアーシェはため息を吐く。
『時代が変わっていくように、私の気持ちも変わっていくんだわ…ラスラ…』
それは寂しい事ではない。ラスラへの気持ちを邪険に扱うことでもない。ただ、目 の前の彼を一人の男性として…
「殿下?どうかされましたか?」

バッシュに問い掛けられてハッとする。考え事の所為でボーッとしていたようだ。
「ううん、大丈夫よ。ごめんなさい。」
「そうですか、ではバザーへ参りましょう。」
バッシュが歩きだすとアーシェは慌てて追い掛けた。
「い、いいのよ本当に!自分の好きな様に時間を使って。」
そこまで言うと前を歩くバッシュが振り向いた。
「私は自分の好きな様に時間を使っているつもりですが。」

 嬉しい…。例えそれが知らずに感じている義務感だとしても。
長い主従生活の中で、公私を混同してしまう事はある。
しかしそれをおいても、やはりバッシュと二人でいられる事はアーシェにとって嬉しい事だった。




 ムスル・バザーでは人種を問わず商人が集まっていた。
食物・スパイス・アクセサリーなどを扱う多様な露店とそれを求める客がひしめいている。
「いつ来ても凄い人だわ…」
「殿下、足元にお気を付け下さい。」
アーシェの背中にそっと添えられたバッシュの大きな手が、彼女を人混みに飲まれないよう誘導してくれる。
「今日はどちらの店へ?」
「クランショップよ。さっきモンブランの所へ行ったらクランランクが上がった事を告げられて、品揃えの変化があるかどうか見に行きたいの。」
「成程。ちょうど戦利品も山の様にありますし、処分すれば交易品が出回るかもしれませんね。」


 人混みを縫うように進み、二人はやっとクランショップに着いた。
「今のアンタ達に売れるのはこんなもんだぜ。」
新たに出された商品達はどれも高額だったが、実戦で役に立つものばかりであった。
「ねぇ、バッシュ。これなんかどう?」
「(小声で)…些か値段が高い気がします。ここは我慢をして装備の充填を考えるべきかと。」
「そうねぇ…だったら貴方だけに一つ買いましょう。」
アーシェは支払いをしようとしている。
「お待ち下さい!私の為だけに散財をなさらず…」
「いいのよ。いつもメインで戦ってくれているのは貴方なのだから、貴方にお金を掛けて当然だと思うわ。」


 そして買い物を終えてみれば、ポーションなどの消耗品アイテムがかさみ、かなりの大荷物になってしまった。
「では私は荷物を持って先に部屋へ戻ります。殿下はまだこちらへ?」
「そうね。もう少しだけ見ていくわ。ありがとう。」

 バッシュが去った後、クランショップの店主がアーシェに声を掛けてきた。

「なぁ、アンタどっかの国のお姫さんか何かかい?」
アーシェは突然のその言葉に目を見開いて固まってしまう。
「いやぁ、今帰った連れが『殿下、殿下』なんて言うもんだからさ。そんな警戒しなくてもいいよ。誰に言う訳でもねぇから。
この御時世、ラバナスタに他国からお忍びで来るとは物好きだねぇ。…まさか帝国の!?」
アーシェはやっと話が飲み込めた。どうやら店主は自分の事を「ラバナスタ」の王女だとは思っていないらしい。
それもその筈、自分は今死んだ事になっているのだから。バッシュもそうだ。
それに顔だって意外と知られていない。実際にヴァンも自分の顔を知らなかった訳だし…

「帝国からではないわ。御想像にお任せします。」
相手に悪気は無いにしても、帝国の人間に間違われたことにアーシェは非常に嫌悪を感じた。
「すまなかったね、余計な事聞いて。端から見てたら仲が良いから最初は彼氏かと思ってたんだけどさ。」
「か…彼氏!!」
アーシェは顔を赤くした。バッシュが聞いたら何と言うだろうか。
「あ?なに、図星なの。ごめんね。」
「違います違います!」
「いいよそんな隠さなくても。主従を越えた、そんな関係があったっていいんじゃない?」
完全に誤解されてる…と思いつつアーシェは益々赤くなって黙っていた。


