■ラーサー×パンネロ(by.◆/pDb2FqpBw氏) 「パ、パンネロさん。机の前に座るときはもうちょっと背筋を伸ばして頂けませんか?」 「・・・はい?わ、わかりました。」 「も、申し訳ありません。その、前屈みになっているパンネロさんが前に座っていると集中力が保てないので。」 「・・・?はい。ラーサー様がそういうなら。」 ラーサーの言葉に釈然としないながらも頷くパンネロ。 執務中のラーサーの姿が物珍しく、じっと見ていたのがよくなかったのだろうか。 邪魔にならないようにしていたつもりなのだが、 執務中の部屋にいる事がそもそも不遜な事なのだろうからパンネロは素直にラーサーの言う事を聞くことにした。 椅子から立ち上がる。溜息をついた。 執務室、飛空挺から眼下に広がる景色は素晴らしいが、こう毎日だと飽きる。 無論パンネロは幽閉されている訳ではなくラーサーから飛空挺内は動き回れる範囲内で見学してもいいとは言われている。 かといってラーサーの執務室以外には物々しく甲冑を着た兵士がうろうろとしているので 気楽に飛空挺内の散歩に洒落込むというわけにも行かなかった。 兵士達に叱られる事はないが、彼らはパンネロを見つけ次第、非常に丁重な態度でなんやかやと 接してくるのでなんとなく一人で出歩くのは億劫になるのだ。 自然、ラーサーがいる執務室でぼんやりとする事になる。 眼下の景色を見ながらついパンネロは呟いた。 「ヴァン、どうしてるかなあ・・・」 自分に禁止していた言葉だ。 言ってしまうとつい寂しくなってしまうから。 パンネロの言葉を聞いた瞬間、ラーサーは机の上から顔を上げた。 わずかに逡巡した後、ラーサーは何時もの落ち着いた態度とは違って少し戸惑った口調でパンネロに声を掛けた。 「もう、戻られたいですか?つまらないでしょうこんな所。」 逡巡したのは僅か一瞬。ラーサーの顔色は元に戻っている。 普通の人間なら見逃しただろう。しかしスラムで育ち、 人の顔色を見て生きてこなくてはいけなかったパンネロはラーサーの一瞬の変化に気づいた。 帰りたくない、と言えば嘘になる。ヴァンの事も心配だ。 しかし・・・ 「いえ、とんでもないです。助けて頂いた上になんかむしろ私なんかがこんな所にいていいのかなって。場違いだしほら。 ラーサー様のお仕事の邪魔だし。あはははは。」 パンネロは帰る、帰らないの話になるとラーサーに帰りたい、とは言い出せなかった。 「そ、そんな事ないですよ。パンネロさんのお話はとても面白いし、 僕はも、もしパンネロさんがよければずっと。こ、ここにいて話し相手とかになってほし・・・」 そう、そういう話になるとラーサーは帰りたいかと聞いてはくるものの、 こうやってまるで気の弱い少年のようにおどおどと帰って欲しくない。という事を言ってくるのだ。 まあ無論ラーサーは帝国の要職にある人物と言えども年齢としては少年なわけだし、 そうやって懐かれてしまうとパンネロとしてもなんとなく悪い気はしない。 最初のうちはびくびくおどおどとしていたが、ラーサーのそういう態度もあって今では意外とフランクに話したりもするようになってきた。 「ま、ヴァンはヴァンで宜しくやってるだろうし。」 ふう。とワザとらしく溜息をつきざま振り返って笑いかけるとラーサーはあからさまにほっとした顔をして、 その後直ぐにハッと顔を繕ったりする。 「いえ、帝国の軍人、いえ、帝国の国民の一人として パンネロさんのような被害に会われた方には直ぐにでも落ち着ける所に戻られたほうが良い事は判っているのですが。 残念ながらこの船は私の一存のみで彼方此方と言って良い訳ではなく。」 明らかに嘘だ。パンネロ一人ぐらいどこぞの小さい船でホイッと放り出せば良いのだ。 そういう所もカワイイ。 「いえいえ、ラーサー様。都合が良い時で私は構わないです。」 つい、パンネロは苦笑しながら答えてしまう。 「ラーサー様の邪魔もしたくないし、お風呂、入ってこようかなあ。」 お風呂は飛空挺内の数少ない娯楽だ。 しかも兵士用にはシャワーしか無いとかで王族専用の風呂場を使わせてもらっている。 温かな湯に泡立ちの良い石鹸。窓からは外を眺める事もできる。 全面外が見えるので外からは見えないのかとラーサーに聞くと外からは見えないようになっているらしい。 とにかくスラムに比べれば食事とお風呂は言うことなく素晴らしいの一言だ。 ホカホカにふやけるまでお湯に浸かった後、 風呂上りに常備されているハイポーションを飲むのも最近のパンネロのマイブームだ。 ハイポーションどころかポーションだって高嶺の花であったパンネロにとっては お風呂上りに飲むハイポーションは目の眩むような贅沢に思える。 んんー!と伸びながら呟くと、 ラーサーは顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。 ラーサーはパンネロの言う着替えとか、お風呂とかそういった言葉にでも良く敏感に顔を赤くしてしまう事があった。 毎日毎日こんな年齢で帝国の政治について色々と考えている偉い少年でもそんな事が恥ずかしいのかなあ。 とパンネロは不思議に思う。 