「そうだ、いいもんがある…」
そう言うと店主は傍らの袋の中から小ビンを出した。
良く見ると読めない文字のラベルが貼ってある。舶来品だろうか?
「媚薬らしいぜ。この間手に入れたが、どう捌いていいやら迷ってたとこだ。丁度いい、アンタにくれてやるよ。」
なぜそんな物を…と言おうとする間もなく店主は小ビンについて勝手に説明しだした。
「香水と同じ様に自分に振り掛ければ良いと思うぜ。そうすりゃ相手が匂いにつられて…」
「わ、わかったわ。でも何故私にこれを?」
「別に意味はないな…ただアンタ達なら上手く使えそうな気がする、そんだけだ。」
そう言うと店主は次の客を相手にし始めた。アーシェは暫く待って小ビンを返却する機を伺っていたが、
結局諦めてビンをむやみに捨てる事も出来ず、持って帰ることにした。


 「あぁ、いけねぇ!あれは自分に使うんじゃなくて相手に振り掛けるヤツだっ た…
ってもうあのネェちゃん居ないか。まぁ自分に使うのも…クククッ、アリだよな。」




 ホテルの自室に戻ったアーシェは、小ビンを握り締めたままベッドへ突っ伏し た。
「あーどうして持って帰ってきちゃったんだろ…」
自分の手の中にある不透明な液体が入ったビンを見つめる。
媚薬、か。興味が無いと言えば嘘になる。ただ気になるのはあの店主の言葉…
『アンタ達なら上手く使えそうな気がする』
思い出してアーシェは笑ってしまった。自分達はそんな関係に見られていたのか。
「でも…嬉しいわ…」
アーシェは小ビンの蓋を開けた。とても良い匂いが辺りに広がる。
その匂いにつられて一押し、二押しと身体に振りまいていく。…私ったら何をして いるのかしら…
バッシュに淫らな期待を抱いている自分に羞恥していたが、その香りを纏っていく うちに動悸が激しくなり正常な思考を徐々に奪っていく。
「はぁ……んっ」
思わず口から出た悩ましげな吐息に驚いてしまったが、驚きはそれだけに留まらな かった。
頭と身体の芯がボーッとして熱く、胸がいつもより大きく張っている気がする。
そしてベッドサイドの鏡に目を向けると、紅潮し潤んだ瞳の顔が映っていた。
「これが…私なの…?」
そこには通常の自分とはかけ離れた姿があった。淫猥な空気を隠しきれない自分に 目を背けた。
確か自分に振りかけろ・・・って言ってたわよね?もしかして使い方間違えたのかしら ・・・?
 自分がこんな乱れた気持ちになるとは予想もしなかった事であったから、アーシェ は動揺を隠せない。
しかしそんな自分とは反して気持ちは高ぶっていくばかりであった。


 アーシェがベッドの上で苦しみ悶えていると、突然自室のドアがノックされた。
「殿下、お帰りになっていらっしゃいますか?私です。」 

聞き覚えのある声・・・バッシュだ!しかし今このような状態で出ていいのか一瞬迷っ たが、
思いよりも先に自分の体が勝手に動いていた。

少し震える手でドアの鍵を外し、そっと開ける。
「・・・バッシュ・・・・・・。」
もはや上擦った声は自分でも気にならない。バッシュを目の当たりにして鼓動は一層 激しくなる。
「殿下・・どうなされましたか?ご気分が優れないような感じを受けます。熱でもある のでしょうか?」
バッシュもアーシェの異変に気付いたようだ。焦点の定まらない彼女の瞳と荒い息遣 いに、熱がある事を予想した。
「熱・・・そうね。フフフ・・・確かにあるかも。ね?・・・・」
ドサッ、と倒れ込むようにバッシュの身体へ抱きついたアーシェを咄嗟の思いで支え るが、
急なことにバランスを崩してしまい口付けをしてしまいそうな程お互いの顔が接近す る。
「どう・・・熱、あるかしら。確かめて・・バッシュ。」
アーシェはバッシュの唇に指を当てて優しく撫でながら、甘えるように上目遣いで彼 を見つめた。
「で、殿下・・・!本当にどうなされたのですか!?とにかく一度部屋へ戻りましょ う。」
こんな状況を他人に見られたらまずい。部屋の外で抱き合っているのかと思われてし まう。
それにバッシュはアーシェの不自然な様子も気になった。
「さぁ、こちらへ・・・」
バッシュがドアを開けてアーシェを部屋の中へ促すと、彼女はゆっくりと中へ入って いった。