ヴァンとは小さい頃良く入ったし、ラーサーも幼馴染の女の子の一人くらいはいるのではないのだろうか。 「ラーサー様、一緒に入ります?あ、侍女の人達に怒られますね。お仕事頑張ってくださいー。」 パンネロはそれだけ言うと、自室として割り当てられているやたらと広い部屋へと戻るためにラーサーに背を向けた。 その後ろでラーサーが顔から湯気を出して書類の上で顔をごろごろと書類に揉みこむようにして悶えている。 ----- 目の前に迫り来るモンスターに剣をつけた。 「さあ、モンスターめ。来るが良い。」 モンスターの鋭い一撃を飛び上がるようにしてかわしながら一撃を与える。ヴァンの元へと走った。 「さあ、これを使って下さい!ハイポーションです。」 「お、おお!サンキュー。」 ラーサーの手元から放られたハイポーションが吸い込まれるようにヴァンの手の中へと吸い込まれて行く。 その瞬間、バルフレアの手元から放たれた銃弾が最後の敵を薙ぎ倒した。 ラーサーは休む瞬間も無く、傷ついた仲間にハイポーションを手渡していく。 パンネロの「ラーサー様、頼もしい」と言う視線を受けながらラーサーは右手を高く上げ、叫んだ。 「さあ、皆さん。もう少しです。行きましょう!」 「おお!」 ラーサーの言葉にメンバー全員の気合の入った言葉が返ってくる。 メンバーはラーサーを中心にして纏まっている。 前衛で戦うバッシュやヴァンを華麗に補佐し、 時に最前線で敵と切り結ぶラーサーは既にメンバーに居なくてはならない人間となっていた。 メンバーの信頼も厚い。 ラーサーのハイポーションがあるという安心感が、皆の行動を軽やかに、動きやすいものとしているのだ。 しかしそこに油断があったのかもしれない。 後ろから出てきたモンスターに気づくのに一瞬、遅れたのだ。 先頭に立っていながら、しかしそのモンスターの気配に最初に気づいたのはラーサーだった。 最後尾にはパンネロが立っている。 「パンネロさん!危ない!」 ラーサーは走った。斬りつける余裕はない。 ぼうと立っていたヴァンを突き飛ばし、パンネロを庇うように回り込み、そして・・・ パンネロを庇ったその瞬間、モンスターの触手が深く、ラーサーの肩から腹にかけて切り裂いていった。 バッタリと倒れたラーサーにパンネロが、皆が駆け寄ってくる。 「か、掠り傷です。」 ラーサーの声に、しかし傷を確かめたバルフレアが首を振る。 「ラーサー様!」 パンネロの悲痛な声が響いた。 「パンネロさん。あなた、いや、帝国民の幸せの為、私は戦ってきたのです。悲しまないで頂きたい。 そ、そもそもあなたにそのような声は似合いません・・」 「ラーサー様!」 「しかし、心残りが一つだけ・・・私、私はあなたの事が・・・いえ、多少の年齢の差がある事は承知しています。 無論私の立場も。そして恐らくあなたは私をそのような目で見ていないと言う事 も・・・しかし、わ、私は帝国国民、いえ、一人のお、男として」 「ラーサー様!」 「パンネロさん、一度で良い。一度で良いのです。私をラーサー、ラーサーと、呼び捨てに・・・」 @@ 「ラーサー様・・・・」 「ラーサー様?」 温かな日差しがぽかぽかと差し込む中、パンネロは机に突っ伏しているラーサーの頬を突きながら声を掛けている。 「ラーサー様。さっき兵士の方が睨んでましたよ。」 ついついと頬を突く。 「む、又現れたか。しつこい奴め、父と兄の名にかけて、このラーサーがいる限り、」 パンネロの指を払いのけながらラーサーはむにゃむにゃと何かを呟いている。 「何かと戦ってるのかなあ・・・」 「こいつめ、こいつめ。さあ、掛かって来い。このラーサー、パンネロさんには指一本・・・」 「こんな書類ばっかり見てたら眠くなるよね。」 ふう。と溜息を吐きながらぱらぱらと書類をめくる。中に何が書いてあるのかは知らないけれど。 こんな少年が読まなくてはいけないものなのだろうか。 「漫画とかで書いてあればいいのに。」 「・・・いえ、このような傷、なんでもありません。掠り傷です。さあ、ここは危険です。パンネロさんは私の後ろに。」 「むずかしすぎるよ。」 溜息をつく。 日差しはぽかぽかと暖かく体を包み込む。 捲ってみても書類は何が書いてあるかさっぱり判らないし、ラーサーの頬を突きながらパンネロも瞼が重くなってくる。 「私も寝ちゃおうかな。」 「ハイポーションなど。・・・ケ、ケアルですか?パンネロさん、そんな。いえ、そんなそのような。そ、そんな・・そんな所・・・あ、ああ。」 空の上はスカンと抜けるように綺麗だけれど、日差しは少し強い。 日はまだ高い。ご飯を食べれば眠くもなる。 「書類も大事だろうけど、お昼寝も大事だよね。」 綺麗な夕焼けが出てくるまで少し一緒に昼寝くらいしたってきっと罰は当たらないんじゃないかな、とパンネロは思って。 「良く判んないけど。ラーサー様、がんばれー」 と呟いて。 ぐでっとラーサーの横に突っ伏していった。 (1-289,292,293,296,313,314,315,316,317,318) |
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