が、次の瞬間アーシェが振り向き様にバッシュの手を自分の方へ引いたかと思うと、 そのまま彼の背後のドアを急いで閉めた。
「!!」
彼を逃さないように閉めた扉の鍵が、ガチャリ、と重苦しく部屋に響きわたる。
アーシェがバッシュの首の後ろに両手を組んで掛け、引き寄せるようにして囁く。

「ねぇ・・・・キスして・・・。」

 アーシェのルージュを引いた柔らかそうな唇がバッシュに迫ってくる。
「……い、いけません!殿下、お気を確かにして下さい。」
バッシュはアーシェの体を制した。
「ん…ッ。やっぱりバッシュはいざと言う時は力が強いのね…いつもは私のこと腫れ物を扱うみたいに接するクセに。」
アーシェは組んでいた腕を解くと、今度は彼の引き締まった二の腕や厚い胸板に手を這わせた。
「…優しくない貴方ってどんな感じになるの…?私に教えて…」
バッシュの肩口に頬を寄せて甘えるアーシェをバッシュが再び押し留める。
「冷静にお考えください。今の貴女は王女の立場から逸しておられます。取り敢えずそこへお掛けください。」
近くにあるベッドへアーシェを強引に座らせると、バッシュはテーブル上の水差しからグラスへ冷水を注いだ。
「お飲み下さい。少しは落ち着く事が出来ましょう。」
「嫌よ。…ねぇ、そんな事より側へ来て…」
今度はアーシェがバッシュの腕を強引に掴み、彼を自分のベッドに座らせた。
「私のこと…嫌い?」
「そのような事は全くございません。」
「では好き?」
「とてもお慕いしております。」
「殿下として?それとも女として?」
「…………」
最後の質問は答えづらいものであった。バッシュの本心はどちらにも当て嵌まった。
王女の護衛としてだけでは片付けられない、積年の深い感情もあった。
しかしそれを吐露出来るはずも無く今まで過ごしてきたのだ。
なのに、今この状況で自分はそれを隠せないでいる。押し殺してきた主人への恋慕を…
「バッシュ…」
アーシェはベッドに座るバッシュの膝の上に跨いで、彼と向かい合った。
スカートから曝け出された太股や尻の柔らかい感触がバッシュを刺激する。
服がはだけた胸元は大きく盛り上がり谷間が見え隠れしていた。
「私は貴方が好き…フランがバルフレアを必要な様に、パンネロがヴァンを必要な様に…私にも貴方が必要なの。」


 いつも近くに居すぎるお互いの存在を再認識した時、その「感情」は堰を切った様に溢れだしてしまう。
それは背徳的な事かもしれない。しかし、それでも今の二人には…




「キス…して。貴方から…」
バッシュの耳元で囁いたアーシェの情欲を含む声。

互いの視線が重なり合った瞬間、時間が止まったような気がした。


 自分の上に跨がるアーシェの唇にそっと重ねると、彼女の髪や肌から甘い香りがする事に気付く。
久方振りに触れる女の肌は、禁欲的な生活を続けたバッシュにとって目眩を覚える程刺激が強かった。
「っ…ん…もっとして…」短いキスで終わらせたバッシュに不満の声を漏らすアーシェの瞳が、バッシュを求めて一層潤んでいる。
「あん…バッシュ…はやく……」
「……」


チュク…チュッ…
「んっ…んン…ッ、は‥ァ」
バッシュの理性が、甘美なアーシェの舌使いと喘ぎによって崩れていく。
「チュ……あ…んっ、んぅ…」
舌を絡めあう度、アーシェから発せられる声を聞いていると、男としての本能が徐々に甦ってくるのが分かる。
服の上からでも確認できる程のバッシュの激しい高ぶりが、キスを繰り返すアーシェの太股に当たった。
「ふふ、キスだけでこんなにして…」
それに気付いたアーシェは唇を離すと意地悪そうにバッシュを見つめ、右手を下半身へ下ろし指先で布越しから上下に触る。
「……ッ!」
「ココがとても苦しそうだわ…」
それを包み込む緩急な手つきに、バッシュの呼吸が乱れた。
「……ッ…殿下…」
アーシェは跨いでいた足を退けて、絨毯の上に跪く形を取りバッシュを見上げた。
「……私が楽にしてあげるから。」
そう言うと同時にバッシュの服のベルトやファスナーを器用に外し始めた。
「…!!いけません…!」アーシェがこれからしようとする事を察したバッシュだったが、もはやそれは無駄な抵抗でしか無い。
 下着を抜がせた所に現れたそれは、ドクドクと脈打ちながら仰いでいる。
「とても大きいのね……んっ…ふぅ…」
猛る砲身の根元からじっとりと舌を這わせ、カリ首の周囲を丹念に愛撫すると先端から先走りが溢れてくる。
チュプ…チュプッ…チュッ…
その液体を掬うようにして舐め取り、そのまま亀頭を口の中へ入れると一気に奥まで銜え込んだ。
「んっ、んぅ!んっんっ、ん…ふぅ……あ…」
「………くッ」
ジュプジュプと卑猥な唾液の音と共に、アーシェの包み込んで上下する口腔の刺激にバッシュは思わず低く唸る。
「…あふ、んン……バッ…シュ…んっ、んン…」
口淫を施しながら上目遣いで自分を呼ぶアーシェと目が合う。
上気した顔と同時に腰を揺らしているのが見てとれた。
「あっ……ぅんっ、はぁ……欲しい……欲し…ぃの…貴方ので…私のことを…っ!ん…ぅ…、あっ!!」
行為を再開しようとした時、突然アーシェはバッシュへの奉仕から引き剥がされベッドの上へ乱暴に放り出された。

 ―ギシッ…!

アーシェの重みでベッドのスプリングが鈍い音を立てた。
「…あんッ!」
体勢を立て直そうとするアーシェだったが、背後からバッシュにきつく抱き締められて嬌声をあげた。
「……はぁ…ん」
上半身の服を脱いだバッシュの筋骨逞しい体に抱かれて溜め息をつく。
自分の腰から臀部に押さえ付けられたバッシュの固い怒張が、更に大きくなり脈を打っているのがアーシェを興奮させた。


「殿下……!!私は王家に忠を誓う身でありながらこの様な不埒な真似を…ラスラ様と貴女への冒涜で業火に焼かれる事でしょう…。」
「言わないで…バッシュ…あなたは悪くない。悪いのは私よ…」
アーシェはバッシュに向き直り、自責の念に暗い影を落とした彼の顔を覗く。
互いの視線を交わすだけで、こんなにも相手を欲し身体中が熱くなっていく…
もはや今の彼らに言葉は必要なかった。




 縋り付くアーシェをそのまま押し倒して首筋や耳に強く吸い付く。
「あっ……バッシュ…」
バッシュの広い背中に回されたか細い腕に力が入り、愛しそうに彼の名を呼ぶアーシェの唇に再び深い口付けをする。
「ん…、ふぅ…あん…はぁ…は、ぁ…」
先程とは比べものにならない程の濃厚なキスにアーシェの息が上がる。
バッシュはキスをしながら胸に右手を伸ばし、白いレースの下着をずらしてアーシェの豊満な乳房を出した。
そして薄桃色の乳首が現れるとキスを降下させてそれに舌を這わせ先端を甘噛みする。
「あぁッ!ゃ…ぁ…!はぁッ、ぁん…!!」
下着をずらされたまま完全に解放されない状態での愛撫に、アーシェが首を横に振り苦しそうに喘ぐ。
「あっ、ぁぁ…んンッ…!!」
目前のアーシェから放たれる強烈な色香に惑わされ、自分の本能が剥き出しになっていくのをバッシュは自制する事が出来ない。

白く滑らかな腹部を下り、乱れたスカートを捲りあげると美しい形の尻が現れた。
アーシェの身体を横向きにして、腰から大腿部にかけてを撫でながら唇を這わす。
「んっ……ぅ…」
その行為でアーシェが足を擦り合わせた間から現れた場所は、下着越しからでも分かる程ぐっしょり濡れていた。
バッシュが薄い生地の上から指で触れると、アーシェが背中を反らせて悶えた。
「あぁっ………!!!」
指で最も敏感な部分を刺激し、舌で濡れそぼった場所を愛撫する。
しかし、下着越しのそれは、快感に溺れるアーシェにとって次第に物足りないものになった。

「…あぁ…バッシュ……もう…」


 アーシェの秘部はますます濡れて、何かを待ち望んでいるかの様にヒクついている。
「んん…ンッ!!や…っ………あぁ!!」
バッシュはアーシェの下着の中に手を入れ、愛液と指を絡めながら奥深くに進んでいく。
…ジュクッ……ジュ…プ…ッ
卑猥な音を立ててアーシェの肉壁の中を、太く長い指が侵していく。

「……いゃ、……は、ぁ……もぅ…だめぇ……!」
下の口で銜え込んでいたバッシュの指をキュウッと締め上げると、再び胸に吸い付いていたバッシュの頭を抱きしめて叫んだ。
「はぁ…はぁ、…欲し…ぃ…お願い…!」
「……殿下…」
アーシェの身体からバッシュが離れると、彼はベッドの上に膝立ちになりうつ伏せになったアーシェを見下ろした。
アーシェが振り返った先には、鍛え上げられた腹筋に届きそうな程反り勃つバッシュの巨根があった。
口淫をしていた時よりも更に大きく膨れ上がっており、見下ろすバッシュの瞳の色からも彼に余裕の無い事を伺わせた。
それを見てアーシェは、ぞくりと身体を震わせる。
………あぁ、あんなに大きいので…奥まで突いて欲しい………
言葉にはしないものの潤んだ目で訴えかけるアーシェの気持ちが通じたのか、
バッシュは黙って彼女の腰を高く持ち上げると熟した蕾に己の怒張をあてがった。


 ―ズプッ、ジュプ…ズッ……ズプッ…!
最初は頭だけを抜き差しする様に動かしていると、それに痺れを切らしたのかアーシェが自ら腰を振り出した。
「…………ッ!!」
突然の展開に驚いたバッシュは、肉壁に飲み込まれそうになる快感に眉をしかめた。
「……あ、ふぅ…もっと…激しくして……もっと…」
バッシュの動きに合わせて腰を振ると、徐々にそれは体内へ飲み込まれていく。
「あっ、あ…バッシュ…んッんっ、あん!」
全てアーシェに包み込まれたバッシュの男根が、波打つ肉壁の中で激しい運動を始めた。
ズプッ!ジュッ、ジュプ…ズプンッ、ズッ、…ジュプ!
「あっ、あん!あぁッ、ハァ!んっんっ、はぁッ!!」
後背位からの責めにアーシェが髪を振り乱して喘いでいる。
その様子はバッシュ中にある男の欲情を一層駆り立てた。

「殿下………私に貴女のお顔をよく見せて下さい……」
今まで殆ど言葉を発しなかったバッシュがアーシェに甘く囁き、繋がったままの状態で彼女の身体を仰向けに寝かせた。


 …はぁ…、はぁ……はぁ…
息を荒げてじっとりと汗ばむアーシェの全身に、テラスから差し込むダルマスカの夕日が注ぐ。
二人がこうしてる間に、いつのまにか日が暮れ始めてきているようだった。

「…あっ、あ!……はぁ!…ぁッ…んっ!…」
仰向けにされ更に深く突かれながら、アーシェが顔を紅潮させている。
その艶めかしい様子を見下ろしながら、バッシュはアーシェの膝の裏に手を入れ足を上に抱えあげた。
「…あ…だめ…ぇ!!…アッ、あぁ!!…そんな…いやっ!!あぁっ!!」
少し浅く腰を揺らしてアーシェの一番弱い所を的確に捉えて責めると、アーシェが背中を反らせて嬌声をあげた。
「…あんッ!…はぁ!!バッ…シュ…そこは……はぁッ、あぁ!!」
襲い来る快感に耐え切れず首を横に振って暴れようとするアーシェの首に、バッシュが噛み付くようにキスをする。
「あっ…あぁん!…だめ……もうだめ……はあっ、あっ…あぁぁ…………ッ!!!!」
逃れられない突き上げにアーシェが限界に達し、ぎゅう……っと肉壁を締め付けると、
バッシュもそれに続きアーシェの最奥で大量の精液を吐き出した。





 「…ん、ぅん……」
気だるい声をあげてアーシェが身体に掛けられたシーツと共に起き上がると、ソファーに腰掛けていたバッシュが優しく声を掛けた。
「お目覚めですか、殿下。」
その声に聞き惚れながら乱れた髪をかきあげると、自分が裸でいる事にやっと気付いて慌てるアーシェ。
一瞬の大混乱の後、冷静に記憶を辿りだす。
『…そう言えば…あの薬をつけてからの事……あまり覚えてな…い…』
しかし自分が今この姿でベッドの上に居るという事は、そういう事になる。
まだ下腹部の辺りに残る異物感は、身体が物語る何よりの証拠だ。
しかしベッドは綺麗にメイキングされ、痕跡はあとかたも見られない。
おそらくバッシュが事後処理をしたのだろう。
『私…ここで気を失うまでバッシュに……!』
あぁ!と大きく息を吐くとベッドの中へ潜り込んだ。どんな顔をしてバッシュに話かける事が出来ようか。
「殿下…お話がございます。」
バッシュがソファーから立ち上がりこちらへ歩いてくる足音がする。
『いや…来ないで…!』
アーシェはベッドの中で祈ったが、その願いも空しくバッシュに上掛けを剥がれてしまった。

 「……あッ!」
バッシュはアーシェを抱き上げた瞬間、バサッと身体に白いガウンをかけた。
アーシェは与えられたガウンの襟を引き寄せしっかりと着込む。



バッシュはアーシェの目前に自分の手を差し出した。
「このビンを何処で手に入れられたのですか?。」
そこに握られていたのは、あの媚薬の小ビンだった!
「いや…それは…!!」
アーシェは取り返そうと咄嗟に腕を伸ばしたが、バッシュはその動きを読んでいたかの様に手を引っ込めた。
「貴女の態度で良く解りました。これは今巷に出回る新種の催淫剤ですね?最近話を耳にしたものですから覚えがあります。
…先程のバザーで手に入れられたのですか?」
アーシェは目を伏せた。
「……ごめんなさい!出来心で………」

もはや隠せないと、事の経緯を全て白状したアーシェ。
「そうですか…。この薬の使用方法も曖昧なままで使ったのですか…
そもそも媚薬というのは相手の気持ちを促進させる為の物ではないのですか?自らに使い相手を誘惑すると言うのは聞いた事がありません。」
バッシュが苦笑しながら言う言葉はアーシェの耳には痛い…。確かに言われてみればその通りだ。そんな事も分からず自分は…。

「この薬は処分いたします。これから先、またこの様な間違いがあってはなりません。」
バッシュはアーシェの傍から離れ、外に続くドアへと歩きだした。
―間違い―…アーシェの中で言葉が反芻する。この事は間違いだったのか…
それだけで片付けられてしまうのか…バッシュに対する自分のこの思いも…!!

「私は…私は後悔なんかしていないわ!!」
去り行く背中に向かって放たれたアーシェの本心。バッシュはドアノブに掛けた手を止める。
「………私は知っていた…貴女がその薬を使っている事を。ベッドの上でキスを求められた時、傍らにあったそのビンを発見して気付いたのです…。
それを知っていながら貴女を抱いた。私は…薬に惑わされたのではなく自分の意志で貴女を抱いたのです…。」

アーシェは羽織るガウンを脱ぎ捨ててバッシュの元へ駆け寄った。
「…バッシュ!!間違いだなんて言わないで…これからも私のそばにいて……」
自分に抱きついたアーシェの肩を優しく抱くと、低く囁いて問い掛けた。

「しかしながら殿下…あんなに善がり、乱れ、甘え、腰を揺らしながら懇願する貴女を見たのは始めてでした。
あれは「間違い」ではなかったのですか?それともあれが本当の姿…」
「黙りなさい!バッシュ!」
アーシェは記憶に無い自分の姿を想像して赤面し、慌ててバッシュの口を塞いだ。
「私に迫るあの様な御姿の殿下も非常に魅力的でした……もしかすると、私は本当に媚薬に惑わされていたのかもしれません。」
そんな事は嘘だ。バッシュの下手な冗談を見抜けぬ程アーシェの勘は悪くない。
「あぁ…何だか今更気分が高揚して参りました…これも媚薬とやらの影響でしょうか…」
「…………バカ…。」


 この様な物に頼らずとも、貴女を愛する事は出来る…

バッシュの内に秘める本意を汲み取ったアーシェが小さく笑った唇を、バッシュの甘いキスが塞いだ。




(1-598〜603,656〜661)














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